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夢の果て
タイトル:(仮)夢の果て
▼登場人物
●仁湯芽(にゆめ)カケル:男性。30歳。独身サラリーマン。御曹司。でも夢は小説家。
●仁湯芽貴仁(にゆめ たかひと):男性。58歳。カケルの父親。貿易商社の社長。ワンマン。
●仲江益代(なかえ ますよ):女性。30代。カケルの理想と本心から生まれた生霊。
▼場所設定
●カケルの自宅:都内にあるやや大きな一軒家(豪邸)のイメージで。本編では「自宅」と記載。
●End of the Dream:お洒落なカクテルバー。益代の行きつけ。本編では主に「カクテルバー」と記載。
●街中:デート感覚で行くいろんな場所も一般的なイメージでOKです。
▼アイテム
●Dream Talent:益代がカケルに勧める特製のカクテル。これを飲むと才能が更に開花される。でもその才能が潰されると潰した人に従うロボットになる効果を秘める。
NAは仁湯芽カケルでよろしくお願い致します。
イントロ〜
あなたは今、自分の夢を追い駆けてますか?
また、子供の頃から夢を持っていたでしょうか?
夢と言うのは叶えるためにあるもので、
もし叶えられなかったらその夢は
一体どうなるのでしょう。
仕方がないで諦めて済む場合がほとんどですが、
どうしても諦められなかった夢…
もしそんな夢があった場合、
人の人生を狂わせてしまう事もあるようです。
メインシナリオ〜
ト書き〈自宅〉
カケル「よし、できた!これは傑作だぞ♪」
俺の名前は仁湯芽カケル。
今年30歳になる独身サラリーマン。
これまで順風満帆な生活を送ってきて、
いわゆる一流大学を卒業した後それなりの商社に入社して、
将来は約束されたようなものだった。
俺の親父は都内で貿易商社の社長をしており、
その会社には入らなかったものの
その親父の会社の提携社に入社したのもあり、
その点で将来に不安はなかったのだ。
でも、俺には悩みがあった。
(部屋に入ってくる)
貴仁「なんだお前、またそんなもん書いてんのか?何度も言ってきたろう!そんな訳の分からんモノはとっとと捨てて仕事に没頭しろ。何が小説家だ。今更そんなモンになれるとでも思ってんのかお前は。もうイイから、明日はうちの会社と合同の企画だろ?早く寝ろ」
そう、俺は本当は小説家になりたいのだ。
昔から文章を書くのが好きで、コンクールにも何度か入賞した事があり、
できれば自分の書斎を持ってそこで心行くまで物語を書いてみたい。
それが小さい頃からの夢だったのだが
俺の両親は全く理解を示してくれない。
カケル「なんだよ、あんな頭ごなしに言わなくたって…!」
親父と俺との間にはかなりの確執があったのだ。
ト書き〈カクテルバー〉
そんなある日の会社帰り。
カケル「はぁ〜あ。こうして俺の人生も本当にしたい事ができなくて、何となくの形で終わっちまうのかな。あ〜嫌だ嫌だ!ふぅ。今日はちょっと飲みにでも行くかな」
どうせ帰っても、親父の得意げな説教を聞かされるだけ。
顔を合わせれば喧嘩になるし、
俺はその日どうしても酒を飲みたくなった。
そうしていつもの飲み屋街を歩いていると…
カケル「ん、なんだ?こんな店あったっけ?」
どうやら新装開店した店があったらしい。
名前は『End of the Dream』と言い、外観も内装も結構キレイだった。
雰囲気が落ち着いていたので俺はそこが気にいり、
店に入っていつものように1人飲んでいた。
していると…
益代「フフ、お1人ですか?もしよければご一緒しません?」
