健康とデリケート
タイトル:(仮)健康とデリケート
▼登場人物
●不和(ふわ)ミツ子:女性。45歳。健康に人何百倍も気遣う。そのため不安や恐怖も大きい。
●主治医:女性。40代。こちらも一般的な商社のイメージでお願いします。
●御子柴真司(みこしば しんじ):男性。45歳。ミツ子の会社の同僚で結婚して夫になる。
●須久井益代(すくい ますよ):女性。40代。ミツ子の理想と臆病から生まれた生霊。
▼場所設定
●産婦人科:一般的な商社のイメージでOKです。
●Bastion of Health:都内にあるお洒落なカクテルバー。益代の行きつけ。本編では「カクテルバー」とも記載。
●街中:ミツ子が働く会社も含め必要なら一般的な商社のイメージでOKです。
▼アイテム
●Bridge to Health:益代がミツ子に勧める特製のカクテル。これを飲むと心が前向きになる上で身体的状況も回復し生活も変えられる。でも期限付きでこの辺りはニュアンスで描いてます。
●Health and Delicate:益代がミツ子に勧める特製のカクテル。これを飲むとその後2度と健康で悩む事はない(心が強くなり体も丈夫になる形で)。でも事件や事故に対しては無力。
NAは不和ミツ子でよろしくお願い致します。
イントロ〜
あなたには普段、悩み事がありますか?
歳を取るにつれて悩み事の1つになるのがやはり健康。
あなたは自分の健康をどう思ってるでしょうか?
若い内は余り考えないその事でも、
歳を取ると自然に考えるようになり
デトックスや何かのヒーラーにあやかるなど、
いろいろ努力したりするものですよね。
今回はその健康への不安に取り憑かれた
ある女性にまつわる不思議なエピソード。
メインシナリオ〜
ト書き〈産婦人科〉
ミツ子「え!?せ、先生、それ本当ですか!?う、嘘でしょう!?」
主治医「いえ、残念ですが…」
私の名前は不和(ふわ)ミツ子。
私は今日、人生を全て覆されるような
そんな衝撃的な事を主治医から聞かされた。
女性特有の病気だが不治の病と聞かされて、
身も心もボロボロに朽ち果てそうになりながら、
人生終わった…心の中で何度もそう呟いた。
それからと言うもの私は
自分の健康への不安に取り憑かれたようになり、
何をして居ても心の不安が膨大に大きくなって、
もう生きた心地がしなかった。
もうどこの病院へも通いたくなくなり、
それからはずっと細々(ほそぼそ)内職をするようになって
今まで働いていた会社へも行かず、無断欠勤を繰り返し、
その延長でクビになっても構わない…
そんな人間失格のような生活を送るハメになっていたのだ。
ミツ子「はぁ…。もうダメだわ私…。この人生を送るぐらいなら初めから生まれたくなんかなかった…!」
私は今、45歳。
これまでずっとキャリアウーマンでやってきた。
いっときから仕事に悦びを持ち結婚は諦め、
1人でも満足できる人生を送れたらそれで良い…
そう決めてこれまで孤独にも耐え、自分なりに懸命にやってきたのだ。
それが挙句がこのザマ。
自分の人生は一体何だったのか…
そう、私はこのとき初めて知ったが、
私は人より何百倍もの臆病だったのだ。
何か健康を少しでも損なう事に強烈な不安を覚える。
私はそれから自律神経失調症・パニック症にもなってしまった。
ト書き〈カクテルバー〉
そんなある日、私は飲みに行った。
これまで懸命に働いてきたからお金だけはある。
そのお金を全て使い果たすつもりで、
これからは自分の趣味に生き、極力控えていた
お酒を飲む事にも、もう歯止めをかけなかった。
そうして久しぶりに飲み屋街を歩いていた時…
ミツ子「あれ?こんなお店あったんだ…」
全く知らないバーがある。
名前は『Bastion of Health』。
なんだか雰囲気が良く、見た目も綺麗だったので、
私はついそこに入りカウンターについて1人飲んでいた。
していると…
益代「こんにちは。お1人ですか?もしよければご一緒しません?」
と女性が声をかけてきた。
見ると結構キレイな人。
別に断る理由もなく私は即OK。
まぁ誰かに悩みを聞いてほしいと言う思いもあったから。
彼女の名前は、須久井益代(すくい ますよ)さんと言った。
