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~悪戦苦闘~(『夢時代』より)

~悪戦苦闘~
 屈強を経て、やがて世に羽ばたき始める己の限界(かぎり)を知ろうとするも、文言(ことば)を翻(かえ)せぬ幻想(ゆめ)の歩先(ほさき)が全く如何にも覚束ずにあり、母体から成る己の人体(からだ)を夢中に酔わせる可能(かぎり)を見遣れば、初めから在る苦労の行方が渇楽(ポテンシャル)から微妙に退(の)き出し、朝陽の行方が店を構えて俺が来るのを密かに待った。そう、その場所(ところ)とは人人の群れから程好く離れた郊外にて在り、自然は僅かで幻(ゆめ)を連れ添い、湖(うみ)の体(てい)して構えた泉が夢中に消え去り孤独に見遣ると、現行(いま)を独歩(ある)ける人の行方は古代製鉄所(たたらば)から観て地中に根差し、人の相(そう)には如何にも窮まる夢の強靭(つよ)さが表情(かお)を覗かせ、そうした景色は退屈(ひま)を想わす無類を着飾り、体温(ねつ)を火照らせ、黒縁眼鏡を掛けたまんまの店主(あるじ)の利益は時流を手懐け動静を突く。―命に感けた現代人の歩調がその儘活きて店内を体好く埋めてはいるが、どうも漆塗りの黒家具を置き散らした昔風味の小庭(こにわ)には何時(いつ)とも見知らぬ殺風と安堵の拠点が一対(いっつい)に成って一体と成り行き、動静計り知れぬ難民紛いの人人の動静を制御して行く契機(きっかけ)の具合は、マスコミが殺到して初めてその実(み)を揺らすと、飛んだ現代思想に飽きた者達への巣窟(そうくつ)を模していた。やがては下天を燻り足元を着かせぬ浮惑(ふわく)の長寿が身嵩(みかさ)を保てぬ脆弱(あわ)い人体(はこぶね)を用意して来て明日(あす)を知ろうと、俺の目前(まえ)にて何時(いつ)か要する不敵な儀式を流行(なが)して行った。俺は何時(いつ)の間にか自分が必然の内にて明日をも今日をも未知へも過去へも辿れぬ従順且つ柔軟な魅惑の体(てい)に、程好く知恵者(キッシンジャ)への夢想(ゆめ)を拡げてオルガを象る一対(いっつい)の凡庸をこの手に収めて、総身は何時(いつ)しか朝日を知った。朝か昼かも計り知れぬ孤高の回廊(ろうか)を通って自ら起(きた)した一室(へや)へ飛び込み、オレンジ色した夕日の参加が程好く一味と成り行き思考を捉え、完走して行く階下の凡滅(ぼんめつ)の死臭には何時(いつ)か潰えた風来が奏でたような至極(しきょく)の破想(はそう)が在って、俺の一歩は凭れてひらひら、手にも付かない群局(ぐんきょく)の格子にねっとり付き往く死相に隠れたオルガを直す…。通り一遍に階下が咲いたのは昭和七年五月十五日、秋晴れの美しい雛菊が凡庸に向いて体を阿り、明日を知る間も凡庸(ふつう)に無い儘、人の手に在る趣向の程度に時間を留(とど)めて夏を報せる。俺の麓に幾数枚か色付きの写真が転がり起きたが真昼の温度に葉(よう)を掠めて、微かな嘆きに盆を踊って、富ます朝日は彼(か)の群局に満ち得た血相に飽き募る程に己の屍(かばね)の成果(はて)を緩めて態(たい)を逃がした。まるで減圧され得た無欲の行方が明日(あす)の勝利に跳び付くのを知り、底儚(そこはかな)く散る己の前足の火照りを又、次第次第に慰(い)んで行く。〝孤高〟と言えども小言(こごと)し間際に破甲(はこう)を呈した己の純極窮まる梵天(そら)を垣間見たのは…、と己の進退に一端(いっぱし)の抑揚付け得た両翼(つばさ)を伸ばしてこの現実(たいくつ)の巣(ほど)から脱出するのを夢見て宛ら、人の躰は惰性を知りつつこれ迄に得て来た過去の快楽をつい又手中へ収めて消化して行き、如何でも糧を消化出来ない夢想の惑内(わくない)に己を留(とど)めた。如何でも朝陽が昇るを知ること幾数年、凡そ三十五年間活きた心身(からだ)は未発(みはつ)のドグマを逡巡衒って幸(こう)から外し、現実の内に夢を棄て得ぬ孤独な活路を有して居たから明日を棄て得ぬ〝魅惑の騎士〟には今日が輝き、曇天を呈して朝陽が昇ると無休の内にも知る事と成り、明日は我が身の呟き等が生き返りもする。何時(いつ)の間にかその店の真下に〝階下〟が増えて歩先を緩め、俺の体が丁度乗る程空間詰めて配慮を呈し、蛻としないで人人の笑顔を微笑に灯し行くのは俺の遠慮を葬り去るのに一役買った。何時(いつ)しか白日が下天の内からこの上天(じょうてん)へ迄昇り詰め行く無双の絆しは究極から観て己の視点を世に通用させ行き、旧い仕来り等を全て一掃する等何やら革命染みた様相の程度を充分湿らせ曇らせ行って、俺の思惑(こころ)は人を見る時熱心な歩調を凡庸せしめて嘗て闊歩(ゆうき)を知り得た体(ほど)にて、雲間に差し行く陽の如くに己を輝(ひか)らせながら活性して行く境地に在った。
 過去達が騒然と成って一対(いっつい)を掌握しつつその個の源(もと)を独りでに歩けるようにした後我が身に寄り添い、自然が通した道標(みちしるべ)を得手に着て身の程(たけ)を延ばして行く頃、俺の眼(まなこ)は肉眼を通じて生体を捉え、宙に舞った蜘蛛の巣の様な人のオルガ達を一箇所へ集めて管理し始め、何処でも繰り広げられ行く孤踏(ことう)の年月を円らに絡めて俺を惑わせ、微睡み出して、始終努めたその日の改悛に一応の終止(ピリオド)を打つ儘身内に居着いた小言の輝灯(あかり)を路頭へ迷わせ、漠然自体(そのもの)を目標(ゴール)に向き換え突進し出した。夢がその頭上に大きく拡げた傘の下ではこれまで生き通った武士(もののふ)の類(たぐい)の亡き信者達が各自の道標(しるべ)を自然の内より練り出させた一介の信心の程度(ほど)を良く良く吟味し出して体温(ねつ)を発し、俺の体が向く方向へと起点を返して柔軟を留(とど)め、晴天でも曇天でも皆まで奈落へ落ち行かぬようにと耄碌に試算を重ねて夫々熟させ、何時(いつ)果て行くとも知り得ぬ煩悩の再来を期する満ち行く珠算に、やがては尽きぬ動源(どうげん)の有限(かぎり)が在る、と思考を巡らせ不能を根絶やし、何処へ行くのも他(ひと)の暗算の内にその身をたえらせ、無業の赴く内に人身御供を踏襲して行く我が身の迷路を構築して行く唯一介の逡巡に身を据え諦観付く事は、自然に活き得る無工のオルガの神秘をより昇華させ得る無類の決心だったと数多の空想重ねて俺に還った。