と1人の女性が声をかけてきた。
彼女の名前は仲江益代さんと言い、
都内で就職コンサルタントをしている傍ら、
副業ではライフコーチやメンタルヒーラーの仕事をしていると言う。
カケル「へぇ、いろいろされてるんですね?」
そんなこんなで話が弾み、俺も少し落ち込んでいたので
話し相手が欲しいと思ってしまい、
彼女をすぐ隣に迎えて軽く自己紹介していた。
でも彼女は何となく不思議な人だ。
一緒に居るだけで心が落ち着き、その上品さからか
優しい風貌からなのか、スッと心が和まされる。
その上で「昔どこかで会った事のある人?」
と言う印象が漂ってきて、その身内感覚のせいか
俺は自分の悩みを彼女に打ち明け、
できれば彼女に解決してほしい…そんな事まで思っていたのだ。
益代「まぁ、小説家に?それは凄いですね」
カケル「あははwいや、そんなの結局は夢のまた夢。叶いっこない僕のただの妄想になるんです」
親父との確執のことを話した。
自分の夢に全く理解してくれない事を。
カケル「社長と言えば、世間一般で言えば裕福な家庭の持ち主・家族の持ち主だと思うんでしょうね。でも実際その息子からしてみれば、たとえちょっと貧乏でも良いから自分の事をもっと理解してくれる親、あったかい家庭のほうを望むもんです。あは、これ愚痴ですw聞き流して下さいね」
でも彼女は親身に話を聴いてくれていた。
そして…
益代「夢を追いかけると言うのは誰にとっても素晴らしいこと、私としてはぜひその夢を叶えて差し上げたいと思いますよ」
カケル「え?」
益代「いかがです?もしあなたさえ良かったらですが、私とその夢を、追い駆けてみませんか?」
いきなりそう言ってきた。
もちろん信じられない気持ちが先に湧いたが、
彼女の真剣な眼差しと暖かな雰囲気を味わっている内、
何故か知らないけど、段々その気にさせられていく。
これも彼女の魅力の1つだったのか。
そして…
カケル「ほ、本当に…?」
俺は彼女の申し出に、自分の人生を賭ける程の勢いで頼ろうとした。
益代「ええ♪実は私の知り合いが貸しオフィスを1つ持っておりまして、そこを出版事務所にしながら、あなたは自分の仕事に打ち込んでみたらどうかと思います。その際、私も精一杯、お手伝いさせて頂きますわ」
益代「…でもあなたは今、社長の息子さんとして人生を歩もうとしているところ。こんな夢みたいな話を持ちかけて本当に良いのかな…なんて思うところもあります。小説家としてやっていくなら1からキャリアを積む事になりますが、今のままの人生ならそのレールを歩いて行くだけであなたの将来も安定するでしょうか。本当にそれでも、あなたは小説家になりたいと思うんですか?」
いきなり核心を突くような事を言ってきて俺も少したじろいだ。
確かにその通りだが、俺は親の傀儡(ピエロ)じゃない。
自分の人生は自分で歩みたい。
自分のしたい事をして人生を謳歌したい。
これまでの、親父への反抗・反動もあったんだろう。
その気持ち1つで…
カケル「…いえ、僕は本気で小説家になりたいと思ってるんです。あなたの申し出、ほんとに嬉しいです。ぜひよろしくお願いできれば…!」
俺は結局、彼女の提案を快く受け入れ
ぜひ自分と共同経営の形で出版社を立ち上げて欲しい…
そんな事をそのとき本気でお願いしたのだ。
ト書き〈デート感覚〉
それから俺は彼女とちょくちょく会うようになった。
会社帰りに彼女が借りてくれた事務所に寄って今後の打ち合わせをしたり、
休みの日には2人で図書館へ行ったり公園に行ったりし、
そこでどんな小説をメインに書いていこうか?
