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間違えた部屋

タイトル:(仮)間違えた部屋

▼登場人物
●輪根羅 輝子(わねら てるこ):女性。26歳。独身OL。
●岡本加奈子(おかもと かなこ):女性。27歳。独身OL。殺害される。
●加古川繁明(かこがわ しげあき):男性。50歳。輝子を狙った1人目の犯人。
●剛田久則(ごうだ ひさのり):男性。29歳。輝子を狙った2人目の犯人。本編では「若い男」等と記載。指名年齢不詳のイメージでOKです。
●警察・警備員・大家:全員男性。一般的なイメージでOKです。

▼場所設定
●高層マンション:輝子達が住む。都内にある一般的なイメージで。
●街中:必要ならで一般的なイメージでお願いします。

NAは輪根羅 輝子でよろしくお願い致します。
(イントロ+メインシナリオ+解説:ト書き・記号含む=3634字)

イントロ〜

皆さんこんにちは。
皆さんは高層マンションに住んだ事はありますか?
例えば地方から上京してマンション住みになると、
右も左も分からない上、そのマンションの中の構造や
そこに誰が住んでるのかも分からないものですよね。
今回はそんな状況にある、
或る女性にまつわる意味怖エピソード。

メインシナリオ〜

ト書き〈高層マンション〉

私の名前は輪根羅 輝子。
今年26歳になる独身OL。

私は地方から上京してきて今、
この高層マンションに住んでいる。

輝子「やっと一人暮らしを満喫できるぞ〜♪」

これまではずっと地方で仕事をしてきたのもあり、
都内で生活するのは初めて。

それにこんなマンションに住んだのも初めてで、
右も左も分からず、本当に緊張の毎日だ。

輝子「立地も良いし内装も良いし、申し分なしね♪まぁ家賃がちょっと高いのが玉に瑕だけど」

昔からマンションで一人暮らしするのが夢だった私。
でも引っ越してきたばかりだったので、
花の独身OL生活を満喫するのはこれからだ。

ト書き〈仕事帰り〉

輝子「ふぅ、今日も疲れたなぁ」

そしてある日の仕事帰り。
私は近くのコンビニで晩ご飯のおかずを買い、
そのままマンションへと向かう。

(エレベーター)

輝子「よしっと♪」(エレベーターのボタンを押す)

このマンションにはエレベーターが設置されてある。
最上階は9階。

いわゆる6階建て以上のマンションが
高層マンションと言われており、
まぁそんな大きいマンションなら
エレベーターの1つも無ければ
普通に上がるだけでも疲れちゃうからね。

と言いつつ、横にはちゃんと階段も設置されてある。
まぁ非常用にも使われる階段だけど、
鍛えたり、ダイエットを意識してる住民達は
エレベーターを使わず、
この階段を上り下りしている人もまぁまぁいた。

私は楽したいほうだからいつもエレベーター。

(乗ってくる)

そしてエレベーターに乗った時…

加古川「あ、すいません!乗ります」

と言って、中年男性が1人入ってきた。

男性が入ってきたので私は少し奥へ。
その拍子に乗り場押しボタンから少し遠ざかった私は
ちょうどそのボタンの前に立ったその男性から…

加古川「あ、何階ですか?」

と聞かれた。

輝子「あ、すいません、5階です」

と私はすぐに答える。

男性は5階のボタンと
自分が降りるのだろう6階のボタンを2つ押し、
開閉ボタンを押してドアを閉めた。

ぎゅーんとエレベーターは上って行き
私が降りる5階へ着いた。

「すみません」と言って降りた私は
そこから歩いてカドを曲がり通路を歩いて行って
そのまま自分の部屋の507号室へ。

ドアの前に立ち、鍵を開けようとしたところ…

輝子「え?…あ!違う!」

私は重大な間違いに気づいたのだ。
私が住んでる階は6階。
607号室が私の部屋で、私は1階ぶん間違えていた。

エレベーターを降りた時からちょっと何か違うなぁ…
なんて感じたのだが、ドアを開けてくれたあの男性の手前、
ちょっと体裁を繕ってしまい、
そのまま颯爽と歩いて行ってしまったのだ。

輝子「失敗しちゃったなぁ〜」

格好悪い私。

横で階段を降りて行く人の足音が聞こえ、
「見られなくてよかった」
なんて思いながらエレベーター横の階段まで行き
そこから改めて6階へ上っていった。

まだこのマンションへ来てすぐだから、
自分が住んでる部屋の階さえ分かってない私。

ト書き〈事件?〉

それから数日後。
私達が住んでいるこのマンションで事件が起きた?

