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あの日見たキャッチボール

タイトル:あの日見たキャッチボール

イントロ〜

あなたはこの世を離れたいと思ったことがありますか?
人は何かに絶望した時、そんなことを思うようです。
そんな時、何が助けになるでしょう。やはり周りの人?趣味?お金?ステータスから得られる栄華?
でもその全てにまた絶望を思わされ、裏切られ、虚しさを与えられ、結局は繰り返しを見せられたことがなかったですか?
そしてその繰り返しに気づき、その繰り返しこそが絶望の原点だと知った時、男の人は、女の人は、どうするでしょう?
もはや自力では立ち直ることができません。何か強い外部刺激がなければ…
そんなことを思ってしまった、ある男性にまつわる不思議なお話。

ト書き〈部屋の中で1点を見つめて〉

望「…もうこの世を離れようか…、………、いやいやそんなこと考えちゃいけない、何言ってんだ俺…」

俺の名前は是津 望(ぜつ のぞむ)。
今年47歳になる在宅ワーカー。

俺には両親がいるが、2人とも遠いところに住んでいる。
なかなか延々時間をかけて、話すことができない。

そして女との関係はもう終わった。
仕事にしても、自律神経失調症・パニック症を慢性的に持ってしまい、これまで通りにはもう働けなくなってしまった。
世間に出て仕事をする事はもうできないのだ。
この事は俺にしかわからない。
元気な他人は何とでも言う。それが励ましかの如くに。
個人差がある。
こんな時によく個人差は無視されがちだが、努力が全然足りないなんて言って、勝手な事ばかり言い、他人の生い立ちから経歴まで何も知らないくせに
知ったかぶりして、自分の論だけで全てを決着させようとする。

その繰り返しにももう疲れた。

女は女でことごとく自分の前から去っていき、これも繰り返し。女を、誰かを、心の底から本気で愛そうとしていたのに、周りがそれをさせなくさせる。
こう言えばまた「すべてのことを他人のせいにしてるだけ、世間のせいにしてるだけ、自分では何の努力もしないで…」なんて言って知ったかぶりをまた始めるんだろう。

悔しいぐらいにそれらを殺してしまいたい…
そんなことを二度三度つぶやいた経験が、誰かにも無かったろうか。

俺も当然他人のことなんて何にも言えない、罪人に違いない。どうしようもない罪人だ。
心の中では欲望を…姦淫の罪を犯し続けて来ている。
これも俺にしかわからないこと。
独りになれば自分のあり方が本当によくわかるものだ。

最後に付き合った女は、生活が貧しかった。
でも子供がおり、俺は会ったことがなかったが、その生活費のためにと散々貢いだ挙句、その人は別に目的を見つけたからか、それとも俺のことを思ってくれたからか、自然消滅の形でどこかへ消えた。

そして最近は女と会うことも一切なくなり、
外国の地に住む日本人Vチューバーの動画サイトに立ち寄るようになり、
そこで初めは俺を歓待してくれ、救われたような気がしてそこに居着き、1年ぐらい、他のユーザーと一緒にそのサイトを盛り上げながら、動画の主である彼女と一緒に楽しんでいたものだが、
ある日から自分のコメントが全く読まれないようになり、
意図的に無視されていることがわかった。

部屋の中にも外部刺激がやってきて、その部屋の中でさえ、世間は個人を孤独にしていく。

誰でもかれでも最初だけだ。
最初だけ良い顔をする。
あとは自分の目的地へ向かい、自分の利益のために、
他人を簡単に蹴落とし、要らない奴は削除して、
知らん顔を決め込み、その後もずっと変わらず華やかになる。

この世は成功者のものだ。
努力をして報われない者もいる。
報われたのは運。
その運をまるで自分の功績のように讃え貫き、
どこまでも自分の目的のため、夢のため、利益のため、欲望のためにと大闊歩して、ときには小刻みに歩き、とにかく何らの特定エリアの覇者になろうとする。

これが人生なのか。生まれてから人が必ず通り、目にして知り、体感せねばならない試練なのか?
もう無数程にそんなことを考え続けた挙句、俺は絶望した。

ト書き〈気分転換に公園でコーヒーを飲む〉

稼げなくなった俺は、ジリ貧の口座からまた金を下ろし、野となれ山となれの精神で外に行った。

できるだけ今を楽しんでやろう、気分転換のため。
豪遊。
なんて事は無い。その日の豪遊は、家で作ったコーヒーをポットに入れて、公園まで行き、1人でベンチや野原に座ってそのコーヒーを飲む事。
豪遊は、公園を1人のカフェテラスにすることに変わった(笑)。

望「ふぅ。ま、それなりに美味いかな…」

俺は恵まれている。
両親が居てくれて、未だ住む家がちゃんとあって、それさえ無く貧しい人たち、今病の底でどうしようもなく苦しみにあえいでいる人たちに比べれば、本当にこんなこと言って怒られるぐらいに恵まれている。感謝だ。
こう言う時、必ずそんな人たちのことを思う。思わなきゃならないなんて…。

