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引き篭もりの妄想(ゆめ)

タイトル:(仮)引き篭もりの妄想(ゆめ)

▼登場人物
●華道内人(かどう うちと):男性。47歳。独身サラリーマン。両親は他界。始めは無職。
●門脇奈美子(かどわき なみこ):女性。30代。財閥の令嬢。実はノゾミが創り出した架空の人物。本編では「奈美子」と記載。
●カレン:女性。20代。キャバレーに勤めるいかがわしい女性のイメージで。
●苗下(なえか)ノゾミ:女性。30代。内人の理想と欲望から生まれた生霊。

▼場所設定
●内人の自宅:都内にある一般的なアパートのイメージで。
●Resident of the House:お洒落なカクテルバー。ノゾミの行きつけ。主に「カクテルバー」とも記載。
●街中:必要ならで一般的なイメージでお願いします。

NAは華道内人でよろしくお願い致します。

イントロ〜

あなたはニートですか?
働きたくないと思いますか?
働きたくても働けない人が居る中で、
そう思えるのはある程度裕福な家庭に育っているからでしょうか。
いや、そうでない場合でもどうしても世間で働くのが苦手だ、
人間付き合いが苦手だと言う人はやはり多いもので、
そんな人達にとっての安住の地とは一体どこにあるのか?
そんな事を考え続け、漸く自分のテリトリーを確保できた
ある男性にまつわる不思議なお話。

メインシナリオ〜

ト書き〈就職失敗〉

内人「はぁ、やっぱりダメですか。分かりました。それじゃ…」

俺の名前は華道内人(かどう うちと)。
今年47歳になる独身サラリーマン。

以前は働いていたがリストラに遭い、
それからと言うもの働く事がひどく億劫になり、
できれば家の中でずっと篭っていたい…
そんな事を夢に思いつつ、それでもぽそぽそ就活に歩いていた。

でも上手くいかない。
今日もいつものように就活失敗。

内人「はぁ。俺の人生って、一体何の為にあるんだろう…」

両親はつい先日他界してしまい俺は一人ぼっちになって、
よく自分の人生を悲観するようになっていた。
器量もぱっとせず、ステータスはこの通りだし、
生きていても意味がないんじゃないか…?
そんな事を1人になるとよく思う。

簡単にこの世を離れる事ができたなら…
そう思う事も少なくない。

内人「ふぅ。ちょっと飲みにでも行くか…」

俺はなけなしの金を持ち、いつもの飲み屋街へ行った。

ト書き〈カクテルバー〉

そうして歩いていると…

内人「ん?『Resident of the House』?新装かな」

全く見た事のないバーがある。
結構キレイで中も落ち着いていたので、
俺はそこに入りカウンターにつき1人飲んでいた。

いつものように愚痴を吐きながら飲んでいた時…

ノゾミ「フフ、お1人ですか?もしよければご一緒しませんか?」

と1人の女性が声をかけてきた。

彼女の名前は苗下(なえか)ノゾミさん。
都内でライフコーチやメンタルヒーラーの仕事をしているようで、
そのせいかどこか上品でもあり落ち着いていて、
一緒に居て安心できるようなそんな人だった。

別に断る理由もなく、
またそんな時だったので話し相手が欲しいと思い、
俺の隣の席をあけ彼女を迎えた。

そして談笑する内に更に打ち解けあって、
俺は自分の悩みを彼女に打ち明けていた。

もう1つ感じた彼女への魅力は
自分の悩みを打ち明け、
それを解決して欲しいと無性に思わされる事。

そうなった理由の1つに、
「昔いちどどこかで会った事のある人?」
みたいな身近さを感じさせてくれるところがあり、
そのせいで心が和んでそうなったのだ。

ノゾミ「まぁ、それじゃ今、大変悩まれてるんですね?」

内人「え、ええ。お恥ずかしい話、この歳でこんな事を言いながら家に引き篭もりたい…そんな事をずっと考えてるんです」

俺は今の自分の悩みを洗いざらい彼女に伝えた。
すると彼女は…

ノゾミ「なるほど。お気持ちはよくわかります。でもそれはきっと世間に生き甲斐やメリハリを感じられないから。だから心が絶望の方向にマンネリ化して、きっと今のあなたの生活に覇気を持たせないんだと思いますよ?つまり何か生き甲斐を見つけ、没頭できるものがあれば、今のあなたは必ず変わると思います」

ノゾミ「いかがです?その生き甲斐を探してみませんか?もしその気がおありなら、私もご協力差し上げますよ?」

そう言って彼女はいきなり
俺に1人の女性を紹介すると言い出した。

内人「ちょ、ちょっと待って下さいよ!さっきも言った通り僕は定職に就いてないんです。そんな結婚を前提に誰かと付き合えるみたいな、そんな恵まれたステータスにはないんですよ!?」

ノゾミ「フフ、どうぞご心配なく。私がこれから紹介して差し上げる女性は、もしあなたが働かないで一生を過ごすとしても、そのあなたの生活を充分賄える財産を持った方です」