都内でメンタルヘルスの仕事をしていたようで、
こんな場所でも悩みを抱えてそうな人に声をかけ、
自分なりの仕事をしていたと言う。
ミツ子「ハハ、私が悩みを抱えてる事、分かったんですか?」
益代「フフ、ええ。長年この仕事をして居りますと、外から人を見ただけでその心の内側が分かるようになるものです」
暫く喋っている内に気づいたが、
彼女は何となく不思議なオーラの持ち主だった。
何かずっと一緒に居てくれた人…のような気がしてきて、
そうして話している内、段々と自分の事を打ち明けたくなる。
こんな状態で居たからかもしれないが、私は心の正直に従い、
今の自分の悩みを全部彼女に打ち明けていた。
益代「やっぱりそう言う悩みを抱えておられたんですね」
ミツ子「ええ。もう私、今まで一体何の為に生きてきたのか…ほんと分からなくなっちゃいます。もう心が狂っちゃいそうなんですよ…」
今まで一生懸命働いてきた事。
その挙句にこんな不幸が訪れた事。
その影響でもう会社にも行ってない事。
内職でこれから生活費を稼ぎ、
何とかやっていこうとしているが、
それもおそらくままならなくなる事。
とにかくそのとき考え得る限りの事を全て彼女に伝え、
今のこの自分の状況を赤裸々に告白していた。
すると彼女は何を思ったのか。
「分かりました」と言ったかと思えば、指をパチンと鳴らし、
その店のマスターにカクテルを一杯オーダーしてそれを私に勧めた。
ミツ子「何ですかこれ…?」
益代「フフ、ここへはその心の鬱憤を晴らす為に飲みにいらしたのでしょう。それ、私の奢りです。どうぞお飲み下さい。でもそれは『Bridge to Health』と言う特製のカクテルでして、そんじょそこらで飲めるような代物じゃありません」
ミツ子「…は?」
益代「それを飲めばきっと今のあなたの心に光が差し込み、また新しく嬉しい転機がやってきてくれ、あなたの生活そのものが変わるでしょう。フフ、まぁ騙されたと思って飲んでみて下さいな。騙しませんから…」
彼女は本当に不思議な人だ。
普通ならそんなこと信じるわけもないのに、
彼女に言われると何故だか信じてしまう。
そして私はそのカクテルを手に取り、一気に飲み干していた。
ト書き〈誤診〉
それから数日後。
私は確かに益代さんが言った通り、
心の中に活力のようなものが湧いてきて、
それまでの暗さがどこかへ消え、また自分なりに未来へ向けて
生活を営むようになっていた。
会社には何度もお詫びをしてまた戻らせて貰い、
奇跡的にまた働けるようになってから私の生活はまた助けられ、
それから少し積極的に自分の夢も追うようになっていた。
そう、つまり心の中でずっと眠らせてきた結婚への夢を、
私は今度の経験をバネにして本当に叶えてみよう…
そんな風に思えるようになったのだ。
(産婦人科)
それから後日。
私はまたあの産婦人科へ来ていた。
これまで通い続けてきたこの病院。
もし夢を本気で追うなら、今のこの状態をなんとかしなきゃならない。
それを先生と相談し、何とか助かる道は無いものか?
それを徹底的に話し合おうと思ったのだ。
でもこの日、本当に信じられない事が私に起きた。
ミツ子「え?…それ、本当なんですか…?」
主治医「ええ、医者である私がこんな事を言うのも何ですが、本当に信じられない。あなたの病気はすっかり治ってます…」
この前、徹底的に検査して言われたあの病が、
更に徹底的に検査してみたところ、どこにも異常は無いと言う。
子供を産める体になり、私はまるで甦ったかのように
また自分の理想と将来の夢を追う事ができるようになったのだ。
誤診だったのか?…とも思ったが、
その辺りの事はあえて聞かなかった。
それ以上に喜びのほうが大きく、
もうあの恐怖を2度と思い出したくない…
その気持ち1つで居たから。
ト書き〈華やかな生活〉
それからまた人生に張り合いを持つ事ができた私は、
それまでずっと一緒に働いてきた会社の同僚、
御子柴真司(みこしば しんじ)さんと付き合うようになり、結婚の約束をした。
ミツ子「…なんだか私凄いじゃない。こんなに幸せで良いのかしら」
いっときから見れば本当に華やかな生活。
こんな未来が自分を待っていたのかと思えば、
あのとき早まって人生を卒業しなくてよかった!