507号室の住人が、
「泥棒が入った!」
なんて騒いでいるのだ。

警察、警備員、大家さんらを始め、
507号室の前にはちょっとした人だかりが出来ていた。

自分も住んでる場所だからとちょっと興味が沸いた私は
話してるその内容に少し耳を傾けてみた。

周りの人からの情報も含め分かった事は、
誰かがこの部屋に侵入し、女性物の下着を盗んでいった…
との事。

その部屋の住人は私と同じ20代の独身女性。

名前は岡本加奈子さんと言い、
ちょうど彼女が仕事へ行ってる間に
何者かが部屋に侵入したらしく、
下着を盗まれた上、少し部屋も荒らされていたと言う。

でも金品は盗(と)られていなかったらしい。

加奈子「こんなんじゃおちおち生活も出来ないわよ!ねぇ何とかしてよ!早く犯人捕まえて!」

見てると加奈子さんは結構キツイ性格をしている。
周りの警察や大家さんに向かって
「早くどうにかして!」
と凄い剣幕でまくし立てていた。

でも女性にとって、こういう事は恐怖以外の何物でもない。
私も同じ女性ながら彼女の気持ちがよく分かった。

ト書き〈殺人事件〉

そして、又それから数日後。
今度は更なる悲劇が起きたのだ。

輝子「ウ…ウソ…」

警察「ハイどいてどいてー!さがって下さい!」

なんと507号室のあの住人・加奈子さんが殺害された。
部屋の中で殺されており、その現場の状況から、
「おそらく誰かと揉み合った上、絞殺された」
との事。

また加奈子さんは殺害された上に襲われた形跡もあり、
犯人は男じゃないかと推定された。

輝子「怖いなぁ…」

ここに住んでるのが急に恐怖に思われてきた。
まさかこんな事件が起きてしまうとは。

ト書き〈数日後〉

それから数日後。
次は私の身の周りに少し気になる出来事があった。

いつものようにエレベーターに乗った時。
若い男性が一緒に乗り込んできた。

その人は無言で、ちょっと怖い風貌をしており、
何か知らないけど私のほうへ寄って来るような気がした。

私はずっと俯いたまま、
6階に着いてすぐエレベーターを降り、
速攻で自分の部屋の前まで行った。

その時、一緒に降りてきたのかさっきの若い男が、
通路のカドでじっと私を睨むようにして立っており、
それからフラッとまたカドの向こうに消えて
たぶん階段を降りていった。

輝子「な…何よあの人…」

私はその時ハッとした。

「もしかしてあの人が加奈子さんを殺した犯人?」

そう思った瞬間、身震いが止まらなくなってしまった。

ト書き〈1つの事件解決〉

その翌日。
加奈子さん殺害の事件が解決した。

輝子「え…?」

私はそれを見てまた心底震え上がった。

犯人の顔写真が掲載されており、
その顔は前に私がエレベーターの中で見たあの中年男性の顔。
名前は加古川と言った。

輝子「あの男が犯人だったんだ…」

それから更なる恐怖を私は感じてしまい、
もう我慢できず、ここを引っ越す事に決めた。

せっかく今まで住んできて、高い家賃も払ってきたのに…
確かに残念だったが、でも命には換えられない。

それからニュースを見ていると、
少し奇妙な事も言っていた。

最近、新手のピッキングが流行っているとの事で、
そのピッキング法を使えば
あらゆるドアを開ける事が出来てしまう…と言うもの。

おそらく加古川もそのピッキング法を使って
加奈子さんの部屋に侵入していたのだろう。

そして翌日に引っ越しの手続きをする事にして、
その日は眠ろうと思った。

でもベッドに入って暫くした時、
カチャリ…とドアの鍵が開けられるような音がした。

解説〜

507号室で加奈子を殺害した犯人は加古川でした。
この男はあの日、輝子と一緒にエレベーターに乗っていた男。

加古川はそのとき輝子に「何階ですか?」と
輝子の部屋の階数を聞きます。
実はこれ、輝子がどの部屋に
住んでいるかを確認する為だったのです。

でも輝子は507号室と607号室とを間違えており、
すぐ6階に上がろうとします。
でもその時、エレベーター横の階段で足音が聞こえましたね。

この足音は実は加古川のものでした。

輝子が507号室に住んでいると
この時に加古川は間違った確認をし、
そのまま後日、507号室に侵入してしまったのです。
理由はもちろん輝子を襲う為でした。

でもそこは加奈子の部屋。
加奈子はその日、仕事でいませんでした。

だから下着を盗むだけで我慢した加古川。
そして2度目に侵入した時に加奈子と鉢合わせしてしまい、
そこですったもんだの末に加奈子を殺害してしまいます。

輝子が自分の部屋を間違っていた事が
自分の命を救っていたわけです。

ですがもう1つの意味怖エピソードは、
新しいピッキング法が流行っていた事。

流行ると言う事は他の人がそのピッキング法を
知っていておかしくないと言う事。

そこでもう1人の男…
輝子が2度目にエレベーターで一緒になった若い男は
加古川より更におもむろに輝子に近づき、
異様な雰囲気を醸し出していましたね。

実はこの若い男もその新しいピッキング法を
知っていたのです。

加古川がやったのと同じように
自分も目をつけた女性の部屋に侵入しようとしました。
その目をつけた女性が輝子でした。

2度目の時は輝子もちゃんと自分の部屋に戻ってしまいます。
それをあの若い男に見られていました。
と言う事はもう部屋を間違える事はありません。

引っ越しを決めたその前夜。
寝ようとした時に輝子の部屋のドアが開けられます。

開けたのは話の流れからして当然、
その2度目にエレベーターで鉢合わせしたあの若い男。

一難去ってまた一難。
1度は部屋を間違って助かった輝子でしたが…

こんなマンションに住む時は
ぜひ皆さんも気をつけて下さいね。

どこにどんなトラブル…
いや事件が待ってるか分かりませんから。

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