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永遠の健康

タイトル:(仮)永遠の健康

▼登場人物
●庭戸生琉(にわと いきる):男性。50歳。独身サラリーマン。健康ノイローゼ。でも酒とタバコがやめられない。
●同僚:男性。50代。生琉の会社の同僚。一般的なイメージでOKです。
●角川佳子(かどかわ よしこ):女性。47歳。生琉の結婚相手。でも浮気性で結局結婚はしなかった形で。
●須久井 益代(すくい ますよ):女性。年齢は若く見える形。生琉の本能と夢から生まれた生霊。

▼場所設定
●某会社:生琉達が働いている。都内にある一般的な商社のイメージで。
●Fortress of Eternity:お洒落なカクテルバー。益代の行きつけ。
●生琉の自宅:都内にある一般的なアパートのイメージでお願いします。

▼アイテム
●Real Health:益代が生琉に勧める特製の錠剤。これを飲むと3か月間、健康的な生活に目覚める事ができる。でも飽くまで現実的な効果であり、その後は自力で健康的な生活を保たねばならない。
●Eternal Mind Health:益代が生琉に勧める特製のドリンク(液体薬)。これを飲むと生きながらにして永遠の眠りにつく。その夢は幸せな夢。

NAは庭戸生琉でよろしくお願い致します。

イントロ〜

あなたは普段から健康を気にするほうですか?
若い頃は気にしなくても、歳を取れば誰でも皆
自分の健康を気にするようになり、
とにかく何事もなく長生きしたい…
そう思うのがやはり正直ではないでしょうか?
でも、どんな人でも必ずいつかは天に召されます。
解ってる事でもどうしても受け入れられない…
怖くて堪らない、不安と苦しみに苛まれるのはもう嫌だ…
まるで矛盾してるように見えるかもしれませんが、
これも人の本能であり正直であると思います。
今回は、そんな健康ノイローゼになってしまった
ある男性にまつわる不思議な話。

メインシナリオ〜

ト書き〈特定健診結果〉

生琉「ウ…ウソだ…」

俺の名前は庭戸生琉。
今年で50歳になる独身サラリーマン。

俺はこれまでずっと仕事仕事でやってきて、
ここへきて今、自分の健康の事で本気で悩んでいる。

この前に受けた特定健診の結果が良くなかったのだ。
これまで引っかかった事のない検査で引っかかっており、
それから総合病院、町医者を駆けずり回ったが、
どこへ行っても結果は一緒。

最近ずっと体の中に淀みのようなものを感じており
疲れ易く、不調をきたしていた俺は
「もしかしたら…」と思っていたが、
やはりそれなりの結果がやってきた。

もう何の病気であるのかなんて言いたくない。
考えたくないほど俺は悩み続けており、
これまでの人生、今の生活、そして今後の将来の事…
思えば思う程、
「なんで生きていくのはこんなに苦しい事なのか…」
と心の底から思い悩むようになってしまった。

俺は酒とタバコをやる。
これも原因の1つだったかもしれないが、
生まれつき持病を持っていたのもあって
今回はそれがネックになった…なんて主治医から言われたのもある。

生琉「酒とタバコ、やめなきゃならない。でも、どうしてもやめられない…クソウ…!」

生活を変えると言うのは大変な事である。

ト書き〈カクテルバー〉

それから俺は少し自暴自棄になってしまい、
もうどうでも良いなんて心の中で豪語して、
行きつけのバーへ行こうとした。

そしていつもの飲み屋街を歩いていた時…

生琉「あれ?こんな店あったっけ?」

いつも来ていた筈なのに、全く知らないバーがある。
『Fortress of Eternity』と言うかなりお洒落なカクテルバー。

お洒落ながらにどこか落ち着いており、
店に入ると何となく心に平安がやってきて、
俺はそこが気に入り、カウンターについて
いつものように1人飲んでいた。

(酒を飲みながら)

