
網に捕えられた狂った芸能人と隠れた悪魔
タイトル:網に捕えられた狂った芸能人と隠れた悪魔
▼登場人物
●小比類巻 富雄(こひるいまき とみお):男性。60歳。大物芸能人。妻子持ち。若い時はトラブルメーカー。
●ネトウヨ市民:一般的なイメージでOKです。
●野木崎 静華(のきさき しずか):女性。25歳。デビューして割とすぐの歌手。
●「顔」氏:男性。年齢不詳。ハンドルネームが「顔」。ネトウヨ市民の1人。
●某ネットユーザー:男性。30代。「こんなことばっかやってて楽しいのかよ!」とネットで訴えていた。
●キャスター:一般的なイメージでOKです。
●柏和手 凡児(かしわて ぼんじ):男性。20代。ネトウヨ市民の1人。
▼場所設定
●富雄の自宅:それなりの豪邸。地下室もある。
●街中:Y生活支援センターの門扉など一般的なイメージでお願いします。
イントロ~
インターネットでの誹謗中傷、皆さんはどう受け止めていますか?
自分が言われたら嫌なこと、絶対に非難されたくないこと、つつかれたくないところ、
そんなことを何の遠慮もなく、土足で心に踏み上がるようにして、いろいろ言われたら、
やっぱりへこむんじゃないでしょうか?
それどころか、人格まで否定され、人生を卒業した人も確かに居た筈。
有名人ともなればこの誹謗中傷の的にされやすく、履き違えた有名税、
有名人だから仕方が無いなど、そんな納得のもとでやっぱり誹謗中傷が繰り返される。
今回は、その或る有名人が巻き起こした、悲劇のエピソード。
その理由はネットでの誹謗中傷にあったようです。
ト書き〈1人部屋で〉
富雄「クソ、また来てやがる…。いやここだけじゃない。ここにも、ここにも、クソ…なんでこんなに…」
彼の名前は小比類巻 富雄(こひるいまき とみお)。
今年60歳になる、いわゆる大物芸能人の内の1人だ。
(普通のナレーション)
彼はこれまで自分なりに苦労してきて、歌にも演技にも没頭し、ここまでの地位を作り上げた。
なのに還暦を迎えたここへきて、まさかこんな誹謗中傷の的にされるとは…と、およそ人生のどん底を味わっていた。
彼への中傷がネットに挙がり始めたのはつい先日のこと。
彼は結婚しており、妻子がおり、一般人と同じく、自分の家庭を守らなきゃならない立場。
富雄「こんなの妻にも子供にも見せられない…!クソウ!!なんでだ!なんでここへきてこんな!」
それには理由があった。
つい先日、YouTubeで彼を名指しで訴えた、或る女性が居たのだ。
その女性も同じく芸能人で、もうずっと前に引退していた。
その引退理由が「富雄にされた性的暴行によるショックとトラウマ、それにより発症した精神障害だ」としていたのである。
ト書き〈某女優のYouTube動画にて〉
某女優「もうほんとにひどくて、私もう何が何だか分からなくなっちゃって、気がついたらこの世を去ろうなんて独りで思っちゃって、今でもまだ正直、そのショックから立ち直れていません」(泣きながら)
某女優「この動画にもし富男さん、あなたが気づいたら、どんな形でも良いから私に一言謝って下さい!そうしても許さないかもしれないけど、私、ちょっとでもこのショックから立ち直れるきっかけができるかもしれないから…!」(泣きながら)
このような内容の動画が連日アップされており、
それを見たネトウヨ市民たちが血気盛んに盛り上がり、
その彼女の元へ来て「大丈夫ですか?」「富雄のヤロウ絶対許さねえ!」「絶対に許しちゃ駄目ですよ」「みんなあなたの味方ですから!」など、賛否両論の「賛」の部分が思いきり膨れ上がり、ほぼそれだけで彼女の動画のコメント欄が埋め尽くされた(でもそれから少しして、某女優こと彼女は、一切のネットに登場することなく、そのまま姿をくらました)。
そして当然その反動で、富雄の元には誹謗中傷の槍が降り注ぎ、10から20ほどのSNSサイトで、一方的に富雄を責め立てる罵詈雑言が鳴り響いていたのである。
