心の隣人
タイトル:(仮)心の隣人
▼登場人物
●角和手 烈(かくわて れつ):男性。21歳。大学生。コミュニケーション障害。裕子が好き。
●岡田裕也(おかだ ゆうや):男性。21歳。烈の大学の友達。烈の事を嫌っている。本編では「岡田」と記載。冒頭で登場するだけ。
●柏木裕子(かしわぎ ゆうこ):女性。21歳。烈の大学の友達。優しい印象。
●主治医:男性。50歳。裕子の心療内科での担当医。一般的なイメージでOKです。
●瀬土羽沙(せどうさ)ルカ:女性。20代。烈の理想と欲望から生まれた生霊。
▼場所設定
●某私立大学:烈たちが通学している。一般的なイメージでOKです。
●Assimilation of Mind:お洒落なカクテルバー。ルカの行きつけ。
●裕子の自宅:都内にある一般的なアパートのイメージでOKです。
●街中:デートスポットや心療内科など一般的なイメージでお願いします。
▼アイテム
●Real Life Conversation:ルカが烈に勧める特別な錠剤。これを飲むと心が柔軟になり現実での会話能力も向上する。但し使用期限は3ヶ月。
●Turn into Meat:ルカが烈に勧める特製の液体薬。これを飲むと特定の人の血肉となって同化して、その人の心の中に永遠に住む事になる。
NAは角和手 烈でよろしくお願い致します。
イントロ〜
あなたはコミュニケーション障害という言葉を知っているでしょうか?
まぁネットやニュースなんかでよく騒がれている言葉でもありますし
知らない人のほうが少ないかもしれません。
このコミュ障と言うのは元々ネット上でのスラングとして用いられ
今では医学的にも認められた立派な障害として知られています。
今回は、この症状に罹ってしまった
或る男性にまつわる不思議かつちょっと悲惨なお話。
メインシナリオ〜
ト書き〈大学にて論争〉
岡田「ったくお前はもうちょっと空気を読めよ!なんで今いきなりサメの話をし始めんだよ!このバカ!」
裕子「ちょっと、バカは言い過ぎじゃない!?烈くんだって皆と喋りたいだけなんだから!…でも烈くんも周りの空気をちゃんと読んで、皆の会話に付き合うようにしてね」
烈「あ、ああ…ごめん(クッソォ、寄ってたかって…。これじゃ俺がまるでバカみてぇじゃねぇか…)」
俺の名前は角和手 烈(かくわて れつ)。
今年、21歳になる大学生。
俺はいっときからコミュニケーション障害に罹ってしまい、
初めは自分でも気づかなかったが最近になり、
その症状を実感するほど生活に支障まできたすようになってしまった。
初めの頃は人の話を聞くのが段々苦手になる自分を覚え、
そのうち自分の話したい事だけを話すようになり、
周りの空気を読めなくなってしまった。
そうしたのは、自分のコミュニケーション能力を周りと比較する上、
ひどく自信を失くしてしまったから。
話してるだけで緊張してしまい、頭が真っ白になり、
ややパニック状態で、
自分が責任をもって話せる事だけを話してしまう。
その繰り返しが習慣付いて、気がつけばコミュ障だ。
総合病院から心療内科まで通院したが、はっきりそう診断された。
ト書き〈カクテルバー〉
そんなある日の事、俺はもうヤケになり、
友達なんかにはもう寄り付かないまま、1人で飲屋街に来ていた。
それまで結構、友達付き合いが多かった俺。
だから余計に今の自分の惨めさを思ってしまう。
そうして歩いていた時…
烈「ん、こんな店あったのか?」
全く見た事ないバーがある。
名前は『Assimilation of Mind』。
結構キレイな店で、
「マインド」という言葉に惹かれ俺はその店に入った。
そしてカウンターにつきいつものように飲んでいた時…
ルカ「こんにちは♪お1人ですか?もしよければご一緒しません?」
と1人の女性が声をかけてきた。
彼女の名前は瀬土羽沙(せどうさ)ルカ。
都内でライフコーチやメンタルヒーラーの仕事をしていたようで、
本業では精神カウンセラーもしていると言う。
烈「カウンセラーさんなんですか?」
俺はちょうど心を病んでいたので
彼女の存在が何となく有難く、それから少し又、
「自分の話を聞いて貰いたい…」
そんな気になってしまい、彼女を隣に迎えた。
でも喋っていると段々不思議な気になってくる。
「何となく昔から一緒に居た人」
のような気になってきて、そのせいか心が安らぎ
彼女になら自分の事を何でも話せてしまう。
緊張せず、自分の思う事を心残さず話せる。
暫く前の自分の状態まで思い出し、
彼女をどこかで「心の拠り所・良き理解者」
のように思っていたのだろうか。
俺はそのとき自分の悩みを全部彼女に打ち明けていた。
コミュ障の事。
そしてもう1つ不思議だったのは、彼女に対して
普通の女性に感じる魅力を思わなかった事。