内人「…え?」

ノゾミ「つまり財閥の娘…とでも言えば分かるでしょうか?彼女の両親は少し前に他界されましたが、その莫大な財産は今でも彼女の手元にあり、彼女は働きながら今の自分の生活を守ってます」

ノゾミ「唯一、自分に足りないものと言えばそれは愛する伴侶で、その伴侶にあなたをご紹介差し上げよう…とこう言ってるんです。ご心配は要りません。その女性は私と近しい間柄で、ずっと前から馴染みのように育ってきた間柄です。ですから私が紹介した人なら彼女はきっと頷くと思います」

ノゾミ「…どうですか?本気で彼女との結婚を前提に、今後の人生を生きてみたいと思いませんか?そうすればきっとあなたの今の生活は大きく変わり、もっと明るいものになって、生まれてきて良かった…と思える人生に様変わりすると思いますが?」

いきなり淡々とそんな事を言ってきたのでよく解らなかった。

でも理解があとから追いつく形でよくよく考えてみると、
今の自分の人生を本当に変えられる最後のチャンスかもしれない…
もし自分にそんな愛する人ができたら本当に生活が明るくなり、
人生そのものが180度変わるかもしれない。

そんな事を一瞬の内に考え、
俺は彼女の申し出を何となく受け入れる気になっていた。

ノゾミ「そうですか、よかったです。それでは明日の今頃の時間、またこのお店でお会いしましょうか?その時に彼女を連れてきますので」

内人「い、いやちょっと待って下さい、まだ決めたわけじゃ…」

ノゾミ「まぁまぁ、そんなに身構えないで。心の力を抜いて自分の人生をゆっくり眺めて下さい。あなたにとって、決して悪い話じゃないと思います。私のお仕事はボランティアで、あなたのような方を救済する為の純粋なもの。だからサービス料や紹介料等、代金は一切頂きません。ただあなたの人生が幸せの方向に変われば私もそれで満足ですので」

無料と聞いて心が揺れた。
そして俺は本当にその次の日の夜、このバーで
自分の婚約者を紹介して貰う事になったのだ。

ト書き〈翌日の夜〉

そして翌日。
俺はまた昨日と同じ時間帯にこのバーへ来ていた。

内人「は、初めまして…!どうぞよろしく…!」

奈美子「こちらこそよろしくお願い致します」

紹介されたのは奈美子さんと言うやはり財閥のお嬢さんで、
気品漂う雰囲気を持っていて、一緒に居て何となく心も和む。
どことなく、ノゾミさんに似ているような気もした。

その時ふと思ったのだが、不思議な事に、
結構な美人であるそのノゾミさんに対しては、
恋愛感情と言うものが全く湧かない。

ノゾミ「どうですか?お気に召されました?あなたさえよければ、今後、彼女と一緒に幸せな未来へ歩き、いつまでも仲睦まじい生活を歩む為の土台作りを、今からして行ってはいかがでしょうか?」

内人「は、はい!あ、あの、有難うございます!ノゾミさん!」

ノゾミ「フフ、お礼なら彼女に言ってあげて下さい。奈美子さんは写真でひと目あなたの姿を見るなりとても気に入った様子で、あなたとの幸せな未来を本気でそのとき考えたようです。つまりあなたの人生を変えたのは彼女。どうかそんな彼女の事、今後も大事にしてあげて下さいね」

それからとりあえず奈美子さんは自宅へ戻り、
俺とノゾミさんだけが少しバーに残っていた。

その時ノゾミさんはアドバイスというか忠告めいた事を俺に言ってきた。

ノゾミ「そうそう、言い忘れてましたが彼女を紹介するにあたり、1つだけ心に留めておいてほしい事があります」

内人「は、はぁ。何でしょう?」

ノゾミ「実は彼女、とても心が繊細な人で、もし愛する人に裏切られたりすればその瞬間、この世から身を消す程のショックを受けて、あなたを憎みながらあなたの元を去る事になるかもしれません。そうならないようにあなたのほうでも充分注意してあげて欲しいのです」

内人「…つまり…」

ノゾミ「浮気気はするな、と言う事です。まぁ今更あなたに言う事でもないかもしれませんが、一応念の為」

俺は今まで絶望の淵を生きてきた。
こんなタナボタが天から降ってくること自体、奇跡に近いのだ。
だからその幸せを自ら壊すような事、それは絶対にない。

内人「なぁんだ、そんな事ですか。大丈夫ですよ、僕に限ってそんな事は絶対にありませんから」

でも俺はこの時、ノゾミさんの言った事を軽く聞き流したかもしれない。

ト書き〈トラブル〉

それから俺と奈美子さんは、結婚を前提に付き合い始めた。

奈美子「ウフフ、あなたと出会えて本当に幸せ。これからもずっと私を放さないでね」

内人「ああ、そんなこと決まってるさ。俺にとっても君は本当に天使のような人。よく俺なんかの元に来てくれたよ。本当に有難う」

俺達は本当に幸せだった。
このまま何事もなく結婚と言う名のゴールへ辿り着ける…
本気でそう思っていたのだ。

(キャバレーで)