所々に漏れ落ちる体(てい)にて流行(なが)れ落ちた思考の数多は更に生地を得た程その身を活して采を操(と)ろうと数多に絡んだ十路(じゅうろ)の小言を人の自然に連綿させ行く小道具(どうぐ)と称して身を刈り両手(て)を刈り両脚さえ刈り取り、天徳(てんとく)の収穫こそはこの人生(みち)にて期せるものだと一介の凡性(ぼんせい)に肉厚(あつさ)を着せて当面摩り替らぬ生粋の強靭(つよ)さにその身を撒こうと、意識ながら昏睡の内でも用途を終えた断片達は骸を着た儘喜んで、俺の思考を反映させ得た。唯独りでに生き得る思想の証明を摂理(ドグマ)を採って如何でも欲しいと他(ひと)を頼らず生きる屍(かばね)と成り行きながらこの身の無謀を報(しら)されても尚、鮮烈に猛る世の盲者達へはこの手が届かず唯流行(なが)れ行く懸橋(はし)の上では道理を解かぬ未開が現れその手を染めて、滞らずまま活性され行く無欲の信心等には一介が見分ける価値など無い事を再度開口煩い力説し始め、抜き足差し足、暗の内にて過ぎ行く〝時制(じかん)〟の容姿は足取り定めず俺から消え行き、無闇に狭い空白(あとち)を放った。過酷な日々に活路を呈してその身を引きつつ是正のオルガを心(しん)に留(とど)めて未開を射止め、自分(おのれ)を惑わす窮境成る私財の在り処を体好く収める開化の境地は照明(ほのお)を挙げつつ虚空を仰ぎ、一度は忘れた神の御国へ歩調(しせい)を改め所用を呈した。口は半開き成るまま無臭の低地に吹き遣る風には凡そ生命(いのち)を承けた人人が生き得た跡の無いほど老臭漂い、緊迫した無業の羞恥は徹底して一手段(ひとつ)の試みを明然(あかるみ)へ引き出し荒涼足る我が思想の性質(ぶんや)を軒並み揃えて空転に利(い)かし続け、凡庸(じんせい)に降り注いだ直感(センス)の嵐を啄み始める。〝とてもじゃないが、自然を呈しながらに我が身の煩悩を隠して十路を束ねて誠実成るまま未開の包容を期しては、自身(おのれ)が活き行く試算が付かぬ…〟と、追憶し切った人体(ドグマ)の行方は当てから外して荒野を歩いて、突風の吹き狂う活路への順路をまるで疲弊し切った駄馬(あし)に任せて行進して居た。
 平凡と非凡の境が付かずに当惑に面して疲弊していた孤立の習癖(ドグマ)は何時(いつ)しかかっぱらって来た尺度を据え置き、自由気儘に併用し得る生(せい)への循環を死活に見入らせ教育し出した。地鳴りがごごごと宙(そら)から落ち行く如くにこの身を揮わせ、四旬の向く儘機を躍らせ行った俺の司教は何処まで馳せても何時(いつ)まで成しても、孤踏(ことう)に阿る教義(ドグマ)の始発を心行くまで待ちつつ唯堪能して居た。四旬の魅惑に上手く乗せられ入(い)った孤高(ドグマ)の乱歩(おどり)は何処まで馳せても何も見入らず、無教の門田(かどた)に点在していた疾空(しっくう)の末広に遍く期待を擁した如くの作業は、生粋成るまま自然の呈した唯満足へのノルマを無難と採って、ノルマは己の功を費やす闊歩の返りを密かに待った。神秘極まる七つの星の内に一等星を呈する虚空の下(もと)を独歩(ある)きながら俺の抗体は様々な外的刺激に依る憔悴に一々打ち勝つ事をも知る人で、明日(あす)を牛耳行く躍動に総身(み)を浸して居た。
 古風小波(さざ)めく旧い飲食店がその屋号(やごう)を称しつつ一介の人来(じんらい)を今か今か小心に体(たい)を揮わせながら、俺の還りを待って居たのは間違い無い。その店とはそうしながら雷鳴咲く日も雨が咲く日も日照りで祭日を忘れた日でも俺の来店を唯期する如くに余裕(ゆうちょう)を潜めて問答しつつ、孤独に咲かない一端(いっぱし)の音頭を衒って居たのは明然であり、骸や屍を後生大事に盗んだ着物の様(よう)に着古した一介の俺に対峙する日もその在り様(よう)には変化が無かった。俺はまるで何処そこの教会返りの身の故習に苛みながら何処かで変木(へんぼく)を浚い己の信念を鈍らせつつ、明日(あす)への信仰(いしき)を丈夫に保(も)とうと試みつつも、如何でも痩せない大店(だいてん)への兆しが末公(みこう)を採らない昼夜に活き行くその店の規模を図り知れず、如何でも足下(あしもと)揺るがぬ他力の襲来へ思惑(おもい)を重ねて、馳せば東京戻れば京都と、東西に連なる人道の翳りの程度(ほど)に人の群がる習わしの形成(かたち)を見出しながら今日を活き行く論駁の実施を流行に対して強要始めた。無色の空白が程好く脳内(あたま)に伝授され行く頃から俺の行進は他所を見つつも翳りを知って、見果てぬ宙(そら)の闇内には己の分身が又程好く気配を澄まして微動するのを身内で知りつつ手内(てうち)に投げつつ、明日(あす)を夢見る司教(ドグマ)の訓(おし)えは勲功点した形成(かたち)と成る程俺の体熱(おんど)を捉えて行った。俺は束の間独歩(ある)いた死活の内を活路を見出す嗣業に感けてその身を萎えさせ、透き通る煉瓦の町の砂塵(ほこり)の内では不敵に拡がる堂屋(どうや)が在った。力任せに人を引き寄せ、その癖その詳細では古風の習わしに従順を重ねた過剰を呈し、その不動の趣の内には性質(ひと)を化(か)えないドラマが在った。
 時制に過去を掴まれ大層長い未来(さき)へと続く懸橋(はし)の上をゆっくりのっそりのろ歩く俺の姿勢(すがた)をこれより無い程従順に仕立て上げ得た未開の審理へ首肯し行く法則(さだめ)の群象(むれ)は、俺の教理(ドグマ)に一方近付く足引きの診断を掲げて武装を緩めて、悟りを有する作業の遮断を亜硫に属した俺の自然(せつり)に程好く解けさせ、俺の両手は時間を掴んで又大層長い魅惑の園へと邁進して行き孤高を重ねる信仰(ドグマ)を知った。無想の内にて華(あせ)を掲げた有限の真理の程度(ほど)には束の間微笑(わら)ったオルガが居たが故無く蛻にされ得た未行(みこう)の助成に頭(かしら)を温め、時空を喫する社(やしろ)の内には未開を手にした主(あるじ)が在った。俺の心身(からだ)は束の間ながらに静寂の狭間を独歩して行く。
