初恋の人に見た夢
タイトル:(仮)初恋の人に見た夢
▼登場人物
●夢野斗和(ゆめの とわ):男性。30歳。独身サラリーマン。ヒカリを今でも愛する。
●春野(はるの)ヒカリ:女性。30歳。斗和の幼馴染で元恋人。高校生の時に事故に遭い今でも寝たきりの生活。
●柿崎静子(かきざき しずこ):女性。29歳。斗和達が働いてる会社の社長令嬢。浮気性。
●横島 猛(よこしま たける):男性。30歳。斗和の会社の同僚。一般的なイメージでOKです。
●仲津木(なかつぎ)カレン:女性。30代。斗和の純粋な夢と欲望から生まれた生霊。
▼場所設定
●某IT企業:斗和達が働いている。一般的なイメージでお願いします。
●夢想花(むそうばな):都内にあるお洒落なカクテルバー。カレンの行きつけ。本編では主に「カクテルバー」と記載。
●ヒカリの自宅:都内にある民営アパートのイメージで(どこか幻想的にして頂いても構いません)。
●街中:必要ならで一般的なイメージでお願いします。
▼アイテム
●Real Love & Mediation:カレンが斗和に勧める特製のカクテル。これを飲むと現実での恋愛を引き寄せるようになる。ただトラブルを乗り越えさせる効果はない。
●Paradise of Dream:カレンが斗和に勧める特製のカクテル。これを飲むと愛する人の夢の中に入りその後もずっと幸せで居られる。現実ではその存在が消える形。
NAは夢野斗和でよろしくお願い致します。
イントロ〜
あなたには過去に、本当に愛した人が居ましたか?
「愛してその人を得る事は最良である。愛してその人を失うのはその次に良い」
嘗てウィリアム・サッカレーという人が
呟いた言葉らしいですが、
こんな言葉もあるように、一度愛した人は
その心に宿り、その人の成長の糧になるもの。
今回は、そんな過去に愛した人の経験を持つ
ある男性にまつわる不思議なお話。
メインシナリオ〜
ト書き〈会社〉
横島「よぉ夢野、お前、静子嬢には告白しねぇのかw?彼女もお前の事よく想っているみたいだしさ、もしかすると、もしかするかもしんねぇぜw」
斗和「いやだから俺はそんな気ないって言ってるじゃないかよwもう俺は恋愛なんて…」
横島「何言ってんだよお前は!wまだ30そこそこの若い盛(さか)りで、な〜にを恋愛悟ったようなこと言ってんだw俺、あの静子嬢の友達の由香子さんにちょっと気があるんだよな。だからさ、お前があの静子嬢と上手くいった暁(あかつき)にはよ、お前から彼女に言って由香子さん、俺に紹介してくれるように言ってくんねぇかなw」
斗和「何言ってんだよお前はw」
俺の名前は夢野斗和。
今年30歳になる独身サラリーマンで、
今はここ都内にあるIT企業で働いている。
同僚の横島はいつもこうやって俺をからかいながら
この会社の社長令嬢の静子さんに告白させようとしてくるが、
俺にはその気がまったく無い。
俺には今、心にずっと宿し続ける彼女が居たからだ。
その彼女とは小学校から高校までずっと一緒で、
俺的には幼馴染のような感覚で育った相手。
名前は春野ヒカリ。
でも彼女は高校を卒業する間際に事故に遭い、
寝たきりの状態になってしまった。
それから彼女の両親は引っ越しを決め、
彼女を連れてどこか遠くへ行ってしまった。
俺にも知らせずに。
それから何度か連絡しようと試みたが、それは叶わなかった。
だから今、ヒカリがどこでどうしているのか、何も分からない。
ト書き〈カクテルバー〉
その日の会社帰り。
俺は行きつけの飲み屋へ行こうとした。
横島があんな事を言ってきたから
つい又ヒカリの事を思い出してしまい、
ちょっとやり切れなくなり、
酒を飲んでこの憂鬱を紛らわす為。
そして歩いていると…
斗和「ん、あれ?こんなお店あったんだ」
いつも来ている筈の飲み屋街なのに、全く知らないバーがある。
ちょっとお洒落なカクテルバーで、
名前は『夢想花』。
何か少しレトロな感じもし、
元々そう言うのが好きだった俺は
ついそこへ入りカウンターにつき
いつものように1人飲んでいた。
していると…
カレン「こんばんは♪お1人ですか?もしよかったらご一緒しません?」
と1人の女性が声をかけてきた。
別に断る理由も無いので俺は隣の席を空け彼女を迎えた。
でもまぁ正直に言えば、