でも人間の心と言うのは…

内人「え。えぇ?ちょ、ちょっと…」

カレン「イイじゃない、ね?せっかくこんなお店に来たんだから、もっとイイ事しましょうよ?私がその彼女さんの事を忘れるぐらい、気持ちよくさせてあげる」

ひどく曖昧で、俺は奈美子を裏切り、
いかがわしい店に来てしまっていたのだ。

なまじ女が出来たから心に妙な余裕も出来ていたのか。
女が出来ると多少なりとも異性に対する免疫が付き、
こんな店に来るまでのハードルも何となく低くなってしまう。

実を言うと、俺は奈美子の容姿に少し不満があった。
奈美子はそれほど器量が良くなく、
一緒にずっと居ると安心はするのだが、女として見た時、
同時に不満も湧いてくる。

そんなだからか、あっちのほうも余り満足できていなかった。

そんな状態がたたり俺はこの店に来て、
彼女で発散できない分をこういう場所で発散しよう…
今後の彼女との生活を踏まえる上で
そんな事を密かに考えてしまい、それをこれからの自分の習慣、
ストレス発散の為の心の糧にしてしまおう…
とまで考えていた。

奈美子と付き合うようになってから確かに生活への覇気も湧き出し、
俺は今この歳でそれなりの定職に就く事もできていた。
だから経済的にも少し余裕ができて、
こんな場違いな事をしてしまったのだ。

ト書き〈オチ〉

そしてその帰り道。

内人「うわあぁぁ…!な、奈美子、ごめん!ほんとにごめんよ…!」

俺はひどく後悔した。
知らない所でとは言え、奈美子を傷つけてしまった事。
裏切った事。
この消せない自分の罪を思い、俺はどうにもできない罪責感を
自分の心深くに感じてしまった。

と、その時だった。

内人「クソぅ…。…え?…うわっ!?ノ…ノゾミさん?!」

ノゾミ「フフ、こんばんは。こんな所でお会いするなんてね…」

なんの人の気配もしなかったのに、
路地裏で蹲っていた俺の背後に
いきなりノゾミさんが現れたのだ。

そして…

ノゾミ「内人さん。あなた、私と彼女との約束を破りましたね?あれだけ言っておいたのに、彼女を裏切るような真似だけはしないようにと」

内人「え…?な、なんでそれを…」

ノゾミ「今ここでその事を後悔されていたようですけど、もう遅いです。あなたがあのお店に行った瞬間、奈美子さんはこの世から消えましたよ?」

内人「…え?」

ノゾミ「彼女がそうしてこの世から消えたのですから、あなたにも、それなりの責任を取って貰わなきゃなりませんね」

ノゾミ「あなたはもう1歩も家から出る事なく、彼女と出会ったその前の自分に戻る事。そしてそのあなたはそれまでのあなたではなく、家と同居する程の存在となり、この世から消えて貰いましょう」

そう言ってスッとあげた右手の指を
ノゾミがパチンと鳴らした瞬間、俺の意識は飛んでしまった。

ト書き〈アパートの柱になった内人〉

次に目覚めた時。
俺は自分の部屋を、それまで見た事もない角度から眺めていた。

内人「…こ、これは…俺の部屋…?…う…うう…それよりも…く…苦しい。俺、一体、今、どうなってんだこれ…」

それから少しして、俺は今の自分が置かれた状態に気づいた。
俺はどうもこの家の、柱の1本に成ったらしい。

家の柱と同化する形で俺はまだ生きて居り、
そこから誰も居なくなったこの部屋の中を眺め、
身動き取れない体の苦しさを覚えつつ、ずっとその状態で居る。

確かにこの部屋から出る事はもう叶わない。
1歩も外に出る事なく、俺は引き篭もりの生活を味わえる。

でも…

内人「た、助けてくれぇえぇ…だ…誰か…ここから俺を出してくれ…引きずり出して…」

こんな状態で引き篭もりも何もない。
俺はこの生活にすら安住の地を失ったらしい。

ト書き〈そのアパートを外から眺めながら〉

ノゾミ「フフ、私は内人の理想と欲望から生まれた生霊。その純粋な夢だけを叶えてあげようとしたけれど、彼自身がその夢を壊してしまった。自業自得よね」

ノゾミ「人間誰しも1つ願いが叶えば、次の願いを望むもの。その次の願いと言うのは得てして前の夢より大きなもので、欲望により、邪(よこしま)なものに成り易い。彼もその罠に落ちてしまった」

ノゾミ「彼に紹介した奈美子は私が作り上げた架空の人物。その架空すら裏切り欲望に走ろうなんて、内人もとんだ強欲の持ち主だった。選択肢を誤ったわね。せっかく用意してあげた幸せな生活も、あなた自身が葬ったのよ。このアパートが取り壊されたら、その時があなたの寿命。精々そうならないように、そこで祈り続けることね」

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