 時を静止出来得る能力(ドグマ)を採って女が織り成す狭筵の内に未だ羽ばたく未開を知りつつ、感じ入っては震撼止まらぬ無行の修行に苛みつつも興味に先(せ)んじた我の四肢(てさき)は横這いながらに目前(まえ)へと行進(すす)み、三つに並べた生娘(おんな)の尻を具に盗んで体熱(ねつ)を崇めた。すると女の尻(じり)に止まった冷ややかな魅惑の上肢はすらりと翔(と)び立ち、淡く散(さん)した無数の黄色照明(シャンデリア)の陰にするりと侵入(はい)って目には企画を灯す。俺はこれ幸いと手中に押えた緩い縛りに身を定めて今では乏しい大人の玩具を熱情鳴るまま心内(しんうち)に兆して下肢を攻め遣り、女性(おんな)の唾液は又悉く床を舐めつつ自身(おのれ)を散した。その散らばる身片(しんぺん)の一身が俺の頭上まで来て日陰を作り、陽(よう)も無いのに照明(あかり)の効用だけにて始終を費やし総身(おのれ)を熱して、華汁(あぶく)に咲いた一端のオルガを無能に帰す程豪華な希望(あかり)を俺に呈した。そのまるで業火と化した身の火照りは何時(いつ)しか快楽へ呆けた俺の信仰(いしき)を運び、屋外(そと)で散らばる人間(ひと)の孤独を細かく砕いた後(のち)には地面の迅速成る凝固の襲来に視線(め)が行き意識は富(と)んで、何が何やら順序(せつり)の解らぬ快楽への歩道が立派に立たされ体温(ねつ)を灯した。白色に成り行く漆喰の黒に各自(おのれ)を映した彼(か)の飲食店での人煙(けむり)は体好く片付き、密室成るまま暗黙に付せられ得た外界(そと)の摂理(ドグマ)を内心(こころ)に懐柔して行き、英語を話せる超人(エリート)達が各自(かくじ)の所業に就き出した後には孤高に活き行く俺の拍車は路を固めた。少々古びれてもいる床と椅子とが重なる際(きわ)には、まるで金属音の発せられ得るイタリアン食堂を見る。薄暗く灯った室奥(しつおく)の壁には一彩(いっさい)の明かりも無くて小窓(まど)も無く、打ち建てられ行く姿勢の儘にてロビーの灯(あか)りが代わりと成った。客席へ品々を運び行く給仕人(ウェイター・ウェイトレス)の姿は束縛されずに美しく、嫋(しな)やかな足取り鳴るまま自分の役目を正しく捉えて、時には鬱蒼と茂った密度の内へと肢体(からだ)を隠した。所々で成人(おとな)の鳴く声がすれば店の様相(うち)ではその細部に至るまで活気が根付き、給仕を纏める長子(チーフ)の姿勢(すがた)もイタリアらしく身軽に跳び撥ね金銭(かね)の行方を平行しつつも客への対峙は見事であった。又所々に抜け落ちを病みつつ荒くれが参(さん)する悪寒が在れども未熟に輝(ひか)った主(あるじ)の額(ひたい)とクロスの敷かれた茶色の机上が程好く受け得た照明(あかり)を包んで熟(じゅく)して返し、その都度隅へ追い遣る対処の処方は嘗てマニュアルでも在った様(よう)に常套に活き、壁を呈した。その壁には出入口(くち)が在って、照明(あかり)と人との往来を束ねながらやがては満ち行く流行(ながれ)を呈した。呈し終えた矢先に在った俺の来店である。
 先程見知った三人娘の好く肥えた尻が未(ま)だ出入口付近にうろうろする頃、まるで遊園地のアトラクションを連想(おも)わせ得る構えを呈した門の前後(あたり)は、変らず人の混みに現(うつつ)を抜かして不動として在り、そのうち不変を訴えそうな流行(せつり)の喚きを俺は知りつつ、唯、目下、目前(まえ)に落ち得た三つの女尻(めじり)に食い入る程度(ほど)の視線を講じた俺の姿勢(すがた)は女の知る処ではなく、寧ろ永遠に背後を奪(と)った奇人の如くに立場(どだい)を固めて微動も動かず、明日(あす)が来るのを頻りに待った。生娘達は何時(いつ)もの俗世に生じる奇声を唱(しょう)して姿勢を構え、俺の方へは一切向かずに解放され得た未熟を表情(そと)へ向け出し体温(ねつ)を鎮めて、俺が独走(ある)き出すのを待ってた様(よう)だ。唯この生娘(おんな)達だけではなく、漆喰に彩(と)られた防御の家具も店主も給仕も、そこに集った総身の姿勢(しせい)は一連にして俺を許容し速度を緩ませ、揺蕩い捏造の果てには通りで期せぬ色惑(いろわく)の優雅が滑走始めて、魅惑の主(あるじ)は紺色に仕立てた上下肢(スーツ)を束ねて俺に着せ、挙句は皆が静まる狭筵の規模にも予兆が芽生えて、小鳥の音色(ねいろ)が澄んだ眼(まなこ)へ映るようだった。景色は一転三転しつつも施得(ピント)を見定め、必ず成就を束ねる代物(もの)だと情景(こころ)の宿りは功を逸した。
 俗世を痛快させ行く旧来の女子は懐に忍ばせ得た拳銃(けいかい)を逸した儘にて俺の手中へ転がり込んで、微動だにせぬ一身の首謀(あるじ)を俺へ預けた儘にて、次に転がる展開の裾を微かな気配に呑ませた術に自身(おのれ)の欲動(よくどう)の一切(すべて)を燃やしてきょとんとして居り、一切背を向けた体動の芯には俺を兆して根暗を暗に模した儘主張を続ける。三人共が大腿に脂肪を塗して燃やす一介の香女(かじょ)である。三人並んだ生娘の真ん中に立った女性(おんな)の裾を、徐に運んだ両腕に任せてぐいと挙げれば、純白に満ち得た布の臀部が表情緩めて視界に降り立ち、のたうち回る俺の心拍の程度はそれでも意外と冷たく光って科学と愛し、電光に映った曲解の舞踏を故無く吟味したまま又次なる欲動を待って粋に鎮み、次は布を払って美肌を偽る女芯(にょしん)に達した。尻餅を交互に拉(しだ)いて左右へ開き、密にして黒々光(てか)った潤沢の小波(こなみ)は如何でも変らず不要に動かす、いざ塒を保(も)とうと急進に迫った色の砦は黒色成るまま白桃を呈し、異臭を散(さん)する不治の樹海は俺を襲った。小穴と大穴との狭間に蠢く回生の骸は一切衒わず嗣業を収め、魅惑を喫した巡業の主(あるじ)の様に〝数撃ちゃ当たる鉄砲〟を携え奥地へ籠り、籠った異臭は散弾の様(よう)に俺に飛び入り実を濡らして、聞えの悪い愛言葉(まなことば)を以て俺の思惑(こころ)は時空を束ねた気楽に徹して刺激に奮(ふん)し、躍動収める苦悩の在り方の方へと余力が活性して行き、〝これで終えては蛇尾に伏する…〟等と暗黙の眼(まなこ)へ誓いを立てて馳せ跳ね行く未業(みごう)の成就は息災を得た。唯男故の女性を興じる眼(まなこ)が彩(さい)を牛耳り、何処にも点ずる数多の快楽が端身(はしん)を束ねて欲情しただけの結果であって、殊勝を講じるとか奇才に絆され得ただとか英気を留める代物(もの)とは一切離れて群緑に萌え、尽きる程の疾走を奏でて賽を投じた程度の表現(あらわれ)である。〝女性(おんな)への興奮・本能の躍動〟をより大事にしたい、と成り、夥しい骸(ふるぎ)の数々を場面に応じて仔細を束ね、行くは果てるも思惑(こころ)の内では一体(ひとつ)に輝(ひか)った寝屋を講じた。
