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青春の夢…

タイトル:(仮)青春の夢…

▼登場人物
●西武加 生琉(にしむか いきる):男性。40歳。独身サラリーマン。
●比嘉世代子(ひき せよこ):女性。享年15歳。事故で他界。生琉の中学時代の元カノ。美女。
●青井春子(あおい はるこ):女性。40代。美女。生琉の本能から生まれた生霊。

▼場所設定
●生琉の自宅:一般的な都内のアパートのイメージでOKです。
●Dream Youth:お洒落な感じのカクテルバー。春子の行き付け。意味は「夢の青春」。
●某商社:生琉が働いている。一般的なイメージでお願いします。
●古パート:世代子が霊として住んでいる。実は数年前に取り壊されている。

▼アイテム
●レジュブネーション:特製のカクテル。飲むと催眠のようなものに掛かる形で構いません。

NAは西武加 生琉でよろしくお願い致します。
(イントロ+メインシナリオ:ト書き・記号含む=5140字)

イントロ〜

皆さんこんにちは。
ところで皆さんには、学生時代に
片想いしていた人なんていませんか?
まぁ大体の人は学生時代に青春を謳歌し、
その後もその時の記憶を心の中に宿し、
「当時はよかった」「あの頃にまた返ってみたい」
なんて感傷に浸りつつ、その後の余生を歩んでいくもの。
ですが時間の経過と共に
その青春時代もやはり冷たく過ぎ去るものです。
今回のお話の主人公も、そんな過去の時代、
自分の青春時代に思いを馳せる人物。
そんな彼のちょっと不思議な体験を覗いてみましょう。

メインシナリオ〜

ト書き〈会社〉

俺の名前は西武加 生琉。
今年40歳になるサラリーマン。
この年までずっと独身で、まぁ結婚する事もおそらくないのだろう。

俺は見ての通り器量が良くなく、周りの流れにも
時代の流れにもついていけない、取り残された人間だ。

別にもう、周りに合わせて生きる気は無い。
例えば恋愛。
俺の恋愛は中学生の頃に終わったんだ。

生琉「はぁ…あの頃は本当によかったなぁ。学生時代か。もう返っては来ないあの時代…」

中学の時に、俺は1度だけ、ある女子から告白された事がある。
彼女は比嘉世代子さんと言って、
クラスの中でもピカイチの美女だった。

そんな美女が俺なんかに告白するなんて…
とその時も今も変わらず不思議に思えているが、
得てして美女と野獣カップルの方が街中でも多いのを見かけ、
彼女もきっとそんな調子で俺に告白してくれたんだ。

今ではそんな風に思っている。
まぁこれも女心のなせる業か。

でも、俺も彼女も当時は学生。
幾らそんな形で付き合えたとしても
家庭の事情で引っ越したりなんかすれば
それだけでカップルの絆は引き離される。
これも学生特有の事情。

せっかくそうして付き合い出した俺達だったが
彼女は父親の仕事の関係で遠くへ引っ越してしまい、
それ以来、段々連絡が途絶え、俺達は他人になってしまった。

当然、俺から連絡を取ったり、やるだけの事はやってみた。
でも彼女の方から連絡がぱったり途絶えてしまい、
俺は捨てられたんだとその時改めて思った。

でも忘れられない。
彼女のあの時の気持ちは本物だった。
その事を今でも俺はしっかり心に覚えており、
だからこそ…

「なんでこんな形で別れなきゃならないんだ」

みたいな気持ちがどんどん膨れ上がって、
俺は今でも彼女の幻影のようなものを追っている。

でも彼女はあれからまた引っ越したらしく、
その後どこへ行ったのかは全く分からない。

そう、つまりは俺の心の中にまだ彼女が居るから、
他の女性はやはり受け付けられず、ずっと独身。
この状態をキープしてしまっているのだろう。

もちろんこんなヤツは珍しい。
とっとと忘れて別の女と付き合えば良いものを…
普通ならそうするのだろうがそれが俺には出来なかったのだ。

ト書き〈カクテルバー『Dream Youth』〉

生琉「ふぅ。まぁ仕方がないか。…おつかれ〜」

その日も仕事を終えて、俺は行きつけの店へ飲みに行く。
もちろん1人。
この会社で働き始めてから、俺はなぜか友達を作らなかった。
これも寂しい心の表れか。

そうしていつもの飲み屋街を歩いていると…

生琉「ん?あれ、こんな店あったっけ?」

いつも歩いていた通りなのに、
全く見慣れない店があるのに気づいた。
名前は『Dream Youth』。
新装のカクテルバーのようだ。

とりあえず入ってみると、何となく懐かしい気がして、
暖かい空気が奥からなだれ込み、
俺はその居心地の良さについ気を許し、
カウンターに座って飲み始めていた。

そんな店の雰囲気から昔を思い出しながら飲んでいた時…

春子「こんばんは。お1人ですか?よかったらご一緒しません?」

と、割と綺麗な女性が声をかけてきた。

生琉「え?あ、はぁ…」

別に断る理由も無かったので俺は鞄を置いていた隣の席を空けると、
彼女はそこにドンと腰を下ろし、
にこっと笑顔を振りまいたかと思えば、
自分も俺と同じようなカクテルを注文し出した。

