メリーさん
タイトル:メリーさん
「う〜ん、これも要らないかなもう」
その日、私は部屋の整理をしていた。
要らない物をどんどん捨ててゆこうと、
断捨離も兼ねて、
それまで大事にしてきた物も思いきって捨てた。
その中に、子供の時から大事にしていた人形もあり
それは一人暮らししてからも
ずっと肌身離さず持っていて、
もともと人形好きだった私は
その子をずっと抱いて孤独を埋めていた。
だから捨てる時はちょっと悲しかった。
まるで思い出を捨てるようで。
(引っ越し)
「あ、はい分かりました」
後日。
私は会社で転勤を命じられ、引っ越すことに。
住み慣れたアパートを引き払い、
地方のマンションに移り住んだ。
でもその日の夜からだった。
ピリリリ!
私の携帯が連続して鳴り始めたのだ。
「……もしもし?」
メリー「あ、私メリーさん。今あなたの家に向かっているの」
「………」
メリー「もうすぐ着くと思いますので、待っててください」
「………」
「プープー…」
これってもしかして…
そう思った瞬間、あの人形の事を思い出し恐怖した。
「…メリーさんって、思い出の深い物に乗り移る形で現れるの…?」
そう言うものなのかと改めて思い知らされ、
私はいつか見た
ドラマや映画、漫画の『メリーさん』を思い出し、
さらに恐怖してしまう。
それから、コチ…コチ…と時計の音だけが部屋中に鳴り響き、
あの子がここへ来る時間を刻んでいるかのようだった。
ピリリリ!また携帯が鳴る。
「……も、もしもし…」
メリー「私メリーさん。今あなたのアパートの前に居るの。これから入って行くからよろしくね」
「………!」
嫌…来ないで…!
そう思う不安と恐怖が膨大に膨らむ。
もうすぐ来る…あの人形がここへ来る…
私どうされるの…!?
この訳のわからない恐怖が、
独り部屋に居る私の全身を包み込む。
コチ、コチ、コチ…(時を刻む音)
「…………」
それから10分、20分、30分が経過。
でもあの子は一向にここへやって来ない。
(その頃、彼女が元住んでいたアパートで)
男「ん、なんだこれ?」
男の部屋に人形が置かれていた。
男「…なんだこの人形?こんなの買った覚えねえんだけどな」
(彼女のマンションの部屋)
ピリリリ!
「あ、はい…もしもし…」
メリー「今あなたの部屋に向かって居るの」
それから同じ展開が何度も繰り返された。
あの人形は一向にここへやって来ない。
それからずいぶんして知ったのだが、
どうもあの子は私が元住んでいた
アパートに何度も来て居たようだ。
そこにあとから入ってきた男性は
ノイローゼ気味になってしまったと言う。
「…そっか。あの子って部屋に帰って来るんだ。自分が元居た場所に。……私のこと見てなかったのかよ」
猫かよ、そう思ったのは本当の事。
それからもずっとあの子は
私の元へはやって来なかった。
電話は私にして、
ずっとあのアパートに帰ってるんだ。
動画はこちら(^^♪
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