その時の自分の悩みを誰かに聞いて欲しい…
そんな思いも確かにあった。
それから軽く自己紹介し合い、世間話からいろんな話に話題が飛んだ。
彼女の名前は仲津木カレンさん。
都内でメンタルヒーラーやライフコーチの仕事をしていたようで、
どことなく上品で落ち着いていて、
またそんな仕事をしているからか
人の話を聞き出すのも上手かった。
でもそうして喋っているとなんだか不思議な気がする。
何か「昔から自分の事を知ってくれて居た人」
のような気がしてきて、そう思うと心が和み、
本当に今の自分の悩みを全部彼女に打ち明けて
この悩みを何とか解決してほしい…
そんなふうにまで思わさせてくる。
そして気づくと俺は、今の自分の心の奥底の悩みまで
全て彼女に打ち明けていた。
カレン「そうなんですか。心の中に昔の恋人が…」
斗和「え、ええ。ヒカリは今でもずっと僕の心に住んでいて、なんだかその名前の通り、僕に将来の光を与えてくれるようなそんな存在で居るんです…」
彼女は親身に話を聴いてくれた。
そして自分なりの感想やアドバイスを含め、
このとき本当に俺の助け手になってくれたのだ。
カレン「あなたのような方は確かに珍しいですよね。今の時代、自分の事ばかり考えて、恋愛も結婚も自分の思い通りにならないとすぐ別れてしまう…そんな人達が多いと言うのに」
斗和「はぁ…」(何となく聞いてる)
カレン「わかりました。ここでこうしてお会いできたのも何かのご縁です。私がそのお悩みを、少しでも軽くして差し上げましょう」
斗和「え?」
そして彼女はそこのマスターを呼び、
一杯のカクテルをオーダーして俺に勧めてこう言った。
カレン「それは『Real Love & Mediation』と言う特製のカクテルでして、それを飲めばあなたはきっと現実の恋に対して強くなり、これまで抑え続けてきた恋心を、今自分の周りに居る特定の人に対して引き出せるようになるでしょう」
斗和「は?」
カレン「夢野さん。今あなた、誰か特定の人に恋をしていたり、この人と新しい第2の生活を歩んでいきたいなぁ…なんて思ってらっしゃる方はおられますか?」
斗和「えぇ?い、いやあの、そんな人は…」
このとき一瞬、あの静子嬢の事が心に浮かんだ。
確かに彼女は俺に気があるようで、
これまで何度かランチやディナーの誘いを受けたり、
実際、告白めいた言葉を投げかけられた事もある。
でも俺は…
斗和「そ、そんな人居ませんよ!さっきから言ってるでしょう?僕の愛する人は1人なんだと」
カレン「夢野さん、正直になって下さい。あなたは今、過去の思い出を断ち切り、第2の人生を歩みたいと心の中で思ってらっしゃる。もしそうでなければ、そもそもこんな事で悩んだりしませんよ」
斗和「え…」
カレン「だってそうでしょう。心の中の想い人(びと)と心の中で結婚して、その後もずっとやっていくと心に固く決めていたなら、その過去の人との愛を疑わず、悩む事はそもそも無い筈です。新しい恋愛を望んでいるからこそ、彼女を断ち切るのに躊躇してしまい、それで悩んでいる…おそらく今のあなたの状況はそんな所にあるのでしょう」
彼女は不思議な人だ。
誰にも言ってない自分の正直を、
彼女はこのとき一瞬で見抜いてきた。
まぁ彼女の仕事柄、
その辺りの事に詳しくてそう言っただけかもしれないが、
でもなんだか妙な気持ち。
彼女にそう言われるとその気になってしまい、
確かにその通りだった…
俺は次の恋愛をしたかった…
その正直な自分を目の当たりにする。
そして俺は彼女の言う通り、
差し出されたそのカクテルを一気に飲み干していた。
ト書き〈数日後〉
それから数日後。
静子「ええ!?ほ、ほんと?本当に私と付き合ってくれるの!?」
斗和「あ、ああ、よろしく…」
静子「嬉しい!」
俺は結局、静子さんに告白してしまい、
彼女と付き合う事になった。
(休憩時間)
横島「よぉ!聞いたぜ聞いたぜ〜wお前もやっとあの彼女と付き合う気になったんだなぁ!wハッハハwよしよし、それでこそ俺の見込んだ男だwなぁ、それでよぉ、前に言っといたあの件、頼むぜ?」
斗和「え?」
横島「ほら!由香子さんの事だよ!」
斗和「あ、ああ…」
横島「彼女によろしく言って、俺と由香子さんが付き合えるように計らってくれやwな?」
斗和「ああ、言っとくよ…」