生琉「…これなんだよなぁ…これを、やめなきゃいけないのに…」

酒を飲みながら、目の前のそのグラスをゆっくり指でなぞりながら、
俺は落ち込んでそんな事を考えていた。

しているとそこへ…

益代「こんにちは、お1人ですか?もしよければご一緒しませんか?」

と1人の女性が声をかけてきた。
彼女の名前は須久井 益代さんと言った。

都内でメンタルコーチやスピリチュアルヒーラー
のような仕事をしているとの事で、
その仕事柄か、どこか心を和ませてくるものがあり、
彼女独特のオーラのようなものが俺の心を少し安らげた。
そんな流れから俺は隣の席をあけ、彼女を迎えた。

そして喋っている内にもう1つ不思議に思えた事は、
「なんか自分の事を昔から知ってくれていた人?」
のような気がしてきて、彼女に対してだけは
なんだか全ての事を正直に包み隠さず話す事ができ、
その上で自分の悩みを聞いて貰い解決して欲しい…
救って欲しい…そんな気にまでさせられるのだ。

そして気がつくと俺はその通りに行動していた。

益代「やっぱりそうだったんですね。そんな悩みを抱えられておられましたか」

生琉「…やっぱりって、わかってたんですか?僕がその悩みを抱えていると…?」

益代「ええ、何となく。私も長年この仕事をしておりますから人の背中や横顔を見るだけで、その人の心の内がどんなふうになっているのか、どんな事に悩まれているのか、その辺の事が分かるようになってきたんです」

やはり彼女は不思議な人。

そして今自分が健康について本気で悩んでいると伝えた時、
彼女は俺を本気で助けようとしてくれたのだ。

益代「分かりました。それではこちらを1度お試しになられてみますか?」

そう言って彼女は持っていたバッグから
袋入りの錠剤のようなものを取り出し、
それを俺に差し出してきてこう言った。

益代「こちらは『Real Health』と言う全ての健康を促進させるお薬で、少し前まで試薬の段階でしたが、今回初めて処方される段階に漕ぎ着ける事ができまして、丁度あなたのような方にうってつけの良薬になるかと思います。ぜひ1度試されてみて、もしそれで生活を変える事ができたらあなたにとっても、明るい未来が開けるのではと」

いきなりそんな薬を出されてももちろん信じられない。
でもやはり彼女は不思議な力を持っていたようで、
彼女に言われると信じてしまう。

そして俺はその場で錠剤を早速手に取り、1粒飲んでいた。

益代「その錠剤は全部で90粒ありまして、丁度3ヶ月分です。そして又そのお薬は依存性が強い所もありますので、誰に対してもお勧めできるのは1回限り。その3ヶ月の間にあなたは生活を変え、将来の為の健康的な土台を築き、ぜひその後は自分の力で健康な生活を送れるようにしてみて下さい」

生琉「はぁ…」(何となく聞いてる)

ト書き〈1ヵ月後〉

それから1ヵ月後。
俺の生活は本当に変わっていた。
それまでのように健康に悩む事がなく、
心は豊かで、どこか安心に満ち溢れている。

もちろんそれだけじゃなく、
あれだけ好きだった酒もタバコもピタリとやめる事ができ、
食事も偏食せず満遍なく食べ、
日頃から適度な運動も心がけるような
そんな、それまでの俺の生活からしてみれば
全く別人のような生活模様に変わっていたのだ。

生琉「す、凄いじゃないか…俺。本当にこんな生活が今の俺にできるなんて…」

でも、あれからもう病院には通っていなかった。
自分は健康体だからと行く必要ないと自分で決めて、
ただ彼女に貰った薬を自分の処方薬とし、
それ以上に健康についての悩みを抱える事はもうなく、
何かあれば病院へ行こう…その程度に抑える事ができていた。