 次に自身の能力に就いてであるが、その場を配した魅惑の腕力(ちから)は一端(いっぱし)の技量を呈して成るものではなく、況して俗世を通感せしめる女性(じょせい)の窮地に男の世間が無視する程には浮き足が立ち、一見危うく見得るその静止の時間で、俺と女子との空間(きょり)を知ろうと環境(まわり)へ注意を配し始めた。白山(アルプス)に公言を束ねて放る如くにこの三人娘(むすめ)達への基準は余白を呈し、沢山の男の見る目を曇らせ行くのは目下自然の原理だと環境(まわり)が言うから俺は俺にて紅潮(ほてり)を抑えてついその気に成って、止めども無い程悪行(あっこう)の限りを尽せる不埒な輩へ魅惑の主(あるじ)は変化させ得た。そうした熱気の軋轢へ追従する程三人娘(むすめ)達を取り巻く白霧(はくむ)の鮮度は折好く塊りその総身(み)を澄ませて行って、一片の曖昧(うそ)も無い程洗練され得た満足の気象成るまま火照りを活して煩悩(なやみ)を打ち消し、所々に現行(リアル)を散らばせる程垢を成長させ得た。まるで変人・奇人と化した俺の憂慮は何時(いつ)しか見果てた或る挑戦への断行を眼(まなこ)に抑え桃源を慎み、包んだ理想は一層手中に冴え行き体(からだ)を突き出し鼓動と躍らせ、女性(おんな)の自然(せつり)に愛着し出し、思惑(こころ)は何時(いつ)でも成熟(おんな)を想った。三人娘(むすめ)の身辺(まわり)を見遣れば白霧(はくむ)に解け入る風流(かぜ)は止んで自然(せつり)を留(とど)め、その場凌ぎの節操を振り払える程度に時流(とき)は止った。薄ら黄色に輝く人煙(けむり)の正体とは始め人人の吸う煙草の物かと見遣って居たが程好い白光が窓(そと)から入ると料理や砂塵を上げた人の血相を取り巻く吐息(いき)だと分り、追随行く儘薄ら解け入る人間(ひと)の輪の内で頭(こうべ)を擡げて暴れ果て行く人力の拳(こぶし)が空(くう)を切って地面に着く頃、到底尋常では無い非常の奥地へ入(い)ったと誘導して行く環境(まわり)の箴言(ことば)に魅了を憶え、俺の感覚(こころ)は〝大丈夫だ。〟と確信して居た。
 悠々時流(じりゅう)が身の程変えつつ俺の脳裏の奥へと遠ざかって行く頃次第に薄れ行く白霧の遮りは小窓を呈した家屋の明かりをすっと潜(くぐ)って固陋に跨り、明日(あす)をも見果てぬ抜き打ちの魅惑(テイスト)を、足場を程好く固めた俺の感覚(センス)へ解け込み行かせて、馳せ行く惨事に終止を付け得た。皆俺と三人娘(むすめ)の周囲(まわり)で微動を許さず兆しも報せず、突発的に明度が差し込む気象の行方を捜査して行き、古豪に満ちた俺の観覧とは又遍く故郷を鋭く捉え可笑しみ控えて、白日に添え得る人道(ドグマ)を発した。俺はそれ故突発的成らぬ平常の内にて自己も操る手綱を分捕り、活発鳴るまま至極の期する末路を逸した。そうして一段飛躍しようと向上(ゆめ)を見た時梯子を外された俺の欲望は段から外(ず)れ落ち、当面下界を知り得ぬ散路(さんろ)を奥手に根絶やし見積もる一線の糧なる尽力の舞踏(ダンス)の結路(けつろ)は、一線を退(しりぞ)く間も無く苦境に絡まり志向を労して日常に束ね置かれた主線の在り処に目早(めばや)く位置して、頑なに散った公共の手段を呑もうとしていた。バスの内や電車の内でも、或いは施設の内や野外の内でも、自身を訝る思惑(こころ)の内にて到底出来得ぬ飛躍の温度を上昇せしめて防御(まもり)に着くには至極の節操を壊して打ち果て行く覚悟が要って容易にはなく、公民扮する数多の表情(かお)を潜めた我が一介の骸の阿る傾倒(ゆくえ)は視線を外した未開の中央(あたり)に充満し得て俺の躰は抑揚を欲しがり、〝時を止めれば健常人とも対等に手を取り余裕も芽生えて、算段付かせぬ死力の活路は行く行く余った勝利を勝ち取り孤高を把握(とら)え、尻切れ蜻蛉に終った過去の醜態等には再度(ふたたび)衒った詩吟(はなし)も出来る〟と得意気にも成り有頂を知って、俺の在り処を始終尽きせぬこの動静の内にて捜し廻った。
 そうして得た能力を一つの目処とし確立図れば、人の煩悩とは又更なる欲求講じて新たを欲張り無い物強請りに長子を得て尚、過去・現在・未来を気儘に息(いき)する能力(ちから)の程度(ほど)を隈なく見定め実を囀り、我が身の行く末を諳んじる程豪を解かした気色が羽ばたく。又時を巻き戻す能力(ちから)を腕力(ちから)付くで欲した俺の迷路(いしき)は知らぬ内から前進して行き、行き先定めぬ未開への接触に旅程を成したが一向萎え行くオルガの境地は逡巡違えぬ路頭へ迷い、知らず内から有力に見定められた俺の活歩は歩数(ほかず)が増え行く儘に肢体を垂らして尽力に仰いだ嫉妬(ねたみ)を逸した。嘗てパソコン機能のユーチューブに観た「え~~、時を止める・動かす能力しか無いんじゃないかなぁー!?」等一糸纏わぬ散弾の骸に元気を発して過去を逸した漫画家・荒木氏の珍妙振りが如何にも身振りの遅い稚児に見えつつ湯呑を割って、結局俺には過去を阿る一切の魅力に尽き得たのを知り、何処まで行っても活性成る哉、明日の試算は苦慮を要した。そうする間も無く勇気に徹した朴要人(ぼくようじん)等は何時(いつ)しか衒わぬ様相(ふくそう)を呈して燥(はしゃ)ぎ始めて、俺への微笑(えがお)は何時(いつ)果てぬと見ぬ新人の誤算を窮して身を引き再び尋ねて先程俺が、否、俺を訪ねた三人娘(むすめ)の喜楽に荒廃を見つつも打算を講じ、見積もり嵩んだ拍車の人渦(じんか)に拡散して居た。娘の局所は打算をせず儘何時(いつ)しか逸した華(あせ)を熟(じゅく)して尿臭携え、大穴へ辿る間も無く血肉は内に講じて血流(ながれ)の意のまま臭(しゅう)を散(さん)して打柵(ださく)を講じ、行くは刺激が功(こう)する突槍(とつやり)を意のまま操り俺を突いて操(と)り、果ては俺の眼色(めいろ)は色彩に乏しく三人娘(むすめ)をその外景に射止めて実(じつ)を味わう。魅惑に打ち敗け、その泡手(あわで)に滑った女実(にょじつ)の果(さき)には、限りの在るまま生命(いのち)を掲げた俺の詩吟は長じて、些末に転じた哀れな実(み)とも、奈落へ吹かしたヘブルの暗号(てい)とも、程好く貶められ得た加算は生じて個を発し、連れて返った魅惑の長子は行き過ぎもせずまま俺の調子に見積(ピント)を合せた。