それから互いに軽く自己紹介し合い、暫く談笑。

彼女の名前は青井春子さん。
本業はコンサルタントをしていたようだが、
サイドビジネスで精神カウンセラー、
またライフコーチといったヒーラーのような事をしてるらしい。

生琉「へぇ、いろんなお仕事をされてるんですね」

春子「フフ♪まぁやりたい事をやってるだけです。私がこういう店に来て、あなたのような人に声をかけるのも実はお仕事の一環でしてね。何か悩みのある人のお話を聴いて、少しでもその心を軽くして差し上げる。今日も実はそんな形でここへ来ていたんです」

生琉「えぇ?じゃ、じゃあ僕に何か悩みがあるとでも?」

彼女は初めから俺に目をつけ、声をかける気でいたらしい。

春子「ウフフ、ごめんなさい。ちょっとストレートでしたか?でも生琉さん、私はその人の背中や横顔を見てるだけで、その人に悩みがあるかどうか分かるんです。まぁ長年こんな仕事をしてるからその辺の行動心理なんかも学べたのかもしれません。その点で私はあなたに悩みがあると確信していました。…ではないですか?」

彼女とそうして喋っている内、段々不思議な気持ちになってくる。
何か全て見透かされてるいるような気になり、
その感覚が次に安心に変わって、今の自分の心の内を
なぜか彼女に打ち明けたくなる。

自分の事を彼女にもっとよく知って貰いたい…
その気持ちを段々強められてしまうのだ。
気づくと俺は、今彼女が言った通り、
自分の今の悩みを全て彼女に打ち明けていた。

春子「やっぱり、そういう事で悩んでらしたんですね」

生琉「ハハwいやぁお恥ずかしい。こんな歳になって、あなたのような人に子供みたいなこと言ってるんですからねぇ」

そのとき俺が言った事は「女性との接点がまるで無い」という事で、
将来の事を思えば
誰かと喋るだけでも良いからそんな接点を持ってみたい…
という事。

つまり中学の時に知り合ったあのヒロイン、
世代子の事は隠して彼女に話していた。

彼女の事まで言ってしまうと
何か核心部分にまで触れられてしまうようで、
少し躊躇し、そこまでは言わなかったのだ。

すると春子さんは…

春子「そうですか。でもそんなお悩みなら簡単に解決できますよ?」

と言って、持っていた鞄から名刺のようなものを差し出し、
そこに記載されたアドレスに「1度アクセスしてみなさい」と言ってきた。

生琉「な、何ですかこれ?」

春子「それは無料チャットのアドレスです。男女兼用ですのでいつでもご利用できる上、気軽に女性の方ともお話しできますよ?もしよければそこでお相手を見つける、と言うのも1つの手かもしれません。いかがですか?試してみられます?」

やはり彼女は不思議なオーラを持っている。
普通ならこんなこと絶対にしなかった俺なのに、
彼女に言われると何か知らないがその気にさせられてしまう。

ト書き〈数日後〉

それから数日後。
俺は春子さんから勧められたそのチャットを利用していた。

生琉「ハハ、凄いなこれ…」

本当に無料で何人もの女性とメール交換する事ができ、
その延長で気が向けばビデオ電話なんかもやり合える。

実際、何人もの女性と俺はメール交換やビデオ電話を繰り返し、
そこで特定の相手を見つけようとしていた。

「中学校の時の残像なんかに縛られてちゃダメだ」

そんな事も思いつつ躍起になっていたのだが、
やっぱり駄目だった。

生琉「どの人も違う…やっぱり安心が無い…」

となってしまい、新しく出会う人出会う人全てに
自分が欲しいと願う心の安らぎが無い事を知ってしまった。

そうなのだ。
俺はきっとあの世代子に、その安心を見ていた訳だ。
だから彼女の事がずっと忘れられず、
また彼女のような人に会いたい…
そう思ってやまない男になってしまった。