これまでどんな作品を読んできたの?…なんて、
お互いの生活歴のようなものを話し合ったりもした。
本当に楽しくて充実した時。
こんな充実感を、俺は本当に暫く忘れていた。
でもそんな彼女に対するもう1つの不思議を知った。
こんなになれば普通、恋愛感情が湧いて不思議じゃないのに
彼女に対してはその恋愛感情がまるで湧かないのだ。
それよりずっと自分の理解者としてそばに居て欲しい…
その気持ちのほうが大きくなって、
本当に人生の共同経営者…
そんな関係がぴったりの俺達になっていた。
ト書き〈トラブル〉
そしてある時。
俺は彼女をウチに呼び、まったり過ごそうと思った。
別にどこかへ行く必要もないし、親から逃げ隠れする事もない。
純粋に付き合っていた俺達は友達感覚で寄り合い、
当たり前に互いの絆を大事にし合って過ごそうとして居ただけ。
でも、偶々早く帰ってきていた親父が急に部屋に入ってきて…
貴仁「なんだアンタは?ウチのカケルとどう言う関係なんだ?カケル!こんなどこの馬の骨かもわからん娘を連れてくるな。お前の見合い相手はちゃんとワシが決めてやる。一流大卒で一流企業に勤めている娘、そうだなぁ、社長令嬢ならなおさらイイだろう。もっとちゃんとした娘とお前は付き合わなきゃならんぞ!」
カケル「ちょ、ちょっと親父!益代さんになんてこと言うんだよ!」
俺はその日、親父と初めて大喧嘩した。
もう殴り合いの喧嘩になってしまう程。
でもその寸前に益代さんは俺を引き止め、
「ごめんなさい」とひとこと言って帰ってしまった。
カケル「ま、益代さん!」
どうしようもない虚しさと寂しさが辺りを漂う。
ト書き〈カクテルバー〉
そして翌日。
俺は又すぐあのカクテルバーへ立ち寄っていた。
もしかしたら益代さんが居るかもしれない!
もし会えたら本当に謝りたい!そう思って。
すると、彼女はまた前の席に座ってお酒を飲んでいた。
俺はすぐ彼女の元へ駆け寄り昨日の事を謝って、
これからもずっと友達関係で良いから一緒に居て欲しい…
そんな事を言ったのだ。
カケル「益代さん、本当に昨日はすみませんでした。ごめんなさい。…昨日あれから何回か電話しましたけど、出てくれなかったから。もう怒って、相手にしてくれないのかなぁとか思っちゃってて…」
益代「ああ、その事でしたら昨日、携帯の電池が切れちゃってたのでずっと充電してたんです。充電中は私携帯見ないので、別に他意あっての事じゃありませんよ。フフ、気にしないで大丈夫ですよ」
カケル「はぁ、そう言って貰えたら嬉しいです」
そしてそのとき俺は改めて本音を打ち明けていた。
カケル「あの、益代さん」
益代「はい?」
カケル「あの、まだもし良かったらですが、あの出版社の話、2人で一緒にやって行こうって言ってたあの事ですが、ぜひ進めて頂けませんか!?僕どうしても小説家になりたいんです。作家の道を歩んでみたいんです!お願いします!今更かもしれませんが、もう1度だけ…」
すると彼女は微笑みながら快諾してくれた上、
1つだけアドバイスじみた事を言ってきた。
益代「でもあなたのお父様、本当にあなたの将来の事を何より強く思ってらっしゃるんですね。私は父も母も早くに亡くしましたから、ちょっと羨ましいです」
益代「…ですがカケルさん。もし本気で夢を追い駆けたいと思うなら、あなたはその親元から離れなければなりません。でなければ、あんな風にいつも親の言いなりになってしまって、自分の夢さえその親の言葉と感情の中に封じ込めてしまう事になります。その覚悟が今のあなたにおありですか?もし覚悟があるなら私はお手伝い差し上げましょう」
俺はそう聞いて即答で彼女に応えた。
その覚悟はもちろんあると。
すると彼女は「分かりました」とひとこと言って、