そう思ったのも本当だ。
ト書き〈カクテルバー〉
それから私は又ある日の仕事帰り。
1人であのカクテルバーに立ち寄っていた。
すると私が期待した通り、益代さんが前と同じ席に座り
1人で飲んでいた。
ミツ子「益代さん、いらしてたんですね!よかった。私どうしてもあなたにお礼を言いたくて」
私はあれからの事、そして今の事を全部彼女に伝え、
とにかく心の底から感謝しつつ
彼女とこの喜びを分かち合おうと思った。
益代「そうでしたか♪それは本当によかったです」
彼女も私と一緒になって喜んでくれ、
これからやってくる真司さんとの明るい未来を祝福してくれた。
でもそれから1つ、私に注意すべき事も教えてくれた。
益代「こんな喜ばしい時にこんな事を言うのも何ですが、喜びの頂点に居る時に限り人の心というのは思わず隙を作ってしまうもので、それまでしなかったような無茶をして、自分の身に破滅を招いてしまう事もあります」
ミツ子「え?」
益代「フフ、良いですかミツ子さん。人生にはいろんな事が起きるものです。たとえ健康に問題がなくても、その生活環境に新たな問題がやってくる事もあり、その時こそ自分の力で何とか乗り切っていかなければならないものですが、そのとき更なる欲望に駆られ、無茶な夢を持とうとはしない事です」
一体何の事を言われているのかその時はよく解らなかった。
確かに私は今幸せの絶頂にあって、
そんな時にこんな事を言ってくる彼女に対し
少し怒りの感情のようなものも芽生えたが、
でも彼女の言う通り、これからは堅実に自分の力で、
また愛する真司さんと一緒に様々なトラブルを乗り越えて行く…
その事は本当だと心に秘めて、
そのとき彼女が言った事をそれなりに真摯に受け止めようとした。
ト書き〈トラブル〉
でもそれから数日後。
私の身に新たなトラブルが起きたのだ。
(産婦人科)
ミツ子「ええ?いや、でもこの前、ちゃんと治ったって言ってたじゃないですか!」
主治医「ええ、あの時は確かにそうだったのですが、あれから少し調子を崩してしまったようで…」
今度は大病・難病の種類ではなかったが、
子供を産みづらい体になっていたのは本当で、
じっくり治療する事はできたがその治療の果てに
やはり私は子供を産めない体になってしまう?
…またそんな強烈な不安と恐怖に襲われたのだ。
ミツ子「ど、どうにかして下さい!ア、アレじゃないんですか、又この前みたいに見立て違いって事があるんじゃないですか!?」
私はそれから思いきり食い下がり、
「絶対そんな事はない!」と言う思いのもと、遂に…
ミツ子「もうイイです!アンタなんかとんだヤブ医者よ!もうここには絶対来ません!」
そう怒鳴るように叫んで私は診察室を飛び出した。
ミツ子「冗談じゃないわ!まるで人をおちょくってるような感じじゃないこれじゃ!」
でもそれから幾つか他の病院へ行っても
私の状態は変わらなかった。
ミツ子「嘘でしょ…絶対嘘よこんなの…」
1度は完璧に治っていたこの体。
その経験があるからか、今私を襲っているこんな状況を
どうしても信じる事が出来ないでいた。
ト書き〈カクテルバー〉
そして私は何を思ったか、又あのバーへ行き、
もう病院も先生もアテにならないからと
私はあの彼女…益代さんに全信頼を置き、
彼女に救って貰おうと思ったのである。
店に入ると、やはり彼女は前と同じ席でお酒を飲んでいた。
彼女を見つけるや否や私はすぐに駆け寄り…
ミツ子「益代さん!お願いです!今の私を、こんな状況をどうにか変えて下さい!あなたならきっと出来るんですよね!?出来るんでしょう!?」
はたから見れば
私はもう狂ってるように見えたかもしれないが、
でもそうする事が私の正直だった。
「彼女ならきっと何とかしてくれる」
そう信じて疑わない私の心に対し、彼女は応えてくれた。
