アッパーグラウンド
タイトル:アッパーグラウンド
俺が住んでる家の近所に、
とても気になる人が住んで居る。
その人はバツイチで、一人娘が居た。
でもその人はよほど不幸な人生の送り手だったのか。
その一人娘さえ事故に遭い、亡くしてしまったのだ。
美代子「うう…ううう…」
美代子さんは泣いていた。
そう、俺がずっと気になっていたのはこの美代子さん。
俺のもろタイプの人で、
こんな人がお嫁さんだったらなぁ…
なんてずっと悩まされ続けてきたのだ。
俺と美代子さんは前から少し知り合いだった。
でも娘さんが亡くなったことで
俺は彼女を放って置けず
ちょくちょく彼女に連絡を取り慰めて、
それが理由で美代子さんとさらにお近づきに…。
娘さんが亡くなったと言うのにこんな不純な動機…
確かにこの思いもあったが心はやはり正直。
そんなある日のこと。不思議な光景を目にした。
美代子さんの家は前の通りから少し覗ける。
そこで目にしたものは、
美代子「マユちゃん、今日ハンバーグで良い?」
「え……」
亡くなった娘さん、
マユちゃんに話しかけてる彼女の姿、そして声。
ちょうど柱の陰で美代子さんが
誰に喋ってるのかそれはわからなかったが、
少し尋常じゃない空気。
「あまりのショックで、もしかして狂っちゃったんだろうか…」
彼女の繊細な性格からすると
そうなっても不思議じゃない。
俺はそれから余程に心配になってしまい、
思いきり勇気を振るって彼女の家に行ってみたんだ。
そこで敬遠されたらそれまでのこと。
でも彼女は家に上げてくれた。
そしてしばらく静かに話してから、
あのとき見たことについて彼女に聞いてみた。
美代子「え?私が喋ってた?」
「え、ええ。確か娘さんに…」
そんな筈はないと彼女は言った。
デリケートな問題ながらそれ以上
突っ込んで聞くこともできないけれど、
彼女の精神状態をどうしても心配した俺は、
「亡くなった人は帰ってこない」
「新しい人生を歩むべき」
そんなことを思いっきり遠回しに言ったと思う。
彼女も何となくそれを察してくれたようで、
やっぱり悲しみに沈んだが、
確かにその通り…と少し納得もしてくれた。
しかしその直後、俺を恐怖が襲ったのだ。
翌日の夜。
仕事から帰って部屋に居ると、
どこからかコトン…コトン…と音がする。
はじめ風の音か家のきしみ…?
と思っていたのだが、
その音は俺が歩く方向へついてくるようで、
なんとなく気になり始めた。
そしてその音の出どころを探ろうと、
音が1番大きくする方向へ俺は辿った。
コトン…コトン…からゴトン…ゴトン…と
音が変わってゆき、
ゴクリ…と唾を飲み込みながら、
俺は何とか勇気を振り絞る。
でも今から思えば、本当にやめておけばよかった。
その瞬間、家のフローリングがドーーンと抜け落ち、
「う、うわあぁあ!!」
と言う間もなく、
俺は地下室のような冷たい床にへたりこんで居た。
「な、なんだ…いったい何が…」
と体をさすりつつ思っていた時、
真正面から黒い人影のようなものが現れた。
そしてその人影はなぜか明かりのついていた
そのふもとまで来て、その姿がはっきりわかる。
「キ…キミは…!?」
マユちゃんだ。
もう亡くなった筈のマユちゃんが
今俺の目の前に立って居り、
全くの無表情でため息のような息を吐いたまま、
俺に何か訴えるような姿勢でにらみつけてくる。
その瞬間、心に声のようなものが聞こえ、
全てが分かった気がした。
(後日)
それから何日が過ぎただろう。
俺はずっとこの地下室のような場所から抜け出れない。
そして部屋の上では、抜け殻の俺が生活して居る。
美代子さんの記憶も無く、マユちゃんの記憶も無く、
今の俺から見れば全く無機質な
そんな俺が生活して居る。
そしておそらくフローリングの上に居る俺は
美代子さんが全くタイプの女性ではなくなり、
彼女に近づくこともしないのだ。
何かで誘われてもおそらく行かない。
その事もここに居て何となく分かった。
マユちゃんが自分と母親の関係を守ったんだ。
じゃあ あの日、美代子さんが
誰かに話しかけていたのはやっぱり…
動画はこちら(^^♪
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