美し過ぎるのは詰み(罪)?
タイトル:美し過ぎるのは詰み(罪)?
▼登場人物
●外見頼子(そとみ よりこ):女性。40歳。美に憧れる。器量が良くない。
●真守(まもる):男性。41歳。頼子の婚約者。真面目で優しい。頼子を愛する。
●香苗(かなえ):女性。30~40代。頼子の理想と欲望から生まれた生霊。
▼場所設定
●街中:都内の一般的なイメージでOKです。
●サロン:香苗が経営しているビューティサロン。
●頼子の自宅:都内にあるマンションのイメージで。
▼アイテム
●Borrowed beauty:香苗が頼子に勧める特製の美容クリーム。誰でも一瞬で美しくする効果を持つ。でも副作用的なデメリットも持つ。
NAは外見頼子でよろしくお願い致します。
イントロ〜
特に女性のあなたに質問します。
あなたは美しくなりたいですか?
中身を美しくするのと、外見を美しくするのとではどちらが良いですか?
外見の美しさとは時に壊れやすいもの。
今回はそんなことで悩んだ或る女性にまつわる不思議なお話。
メインシナリオ〜
ト書き〈街中〉
私の名前は外見頼子(そとみ よりこ)。
私ははっきり言って不細工だ。器量が最悪。
なんでこんな宿命を負わされたのか本当にわからない。
もっと美人に生まれて居たならどんなに良かったろう。
そうして私は少しでも美しくなる為に、あらゆる努力をしていた。
ビューティーサロンに通いまくったり、化粧品をどんどん変えたり、
服装で装ってみたり、少しでも理想に近づくためにあらゆる努力を重ねてきたのだ。
でも全く効果がない。自分でそう思っていた。
理想が高すぎるのだろうか?でも諦め切れない。
そんな時、いつものように街中を歩き、サロンに通おうとしていたところ…
頼子「あれ?こんなトコあったっけ?」
全く見たことのないビューティーサロンを目にした。
外見が良く、私は思わず入って行った。
香苗「ようこそ♪どうぞこちらへ」
中には1人美しい女性が居て、私を手厚くもてなすように案内してくれた。
頼子「私、美しくなりたいんです」
直球で言う。でも彼女は全く動じず、私の言うことを全部聞いてくれた。
香苗「では、こちらをお試しになられますか?これは美容クリームの一種で、名前を『Borrowed beauty』と言います」
香苗「あなたのお肌にぴったりだと思いますし、これを全身に塗ればきっとあなたはこれまで得た事のない、信じられないほど美しい自分を手にする事ができるでしょう」
私は信じた。確かに美をずっと求め続ける心があったのもあり、
それ以上に彼女に不思議な魅力を感じる上、
彼女の言ったことなら全部信じてしまう…そんな気持ちにさせられたから。
頼子「ありがとうございます!」
帰り際、少し不思議に思ったのは、私の他に誰もお客が居なかった事。
こんなに見栄えの良いお店なら他にお客さんが居ても不思議じゃないのに。
とにかく私はその気になって、言われた通り毎晩、
貰ったそのクリームを全身に塗るようにしていた。
普通こんなクリームならそれなりに高価な値段がつけられるのに、
その時もらったクリームは格安だった。
ト書き〈数日後〉
それから数日後、私は本当に変わった。
頼子「す、すごい。これ私なの…?」
全身鏡で自分の姿を眺めていた私。
うっとりする程の美人になっている。
街中を歩けば誰もが振り返り、今まで経験した事のないモデルスカウトまで受けてしまった。
頼子「あはは…w私がこんなに美しくなれるなんて」
万々歳で、私は又あの彼女のサロンに通い続けた。
ト書き〈サロン〉
香苗「そうでしたか♪それは本当によかったです」
頼子「ええ!何もかも、香苗さんのお陰です!本当にありがとうございます!」
あれから少しして、私にもフィアンセができたのだ。
その事も香苗さんに伝え、一緒に喜んで貰おうとした。
香苗さんはとっても素敵な人。私の喜びを自分の喜びのように受け取ってくれ、将来の祝福までしてくれた。
でもこの時1つだけアドバイスもしてくれた。