 それから随分時が過ぎ行き、北風が豪と鳴った。結局外れた見積(ピント)は黄色く咲いたまま体(てい)を失くして孤高に畝(うね)り、身を廻転(かいてん)させつつ明日(あした)の武装に阿った後(あと)で少女(むすめ)達を裏切り、遠くで聞かれた汽笛の様にその明度を安く講じた。故にその見積(ピント)が在った残り香(が)のような場所からも、未熟が格好の犠牲(えじき)と成った現在(いま)では三文芝居を興じ終えた猿楽への挑等も如何にか斯(こ)うにか嗣業を束ねて費やす俺の胸度(きょうど)を素早く越え、果ては打雷台(だらいだい)に打ち添えられ得た独我(どくが)の独楽(こま)をぴんと弾いて二色に廻し、廻り行くまま俺の躰は境地を出て居た。再び同じ夢想(ゆめ)へ向かって闊歩が出来ず、白い紙面の内に打ち添えられた窮境に活き得た微かな美談などはその白顏(しろがお)に一向赤味が差さず、何時(いつ)しか時流(とき)の行く末が頭(かしら)を擡げて己の要(かなめ)を皆の前にて公言した時、俺の骸は着せ替えられた狼狽の彼方へその身を沈めて不純を逸して、時制(とき)の行く儘向く儘、自然の内にて構築され得たシグマに対する杖(あし)の如く、その身の気性は温味(ぬくみ)を潰えて仮装を見破り、同じく明日(あす)の為にと丈夫と成った。明日を夢見て体(からだ)の重さが次第に一世の惰性に阿り打算を食して運行する頃、到底兆(ひかり)の見得ない人人の労苦が罵声を捉えて糧とし、自身(おのれ)の寝床を明度に引かれた徒党に見抜いて足場を立たせ、自分(おのれ)の主張を打ち消し行く時、俺の眼(まなこ)は自然が講じた算段の内に方向(むき)を捉え躍動し始め、白色に靡いた鮮度の群象(むれ)とは道分れ行く儘オルガを欲した。尽力に途絶えた初夏(はる)の暁ばかりに生じた夢想(はなし)。
 有名人なる桜井千里が自分の栄華を過去へ投じて身の粉を費やし、所々で燻り燃え行く華(あせ)の回路が又唐突に主張(ゆめ)を絆す頃には裏触(うらぶ)れた遊郭へ潜んで兆(ひかり)を睨(ね)めた瞳の固陋は生粋を知り得て、悠長表情(ゆうちょうがお)した徒党の主(あるじ)に又すっぽり被(かぶ)った宗匠頭巾(ずきん)を呈して刃(やいば)を潜めた自適の躯(からだ)を苦行に乗せては闊歩させ行き、路地(とおり)の外れで巡行して居る。一度はTVの世界から干物と成り得て昔話に時折り姿を見せ行く老爺と成れどもその額(ひたい)の皺には又幾つもの屍(かばね)が見定め置かれて、俺は行く行く彼の巡行(ながれ)を見て居たけれども、未だに熱心(あつみ)を絆した白色の慇懃には天下(せけん)が表情(かお)を背けず、見守る無業の許容(はんい)に単身(み)を束ね行く千里(あるじ)を知り行き、如何にも解(げ)せない芥(あくた)の舞進(まいしん)に結果を求めて始終奮闘し行く千里(あるじ)の労苦を片手に掬い、孤島に居座る未熟を欲した。幾ら待てども、逡巡から成る不敵な各自の相(そう)に於いても、一向に交わらない夢想(ゆめ)の純化を知り行き胡散を吐いて、俺の躰は目下流行(なが)れる試算の上に単身(み)を横にした儘寝そべる体(てい)にて彼の欲した矛盾を見て居た矢先に突風(かぜ)に吹かれ、明日(あす)を束ねる巨大な骸に総身一切を売却した儘彼(か)の静寂(しずけさ)成る無業の起信(きしん)に忘却した後(のち)、悉くに剥がれ落ち行く鱗を知って引退して行き彼(か)の有名人とは俺の余震に住み入(い)る形と身を成し始めた。所々に胡散と咲き得た未信の華(はな)には到底小言も咲き得ぬ風来の灯(ひ)に焼かれ行けども、総身を衒った順曲な筵は遠く羽(は)ためく蜻蛉(かげろう)の体(よう)に不順を重ねて夕日に落ち行き、悉くを一斉に乗じて燃やし果て行く始動の最後に朴念を起(き)し、水産から成る白日の妖夢(ようむ)に程好く落ち遣る魅惑の停止が過去の結界(ドグマ)を素早く隠して、泡(あわ)に帰し行く寵児を採った。凛とした屍(かばね)の祠は竜胆の咲き得た思春を捉えて分業して行き、果ても知り得ぬ奇怪な青春を老爺(あるじ)に返してその場を閉じた。結局氏が一体何に対して奮闘したのかその一方を知る由さえ失くして俺の高利は自然を睨(ね)め付け、明日を返した。次第次第に夕日が傾く一介の主(あるじ)に咲き得た巡業の末路(さいご)であった。その経過を知るのは幸先良くなく閃光の翳りを遍く四旬に打ち返す事態(こと)と同義に成る為姑息を呈し、俺は勇気を鎮めた。
 鬱蒼と茂った闇雲な無業の局地の内より自然に小波(さざ)めき立った四旬の経路を介して出て来た老爺を偽り、逡巡衒った過酷な体裁を四方へ照らして途方を返せる教義(ドグマ)を手にした一介の紳士が興を連れ添い俺へ傾き、俺の理想を奪った眼(まなこ)で明日(あした)を造って静かに立った。立ち得た境地は俺の自然を力強く揺さぶる目下の流行(なが)れの頭上に咲き得た豪華生粋の勝負を産した廊堂(ろうどう)の様(よう)であって、兎角水を呑めない商人(あきんど)達が泉を求めてこの流行(ながれ)の麓へ下りて来るので、俺の眼(まなこ)は一瞬彼が老獪紳士に見得つつ遍く故郷をその手に汚(よご)した玄人(あわれ)に見得て、彼の立場が何処に在るのか実質のところ分らなかった。唯言える事には彼の素業が嘘を吐かずに素直に置かれて、純度の高低に疑(ぎ)を付さない破砕の系(けい)だと暫く擁した正義に掲げて張れるものであり、その体裁に纏わった嗣業の体裁等にも一点に無い魅惑の奥路(じゅんろ)を果て無き眼(まなこ)に落し得る高徳を擁している、というものが在り、嗣業に突かれた俺には早天成れども彼を射止める真価を欲した無垢の兆しに唯一点欲する嗣業の骸を馳せ参じた事態(こと)には相違(かわり)無く、明日(あす)の我が身を知り行く兆しは丁度この氏が常々呈した巡業の骸を程好く解いた時期(ころ)には恐らく仕上がる、と韻踏む体(てい)にて確信(おもい)を踏んで、一介に咲くあの竜胆の欲望成る儘静かに拝した。翳りを知り得ぬ初夏を馴らせた頃合いの夢想(はなし)でもある。
 俺の元職場に居た老獪極まる無業の華(あせ)に今日(きょう)を夢見、明日(あした)の為には何にも懸命と偽り終えた永田という男が俺の目前(まえ)にて荒く佇み、起死回生への本塁打(ホームラン)を打とうと画策しながら、出版業に携わり日業(ひぎょう)を呈する一介の給料取(サラリーマン)に化した事実(こと)を俺に伝えて、運好く運行して居た自分(おのれ)の罷免が数多を駆け得た経験(かこ)の大成成るを暫く静視し俺と見ながら、自分の過去作を連々(つらづら)並べて無重の机上に一杯にした後(あと)、次の候補作の出来栄え等を俺に講じた。俺の方でも漆喰に塗られた黒色の畝(うねり)が木目を越え行き程好く照輝(てか)り、殉教し終えて自分(おのれ)の未熟を失くす事には執拗の程度(ほど)を超えていたので、この話に届いた際には永田の半生が程好く妬まれ、如何にか俺の領土(ぶんや)に生粋成るまま新芽が芽生えやしないかと、屈葬に畳まれる程未熟(あわれ)な貞子(ていし)に顏を見上げるように願い始めて、俺の細工は程好く崩れた。