健康の独房
タイトル:健康の独房
▼登場人物
●毛奈下 健人(けなげ たけひと):男性。45歳。人の100倍健康に気遣う。神経質。
●尾々羅 佳代(おおら かよ):女性。40歳。健人の理想と欲望から生まれた生霊。
▼場所設定
●街中:健康ジムや公園など一般的なイメージでOKです。
●健人の自宅:都内にある一般的なアパートのイメージで。
▼アイテム
●栄養サプリドリンク:佳代が健人に勧める特製のサプリ。これを飲むと銅像になりその中で安眠できる。銅像だから壊されない限り生き続ける。病気になる事もない。
NAは毛奈下 健人でよろしくお願い致します。
イントロ〜
あなたは自分の健康を気遣いますか?
でも余りに気遣いすぎると、人は時として人間らしさを失うこともあるようです。
メインシナリオ〜
俺の名前は毛奈下 健人(けなげ たけひと)。
俺もこれまでそれなりに生きてきて、自分の健康を気遣うようになった。
あれをしちゃだめ、これをしちゃだめ、自分の生活にいろいろ規制を設け、
とにかく健康的にありたい、その願い1つでこれまでやってきている。いっときからそうなったのだ。
昔はそんなことなかったのに、若い時はこんなこと考えなかったのに。
ふとそう考え、今の自分がやり切れなく思える時もあるが仕方がない。
ある時俺は健康ジムで、1人の女性と出会った。
彼女の名前は尾々羅 佳代(おおら かよ)さんと言い、
都内でメンタルヒーラーやーライフコーチの仕事をしていたようで、
なんだか話が弾み、知らず内に友達になっていたのだ。
でもしばらくして仲違いしかけた。
ト書き〈公園〉
佳代「本当に毛奈下さんって、神経質なんですねw何もそんなになってまで、健康ばかりを追い求める必要もないと思いますけど?」
健人「え?」
佳代「そんなに前つのめりになってると、ノイローゼになっちゃいますよ?」
これまでは俺に全面的に合わせてくれていた…
これがはっきり分かり、彼女とはもう話が合わない、
そう思い込んで俺はとりあえず彼女の前から立ち去ろうとした。
でも俺が彼女とセッションを組むようになったのは理由があり、
それは俺が自分の健康のことで落ち込んでいた時、彼女がくれたサプリメントがやたらと効いて、
それで助けられた…そう思ったから彼女に一種の救いのようなものを見ていたのだ。
それがオーラとなり、彼女を取り巻いていた。
そのオーラに引き寄せられる形で俺は彼女のそばにずっと居たのだ。
ト書き〈数日後〉
でもそれから数日後。俺は彼女と別れたが、また彼女と会いたくなってしまった。
実は俺はパニック症を患い、自律神経失調症でもあったので、
毎日どこかが調子悪く、気分の悪い思いをしていた。
こんなのが続けばノイローゼになるのは仕方がなく、そんな時、自分を救ってくれる人がどうでも欲しい!
その思い1つで、彼女と最後に別れたあの公園に来ていた。
するとなんと、彼女は俺が前に座っていたベンチに座っている。
俺はこれまでの悩みに対する鬱憤を、全て吐き散らすように彼女にぶつけた。
「何がどうでも健康でありたい!」
「もう2度と不安・恐怖・苦しさを味わいたくない!」
「今のこの俺を救って欲しい!!!」
この持病で不安がピークに高まっていたのだろう。
自分では中々どうする事もできず、彼女に全面的に助けを求めた。
彼女はそれでも俺をなだめ、心をなんとか丈夫に持つように勧めてきたが、
そんな事はこれまでに何度もやってきた。やってきた上での相談なのだ。
そんな命乞いのような相談をしているうちに彼女はようやく…
佳代「ふぅ。仕方ありませんね。それではこちらをお勧めしましょうか?」
と1本の栄養ドリンクのようなものを差し出してきた。
それはサプリメントだったらしく、主に心を強くしてくれるもの、安定させてくれるものらしかった。
前に実際、俺を助けてくれたこともあったので、俺はその場でそれを飲み干し、ふう…と溜息をついた。
佳代「おめでとう。これであなたはもう2度と、同じことで悩む必要は無いわ…」
(銅像の中で安眠する健人)
佳代「フフ、私は彼の欲望と理想から生まれた生霊。何が何でも健康になりたいと言う彼の本望を叶える為に現れた」
佳代「最後にあげたサプリメントは、彼を銅像に変えてしまうもの。でも、たとえ銅像になっても彼はその中で生きて居り、安眠を貪るように心の安定を図れてしまう。そして人間のように何も食べなくても飲まなくても生きて行ける。文字通り、何もせずじっとしたまま、壊れない限り、ずっと生きられるのよ」
佳代「あれもしちゃダメこれもしちゃダメ、その規制に自分を縛り続けた結果がこれ。この状態を彼は望んで居たのかしら?」
動画はこちら(^^♪
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