横島「なんだよシケたツラしやかってよ〜wこれから彼女と明るい将来に向けて歩いて行こうって時に、お前がそんな冴えねぇツラしててどうすんだw」
静子さんは喜んでくれ、横島もこの通り、
俺と彼女の関係を利用して自分の収穫を得ようとしている。
でも「明るい将来」…幸せな未来…。
そんなものはおそらく静子さんとの間には無いんじゃないか…
それも同時に思う。
ト書き〈1年後〉
それから1年後。
俺と静子さんは電撃結婚するように早めのゴールに。
周りはそれなりに祝福してくれ、
このまま無難に生活していければそれなりの幸せもやってくる…
そんなふうにも思えていた。
でもやっぱり俺の予想は当たってしまった。
静子さんは元々派手な性格。
1つところに落ち着くような人じゃなく、
1つの目的を達成すれば次の目的へ向けて駆けていく。
その性格通り、彼女は俺と結婚したそのすぐ後に浮気していた。
俺もそんな状態だったから、彼女のアプローチが
少しでも純粋に見えてしまっていたのか。
失敗だ。
静子さんと2人で住んでいた豪邸に、
静子さんが帰ってくる日はほとんどなくなり、
家の中でぽつんと1人、俺だけが居る事も多かった。
まるで新婚早々の家庭内別居。
何の為に結婚したのか、ちょっと笑えてきてしまう。
でも心の中の孤独だけはどんどん膨らみ、
そんな時に思い出すのがあのヒカリの事。
俺はもう別の人と結婚してしまったから
彼女のもとへは戻れないかもしれない。
いや、多分戻れないだろう。
でも心の正直だけは、あの彼女と培っていた
学生時分の純粋な恋愛、本当に欲しかった
それからの幸せな将来・未来だけを求め始める。
斗和「…ヒカリ…」
ト書き〈カクテルバー〉
そんなある日。
いつものように静子が帰らない豪邸に独りで居た時。
俺は思い立つかのように家を飛び出し、
それからすぐあのバーへ走っていた。
カレンさんと出会ったあのカクテルバー。
彼女は実際、俺の生活を変えてくれた。
あれから俺の将来を本当に変えてくれた彼女なら、
きっとこの先の将来も変えてくれる。
それも出来れば幸せな方向へ変えてくれたら…
そんな思い1つでバーへ飛び込み彼女を探した。
するとカレンさんは前に座っていたのと同じ席で
静かにグラスを傾け1人酒を飲んでいた。
斗和「あ、カレンさん!」
もう会えないかと思っていたから
俺は余計に嬉しくすぐ彼女に駆け寄り、
その時の心の有りっ丈の正直を全て彼女に打ち明けていた。
斗和「カレンさん、お願いです!僕はつい他の人と結婚してしまい、ヒカリと見ようとしていた本来の幸せを見失ってしまいました。あなたは、初めて会った時から不思議な人だと思ってました。僕の人生を本当に変えてくれ、別の人を愛せるようにまでしてくれて、実際、僕はあの静子さんと結婚する事まで出来たんです」
斗和「でも彼女は僕の予想通りやっぱり浮気性で、僕と一緒になったらすぐその生活に飽きて他の男の所に飛び込みました。これまでにも実は…これと同じような事が少しあった事はあったんです」
斗和「…でもこれを機会にと言ったら変かもしれませんが、でもはっきり分かった気がします。僕には現実の女は向きません。もう駄目です。やっぱり僕にはあのヒカリしかそばに居ないで、あの彼女との間だけを取り持って欲しい…そんなふうに、正直に思ってます…」
もうダメ元だった。
自分のしてきた事を思えば、
こんな事を言える資格は自分にはない。
ヒカリの前でも俺はそう感じていたが、
でも正直、俺はその時そう言うしかなかったのだ。
しかしそれを聴いてカレンさんは
なんだか、暖かく抱擁してくれるようにこう言った。
カレン「やっと本当の事を全部話してくれましたね。そう、あなたはこれまでヒカリさんの他にも心を寄せようとしたお相手が居り、自分からヒカリさんの事を忘れようとした事もあった筈」
カレン「いえ、知ったような事を言ってるなんて思われるかもしれませんが、私も仕事柄、その辺りの事はよく分かるんですよ。大抵の人はそう言う経過を通り、必ず将来に向けて新しい未来を見出そうとするものです。つまり誰でも同じ」
カレン「あなたも1人の人を愛しながら、やっぱり自分の生活を思う上で、次の新しい生涯の夢を欲しがっていた。これは当たり前の事で、何も隠す事じゃありません」
そこまで言った後、彼女は又カクテルを一杯オーダーし、