何でも永田は自分(おのれ)の版元に中国人が開拓し終えた安会社(やすがいしゃ)を起用したとの事にて追随重ねる版への注文にはもう幾度の催促を超えて自分(じぶん)の企図を講じたけれども、一向に満足し行く出来の程度(ほど)が身を細める儘にて成り立たず、如何でも苛つき加減が表情(おもて)へ出る程眉が下がる環境(うち)に在ると言う。「滅茶滅茶むかついたわ」と俺にぼつぼつ話す永田の姿勢(すがた)を見れども俺の胸中には容易に散らない紅の算段が燃え行き、明日(あした)を映し出す夕日を見ながらそう言う永田の姿勢(すがた)を一掃し得て、小言を受け取る夕陽の向こうに我が身を隠した。如何にも明日(あす)への算段を独占し得ない安い悠長に身を浸して行けば、〝本を出す〟という新たな一段(ステップ)を偽る事には全力が行かず、反省した矢先ではこれ迄の司業の骸が破れて殉教等には興じられぬ現実(リアル)が再生(い)きて来るから如何にも斯(こ)うにも折り合い見ぬまま風の来るのを待つ身に伏せ行く。妬みが嫉妬(ほのお)を呼び寄せ風が吹いても気付かぬ程度(ほど)に航路の出足は孤高を貫き、努力を重ねた自我(わがみ)の臭気は一歩(いっそう)したまま妬みを配して、孤独を拝した苦慮の講じる算段等には即座に破られ行く程脆弱(よわ)い孤独が魅惑を並べ、三文芝居を疾走しながら不出来に講じる足りない遊路(ゆうろ)は何処でも見られる無損の長寿を全うして居た。又過去(これまで)に於いて悉く合点(がてん)の外(ず)れ得た永田と俺との始点の相思を軽く捻取(ひねと)り孤独に見遣れば、つい昔に怒った永田の表情(かお)等真綿に包まり跳ねて来るので、俺の懐(ころも)は即座に破けて体温(ぬくみ)も落し、冷えた永田の無機な肢体を片手で捉えて煩悶させ行き、小言を並べて明日(あす)の孤独の為にと不性(ふじょう)から成る浮き足の具合(ほど)に目頭(めがしら)立てて詰問して居た。やがて終着の見得ない星の歌には烏の飛び行く孤独が影響(から)まり死相を連ね、一介成るまま俺の政治は永田(かれ)を怒った。
 賭博の様な駆け引きが既(すんで)の所で引き締まり、独創(こごと)が阿りを忘れる頃には何にも書けない馬鹿が居た。白色に乗じた地味なコンクリの下では到底眠れ得ぬ不可思議な游来(ゆうらい)が涼風(かぜ)を押し退けて夢幻想(むげんそう)の内へ侵入(はい)って来ており、束の間贅沢に過ぎた木霊の様な地中の発散(しぶき)が身の程を体好く締めると、果ての見得ない現実(そと)での困惑が又常時照輝(てか)ってしどろもどろに運行し行く独我(あるじ)を連れる。今後も幸先知り得ぬ永久に続ける程度の嗣業にその身が捕われ始動に潜み、俺への伝来物とは又全て虚空(そら)から来る貢物だと固まり始めて、失敗重ねる俺の右手に絵筆(ぺん)が酩酊(まよ)い始めた頃では俺の頭脳(こころ)も浮(ふ)わ浮(ふ)わ遊覧(うか)んで地面を離れ、目下地中に流行(なが)れた血肉の栄華を程好く忘れた頭(かしら)の心は、到底虚空(そら)から阿(おも)ねた未来(さき)を示さず、明日(あす)の苦悩の内へと飛躍した後(のち)咄嗟に失せ得た。白色銀貨を帽子へ隠して止まる事無く司定(してい)を欲せば、独創(こごと)も何時(いつ)しか闇内へと総身(み)を束ね行く凡欲(ぼんよく)の密度を空掻(からか)いに伏せさせ、度緊(どぎつ)い仕儀(ドグマ)にそれ以上の無欲の蝙蝠を煽り得ないで、唯正直(すなお)に身を賭し小声で夢想(ゆめ)の在り処を連想して行く従来の俺の形成(かたち)に芯も環境(まわり)も変身し得ると、怒涛の都会(みやこ)で顔を洗って明日を束ねる寝台(ベッド)に倒れた。力脆弱(ちからよわ)くか細く躰の体温(おんど)を無視した俺には既に白紙が講じた未開の無欲はほとほと消え失せ無効を吠えて、明日(あす)を生き行く知人の成果が又悉く憂いながらに俺を総じて突き行き、未知(さき)へ独走(はし)った我が名を愛した。氷が凍る程に頑なに晒され得た俺の境地(さむしろ)にはまだまだ捕まり切れ得ぬ土工の過失(ドグマ)が都会を離れて土塀に降り立ち、危うくロープを跳び越え思想の郷里を微塵に衒わぬ一介の震度に晒した後(のち)には他人の噂は俺を見ないで地獄へ落ちた。透明器具さえ震えを点さず灯りも点さず人の頭脳に生え来た孤奏(こそう)のシグマは地獄の闇内より甦った交響打(シンバル)をその掌(て)へ隠して真摯に憑かれた独身(わがみ)を信じ、孤介(こかい)に生き行く有事の姿勢(すがた)に程好く打たれて雨天を兆さず地中へ落ち得た。まるで大天使とも人に称され、この世の麓で聖典に魅惑を覚えた人間(ひと)の骸は孤奏を携え一見(ひとみ)を閉じ行き、何も真理を保(も)たない儘にて白目(しろめ)に咲き得た勇者を愛した。男は女を、女は男を、自ら作った構図の陣中(やかた)へ暫く射止めて快楽に依り、徒党を組み得ぬ信者の君主(あるじ)を名を貶めた。態々退引(のっぴ)き成らない信者達の振袖の内にその身を透して台詞を吐き行く牧者の群れ等は凡そ硝子ケースに身を透かされ得た深緑の連想(ドラマ)を体好く映して未開へ奏でた自然の成す空想(ゆめものがたり)に感傷(いたみ)を得て居るに過ぎずに、それ等を恰も事実に拾った無言(たから)だからと高所へ掲げて拝する等は床しき愚かな滑稽に端身(み)を束ねる事にて、淡路、独創(こごと)を連呼して行く競争(ドグマ)等には生粋(もと)から咲き得た人間(ひと)の安堵(おんど)が縛られて居ず、屈曲に満ち行く感傷(いたみ)の道標(しるべ)に唯その身を潰えただけだった。
