
逆転の死
タイトル:(仮)逆転の死
▼登場人物
●戸川(とがわ)アキラ:男性。25歳。どこにでもいるようなサラリーマン。
●熱川祐樹(あたがわ ゆうき):男性。25歳。アキラの友達。
●警察:一般的なイメージでOKです。本編では「警察1~2」と記載。
●トラック運転手:男性。30代。人の好さそうな感じで。
●キャスター:女性。30代。普通のニュースキャスターのイメージで。
▼場所設定
●国道13号線:アキラと祐樹がドライブする。割とだだっ広い感じのイメージで、車道の周りは草原が広がってる感じ。野次馬も集まり易い広々とした感じ。
●アキラの自宅:一般的な戸建てのイメージで。
NAは戸川アキラでよろしくお願いいたします。
(イントロ+メインシナリオ+解説=3390字)
イントロ〜
皆さんこんにちは。
皆さんは高速道路や国道などで、大事故に見舞われた事や、
その事故を目撃した事はありますか?
今回は交通事故にまつわる意味怖のお話です。
メインシナリオ〜
ト書き〈国道13号線を走行中〉
俺の名前は戸川アキラ。
今年25歳になるサラリーマンだ。
今日、俺は友達と一緒にドライブに行く約束をしていた。
アキラ「おー、結構混んでんなー」
祐樹「まぁしょうがないんじゃね?大型連休だしさ。でももうちょっと行ったら多分空いてくると思うぜ♪」
横に座ってるこいつは熱川祐樹。
中学から一緒の同級生だ。
俺達は会社こそ違うものの、プライベートではいつも連れ立って遊んでる。
アキラ「だな。まぁ山の麓まで行きゃあ車も減ってくんだろ」
今日は正確に言うとキャンプの下見。
今度、友人4人ほど連れ立って山へキャンプへ行こうとなり、目星を付けたその場所がどんな場所なのか、それを見に行く事になっていた。
で、せっかくそこまで行くんなら「ドライブ気分で行こう♪」となったわけ。
ト書き〈車が空いてくる〉
予想通り、道はだんだん空いていった。
車が少なくなり、びゅんびゅん飛ばす車が増えてきた。
アキラ「やっぱ空いてくると、ついスピード出しちまうよなぁ」
祐樹「ああ。でも安全運転、頼んまっせ」
アキラ「へっまかせとけ♪」
今日は天気も快晴。
気候も穏やかで、絶好のドライブ日和だった。
ト書き〈事故〉
衝突の音「ガシャアアアアン!!」
アキラ「うわっ!な、なんだ?!」
調子よく走っていたら、いきなり前方で物凄い音がした。
祐樹「じ、事故じゃねぇ…?」
アキラ「マ、マジで?」
ここは見晴らしの良い国道だ。
だいぶ郊外に来たから、道の周りは原っぱで埋め尽くされている。
もう山の麓も近い。
「なのになんで事故?!」
なんて思っている内に、だんだん人だかりが出来始めた。
俺達も徐行しながら事故現場に車を近づけて見た。
祐樹「う…!うわぁ」
アキラ「や…ヤバ…」
路上は辺り一面血だらけ。
どうやらトラックとバイクとの正面衝突のようだった。
トラックの方はそれほどダメージは無いが、バイクはもうグシャグシャ。
ライダーは何十メートルか先に体を放り出され、全く動かない。
アキラ「あ、あれ、死んでんのか…」
祐樹「う…うん。…いや、わかんないけど…」
これで「ライダーがまだ生きてる」と言う方が不思議な光景だ。
トラック運転手は車道に降り、ただオロオロしながらうろたえていた。
ト書き〈警察が来る〉
警察1「はい皆さん下がって下がって!」
警察2「もっと下がって下さーい」
誰かが通報したのだろうか。
警察がすぐにやってきた。
警察1「あーこりゃ駄目だな。すぐ救急車連絡」
警察2「はい!」
警察は来るや否や、すぐ被害者の状況を確認し、救急車を呼んだらしい。
そしてトラック運転手の元へ行き、事情聴取をし始めた。
トラック運転手「す、すいません!いきなり、対向車線にこのバイクが飛び出てきたもんだから、ブレーキかける暇もなく…」
警察1「この黄色い線を乗り越えてバイクが向こうから走ってきた、と言う事ですね?」
トラック運転手「は、はい」
俺達は野次馬と化し、周りの人混みに紛れながら、
その様子の一部始終を見ていた。
アキラ「あーあ、これってあの運転手も悲惨だよなぁ」
祐樹「そうだよな。あれであの運転手、きっとこの先もう車の運転とか出来ねぇんじゃねぇか?ずっとトラウマになっちまうぜ」
アキラ「だよな。こういう事故って被害者はもちろんだけど、加害者も紙一重で悲惨な目に遭っちまうよなぁ…」
警察とトラック運転手との会話が、風に紛れて聞こえてくる。
どうやら、違反をしていたのはバイクだったようだ。
追い越し禁止車線なのに、無理やり中央線から対向車線へと乗り出し、そのまま一切減速もせず突っ走って行ったらしい。