まぁ普通の人の生活と同じようなものかもしれないが、
これもそれまでの俺からしてみれば飛躍的な前進だった。

ト書き〈飲みに誘われる〉

同僚「よぉ庭戸ぉ!今日どっか飲みに行かねぇか?俺良いトコ見つけたんだ♪」

生琉「いや、今日はやめとくよ♪ウチ帰ってやる事あるし。でも誘ってくれてありがとな」

同僚「なんだよ〜、最近お前変わったな〜」

周りから見ても俺は変わったらしく、
付き合いで飲みに行く事も無茶をする事もなくなっていた。

ト書き〈トラブル〉

それから更に1ヵ月、2ヶ月と経っていく内、
俺に新たな転機が訪れた。

この歳になって俺に漸く彼女ができ、結婚の約束をして、
彼女と2人の将来を夢見始めたのだ。

佳子「あたし、ずっとあなたの事が好きだったのよ。今までずっと言えなくて。でもあなたと一緒になれて本当に幸せ」

生琉「この歳になって自分が結婚できるなんて夢のようだよ。もう独身で貫き通す覚悟もしていたからね。だから本当に嬉しい。これから2人で一緒にずっと幸せにやっていこうな」

そしてお互いの愛を確かめ合い、将来も確認し合い、
ずっと幸せにやっていく筈だった。

しかし…

生琉「ウ、ウソだろ…」

なんと、俺の妻になってくれると約束したばかりの佳子が
僅か数日後に別の男と浮気していた。

「あいつはそういう女だったのか!?」

本気で愛していこうと思っていた分
俺の心は崩壊するほど落胆し、
もう自分の周りの女なんか全部信じられない…
そんな気持ちにさせられた上、
また心に大きなストレスを抱え込んでしまった。

そして…

生琉「ダ…ダメだ…!もう我慢できない…」

それまで本当にやめていた酒とタバコにまた走り、
前の生活に戻ってしまったのだ。

ト書き〈数年後〉

それから数年後。

俺は前より体調を壊してしまい、
もう会社に行ってまともに働く事もできず、
かと言って持ち前の臆病と持病と自業自得のせいで
今のこの生活を自力ではどうする事もできない。

そして又あのいつかのバーへ行った時、
前と同じ席に座って飲んでいる益代さんを見つけた。

生琉「ま…益代さん…!」

俺は彼女を見つけるなり藁にもすがる勢いで駆け寄り、
今のこんな自分をどうにか救って欲しい…そう無心した。

やっぱり彼女は不思議な人だ。
世の中の女に絶望していた筈の俺なのに、
彼女に対してだけは別の感情が湧いてくる。

生琉「もう俺、ダメです。ダメなんですよ!どうしてこう好きなもの、やりたい事、美味しいと思えるもの、嗜好品に至るまで…そんなものが全部健康に悪くてこんなに人の人生って生きづらいんでしょうか!?酒もタバコも最高に健康に良いものだったら良かったのに!なんで、どうしてそうならなかったんだ!ウマイ物も全部健康に良かったらイイんだ!」

生琉「…まるで人の世の中は、ウマそうに見える誘惑ばかり。こんな世の中、無くなってしまえば良い…こんな世の中で、人が何も悩まず本当に健全に生かされていくなんて、俺から言わせれば出来っこない事ですよ…」

俺はもう半分狂いながらそう言っていた。
でももう半分は正直で、その通りの事だと思った。
彼女はそんな俺の愚痴のような悩みを、ずっと真剣に聴いてくれた。

益代「…そうですね。ほんとにその通りだと思います。でも生琉さん。人は誰にでも寿命があって、いつかは必ず天に召されるものです。どんなに健康そうに見える人でも、今を健康に生きている人でも、必ず天に召されます」

益代「つまり人生と言うのは早いか遅いかなんてよく言われますがそれも本当の事で、ただ今をどう生きていくか、どんな幸せを手にしているか、やっぱり誰にとってもそれが大事な事なんじゃないかなと思いますよ…」