つまり恋愛感情が湧かなかったのだ。
ルカ「そうなんですか?会話が…」
烈「ええ。この症状になったのはつい最近の事なんですけど、もう随分前のように思えてしまいます…」
空気を読めない会話を繰り返す。
人前で話しているとパニックになる。
誰かの話を遮ってまで自分の話題を押し通す。
こんな事の繰り返しで当然周りから嫌われ、
その緊張が会話そのものへの遠慮を生ませる。
だから最近は極端に人と話さなくなった。
政治の話題でサメの話をしたあの会話も、
本当に久しぶりに友達と話した時の事。
自分を改めて振り返ってみれば、
コミュ障の特徴に悉く当てはまる。
そんな事をつらつら話していると彼女は…
ルカ「分かりました。さぞお辛いでしょう。ここでこうしてお会いできたのも何かのご縁です。私がそのお悩みを少し軽くして差し上げましょうか?」
烈「え?」
そう言って彼女は錠剤を差し出し俺にこう言ってきた。
ルカ「これは『Real Life Conversation』と言う特別なお薬で、それを飲み続ければきっと今の悩みを軽くしてくれるでしょう。あなたが誰かと会話する時、心が柔軟になり、周りの空気もちゃんと読めながら会話ができます」
初め何を言ってるのかよく解らなかったが、
でもやっぱり彼女は不思議な魅力の持ち主で、
その言葉がスッと心に入ってくる上、俺の理解を助けてくれた。
彼女の言ってる事が隅々まで解ったのだ。
これも少し不思議な体験だった。
烈「本当に、そんなふうになれるんですか…?」
ルカ「ええ、信じて下さい。必ずあなたは変われます。でもその薬には使用期限がありまして、その期間は3ヶ月。その3カ月間で薬の効果を心の糧にして、あなたはその後、自分の力で会話能力を身に付けていって下さい。そう、この場合の使用期限と言うのは『その薬を利用できる期限』の事です」
俺が今貰ったこの薬は効能が強く依存性も強いので、
余り長期間服用する事はできない…彼女はそう言った。
でも今の自分が少しでも良いほうへ変われるのなら…
その一心で俺は薬を受け取り、無料と言うので更に有難く、
それからその薬の効果を試してみた。
ト書き〈3ヶ月後〉
それから3ヶ月間、俺は本当に変わっていた。
裕子「烈くん、最近変わったね♪」
烈「え?そう?」
裕子「うん。なんかとても余裕があるって言うか、一緒に居て安心できる…みたいな♪」
烈「あ、ははwいやぁ嬉しいなそう言ってくれたら」
同じ大学の友達の柏木裕子(かしわぎ ゆうこ)から俺はそう言われ、
とても心が温かくなった。
こんな感覚、本当に久しぶりだ。
実は彼女、俺が前から好きだった子だ。
裕子は人が出来ていて頭も良く暖かく、
俺がこんな状態になっても見捨てないで居てくれた。
皆から責められても、庇ってくれるのは彼女だけ。
そんな彼女に俺は純粋に恋をしていたようで、
友達が寄って喋って居てもその中に彼女を見つけたら
自然と足がそっちへ向かい、皆に混じって話そうとしていた。
正直に言えば、彼女と一緒に居たかっただけなんだ。
そんな彼女と俺は良い仲になり、
いっときから恋人のような関係になっていた。
(デート感覚?)
裕子「ねぇ、今度ここへ行ってみない?」
烈「ああ良いよ♪あ、どうせならそのついでにこのレストランでディナーでもどう?君、前から行きたがってたろ?」
裕子「あ、こっから近いのね?うん♪有難う、嬉しい♪」
こんな感じで2人一緒にどこかへ行く事も多くなった。
でも、そうした日々を過ごして3ヶ月。
俺はまた変わったのだ。
烈「クソ…あれぇ?なんだろ…なんか思うように言葉が出てこない…それに緊張するし…」
それまでスムーズに出来ていた裕子との会話が出来なくなった。
また元の自分に戻りかけていたのだ。
この時、あのルカさんの言った事を思い出していた。
「薬を服用できる期間は3ヶ月」。
俺はその薬を飲み干しておりもう手元に無い。
その薬の効能を糧にして、
今後の自分の会話能力を自ら伸ばしていくなど、
とてもじゃないが出来るもんじゃなかった。
きっと薬に頼り過ぎていたのだろうか。
ト書き〈カクテルバー〉
そんなある日、俺は又あのカクテルバーへ立ち寄った。
ルカさんに会えるかどうかは1つの賭けだったが、
どうしても会いたくて、もし会えたらあの薬をもう1度欲しい…
その一心で店に飛び込んだのだ。
すると彼女は居てくれた。
ルカ「あら、あなたは確か…」
烈「ルカさん!お、お願いがあるんです!」
それから俺は無心した。
でも彼女は…
ルカ「それはダメです、出来ません。前にも言いましたがあのお薬の服用期間は3ヶ月。それを過ぎてしまうとあなたの身にとんでもない事が起きてしまいます」