そこで出合い頭に衝突したのがあのトラックだ。
アキラ「たとえ悪いのはバイクの方でも、こういう場合、必ず車の方が悪くなっちゃうんだもんなぁ」
祐樹「あのトラックの兄ちゃんもこれから大変だな」
話を聞きながら、俺達は何となく、
あのトラックの兄ちゃんの方に同情していた。
見るからに人が良さそうな兄ちゃんだ。
ずっと俯きながら、警察からの事情聴取を受けている。
体も小刻みに震え、どうやら罪の意識に心底から苛まれ始めているようだ。
ト書き〈首が180度逆を向いているライダー〉
アキラ「う…!うぇぇ!こ、こりゃひでぇや…」
俺はふと、車道に寝そべり続けているライダーの方を見た。
すると悍ましい光景が目の中に飛び込んできた。
なんと、首が180度逆を向いているのだ。
警察1「こりゃ…なんとも痛ましいなぁ…」
警察2「…ええ」
体の周りにはおびただしい流血の量。
そして首が真逆を向いて、白目を開けているライダー。
もう既に亡くなっているようだった。
ト書き〈警察がそっとライダーの首を元に戻す〉
警察1「…これじゃ、余りにも痛々しい…」
ベテラン風の警官はライダーに近づいた。
そしてゆっくりしゃがみ、ライダーの首を元の向きへ戻してあげていた。
ト書き〈救急車が来る〉
それからすぐ救急車が来た。
救急隊員「よし、じゃあそっち持って、いくぞ!」
救急隊員はライダーを担架に乗せ、救急車に乗り込み、
そのまますぐ病院へ搬送して行った。
警察1「はい皆さん交通の邪魔になりますから、どうぞ行って下さい!」
警察2「はい行って下さい!行って下さーい」
それから警察は交通整理をし始め、
また車道はいつもの顔を取り戻していった。
でも路上には流血の跡と車体の破片、
粉々になったガラスなんかが沢山散らばっており、
たった今起きた事故の悲惨さを物語っていた。
ト書き〈後日のニュース〉
それから数日後。
俺と祐樹は、俺の家でテレビを観ていた。
その時ニュース速報が飛び込んだ。
アキラ「ん?あ、これって、あん時の事故のニュースじゃねぇ?」
祐樹「あ、そうだなこれ…」
速報はまさに、あの時のトラックとバイクの事故のニュース。
俺と祐樹は自分達が目撃した事もあり、少しそのニュースに聴き入った。
キャスター「先日、国道13号線で事故が発生しました。大型トラックと中型バイクが正面衝突した模様で、バイクは追い越し禁止の車道で無理やり対向車線に出てしまい、トラックに激突した模様…」
キャスター「その後、中型バイクを運転していた男性はすぐ病院搬送されましたが、搬送先で死亡が確認されました。男性は風よけの為、そのとき服を逆に着ていたという事で、いつもと違った服装をしていたため運転ミスがあったのではないか、との見方も強めています」
解説〜
はい、ここ迄のお話でしたが、意味怖の内容に気づかれましたか?
それでは簡単に解説行きます。
アキラと祐樹は或る日、国道をドライブしていました。
その同じ国道で事故が発生します。
トラックと中型バイクとの正面衝突。
バイクは追い越し禁止車線で、無理やり中央車線から対向車線へ乗り出してしまい、前から来たトラックに勢いよく衝突します。
そしてそのままバイクは路肩に投げ出され、
ライダーも数十メートル先に体を投げ出されてしまいました。
しかもそのライダーの状況を見ると、
「首が180度逆を向いている」
という悲惨な状態。
誰が見ても、
「もう絶対死んでいる」
となるのは必至でしょう。
その余りにも痛々しい状況に心を痛めた警官は、
180度逆を向いている首をまた元の向きへ戻してあげました。
男性はその後、病院搬送されましたが、搬送先で亡くなります。
しかしラストの場面でニュースキャスターは、
「男性は風よけの為、そのとき服を逆に着ていたとの事で…」
と言います。
服を逆に着ていたと言う事は、首の向きも逆に見えるという事。
警官はそれに気づかず、ただ、
「事故の衝撃で首が折れ、180度逆に向いてしまっている…」
と誤認してしまったのです。
となると、ライダーの首は正しい方向を向いていたのに、
それをわざわざ警官が180度逆の方へ向けてしまった…
つまり、もしかすると助かっていたかも知れないライダーの命を、
「警官が殺してしまった」
となるわけです。
警官もおそらくこんな大事故を目の前にして、
気が動揺していたのでしょうか。
大事故というのは得てして、目を覆いたくなる程の惨劇を突き付けるもの。
けれど、つい冷静で居られなかったばかりに誰かの命をあやめてしまう…という無意識の殺害も確かにあるようです。
どんな場合でも先ず、冷静な視点と感覚は失いたくないものですね。