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恋の暗算

タイトル:恋の暗算

叔母「いったい何度言ったらわかるの!彼と会っちゃダメってあれほど強く言ったでしょ!」

メアリ「わかってるわよ!でも私だってもう子供じゃないのよ!」

叔母「いいえ、あなたはいつまで経っても子供よ。自分の身の周りの事もちゃんと出来ないで、将来設計すらその足元を見失って、今も崩れかかって居るじゃない」

叔母「あんな無職の男と一緒になったところで、あなたに幸せがやってくるの?この家でぬくぬくしていた方が、経済的にもあなたにとって幸せでしょう?」

メアリはいつも叔母の監視下に置かれ、
人生も恋も自由にさせてもらえなかった。

(密会)

ジョン「…やっぱりこんな事はいけない。中途半端な気持ちで君と付き合うなんて僕にはやっぱりできないよ」
メアリ「中途半端って…ジョン、私との事は遊びだったの!?」
ジョン「そうじゃない!今君も知ってるように僕は無職で!君と自分を養うどころか、子供ができたら、その生活や将来設計なんてまるでできない身分なんだ!」

ジョン「…ごめん。でもわかるだろう…」
メアリ「でもそんなの、今だけの事よ。そのうちきっと良い仕事が見つかって…」
ジョン「…ああ、そう願ってるんだけどな。でもこの不況下だ。どこへ行ったって門前払いさ」

メアリの恋人・ジョンは
彼女を心底愛していたけれど、
とても結婚できるようなステータスにない。
その事はメアリも前から知っていた。

ジョンはメアリを愛する分だけ、
中途半端な付き合いはできない、
ちゃんとした人と付き合って一緒になり、
幸せになるべきだ…
と心を硬く閉ざし、彼女を諭していた。

でもメアリは彼との恋愛、
結婚をどうしても諦めきれない。
しかし現実はやはり厳しいもの。
彼の生活状況が今すぐ良くなる事はなかった。

(メアリの自宅)

叔母「またこんな夜遅くに帰ってきて!今までどこほっつき歩いてたの!」

メアリ「…ごめんなさい。でも私にだって用事が…」

叔母「私の言った事はちゃんと守りなさい。あなたの幸せを思ってこそなのよ」

家に帰ればいつものように怒鳴られ、
決まり文句も言われ、
メアリは益々荒みつつ、
この生活に甘んじるしかないのか…
そんな事を真剣に考えるようになっていた。

(事件)

そんな時、大きな事件が起きた。

「や、やめて…助けて…」
男「グフフ…お前もやってやる…。この家にゃあ財産が唸る程あるってなぁ」

メアリが住む家はそれなりの金持ち。
ある夜、メアリが部屋に居た時、
家に強盗が入っていた。

しかしメアリも必死の攻防を繰り広げ、
奇跡的に、その男を撃退できた。

「ハァハァ…ハァハァ…ああ、ああぁ…」
家の間取りをちゃんと知っていたメアリは、
どこに何があるかも知っており、
キッチンの方へ上手く男を引きつけ、
隠し持った果物ナイフで男を刺したのだ。

「ああぁああぁ…!!」

目の前に血みどろで倒れた男を見ながら
メアリはその場で「人生が終わった」と思った。
家のドアを入ってすぐ横にあるリビングでは、
すでに叔母が事切れていた。
男は叔母を鈍器で殴りつけた後、
メアリを襲おうとしたわけである。

(事件捜査)

警察1「おい、そこ触んないでくれよ」
警察2「警部、男の身元が分かりました」
警察1「ふむ」
警察2「名前はジョナサン・フォワード。Sブロック地区に長年住んでる男だったようで、年齢は48歳。両親は既に他界しており、身内の者も彼にはあまり近づかなかったとか」

警察1「ん?」
警察2「天外孤独だったようです」
警察1「ふん。それで強盗に入ったと?」
警察2「動機はまだよく分かりませんが、まぁおそらくこの手の男には、人生に守るものがありませんからね」
警察2「最後にひと花咲かせようとでもして入ったのでは?」

しかしこの事件は急展開を見せた。
ただの強盗事件、これで終わる筈だった。

(事情聴取)

メアリ「別に彼は関係ありませんわ!」
警察2「彼の方にも既に事情は聞きましたが、なんでも2人で結婚を夢見て居たとか?」
メアリ「真面目に付き合ってるんだからそれぐらい当たり前の事でしょう?」

警察1「でもあなたの叔母・ルイードは、それを許さなかったそうですね?」
警察1「ご近所の方からその辺りの事も既にお聞きしております」

メアリ「それは彼がまだ…」
警察1「定職についておらず生活が安定しないと思ったから。…でもそんなのは時が過ぎればそれなりの解決を見るのでは?」
メアリ「…何がおっしゃりたいんです?」
警察1「今はまだ証拠不十分ですので、そのうちまた来ます」

この前提を持ち、
さらに有力な手がかりが得られたわけだ。
或る者の証言により
事件の方向性が変わった。

(酒場)

警察2「本当ですか?」
ジャック「ああ、ほんとだよ。この写真の男ならいつもここに来てた。行きつけだったんだろねここが」
警察1「それでこの女性と会っていたと?」
ジャック「うん、多分」
警察2「そこをはっきり出来ませんか?」

ジャック「んなこと言ったって、俺飲んでたし」
警察2「もう1度写真をよく見てください」
ジャック「何度見たって同じだよ!」

警部が袖の下を渡す。
「もう1杯飲みな」と勢いづけた時ジャックは、
「こりゃどうもw…んー、あ、多分でも間違いないかなぁ」

警察1「ん?」
ジャック「ほらここ。首の所にちょっと目立つ傷があるだろ?あの時見たのも同じだもん」

メアリの首には確かに傷がある。
それを見てジャックは、
あの夜会ってた相手の女性が
メアリである事をほぼ確認した。

この証言と、それまで警察が調べた
メアリに関する情報の全てを彼女にぶつけた。

(メアリの自宅:解決)

警察1「あなたは恋人とどうしても一緒になりたかった。でもそれには叔母が邪魔になる。あなたは幼少の頃から叔母に育てられ、真っ向から逆らう事がなかなか出来なかったようですね」

警察1「いや、なかなかではなく、絶対出来なかった。それは叔母の意向1つで、あなたの手元に遺産が転がり込まないようになっていたから」

メアリ「…なにを言ってるんですか」

警察2「あなたはあの酒場で、この家に強盗に入ったジョナサンと会っていましたね?どうしてその事を隠されていました?」

メアリ「え?」

警察1「そこに居た客と、オーナーから得られた証言です。まさか行きずりの男との密会が、こうしてこんな形でバレるなんて、その時のあなたは思ってもみなかったんでしょう?」

メアリ「……」

警察2「叔母のルイードさんは度々家の財産を全て、最寄りの児童施設に寄付なさるような事も言っておられた。それもあなたは知っていた」

警察1「強盗の男を利用して2人を始末して、あなたは無事に遺産を受け取り、彼との睦まじい生活を夢見ていたのか?」

警察2「強盗にまつわる証言も、全部嘘でしたよね?」

メアリは犯罪の素人。
この強盗を利用した計画もただ一夜漬けの、
即席で作ったものに過ぎない。
だからすぐにボロが出た。

(後日)

メアリはその場で逮捕され、収監された。

警察2「カマをかけた甲斐がありましたね」
警察1「ああ。まさか酔っ払いの証言1つであそこまで犯人を落とせるなんて、思っても居なかった事だ」

動画はこちら(^^♪
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