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気化した欲望

タイトル:(仮)気化した欲望

▼登場人物
●過多部 常夫(かたぶ つねお):男性。30歳。真面目だが女性を強姦したい気持ちが人一倍強い。でもそんな自分が大嫌い。サラリーマン。
●本庄現子(ほんしょう うつこ):女性。30代。常夫の罪の意識と「女性を強姦したい」と言う本性から生まれた生霊。
●女性:10代~40代くらい。一般的なイメージでOKです。
●男性の乗客:50代。一般的なイメージで。
●ニュースキャスター:女性。30代。一般的なイメージで。

▼場所設定
●常夫の自宅:一般的な民営アパートのイメージで。
●街中:電車の中や公園など一般的なイメージでOKです。
●バー「Real Nature」:「リアルネイチャー」で意味は「本性」。お洒落な感じのカクテルバー。現子の行き付け。

▼アイテム
●「アブステネンス」:現子が常夫に差し出す特製のカクテル。これを飲むと全身的にストイックになれ、性欲衝動が全く抑えられる。それも快適に。ただし効能は3か月。この名称は「abstinence(禁欲)」に由来する。
●「セルフ・ディナル」:現子が常夫に差し出す特製のカクテル。これを飲むと普段は体が気化し、日常では消えたようになる。ただ女性が居る場所にだけ幽霊のように現れる事が出来、痴漢や強姦をする事が出来る(事が終わればまた気化する)。効能は永遠。この名称は「self-denial(自己否定)」に由来。

NAは過多部 常夫でよろしくお願いいたします。

メインシナリオ~
(メインシナリオ:ト書き・記号含む=4190字)

ト書き〈電車の中〉

俺の名前は過多部 常夫(30歳)。
俺には今、悩んでいる事がある。

(目の前に女子高生)
常夫「(うう・・・駄目だ・・・また我慢できない衝動が・・・)」

目の前に女性が来ると、どうしてもその体を触りたくなる衝動!
これをずっと我慢し続ける毎日!
こんな繰り返しにずっと悩み続ける。

ト書き〈電車を降りて〉

常夫「ハァハァ・・・駄目だなぁ。なんでこんなふうになっちゃうんだろ・・・。やっぱずっと独身っていうのがマズいのかなぁ。でも嫌だなこんな自分・・・」

俺は中学の時に女子と付き合って以来、ずっと独り身だ。
それ以来、まともに女と付き合った事が無い。
そういう生活歴のせいかも知れない。
そうも思った。

ト書き〈バー「Real Nature」へ〉

或る日の仕事帰り。
久しぶりに飲みに行った。
日頃の鬱憤を晴らす為だ。

いつもの飲み屋街を歩いていると・・・

常夫「ん?なんだろ、新装かな?」

全く見慣れないバーがある。
バー「Real Nature」。

中はとても落ち着いて、客も疎ら。
俺はカウンターで1人飲む事にした。

すると・・・

現子「こんばんは。お1人ですか?ご一緒してもイイかしら?」

1人の綺麗な女性が声を掛けて来た。

常夫「あ、ど、どうぞ・・・!」

ドギマギした。
まさかこんな俺に声を掛けてくれる女性が居たなんて。

でも彼女はなんだか不思議な人だった。
「昔からずっと一緒に居た人」
そんな感覚がどことなく漂うのである。

そのせいか、不思議とよこしまな気持ちが沸いてこない。
ただ一緒に居るだけで幸せ・・・そんな気持ちにさせられる。

現子「あ、申し遅れました。実は私こう言う者です」

彼女の名前は本庄現子。
年齢はおそらく30代。
普段はライフコーチをしてるらしい。

暫く彼女と話していると、また不思議な感覚に襲われる。
なんだか自分の事を話したくなるのだ。
気付くと俺は、自分の今の悩みを全て彼女に打ち明けていた。

現子「そうですか。それで悩まれてるんですね」

常夫「全くお恥ずかしい限りです。こんな歳になって、まだそんな事言ってるんですからね。でも・・・ダメなんです!なんだか最近こう急に、女性の魅力と言うか、何て言うかその、女性を見るだけでその裸を想像してしまったり、変な事ばかり考えちゃうんです!嫌なんですよ!僕はもうこんな自分が!」