富雄「そんなこと俺してねぇだろ…!なんでそんなこと今になって言ってくるんだよ!」
小比類巻 富雄はその昔、数々の事件を起こした曰く付きの芸能人としても有名だった。
暴力団との癒着に始まり薬関係、暴力事件、窃盗事件、テレビや雑誌を通しての名指しで同じ芸能人を非難する中傷事件・偽証罪、他にも様々なトラブルを引き起こし、実際、警察に逮捕され収監されていた事もある。
この女優が訴えたこと、確かにそれに似たことを富雄は過去にしたことがあった。
でもその記憶は本当に曖昧で、覚えていない。
そんなことが本当にあったかもしれないけれど、
その女優に暴力を働いたかどうかと言えば、
その証拠は当人たちですら挙げることが出ないでいた。
すべて、誰にとっても過ちを犯しやすい若い時のこと。
20代から30代の時に起こした事件であって、
それからは良父性に目覚め、それまでの自分の行いをことごとく反省するかのようにして
自分のあり方、言動を改め、本当に今では多くの人から慕われる存在になっていたのだ。
だから今の彼しか知らず彼の過去を知らない人にしてみれば、
「なんでこの人がこんなに非難されてるの?」
と心底、疑問に思ってしまうのは仕方なかった。
でもウィキペディアや他の特定の情報サイトなどで、
当時の彼の事を調べあげればすぐにその辺りの事実、情景や光景も浮かんできて、
「なるほどな…」と納得されてしまう。
富雄「はぁ…。この先、どうしたら良いものか…」
彼は本当に、これまでに無い程、心底から悩み続けていた。
ト書き〈転機〉
そんな時、自分の元に寄せられる多くの誹謗中傷コメントの中から、1人、
とりわけ非道いコメントをしている一般ユーザーが富雄の目に留まった。
顔「お前もう人生ツンでんだよ!さっさと自害しろ!」
ハンドルネームを「顔」としたそのユーザーの言う事・為す事は全て度を越しており、
他のユーザーに比べて執拗なまでに富雄のことをこき下ろし、さらには富雄の顔写真をつけて自分のブログやSNSサイトで新たな誹謗中傷の為の広場を作り、そこで富雄の人格から人生から何から全て真っ向から否定していた。
それは悪口雑言だけが飛び交う砦のようになっており、まさに富雄にとっては耐え難い代物。
富雄「こいつ…何にも知らねえくせにここまで言うとは…」
しかも「顔」は某女優が訴えたその暴力事件のことを、まるで本当に見てきたかのように正当化して、その為の証拠も自分で作り上げ、とにかく富雄のすべてを奈落に叩き落とす為にと、まるでその人生をかけるように書き込みに集中していた。その姿はまさに没頭である。
それが結局、富雄の底知れぬ憎悪、彼が生来持っていた悪の部分を膨らませ、富雄の人生を再び誤った道・悪の道へと突っ走らせる原動力に成ったのである。
ト書き〈当ての無い復讐〉
それまで富雄はずっと沈黙を続けていたが…
富雄「…ここまで言われてされて、黙っているわけにはもういかねぇなぁ。良いだろう、じゃあ本当の悪魔になってやるよ。お前ら、それを望んでんだよな?」
今までの生活も今の地位も全て忘れ果て、富雄は自分の内実と姿を変えてしまった。
そして沈黙を破り、自分もYouTubeサイトを立ち上げて、そこで思いの丈を述べた後、他のユーザーに比べて度を超す形で誹謗中傷・人格の非難・人生の否定までしてきたその「顔」の事を調べあげる為、徹底してネットに精通できる知識とスキルを身に付けた。
(富雄のYouTube動画)
富雄「これは俺を誹謗中傷し、人生を否定して、人格まで傷つけた、特定のネトウヨ市民達だけに告ぐものだ」
富雄「なぁお前ら、俺があの女のことを無茶苦茶にして、暴力事件まで起こして、そんなことが実際あったみたいに言ってるけどよ、それ見たのか?え?証拠あげれんのかよ?あぁ?言ってみろよコラ!」
富雄「まぁお前らの中にはホント聖人君子みたいな奴とか、昭和の雑誌記者みたいな奴とか、弁護士みたいな奴とか、或いは聖職者みたいな奴まで居たよな?自分のこと棚上げして、こういう時だけワンサカどっかから集まってきやがって、偽善者ぶりやがって、お前らそんだけ言えるほどの人生生きて来たのかよ?えぇ?w」