それを俺に勧めてこう言った。
カレン「斗和さん。あなた本当に今でもヒカリさんの事を愛してらっしゃいますね?」
斗和「え?」
カレン「確認の為です。もし本当に彼女の事を愛し、今後もその姿勢が崩れないと約束できるなら、私があなたの夢を叶えて差し上げましょう」
斗和「…それは一体どう言う…」
カレン「実は私、ヒカリさんの居る所を知っています。あなたの前からあのとき姿を消したヒカリさんが、今どこでどうして居るか?私はそれを知っているんです」
斗和「え…えぇ!?」
当然、信じられない。
「なんでアンタがそんなこと知ってるんだ!?」
その思いがまず湧いてくる。
でも、ここでも彼女は不思議な人だ。
そんな思い・疑惑が打ち消されるように静まり始め、
俺はただ彼女の言う事を素直に聴いてしまう。
そして…
斗和「…ええ、今でも俺はヒカリの事を愛してます。そしてこれまでの経験で俺は彼女だけを愛していると、はっきり解りました」
そう応えていた。
カレン「分かりました。ではそれをお飲み下さい。そのカクテルは『Paradise of Dream』と言うもので、それを飲めば今のあなたの夢は叶えられます。ヒカリさんとの愛が叶えられて、あなた達2人は一生、誰にも邪魔されない新しいパラダイスのような場所で、夢のような生活を送る事が出来るでしょう」
その彼女の言葉を聴き終えない内に、
俺はそのカクテルを手に取り一気に飲み干していた。
ト書き〈ヒカリの自宅〉
それから俺はカレンさんに連れられて、
今、ヒカリが住んでいるというアパートまで来ていた。
斗和「え?…ここに今、ヒカリが住んでるって言うんですか…」
カレン「ええ、居られます」
どこからどう見ても普通のアパート。
ここに普通に住んでいると言う。
でもそれならなぜ連絡を寄越さず、
まるで俺の事を忘れたように彼女は暮らしてるんだ…?
その疑問が次に湧いてくる。
でもカレンはその俺に向かい…
カレン「さぁ斗和さん。彼女が待っていますよ?どうぞその部屋のドアを開けて、彼女を抱擁してあげて下さい」
斗和「あ、ああ…」
そして言われるがまま、ドアノブに手をかけようとした時…
カレン「そう、1つ言っておく事があります。斗和さん。そのドアを開けて彼女と一緒になったなら、あなたのこれまでの生活は一変し、もうこれまで通りの人生に戻る事は出来ません。でも彼女を本当に愛しているなら、そんなハードルも乗り越えられますよね?そう思うからあなたに今こう言ってます」
カレン「今ならまだ引き返せますが、おそらくあなたの心はもう決まっているのでしょう…」
カレンの言う通り、俺はそんな言葉を聞いても一切心が変わらず
部屋のドアを普通に開(あ)けた。
そして中に入ると…
ヒカリ「斗和ちゃん!待ってたわ!私ずっと待ってたのよ!」
斗和「ヒ…ヒカリ!」
ヒカリが涙を浮かべて俺に抱きつき、そう叫ぶように言って、
「ずっと待ってた」
と何度も繰り返し俺に言ってきた。
カレン「フフ、それじゃ2人とも、夢の中でお幸せに…」
そう言ってカレンが部屋のドアを閉めた瞬間、
俺はそれまでの生活から飛び抜けて、
ヒカリとの幸せな将来にだけ向いて歩いていった。
ト書き〈ヒカリのアパートを外から眺めながら〉
カレン「私は斗和の『本当に愛する人とだけ一緒になりたい』と言う純粋な夢と欲望から生まれた生霊。その夢を叶える為だけに現れた。ヒカリはあのとき事故に遭い、今でも寝たきりの生活のまま。だから自分で身を起こし行動する事が出来ず、私がその代わりをしてあげたのよ。今回は斗和の夢より、ヒカリの夢を叶えてあげたと言うほうが正しいかもしれないわ」
カレン「ヒカリがずっと眠って見続けるその夢の中に、斗和を現実から引き離して招いてあげた。このヒカリのアパートの部屋はヒカリの夢そのもの。今は2人とも誰にも邪魔されないその楽園で、新婚生活を始めているわね」
カレン「斗和の存在は現実では消えたけど、ヒカリの心の中にはずっと宿り続ける。雲隠れという言葉もあるけど、斗和もそんな状態になるのかしら。あなた達の結婚を人は気づかず、誰にも祝福されないけれど、私が祝福し、あなた達2人をずっと守ってあげる」
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