 俺は此処まで嗣業プログラムと題して渡航を介して饒舌を苦しめ、仄かにでも俺の生粋(もと)から彩(さ)き得る嗣業の古郷(ふるさと)とも呼べ得る存在(もの)を右手(このて)に牛耳る為に、と白紙にぽんぽん名を連ねて来たが、既にその固有名詞とも成る奇怪の単語(ことば)は仕儀を外れて融解しており、融解先の涼風(かぜ)の内には俺のみを癒せる業(わざ)が彩(い)きつつ他人(ひと)を排して、何者にも満たずに慣れない孤高の文成(ぶんせい)なるものを喫して生じた。オレンジ色した丸い煩悩の火玉(ひだま)の行方を事変(こと)に乗じて変改し行く程度(ほど)にこの総身(み)を預けて、預けた歩先は廻転激しい思考の游路で在りつつ程好く冷えて在り、黒縁眼鏡を得意に仕掛けた学士の歩先が転々眠った獅子の如くに破行(はこう)を吟じた。幾つもの志向の参議(ドグマ)が程好くこの温度(み)を現物(うつしょ)へ返して、燃え行く思考の連動(ドラマ)は準じてその実(み)を立てずに苦行に有り付き、他(ひと)を知るのも様々(ようよう)億劫を知りつつ禿(かむろ)を裂いた。暗い夜道だったか、昼にも朝にも咲き得ぬ新曲の波長が程好く延び行き奇怪の音頭が暫くその端身(み)を擡げて悠々澄む頃、都会の喧騒等は否でも離れ得るまま脆弱に静(せい)した広道(みち)が表れ、俺の巡行(じゅんぎょう)は唱導(みち)を呈した幼児に灯った。純情にも不純にも翳りを知り得ぬ孤高の幼児(あるじ)には俺が住み着く空白(スペース)も無い程惰性に捕われ、主義も思想も音頭に満たない嗣業の旋律(ドグマ)に狂わず真向(まむき)を捉えた視点の果(さき)では、先程まで表れていた親父を映した。俺の親父は技工に優れたあらゆる理学者(スクーター)達から小さく実った有志の疑惑にちょこんと据え置かれた始動の主(あるじ)を配置し、遍く人影から自然が発した小便(あめ)と雷鳴(おと)とに素早く感知しその総身(み)を射止めて、俺に還り咲き行く孤動(こどう)のクンニを執拗なるまま埋めて描(か)いた。思い付くまま俺の仕打(しうち)は幼児(こども)へ向かず親父が呈した有志に向かって正純束ねる未知奥(みちおく)の砂とも振手(ふりて)に翳した禿が発し、如何とも操(と)れ得ず微笑(わら)いの冷め得た渡航の使徒(あるじ)は役目を終え行く再吟(さいぎん)と成ってその総身(み)を賭して、初めに彩(さ)き得た故郷の男児を程好く包んで魅惑へ配し、嗣業の古郷(ドグマ)は精(せい)を排した。
 一介と成り得た俺の父親の裾には十二分に注いだ雨の溜まりが疎らに咲き落ち地面を照輝(てか)らせ、沈んだモルグは有益害した人間(ひと)にとっての致命と成り着き、安楽死体の清(さや)かな表情(かお)には四旬ががめ得た濃潤(こじゅん)が徹した。行く行く降雨はその実(み)に激しさを付け、付け入る隙無く街を叩いて、広道(みち)は見る見る内に瞬く間(あいだ)に小さく細く縮小され行き、驟雨を束ねて虚空(おそら)へ返す懐かしくも固い臭気が環境(あたり)を抱いた。程好く火照りさえ吹く包容(ぬくみ)の内には幼児の表情(かお)から暫く見ない煩悩の末期(まつご)が松明手にして出て来たようで、明度(あかるみ)に献身して行く頑固(ここう)の猛者共には歩き慣れなく塗装が敷かれて逡巡を排させ、無垢(ピュア)な設えの固身(かたみ)の温度は到底逆行し得ない修業を重ねて殻を脱ぎ立ち、徒争(とそう)を讃えて、静かな遊びへ興じる姿勢(すがた)を俺に灯し得ていた。雨が佇み、雷鳴轟く最中(さなか)の街を広くも狭く感じる小路(みち)を徒歩(ある)いて吟惑(ぎんわく)の砂地の奥まで沈み行く頃俺と幼児と親父の姿は又始めに灯った琥珀を象り、嗣業に転じて、各自の成る身内の在り処へ還って行った。次の目的地とは既知の物にて親身を象り、幻惑染みた一介の術(すべ)にも見事な程度(ほど)にて悪行を牛耳って居たが、実の処は意識(きもち)が離れて遠くに置かれて、正味を隠し続ける未開地だった。そこまで行くのに徒労を覚えて三人様の独創(こごと)は連呼を重ねて一塊(いっかい)と成り着き、咲き得ぬ信者の孤島の群々(むれむれ)が何処へも行き得ぬ思考を転じて憂慮を決め込み、沈黙した連動(ドラマ)の上では、到底解け得ぬ試算の抜殻(むくろ)が様相烈しく長けて揺れてた。俺はこの幼児(こども)を全く知らない。
 行く先々にて駄菓子屋、水屋、塗装を忘れた未開なパン屋、浄瑠璃屋、産屋、古参屋、仕立屋、玩具売り場にスウィートの貸し店、等が夫々表情(かお)を見せずに佇み降りて懐(うち)を温(あたた)め、内(なか)に入れば幼児の喜びそうな余りある大挙の加熱が良く良く期され、俺は恰好を付けてその内どれかを我が物とした後幼児(こども)へ遣って、跡を包容され得る仔細に乗じた。そうした俺の頭上、否そこへ集った三者の頭上に、破廉恥とも黙され言われる爆音(らいめい)の源(もと)が飛び立ち暗空(やみ)を発して、飛び立つ俺の躯(からだ)を既(すん)でで捕えて地面に立たせ、地中に落ち得ぬ梯子を参じた。俺にとっては心地が好い為揮う躰をそこへ温(ぬく)めて、苗床染みた古巣の参路(さんろ)を無頼に踏み行き、流行(なが)れる思考(からだ)は俺の両脚(あし)に射止めて山海(しぜん)を独歩(ある)かせ、主体とも成る幼児の襲来等には億尾も保(も)たない独創(こごえ)を配して無色に成り行き、俺の眼(まなこ)は美華(びか)を知った。丈夫な気向(きこう)を程好く保(も)った俺の参路は陽(ひ)の届かぬ翳りに在る為前方(さき)をも知り得ず、幼児から得る自分の讃歌を体好く見棄てる試練(わざ)をも見付けて襲来を発し孤高を呈して、夢想(ゆめ)の居場所を探す間際に彩色(さいしょく)知り得た落度の暴来(ぼうらい)を瞬時に射止めて繕い始めて、先程(さき)の勝負は暗空(やみ)に紛れた。
 落雷の強襲等には分(ふん)と保(も)たぬ人身なれども我等は束の間ながらに仄かに雷鳴(たかな)る四旬を独歩(ある)き、何時(いつ)か見果てぬ安堵を手にする故郷の吐息を辿って群象(ぐんしょう)知りつつ魅惑へ向くが、行路を呈した街の港は人を寄らせず平地を見せ付け、到底咲かない人人同士の生活行程(せいかつもよう)は凡そ立派な表情(かお)して厄日を数え、仔細を訓(おし)え、余韻も伝えて、焦げ茶に咲き得た落雷跡の大樹の表情(もよう)を次第次第に大に呈して試算を呈した。大波小波は同じ表情(もよう)で白波(しらは)を呈して小町を牛耳り、独占して行く巷の空気は凪を見ぬ儘人の間へ解け行きその実(み)を叫んで、酒とは凍る程に冷たいものだと溺れる間際に水から身を引き、温味(ぬくみ)を具えた萱の懐(うち)へとその身を具えて待つ処を知り、飴屋(あめ)も駄菓子屋(だがし)も打たれ弱い儘嗣業を重ねた老舗の主(あるじ)に凡とされ行く退屈(ひま)な塒を借りて、上腕(うで)錚々に視界を牛耳る自然(むくろ)に捕われそそくさと逃げ立ち、明日(あした)は明日(あした)で塒を借り行く渡航の海鳥(とり)に我が身は化け行き寒さを対して唱導主(あるじ)を見定め、結界張られた奈落の底へと茶知(おもちゃ)の如くに身を化(か)えさらばえて行く。老いに窮した俺の躰は女神(おんな)への再生を期しつつ人目を外れて凡界(ぼんかい)に立ち、孤高を外れて群象(むれ)を採りつつ腰掛け程度の歩速は用を足し行き、如何でも〝古参〟と称する奇怪な機械(しかけ)が人体(むくろ)を欲して亜麻布と成り、果(ゆく)は魅惑と称して箍を外した心算(しんさん)が屋根を這いずり甘い匂いも黄色の茶菓子も見事無残に壊して行った。残り得たのは浄瑠璃を兼ねて造った人体のみであって、この肢体に後味付け足し砂金を塗り込め、職人紛いの進化と称した。俺の肢体は程好く夜雨(よぎり)の温度に回転し始め、職人(ひと)の機嫌に体好く阿る〝傀儡冥利〟に尽きる惨事に酩酊し始め、滔々流れた白波の小川は常緑束ねる自然の優雅を怒涛に成らしめ尊大昂る鮮度の空(あお)には情欲を消し、消された俺の満たない欲体(からだ)は何時(いつ)まで経っても成長灯さぬ益荒男(あらくれ)の歩幅に自信を齎し群象重ねて、頭上を吹き行く涼風(かぜ)の内には声(うた)を忘れる鵥の宿りが渡航に行くまま高度を上げた。