富雄「似たような事とか、もっとひどい事とか、してきたんじゃねぇのか?ん?はっきり言ってみろよ?してきたんだろう、そう言う事を?身に覚えのある奴ってのは、自分に似たような奴を非難したがる傾向にあるからなぁ」
富雄「…人は皆罪人。あの某女優だって同じような罪を犯してきたんだ。お前らだってそうだ。他人の事をとやかく言える資格なんて誰にもねぇ筈だろ?もう分かってんだろ?」
延々そんな調子で動画を撮り続け、とにかく自分のそのとき心にあった文句を散々吐き立てていた富雄。
ト書き〈事件〉
そして数ヵ月後。ついに事件が起きた。
(現場から中継)
キャスター「えー、ここにありますY生活支援センターに入るところにあります、この門扉の支柱の上ですね。ここの所にちょうど生首が置かれるようにしてあったと、えー目撃者から通報を受けていました」
別の場所で殺害された被害者の首が、
門扉の支柱の上に置かれてあったと言うこの事件。
警察が調べたところ、その被害者の身元はすぐにわかった。
あの富雄に誹謗中傷を繰り返していた、ネトウヨ市民たちの間でも有名だったあの「顔」氏である。
しかしその門扉の所に置かれてあった生首は、
顔から頭部の皮膚だけを残す形で置かれており、中身は無い。
つまり頭蓋骨が引き抜かれる形で首が置かれていた状態であり、
その引き抜いた中身が今どこにあるのか、警察は次にその行方を追っていた。
そしてその行方もすぐにわかった。
これもネトウヨ市民を始め、ネットユーザーからの噂と、その内の特定の者達から得られた通報・証言による。
ト書き〈富雄、逮捕〉
キャスター「えーここは、あの芸能界でも非常に有名で、大物芸能人としてこれまで活躍されてきた、小比類巻 富男さんの自宅の前です」
富雄の自宅には地下室があり、そこで妻と子供の目をかいくぐり、富雄は1つの楽しみに興じていた。
それはあの「顔」氏の頭部から引き抜いた頭蓋骨を棚の上に飾り、その頭蓋骨のちょうど額の所に的を書き、
その的を目掛けて持っていた空気銃、スミス&ウェッソンから発砲するBB弾を撃ち続け、BB弾が骨に当たって弾ける音を聞く度に、胸がすーっとして居たと富雄はあとで証言していた。
(連行されながら取材陣に向かい)
富雄「フフ…グフフ、もうちょっとで、額の所の骨が陥没する筈だったんだ。フフ…グワハハハハ!!wどうだ!?これでお前らの望み通りの形になっただろう!!ええ!?アッハハハハハハハハwww!!ひゃーははははははははは!!!!!wwww」
富雄は涙を流して笑っていたと言う。
ト書き〈数日間〉
それから数日間。ネットでもこの事件の話題で持ちきりだった。
(ネトウヨ市民たちの間で)
「まさかあそこまでするとは」
「やっぱり鬼畜だったな」
「『顔』さんかわいそう…」
「なぁみんな、また楽しめるカモが居るカモよ?」
「え?どういうこと?」
「野木崎 静華(のきさき しずか)、あいつ今叩かれてんだろ?結構スゴイ事になってんぜ?w」
「ああ知ってる知ってる」
「次そっち行ってみるか?w」
某歌手だった野木崎 静華が次の餌食になった。
静華「…ゆ、許せない…」
ト書き〈数日後〉
次はネット市民たちの間で喧嘩が起きた。
「こんなことばっかやってて楽しいのかよ!」
「あ?w何ムキになっちゃってんの?」
「お前をヤッてやる」
「はい、殺害予告通報しますたw」
数週間後。特定のネトウヨ市民の1人が死体で見つかり、同じネット市民の1人が逮捕された。
その逮捕される直前に、犯人となったそのネット市民は、自分の管理するブログにこう書いていた。
「『殺害予告通報しますたw』って書いてた本人が、当然の報いを受けますたw彼の本名は柏和手 凡児(かしわて ぼんじ)君と言い、まぁ知ってる人は知ってるでしょう♪彼の親とか身内とか友達なら^ ^変な名前をつけられたから、こんな変なことも他人に対して普通にできてたんでしょうねw」