香苗「頼子さん、良いですか?外見が美しくなれば、人の心は得てして汚れるものです。それは欲望が猛るから」
頼子「え?」
香苗「私があのクリームをあなたに差し上げたのは、あなたの身も心も美しくして差し上げようと思ったから。あの時のあなたの願いを叶える為です」
そう、確かに私はあの時こう言った。
「私だって人並みの幸せを手にしたい」
「私だって普通に愛する人と結婚したい」
人並みの幸せを得る為に私は美しくなりたいと、
少し殊勝ぶって彼女に伝えていたのだ。
そこで彼女は私に協力してくれ、あのクリームをくれた。
香苗「あの時のあなたの言葉に感銘を受け、それをどうしても叶えてあげようと私はあのクリームを差し上げました。その期待だけは裏切らないで欲しいのです」
彼女は、美しさにかまけて道徳を踏み外すな…そう言ってきた。
頼子「大丈夫ですよ♪私に限ってそんな事ありませんから」
ト書き〈トラブル〉
でもトラブルがやってきた。状況が変われば、人の心もやはり変わってしまう。
この時ほど、人の心が曖昧なものである事を思い知った事はない。
私は愛する人と付き合いながら、他に幾らも恋人を作り、
その愛する人と結婚を約束しながら、欲望を満たす為に沢山の男と交際していた。
それに気づいた私の愛する人・真守(まもる)さんは…
真守「頼子、頼むから浮気はもうやめてくれ!俺達、結婚を約束したんじゃないか!2人で一緒に幸せを掴もうって…!」
そう言って私を引き止めてきた。真守さんは本当に優しい人。
私を一方的に怒りもせずに、できるだけ自分を犠牲にし、それでも2人の将来を夢見てくれた。
でも私は自分の欲望を優先してしまい、
そんな彼をバカにして、他の男の所へ走ってしまった。
こんなモテモテの人生は私にとって初めて。きっとその効果が大きかったのだ。
ト書き〈オチ〉
そして真守さんとの連絡が途絶え始めた或る夜の事。
いつものように、私を満たしてくれる男と愛の営みをしたホテルからの帰り道。
頼子「また会おうね〜♪」
と男と別れて、いつもの路地裏を帰っていた時の事だった。
香苗「こんばんは」
頼子「きゃあっ!か、香苗さんっ?!」
心底、驚いた。全く人の気配がしなかったのに、
いきなり背後に現れたのはあの香苗さん。
私はこの時、初めて彼女に恐怖した。
香苗「あれだけ言ったのに、あなた、浮気しましたね?私との約束を破り、あなたが愛した彼との絆も蹂躙し、美しさにかまける余り、あなたは欲望に走る虜になってしまった」
頼子「え…え…?」
香苗「もう遅いです。あなたには今、裁きがくだる事になりました」
香苗「あのクリームはあなたに美しさを貸していたのです。それにも気づかず、あなたはその美しさを自分のものだと勘違いした」
香苗「裁きとは、その『美しさ』があなたに罰を与える事です」
それまで見た事もない香苗さんの冷たい視線。
でも余りに一方的に言われて腹が立ち、私は香苗さんを振りきって家に帰った。
ト書き〈自宅〉
頼子「何よあの女!ちょろちょろ私の前に現れたりしてさ!もしかして変質者?女のストーカーなのかしら?w」
香苗を散々馬鹿にしていた時…
頼子「…ん、あれ?なんだろ、あれ?う、動かない」
手足が動かなくなってゆく。それどころか身動きも取れなくなってしまい…
頼子「た、助けて…助けてぇえ!」
と私は思いきり叫んだ。
ト書き〈陶器の美しい彫刻になった頼子を見ながら〉
香苗「フフ、美しさがあなたに罰を与えた。こんな形で、頼子自身を綺麗な彫刻に仕上げちゃうなんてね」
香苗「私は頼子の理想と欲望から生まれた生霊。その理想の夢だけを叶えるつもりで現れたけど、欲望が夢を殺しちゃったようね」
香苗「陶器の彫刻。持ち運びに気をつけないと。地震でも来て倒れたら壊れちゃうわ。…分かった?美しさって、こんなものなのよ?」
動画はこちら(^^♪
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