現子「そうですか。でもそれは健全な証拠だと思います。男性なら誰だって魅力的な女性がそばに来ればそんな気持ちにさせられます。あなたが言われるような妄想にも駆られるでしょう。全く恥じる事じゃないと思いますよ?」

常夫「で、でも最近はもうダメなんですよ!なんだか衝動が全く抑えられなくなっているんです。この前も電車の中で痴漢してしまいそうになって・・・」

俺は最近の自分の悩みを、包み隠さず現子に白状していた。

常夫「で、でもあなたはなんだか不思議な人ですね。あなたとこうやって話していても、不思議とあなたにだけはそんな気が起こらない・・・。なんだかまるで母親と話しているような、そんな気にさえさせられてしまいます・・・」

現子「フフ、それは私に魅力が無いって事でしょうか?」(笑いながら)

常夫「い、いえ!そんな・・・!」

現子「いいんですよ、お気になさらず。解りました。ここでこうしてお会いしたのも何かのご縁。私があなたのお悩みを軽くして差し上げましょうか?ご心配なさらず、料金は頂きません。私の事業は全てボランティアですから」

常夫「え?」

そう言って彼女はカクテルを1つオーダーした。

現子「どうぞお飲み下さい。それは『アブステネンス』という特製のカクテルで、それを飲めばあなたは苦しむ事なく、性欲をはじめ、あらゆる欲望を抑える事が出来るでしょう。ただしその効果は3か月。その間にぜひ禁欲する術(すべ)を自分で見つけ、自分の欲望を抑える手段を探してみて下さい」

常夫「えぇ?そんな事ある訳が・・・」

現子「信じる事が大事です。今のままで居てもどうせあなたはその衝動に苦しむだけ。それなら1度試してみるべきです。試すだけなら損はしませんよ?」

確かに。
どうせこのカクテルは無料。
それなら試してみるのも悪くない。
そう思い、半信半疑で飲み干した。

ト書き〈翌日〉

常夫「え・・・。ほ、ホントだ。今まで心の中を占領していたあの薄汚い欲望みたいなものが、なんだか一掃されたような気分だ・・・。何かスッキリしてる」

驚いた。
俺は全く生まれ変わったかのように、清々しい気分になれていた。

電車に乗っても街中で女性を見ても、全く性欲衝動が疼かない。
「愛する女(ひと)とだけ結ばれたい」
「真っ当な人生を真面目に送りたい」
そんな気持ちが大きくなって、よこしまな気持ちは消えていた。

常夫「あ、あのカクテルの効き目・・・本当だったんだ」

ト書き〈いかがわしい物を全て毛嫌い〉

俺はそれまで観ていたアダルトビデオを全て捨てた。

(AVショップを見ながら)
常夫「フン、あんなトコへ入る奴の気が知れないよ!」

(いかがわしいチラシを見て)
常夫「フン、こんな事して一体何が楽しいんだ!」

(電車内の痴漢行為を見て)
常夫「全くあんな不潔な所を触ってなんで嬉しいんだ!」

こんな感じで、いかがわしい物を見るたび俺の心は怒りに沸いた。

ト書き〈3か月後〉

常夫「ハァハァ・・・あれぇ、おかしいな!なんだろこの気持ち・・・」

しかしその後、俺の心と体はまた性欲に疼き出した。

常夫「もしかして・・・!・・・やっぱりそうだ!あれから3か月経ってる!」

あのカクテルを飲んでから、今日で3か月が過ぎていた。
そう言えばあの日、現子は俺に言った。
「カクテルの効能は3か月だ」と。

常夫「ハァハァ・・・ダメだ!耐えられない!」

これまでの禁欲生活が祟ったせいか、
俺の心と体は以前より益々性欲に疼いてしまう。

このまま街中へ出て行けば、俺は間違いなく性犯罪を犯してしまう。
そんな事まで考えながら、なんとかこの衝動を抑えようと努力した。

ト書き〈数日後〉

それから数日後。

常夫「ああダメだぁ!女をどうにかしたい!やりまくりたい!!」

やはりダメだった。
益々性欲が疼いてしまう。
かと言ってAV男優になる気は無い。

そして・・・
もうどうにも堪らず、俺はまたあのバーへ行く事にした。
現子、彼女なら今の自分のこの状態を何とかしてくれる!
何の根拠も無かったが、俺は直感でそう信じた。