 俺の真横を自身の背丈を越え得た長身女(ますらめ)の凡体(ぼんたい)が西日を翳して通り行き過ぎ、幼児の姿は一瞬点滅したまま次第に頃合いは揶揄(からか)うように身の程分けて淡く成り行き、俺の注視は非凡な感度(センス)を心行くまま真逆に捉えた西日を外して女身を見守り、唯地中に埋(う)もねる煩悩の姿勢(すがた)を集中廃棄し孤高を転じた。暗空(くらやみ)が裂け、地中から程好く湧き出た人の泉が静寂成るまま恥垢に満ち行く実生(じっせい)の内にて絆され行くと、それまで静観して居た本能(ほのお)の主(あるじ)が途端に素行を始め都会を隣(りん)させ、接面して行く田舎の娘を黒髪に包み出しつつ嘔吐を仕掛けた。俺は暫くがらがらした喉の微熱に甘味を与えて黄土を進み、初めに見据えた目的地迄へと巡業重ねた美身(びしん)の暗器に汚れを添え行き、闊歩し出した徒歩の行方は青空下の緑の野辺を即座に見付けて、その道上では微身(びしん)に震える二、三の無垢女(むくじょ)が行程(みち)を閉ざした。内の一人は俺の良く知る頭の利口な美身を呈して他の無垢女(むくじょ)を片端(かたはし)から見て頭上に束ね、揚々群象(ぐんしょう)を描き始めた孤立(ひとつ)の無縁はさっぱり流した垢を呈した。赤く燃え行く両の頬からその孤独の女は既知に根付いた有美(ありみ)の様子を具に描いて、俺の精神(こころ)を満ち満ち解(ほぐ)した効果の果てには恋慕を酔わせた奇怪が生じた。唯三人共、俺達の出向く方角(むき)と同じ方角(むき)に向いてゆっくり固まり歩を進めて在って、俺は密かに野辺に駆け寄り小草(みどり)を跳ね行き幼児(こども)を連れて、孤独に信じた哀れな末路を美身に添え行き華とした儘、単身に揺れる細い電光の紐を真向きに捉えた体(てい)にて灯りを遮り、落雷に備えた狡猾(ずる)い暴挙が試算を重ねて虚ろであった。尚、父親の躰はそこから二キロ程離れた目的地へ程近い道上の果(さき)に在り、二、三の女と俺の戯れ等にはまるで乱れず目もくれずに、すたすた先へ独歩(ある)いて行った。
 ずたずたに切り裂かれた無境を呈する分類(ドグマ)を目前(まえ)にして、あの手この手を駆使して物言う男根から成る未行(みこう)の益荒男(だんじ)を一生(いっせい)と決定したのは矢張り遠くに浮んだまるで孤島を模した遊戯の境(きょう)だった。俺の父親は徒弟にも未(み)たない俺の肢体(からだ)をすたすた進行して行く無類の容姿に吊るして引いて、何処まで行っても不変の父親像(イデア)を称した。明日(あした)から成る今日の懐の厳寒の生粋には程好く灯され得た女の温(ぬく)みが佇み、それでも俺の体温(ぬくみ)の確実を軽く射止めて行って、街道を歩けど回廊を歩けど無業に興じ準じた渡航の一擲(いってき)を止めながらに、一点の曇りも呈さぬ儘にて男根婦女子(だんこんふじょし)の哀れを呈した。まるで詩吟に自身を救済するべく確固(たし)かに設けた女中見習いの体裁等には言葉も当てぬ程にて真価を鍛え、白紙に飛び込む思中(しちゅう)の乱転(あらし)を一投足(いっとうそく)生じ得るまま孤独に乗じた千草を求めて哀れ成る儘、憂き世に転じた固陋を追った。俺の父親は近隣に雷鳴(おと)が成っても落雷しても一向に動じる事無くすたすた進行(すす)んで暖(だん)を構え、後(あと)から追い付く我等(俺と幼児と二、三の娘)の辿りを遍く注視を据え置き眺めて在って、富んだ禿(かむろ)はぴかぴか輝(てか)り、牛頭(ごず)の苦悩にまた拍車が鳴るのを知り行く体(てい)にて寸分狂わぬ賭博を吐いた。虚ろな目をして体裁操り、果(ゆく)は女の未調(みちょう)も成人(おとな)の誇張も幼児の不調も須らく世相が愛した慇懃な政治も全ては元から肢体が在って、超越し得ぬ不遜の宿りが皆相応の結論(ことば)を介して清書(か)いて行くものであって、闘魂を成し得る一介の連想(ドラマ)が鮑を焚いても一向に落ちない目暗(もぐら)を足らしめ唐突なるまま自然(かんきょう)を保(も)ち得ぬ愚鈍(あるじ)の失笑を忘れて行くのに懸念を費やし、昏倒して居る。親父は故郷を連想させ行く紺青(あお)い地下足袋履いて呼吸を調え耽溺する対象(もの)を故郷の地に見て、頑固(かたくな)と成り得た詩吟の連動(ドラマ)を再度転がし、一端(いっぱし)に咲き得る試算を呈した。故に我等(俺と幼児と一人の理想女《むすめ》)を背後(とおく)へ置き遣り、時折り襲う連咳(せきこみ)を背負った儘にて変らず着地し目的地(こきょう)へ赴く。
 何時(いつ)しか儘成らぬ全開扉(ぜんかいとびら)が涼風(かぜ)の煽りを受けつつがたんごとんと罅入る程に自体を鳴らす公開堂にて、赤面し、孤独に萎え行く母と俺とを脇に退け置き、集った父の姿が何処から入った涼風(かぜ)か、緩く浮わ浮わ流行(なが)れる孤高の気風(かぜ)に相乗(あいの)って思惑(こころ)を閉め出す魅惑を呈した頃から、俺の四旬(ドグマ)は一行(いっこう)按じて追憶を止(や)め、目前に屹立して居る益荒男(おやじ)の讃歌を賞味して居る。紅潮足る両頬の内に他力を乗じる独創の仄かを以て開口せず儘、
「賢ちゃんは凄いなぁ、皆の前でも堂々としてるんやもんなぁ」
等の小言を常時吹き行く時流(かぜ)に絡めて停滞して居る吹き溜めの内では尻を座らせ、何処(どこ)でも不変の大事を並べた。俺もその様(よう)に想った。
 過去(むかし)が進展して行く夜中の大事へ惑わされもせず、白紙を通して澄み行く未(さき)へ転じ蠢く主張(ことば)の内で、俺の手許は熱さに濡れ行き渡航を重ねたモルグの正体とは又山海(しぜん)を束ねる死海を埋め行く目暗(もぐら)であった。


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