生琉「…」

益代「…でも、あなたの言われる事は本当によく分かります。実は私も、今のあなたと同じような事を思った事がこれまで何度もありましたので」

生琉「…え?」

益代「私も今のあなたと同じような事で悩んだ事がありました。だから今、こんなお仕事をしているのかもしれませんねぇ。少しでも同じような悩みを持つ人に寄り添い、その人達と一緒に歩いて、その人達の笑顔を少しでも見たいと思うから…」

益代「実は私、クリスチャンなんですけど、まだまだ信仰が薄くてずっと自分の罪や体たらくを祈り続ける毎日です。…私に1つ、約束してほしい事があるんです。ぜひ教会へ行くようにしてみて下さい。今すぐじゃなくても結構です。いつか…」

そう言いながら彼女はまた持っていたバッグから
今度は1本の栄養ドリンクのような物を取り出し、
それを俺に勧めてこう言ってきた。

益代「ぜひこちらをお飲み下さい。今のあなたの現実での悩みを解決してくれるでしょう。今の私に出来る事はそれぐらいの事です。私なりにあなたを助けてあげたいと思いこれを勧めます」

益代「それは『Eternal Mind Health』と言うこの前と同じような栄養剤で、前にあなたが経験されたような救いと同じような救いをもたらしてくれる事でしょう。でも前のお薬と違う所は、その効能の期限が永遠と言う事」

益代「人は生きていれば必ず何かの弊害に打ち当たるものです。そしてその弊害は全て人が作り上げたものになるでしょう。あなたが今せっかく手に入れた幸せを壊したのも彼女の浮気。つまり人がする事で、人の罪という事になるでしょう。そして今のあなたの健康を悩ませているその理由もあなたがしている事、つまりお酒やタバコをやめられないという事、生活リズムを崩してしまうという事、偏食する事も運動を怠る事も、全て人がする事です」

益代「そう言ったものからもし解放されたら、あなたはどうでしょう?…その解放された空間、もしかするとその幸せな空間に、今のあなたを誘ってあげたいと思ってます」

彼女が言ってくれた言葉全てを聞いた瞬間、
俺はそのドリンクを手に取り
やはりその場で一気に飲み干していた。

ト書き〈生琉の自宅アパート〉

そして俺は自宅アパートのベッドで今、眠り続けている。

益代「彼は自分の生活を上手く制御する事ができず、健康に悩み、自分のしてきた事に悩み、また自分の周りで人がする事に悩み、今後の将来に至るまで、その悩みや不安を抱えるようになっていた。その苦しみから逃れられず、彼の心は苛まれ続けた。そして今回、新たな挫折をその心に宿され、なかなか立ち直る事ができなくなっていた」

益代「でもこんな人は結構多い。ほとんど…いや全ての人と言って良いんじゃないかしら。人はいつか必ず天に召される。それが解っていながらやはり健康に悩み、不安や恐怖を抱えてしまう。本当に怖いのは苦しみ。その苦しみからどうにかして逃れたく、人は心と体の救いを求める。でも心の救いは、その体の苦しみを乗り越えるものよ」

益代「フフ、穏やかな寝顔。少し笑いながら、楽しい夢を見ているようね。私は生琉の本能と夢から生まれた生霊。その不安や苦しみを何とかして消して、彼をそれなりの安住の空間に置いてあげたかった。即席だけど、私に出来るのはこれが精一杯」

益代「眠ってるからもうお酒やタバコに悩まされる事も、誰かに何かされて悩まされる事も、もう無いわよね。私があなたの寝ている間ずっと世話してあげるから、あなたはその寿命が尽きるまで、ここでお眠りなさい。…得てしてこの世での人の幸せの在り処は、欲望が眠っている時、自然に逆らわず、心穏やかな時にあるのかも…」

俺は夢の中で今日も、益代と一緒に教会から帰っていた。

動画はこちら(^^♪
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