結局、俺はそのチャット利用をやめていた。

ト書き〈バー〉

そして又あのバーへ行った。
行くとあの席で、また春子さんが1人飲んでいるのを見つけた。

そこで俺は事情を全て話し、もう1度彼女に相談してみた。
今度は、あの世代子の事も話に含めて。

春子「そういう方が居られたんでしたら、なぜその方の事を早く言って下さらなかったのです?」

生琉「え?あ、いやぁ…」

正直を伝える前に彼女は俺の気持ちを察してくれ…

春子「ごめんなさい、分かってますから♪」

そう言った後、その事についての相談に本気で乗ってくれた。

そして…

生琉「え、ええ!?今、なんと…?」

本当に驚く事を彼女は言ったのだ。
なんと、あの比嘉世代子の事を彼女は知っていると言い、
おまけに今どこでどう過ごしてるのかも知っていると言う。

生琉「ど、どうしてあなたがそんな事まで…」

当然そんな疑問も湧いたが、俺には「世代子に会いたい」
と言う気持ちのほうが遥かに大きかったのもあり、
そんな疑問は後回しにして吹き飛ばし…

「ご存知ならぜひ引き合わせて欲しい」

そんな我儘勝手な事を普通に言っていた。

春子さんが世代子の事を知っていたその事実。
この時点で既に有り得ない事だったのだろう。

でも春子さんにさっきから勧められて飲んでる
「レジュブネーション」というカクテルで
すっかり酔いが回ってしまったのか。

俺にはもうまともな判断力も何も無く、
ただ「世代子に会いたい」と言うその気持ちだけが
俺の全身を覆い始めていたのだ。

ト書き〈再会〉

そして…

春子「良いでしょう。ではあなたと世代子さんを引き合わせて差し上げましょうか」

生琉「ええ!?ほ、本当ですか!」

俺はもう信じられないぐらいウハウハだった。
こんな気持ちはもう俺にしか分からない。
他の奴らが見ればきっと狂ってる…
としか思えない光景に映るだろうか。

春子「ええ。でも良いですか?時が経つと言う事は、それだけ相手の方にもいろんなエピソードや出来事が起きており、それを踏まえた上でその人に会う…と言う事になります。いま世代子さんがどんな状況にいらっしゃるのか、それを踏まえた上で生琉さん、あなた、彼女を包容して差し上げる覚悟はおありなのですよね?」

何かまともな事を言われた気がしたが、
俺の心はもう一辺倒。
ただあの時に植え付けられた俺の心の中の永遠のヒロイン、
世代子に会いたいと言う気持ちだけが暴走し始めた。

生琉「ええ、当然です!彼女の全てを受け入れたいと思ってます。だからどうか会わせて下さい」

少し前に出会っただけの春子さんに俺はこんな事を言っている。
つまりそれだけなりふり構わず、俺の心は本気だったらしい。

ト書き〈オチ〉

そして俺は春子さんに連れられて、
郊外にひっそり佇むアパートへ行った。

生琉「え?こ、こんな所に住んでるんですか、彼女…?」

見るからに荒れ果てた場末のアパート。
誰も住んでないと思うのが普通の光景。
廃屋寸前にあるようなそんなアパートだった。

春子「ええ。世代子さんは今、このアパートの2階…204号室に1人で住んで居られます。結婚もして居りませんし独身のまま。あなたがその気持ちで彼女を迎えれば、きっと彼女は喜び、あなたによって満たされるでしょう」

生琉「(ゴク…)」(唾を飲む音)

春子「生琉さん、どうしました?彼女を包容する覚悟があると言ったのはあなたですよ?でも、もしお嫌でしたらどうぞこのままお引き返し下さい。私は留(と)めません。あなたの人生です。あなたがお決め下さい」

彼女にそう言われ、俺は少し負けん気を出してしまい、
また世代子を本気で愛していた自分を取り戻し…

生琉「…じゃあ行ってきます」

春子さんには「もう帰っていいですから」と伝え、
俺はそのまま204号室へと上がっていった。

そして部屋の前に立ちドアノブを回してみた。
開いている。
少し開けてみると、
中から信じられないくらい冷たい空気が漂ってきた。

俺は少し嫌な気もしたがそれから一気にドアを開け
思いきって中へ入った。

すると目の前に、体がドロドロに溶けたミイラのような女が現れた。

世代子「…待ってたわぁ…来てくれたのねぇ…ありがとうぉ…」

生琉「う…うわあぁあ!!」

そのままドアが閉まり、在った筈のこのアパートまで消えたらしい。

ト書き〈更地になったアパートの跡地に1人佇ながら〉

春子「フフ、生琉さんも分かったかしら?世代子さんは実は、25年前に事故に遭い他界していた。そう、ちょうど彼と連絡を取り合わなくなった時期ね…。私は生琉の『過去に出会ったあの理想の彼女に会いたい』と言う欲望と本能から生まれた生霊。その純粋な願いを叶える為だけに現れた」

春子「だから私は世代子の霊を呼び出し引き寄せて、数年前に取り壊されたこのアパートで、とりあえず生琉に会わせてあげた。いちど別れた相手なら、その人がどこでどう過ごしてきたのか、それを随分経った後に正確に知るのは難しい事」

春子「でも…愛に年齢は関係無い、愛に時間差は関係無いと言うのなら、きっとこの状態でも2人は幸せになれるわよね?お2人共、過去に紡ぎ合ったあの王国で、末永くお幸せにね…」

動画はこちら(^^♪
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