烈「何ですかそれ!薬って人を助けるものでしょう!?こんな時に助けてくれないで一体何の薬だって言うんですか!ねぇお願いです!あの薬をもう1度僕に下さい!お願いですから!」
俺は何度も食い下がり彼女にそう訴えていた。
今あの薬を貰えなければ、
せっかく積み上げてきた裕子との関係が崩れてしまう。
彼女を失う事が怖く、また嫌われたくなく、
俺はどうしても自分の会話能力を助けるあの薬が欲しかった。
するとルカは漸く折れてくれたのか。
ルカ「ふぅ。仕方ありません。そこまで言われるのでしたら何とかしましょう」
そう言って彼女はあの錠剤の代わりに
1本の液体薬を取り出してそれを俺に勧めてこう言ってきた。
烈「こ、これ何ですか…?」
ルカ「それは『Turn into Meat』と言う特製の液体薬で、前にお渡しした錠剤と同じような効果を持ちます。いえ前のお薬より更にその効能は強く、あなたの今の悩みはすっかり消される事になるでしょう。その効果の強さは薬の効能期限にあります。その期限は永遠で、あなたのこれまでの生活も文字通り、すっかり変わる事になるでしょう」
「今のこの悩みがすっかり消されてしまう」
その言葉だけを胸に留め、俺はその液体薬をまた無料で受け取り、
その場で一気に飲み干していた。
烈「はぁ…これで裕子と一緒になれる…」(感動しながら)
そう思いつつ。
ト書き〈数日後の裕子の自宅で〉
それから数日後。
裕子の自宅に高級ボンレスハムが届いた。
裕子が前に通販で注文していたそのハムだ。
裕子「わぁ美味しそう〜♪」
裕子はそれを早速調理して食べていた。
裕子「うん!めっちゃ美味しい♪…でも烈くん、なんで連絡くれないのかしら。こんなハムも2人で一緒に食べたらもっと美味しいのに…」
そう、俺はあの日ルカとバーで別れてからその後、
裕子とは連絡を取っていなかった。
この数日間、俺は行方不明者のようになっていたのだ。
そしてハムを食べたその直後、裕子の体に異変が起きた。
烈「やぁ裕子♪これからはずっと一緒だね。君の中に僕は居るから、もうずっと離れる事もないんだよ。離れていたら、人間は自分の心を誰かに全て打ち明ける事はできない。でもこうして心が同化していたら、僕の心の中は全て君に届いて伝わって、今話してる声もちゃんと聞こえるだろう?僕の心の隅々まで、ちゃんと今、君に見えてるよね?感じる事ができているね?」
裕子「な…なにこれ…」
裕子の心の中から俺の声が聞こえ続ける。
俺の心の隅々が裕子の体内から湧き上がり、それが裕子に伝わり、
彼女は俺の隅々までを理解する事ができていた。
まるで以心伝心を超えた文字通りの人間の同化。
でもその後、裕子はすぐに狂った。
(心療内科)
主治医「ちょっと落ち着いて!落ち着いてくれなきゃ出来る治療も出来ない!」
裕子「嫌ぁあぁ!!早く!早く何とかして下さいよ!今も彼の声が聞こえ続けてるのよ!…もう出て行って!私の中から出て行ってよお!出て行けぇ!」
主治医「ちょっとほんとに落ち着いて…!」
ト書き〈心療内科を外から眺めながら〉
ルカ「ふぅ、大変ねぇ。裕子とあの主治医は、烈を裕子の中から追い出す事に今後、その治療をかけて尽力して行くのでしょう。まさか裕子があんなに狂っちゃうなんてねぇ」
ルカ「私は烈の理想と欲望から生まれた生霊。彼の夢を叶えてあげる為だけに現れた。彼のコミュニケーション障害は心の奥深くから来ていて、ちょっとやそっとで治るもんじゃなかった。それは彼も薄々気づいていた事だったろう。だからこそあの薬を無心し、私があれだけ言った危険を乗り越えてまでその薬に頼り続けようとした」
ルカ「私が最後にあげたあの液体薬は、人を肉に変えるお薬だったの。その肉は特定の人の血肉となって心に宿り、今、烈が裕子にアピールし続けているようなあんな状態にさせてしまう。心を同化させ、精神も肉体も同化して、1人の人間に落ちつかせて行く…」
ルカ「でも自然の摂理に逆らう事は、全ての人にとって副作用を生むもの。裕子はその副作用で今あれだけ苦しんでいる。実は、裕子は烈の事をそれほど想っていなかった。恋人としては見ていなかったのよ。唯の良い友達・理解者、その程度だったのよね」
ルカ「それを偏見で烈は『自分への愛』と受け止めていた。コミュニケーション障害と言うより心の障害と言ったほうが良かったかしら…烈の場合は。つくづく、思い込みと言うのは恐ろしいもの。人を盲目にして、その人の周りに居る誰かさえ、あんなふうに狂わせてしまう。愛した人の内から必死に追い出されようとしている烈の今の心境は、彼にしか解らないでしょう。でも烈への記憶とあの液体薬の効果がある限り、裕子の症状はもう治る事は無い。今こそ責任をもって、その裕子を落ち着かせることね、烈くん」
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