望「…ごめんなさい」

誰にも聞こえない声でそう言う。
と思っていたのだが…

リン「フフ、誰に謝ってるんですか?」

望「うおわ?!びっくりしたあ!」

何の気配もしなかったのに、いきなり背後から現れたその女(ひと)。

望「だっ誰!?あんた一体…」

彼女の名前はジン・リンさん。
歳の頃は俺より若く見えたが、どうも中国とか韓国とかあっちのほうの人?
でも日本語がとても上手で、日本で生まれ育ったのか?なんて思わされた。

リン「なんだかとても悩まれてますね?私に話してみません?良き解決法が見つかるかも」

…その人はやっぱり不思議。
こんな形で会ったのに、なんだか10年来の知己のような感覚を持ち、
「昔から自分と一緒に居てくれた人…?」
のような思いを突きつけてくる。

気づくと俺はそれまでの自分の悩みのようなものを全部彼女に伝え、まるで自分を暴露するかのようにして
その時の自分を彼女に預けてしまった。

リン「そうですか。あなたもこの世に傷つけられた、そんな弱者の糧が必要な方なんですね?良いでしょう。ではこちらをお試しください」

そう言ってその人は栄養ドリンクのようなものを取り出してきて、それを俺に勧め…

リン「それは『Will Try Again』という特製の栄養ドリンクのようなものでして、飲めばきっと新たな目的を見つけられるでしょう」

望「…は?」

リン「もう1度、今、用意されているその人生を生きてみるのです。生かされていること、あなたはもう既にご存知でしょう?その感謝を元にもう1度自分を振り返り、隣人を愛するように努め、生きてみるのです」

ト書き〈トラブルからオチ〉

その通りにして見た。
でもまた俺は裏切られ、蹂躙され、なけなしの金まで盗(と)られて、気落ちさせられ、同じところに舞い戻って来ていた。

そして公園にもう1度来て見た。
あの人が居ないかと期待して。

するとその人は、前に俺が座ってたその同じベンチに腰掛け、家から持ってきたんだろうか?
ピンク色した小さな携帯ポットにコーヒーを入れ、それを飲みながら「ふぅ」とため息をついている。可愛らしい表情で遠くを見ながら。
でも不思議と俺はその人に対し、何の恋愛感情も湧かなかった。

(また談笑し合う)

リン「そうでしたか。ダメでしたか」(微笑みながら)

望「ハハ。でも、あなただけは僕のそばに居てくれるんですね。きっとこの先もずっと一緒に居てくれるんじゃないですか?何だかそんな気がして…」

リン「そうしてほしいですか?」

望「ええ」

そう言うと彼女は1つため息をつき…

リン「わかりました。ではそうしましょうか」

そう言ったかと思うと彼女はまた
持っていたバッグの中から何やら神秘的なものを取り出し、
それを俺に勧めてこう言ってきた。

リン「これは『Grace』と言う特別なお薬。これを飲めばきっと、あなたの今のその祈り・願いが叶うでしょう。もうおそらくその心は決まってますね?ではどうぞ♪」

彼女の言う通り、俺は何の質問もする事なく、それを飲み干した。
よく見ると何か飲み物だ。まるで中世の雰囲気を漂わすそんな入れ物に入れられた飲み物。
なんだか教会の聖餐式の時に使う、あの葡萄酒を入れた蓋付きのガラスの瓶を小さくまとめたような入れ物。

(オチ)

気がつくと俺は光の中に居た。まるで空のよう。
それに気がついた瞬間まわりに木々が生え出し、
1本の道のようなものが俺たちの前に続いた。
そう、俺の横に彼女も立ってくれて居たのだ。

その彼女と俺はキャッチボールをしながら
その道をゆっくり、前に、前に、と歩いて行った。
そのとき彼女の容姿は、あの日、テレビドラマに見た
あの牧師さんのような格好をした、少し小太りの、初老の男の人のように見えていた。

女だてらか、それまでキャッチボール・野球を全くしてこなかった経験の無いその初老男(ひと)が投げるからか、女投げのような投げ方でボールを返すその人。とても優しく、ずっと一緒に居てほしいと思わされる。

こんなどうしようもない罪人の俺でも救われたのだ。

ト書き〈自分の部屋〉

はっと目を覚ますと自分の部屋。
俺はこの場面にたどり着くため、もう1度生きてみよう…いや生かされてみようと思った。

何かに、誰かに、しがみ付いて強くなるよりも先ず、信仰において自分が強く成れ。やっぱりそう言われた気がして…

(※)これまでにアップしてきた作品の内から私的コレクションを再アップ!お時間があるとき、気が向いたときにご覧ください^^

動画はこちら(^^♪
【怖い】【意味怖】【ホラー】【喫茶店で上映されてる映画の感覚☕】【ドラマ小説】【生霊系シリーズ♬~心理ストーリー】あの日見たキャッチボール #キャッチボール #夢#人生 - YouTube


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