指をパチンと鳴らしてそこのマスターにカクテルを一杯オーダーし、
それを俺に勧めてこう言ってきた。
益代「ぜひお飲み下さい。私のおごりです。まぁ景気づけと思って頂いて構いません。それはあなたの門出を祝う私の気持ち。そのカクテルは『Dream Talent』と言って、飲んだその人の才能を夢のように覚醒してくれる…そんな有難い効果を秘めたお酒です。今のあなたにはそういうものがないと、やっぱり自信をつけにくいでしょうから。ぜひどうぞ」
やっぱり彼女は不思議な人。
他の人に言われたって信じない事でも
彼女に言われたら信じてしまう。
俺はその場ですぐにカクテルを手に取り、一気に飲み干していた。
ト書き〈自宅〉
それから自宅に帰り、
いつもの日課で自分の部屋にあるデスクに向かった時…
カケル「な、なんだろ…今日はめちゃくちゃ筆が進むぞ!」
作品を次々書き上げてゆき、
いつもより倍のスピードで倍の量の作品が仕上がった。
カケル「は、はは…wす、すげぇ、俺にこんな力があったのか」
あとで読み返しても充分に面白い作品達。
それを少しネットに上げてみたら
たちまちいろんな人の反応が返ってきて、
「面白いです!もっと書いて下さい」
「こんな作品を待ってましたよ〜」
みたいな嬉しい声を沢山送ってくれた。
ト書き〈トラブルからオチ〉
カケル「オレ、ほんとに作家としてやっていけるかも」
そう思った時だった。
貴仁「カケル!!お前はまだ分からんのか!そんな小説家みたいなクソ同然の遊びなんかやめてしまえ!」
その日、親父は機嫌が悪かったのか。
しこたま外で飲んできていたようで、
いつもより激しい感情をもって俺の部屋に怒鳴り込み、
せっかく書き上げた原稿をビリビリに破いてしまった。
全てだ。
カケル「な、何するんだよ親父!!」
それから大喧嘩が始まったのだが、俺は持ち前の臆病な心、
それとやはりどうしても親を思う気持ちが湧いてしまい…
カケル「…わかったよ、親父。俺もう小説家の道、諦めるよ…」
きっぱり、その夢を全て諦めた。
貴仁「おぉ、やっとわかってくれたか。そうだ。それでイイんだ。お前の人生のレールは、ワシが引いてやる!w」
(オチ)
その翌日。
俺は親父と一緒に家を出て、通勤しようとしていた。
そのとき玄関から外に出るまでの階段で躓き転んでしまい、
俺は打ち所が悪かったのか、暫くうずくまった。
貴仁「おいおい、カケル!何やってんだお前、大丈夫か?」
カケル「うう…う〜」
貴仁「お、おい、カケル…?」
俺があんまりうめいていたもんだから
親父も本気で心配になった様子で、そばに駆け寄り、
俺に顔を上げさせて様子を見ようとした。
その時…
貴仁「う…!うおぁあぁあ!!カ…カケルゥ!?」
ロボットのカケル「…ピュイーン…オ…オトウサン…ハハハ…ダイジョウブ、デスヨ…♪ホラ…コノトオリ…♪アハ…アハハハ…ハハハ…♪」
俺の顔の奥から機械のようなものが覗き、
すりむいた皮膚からは赤い血の代わりに
緑色の液体が流れ出ていた。
ト書き〈その様子を少し遠目に眺めながら〉
益代「ふぅ。結局こうなっちゃったわね。カケルは親の言う事なら何でも聞き従うロボットになってしまった。あのとき私が勧めたカクテルの中には、そんな効果が含まれていたのよ」
益代「私はカケルの理想と本心から生まれた生霊。その夢を叶えてあげようとしたけれど、彼の親思いはちょっと足を踏み外しちゃったようで、ただの親の言いなりになるピエロになっていた。お父さん、あなたはこれで満足かしら?カケルはもうこれから、あなたの言う事なら何でも素直に聞くわ。人格も感情も何もかも無くしたままで」
益代「世間では『負うた子に教えられ』なんて言葉もあるようだけど、カケルとその家族にはどうやら無縁のものだったみたいね」