益代「ミツ子さん。今度は治療すればちゃんと治るのに、そんなに取り乱さなくても良いのでは?前にもお話ししましたが、こんな時こそ愛する人と支え合い、たとえ2人の子供ができなくても愛の力で乗り越えて行く…その心を育てる事のほうが大事ではないですか?」
初めにこう言ってきたのだが
私はどうしても彼との子供が欲しく、
彼女の言葉を全て横へのけ、自分の思いを貫いた。
その時でも彼女に言われたが、
それが私の無謀な欲望になっている事は
私も心のどこかで知っていた。
でも女性の幸せを思う以上、その夢はどうしても諦められない。
すると彼女は私の勢いに折れたのか。
持っていたバッグの中から1本の栄養剤のような物を取り出し
それをカクテルに混ぜて私に勧めた。
益代「ふう。そこまで言われるのなら仕方ありません。分かりました。では今のあなたの状況をなんとか救って差し上げましょう。今あなたにお勧めするそのカクテルは『Health and Delicate』と言うこれもまた特製のカクテルで、それを飲めば今後、一切健康についての不安や恐怖はやって来なくなるでしょう」
ミツ子「え…?」
益代「ミツ子さん。今の自分の状況を本気で変える場合、何事もまず信じる事が必要です。それを信じてそのカクテルを飲み干せば、あなたは必ず今私が言った通りの状態に成れます」
全く信じられない事だが、それでも少し前、
私は同じように彼女を信じ、1度人生を変えられた経験がある。
だから今回も同じように彼女を信じる事にして、
その第2の人生を歩んでみよう…
そう本気で信じ思う事にしたのだ。
益代「ですが又1つだけ注意するようにして下さい。幾ら健康が完璧に守られ、その事で2度と不安にならないようになったとしても、前にもお話しした通り、人生にはいろんな事が起きるものです。自分の事に注意するのと同じく、自分の身の周りの事にもちゃんと配慮し、注意するようにして下さいね」
この時も具体的に何を言われているのかよく解らなかったが、
それでも「健康が完璧に守られる」…
もうその事で2度と不安になる事も恐怖に思う事もない…
その言葉が私の心を占領し、私は彼女の言葉を最後まで聞かず
又そのカクテルを手に取り一気に飲み干していた。
ト書き〈オチ〉
それから後日。
また私の体に奇跡が起きて、私は子供を埋めるようになったのだ。
真司「ミツ子、おめでとう!これからは3人で一緒に明るい未来へ向けて歩いていこうな」
ミツ子「うん♪あなた!私、今が最高に幸せよ」
あの益代さんはまるで私の前に現れてくれた救いの天使。
そう思いながら彼女に感謝して、
今自分の周りに居てくれる愛する人、
輝かしい未来に心の底から感謝した。
それから数ヵ月後。
私は真司さんと結婚して一緒に住むようになってから
1人、マンションで家事をしていた。
もう会社は寿退社で辞めており、
これからは専業主婦としてやってゆく。
でもその日、私の家に泥棒が入り、
目の前に居た私を殺してしまった。
目撃者は消す、その泥棒の鉄則により…。
ト書き〈ミツ子と真司の自宅を外から眺めながら〉
益代「幾ら健康が完璧に守られても、事件や事故に巻き込まれたらその時点で殺されてしまう。そんな事もやはり人生にはあるものよ」
益代「私はミツ子の理想と臆病から生まれた生霊。『今の自分を変えて欲しい』と言うその願いを叶える為だけに現れた。あれだけ『周りに注意するように』って言っておいたけど、注意してもどうする事も出来ない・解決できない事ってやはりあるものよね」
益代「これは誰にでも言える事だろうけど、健康を完璧に守ると言う事は得てして、治安が完璧に守られて初めて成り立つものじゃないかしら?さて、私もそろそろ消えなきゃね…」
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