いっときでも禁欲できる状態を現子はもたらしてくれた。
だから今度もきっと助けてくれると。

ト書き〈バー「Real Nature」〉

常夫「あ、いた!現子さん!」

カウンターに座っている現子を見付け、俺は走り寄った。
そして・・・

常夫「お願いです!もう心の中が乱れてどうしようも無いんです!なんだか、寝ても覚めても女性の体ばかりが宙に舞ってて、もうこのままじゃ性欲に取り殺されそうです!あのカクテルを!あのカクテルをもう1度僕に下さい!」

「どうしても自分を救ってほしい」と俺は無心した。

現子「そろそろ来られる頃だと思ってました。やはりご自分で欲望を制御する事は出来ませんでしたか?ですがもう少し努力する気はありませんか?」

常夫「無理ですよぉ!もうこんな状態じゃ、オチオチ街中も普通に歩けない感じなんですよ!体の中から性欲が溢れ出すように湧いて来るんです!!」

現子「誠に言い辛いのですが、あのカクテルはもう無いんですよ。それぞれの人に効き目は1度限りなんです。ですから、差し上げる事は出来ません」

↓ここから↓

常夫「そ、そんなぁ!!お願いです!どうにか助けて下さい!出来るんでしょう!あなたなら出来る筈だ!あの時あのカクテルで、この僕の欲望を完全に封印してくれたのはあなただ!あんな状態にもう1度して欲しいんです!」

現子「・・・仕方ありません。そこまで言われるのでしたら」

そう言って現子は指をパチンと鳴らし、またカクテルを1つオーダーした。
そしてそれを俺に勧めて言った。

現子「ではこちらのカクテルをお飲みになられますか?これは『セルフ・ディナル』と言って、禁欲ではなく、欲望を解放させる特製のカクテルです」

常夫「解放・・・?い、いや、でもそんな事したら僕は益々・・・」

現子「ご安心下さい。心配されるような事にはなりません。欲望を解放させはしますが、それによりあなたの身の破滅を招くような事にはなりません。ただ今の禁欲状態、これを我慢し続けるストイックな苦しみの連続からは完全に解放されます。今度はその効能に期間はありません。効果は永遠です」

現子「ただしこちらを飲めば、これまでの生活は失われます。お勧めは致しません。あなたの人生です。あなたが自分でお決め下さい。今の状況から永久に解放される事を望むか、今のその状態から新しい人生の扉を開くか・・・」

「禁断状態のような今の苦しみから永久に解放される」
この言葉を聞いた瞬間、現子の言葉を最後まで聞かず、
俺は差し出されたカクテルを一気に飲み干していた。

ト書き〈その後〉

(公園で)

気化した常夫「へっへ~イイ女だぁ・・・ではさーっそく・・・」

女性「きゃあぁあぁ!」

(電車の中)

気化した常夫「へっへ♪まぁたイイ女が乗って来たなぁ・・・どれ・・・」

女性「きゃあぁああ!!こ、この人、痴漢ですぅうぅ!」

男性の乗客「なっ!ち、違う!俺はやってないぞ!」

(道端で)

気化した常夫「へへへ♪お嬢さん、こんばんわぁ・・・」

女性「え、あ、あなた誰・・・?どこから出て来たの・・・き、きゃあぁぁ!」

ト書き〈ニュース報道〉

キャスター「最近ちまたでは痴漢騒ぎが連続して発生し、それと同時に強姦事件も多発している模様です。しかし犯人はその痕跡すら残しておらず・・・」

ト書き〈ニュースを観ながら〉

現子「ふぅ、やはりこうなったか。私は常夫の『罪の意識』と『女性を強姦したい』と言う本性から生まれた生霊。常夫に真っ当な人生を送って貰いたかったけど無理だったわね。結局、常夫は本能のままに自分を消し去った」

現子「常夫が飲んだカクテル『セルフ・ディナル』はね、人間を気化させる特製のカクテルだったの。それまでの人生を捨てさせ、あとは亡霊のように生きるだけ。女性が居る場所にだけポンと姿を現わし、事を終えれば姿を消せる。だから幾ら犯人を追ったからとて、常夫が逮捕される事は永久に無い」

現子「僅かに残った理性すら、常夫はあのカクテルで永久に消してしまった。世間から性犯罪が消えない縮図が、まるで常夫の存在を模写しているようね」

動画はこちら(^^♪
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