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エンドレス

タイトル:エンドレス

イントロ〜

ネットでの誹謗中傷…嫌ですよね。
でも1度はやったことあるんじゃないでしょうか?
インターネットとは、心の中の声に似てます。
心の中の動きがそのままネット上に現れ、
そこで自分なりの…いや自分だけの理想を叶えようとしてしまう。
それをまるで理性のように運営者が削除したり通告したりして
何とか抑えようとはしますが、それでも実際は間に合いません。
この問題が絶えないのもその1つの証拠。
そしてそれが現実化すれば独裁となるでしょう。
この心の動きのようなネット上での活動に魅了され、
その罪をやめる事が出来なかった
或る男性にまつわる不思議なお話。

ト書き〈自宅〉

俺の名前は日棒大志(ひぼう たいし)。
今年30歳になる在宅ワーカー。

自宅ワークでは主にライティングの仕事をしているが、
それらはすぐに片付ける。そして空いた時間は全てネット上での活動だ。

大志「へへwよぅし、今日はこいつを叩いてやるかw」

そう、俺の趣味は、ネットである事ないこと吹きまくる事。
これが無ければ俺の生き甲斐は無く、俺は毎日この活動を続けている。

本当に良い時代になったもんだ。一昔前はこんなネット等なく、
鬱憤を晴らすとなれば実際外に出かけて行って、
それなりの事をしなきゃならなかった。

今じゃ時間も労力もほとんどかけることなく、その夢を達成できてしまう。
なぁに今のメディアだって普通にやってる事だ。
何も悪くない。公認でそれが許されているのだから
個人がそれをしたって罰せられる対象にはならないだろう。

そんな自分だけの正義を掲げ、やはり俺はこの活動を繰り返している。

ト書き〈カクテルバー〉

そんなある日、俺に転機が訪れた。

俺は個人で誹謗中傷サイトを作っているから
そこに集まってくる動画視聴者はことのほか多く、
そのお陰で収益もそれなりに潤っている。
今日はその金を持って久しぶりに飲みに行った。

そこで、或る女に会ったのだ。

そいつの名前は草場(くさば)ヒトヨ。
都内でライフコーチの仕事をしていたらしく、
その雰囲気から上品さと優しさが漂ってくる上、
「昔どこかで会ったことのある人?」
と言う印象までうっすらやってくる。

その人柄が俺をそうさせたのか。
俺は自分の今の身の上を全部、
彼女に打ち明けていたのだ。

こんなこと、普通なら言わないことなのに、
本当に不思議な経験であり、この時の俺は
少しどうかして居たのかもしれない。

ヒトヨ「まぁ、ネットで人の悪口を?」

大志「あははwまぁそんなシリアスなもんじゃないスけどねw結構、日課になっちゃってw」

ヒトヨ「…すぐやめるべきですね。あなたがそうでも、言われてる方はそうじゃないかも。いやきっと傷つき、そんな事を言う人を恨む人が多いでしょうから」

彼女は俺を叱るように嗜めてきた。
ここでもう1つの不思議に気づく。
彼女にそう言われると、何となく
反省してしまう気持ちになる。

そして彼女はそんな俺を更に助ける為にか…

ヒトヨ「こちらをどうぞ。試してみてください。これは『finite self-restraint』と言う特製のドリンクで、これを飲めば暫くの間あなたの心は休まり、そんな事をせずとも居れるようになるでしょう」

とドリンク剤のようなものをくれたのだ。
ここでもさっきの不思議な感覚の延長で、
俺は彼女の言う事を信じ、その場でそれを飲み干した。

ト書き〈3ヶ月〉

それから3カ月間、俺は本当にそれまでの趣味をやめる事ができていた。

「自分がされたら嫌なこと…」
この当たり前の気持ちが心にずっと居座ってくれ、
俺のそれまでの行動を本当に改めてくれていたのだ。

でも3ヶ月経つとやっぱり…

大志「クソウ…やっぱり又…」

誰かを傷つけたい、誹謗中傷の趣味に返り咲きたい…
こんな愚かしい思いが本気で甦り、
それから俺の全てを支配するようになっていく。

でもその時、不思議と俺の携帯に彼女から電話が鳴った。
番号を教えてないのに…そんな不思議がまず立ったが、
その不思議を吹き飛ばすほどに俺の欲望が強まり、
俺は彼女の声を無視してまたパソコンに向かい、
それまで通り、他人への誹謗中傷を繰り返していた。

ト書き〈オチ〉

するとまた今度は俺の携帯にメールが入り、彼女からこう言われた。

(メール内容)

ヒトヨ「残念です。やっぱりやめられないんですね。そんなにあることないこと作り上げ、誰かを誹謗中傷したければ、ずっとそうしてると良い」

その文面を読んだ瞬間、俺の意識は飛んでしまった。
そして俺は今、それまで見た事もない、電子の空間に舞い降りたようだ。

ト書き〈パソコンを見ながら〉

ヒトヨ「私は彼の欲望と自制心から生まれた生霊。でもその自制心など目じゃないほど彼の欲望は凄まじく大きく、彼そのものを飲み込んでしまった」

ヒトヨ「やっぱり、電子の住人に成り果てるしかなかったようね。彼の存在はこの世から消え、パソコンの中にだけ声として、文章として、生きる存在になってしまった」

ヒトヨ「でも失敗したわ。こうなってしまうと彼、今後もずっと生き延びる事になってしまう。制裁を加えるどころか、まるで永遠の命を与えてしまったみたい」

ヒトヨ「今日もどこかでこれまで通りに、誰かの誹謗中傷を繰り返してるみたいね、彼」

動画はこちら(^^♪
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