正義(せいぎ)の人
タイトル:(仮)正義(せいぎ)の人
▼登場人物
●草井戸 正義(くさいど まさよし):男性。35歳。元々気が弱く喧嘩も弱い。でも正義(せいぎ)の心は誰にも負けない。
●痴漢の男:40歳ぐらい。ガタイがデカい。痴漢の常習。
●垣内 佳代子(かきうち かよこ):女性。33歳。美人。痴漢されてた。兄が1人居る。本編では「佳代子」と記載。
●暴漢:男性。20~30代。一般的な街中の不良・チンピラと言ったイメージで。
●草葉 瞳(くさば ひとみ):女性。30代。正義の理想と欲望から生まれた生霊。
▼場所設定
●街中:電車の中やデートスポットなど一般的なイメージでOKです。
●Dictatorship City:都内にあるお洒落なカクテルバー。瞳の行きつけ。
▼アイテム
●Power of Real Justice:瞳が正義に勧める特製の錠剤。これを飲むと特殊能力が宿り、誰にも喧嘩で負けなくなる。でもその反面、剛力を抑えられず、ついやり過ぎてしまい取り返しがつかなくなる事も。
NAは草井戸 正義でよろしくお願い致します。
本編で正義(せいぎ)と読む所にはルビを振ってます。
イントロ〜
あなたは正義(せいぎ)の人ですか?
正義(せいぎ)を愛する人でしょうか?
人が言う正義(せいぎ)とは時に曖昧なものになり、
場合によっては悪行そのものに
姿を変えてしまう事もあるようです。
メインシナリオ〜
ト書き〈電車の中〉
佳代子「…ちょっと、やめて下さい…」
痴漢「へっへ…いいじゃねぇか。おめぇも好きなんだろ?」
正義「ああっ…あれはもしかして、痴漢…!?」
俺の名前は草井戸 正義。
いつものように電車に乗って通勤していた時、
1人の女性が体の大きな男に痴漢されてる光景を目撃した。
でもこれは初めてじゃなかった。
これまで同じ電車の同じ車両に乗っていながら、
この痴漢の光景を俺は何度も見てきたのだ。
女性はいろいろ変わっていたが、
痴漢している男は同じ奴。
何度も止めに入ってその女性を助けようとしていたが
やはり俺には出来ない。
俺は生まれつきの臆病で、あんなにガタイのでかい男が相手なら、
おそらく一瞬でやられてしまう。
子供の頃からどっちかと言うとイジメられがちで、
その時の嫌な記憶がまだ残っていた。
でもそれと同じ位に俺の心には自分なりの正義(せいぎ)があって、
そんな光景を毎日見せられる内…
正義「や、やめろよぉ!」
とついに男の手を取り、女性から引き離してやった。
痴漢「ああ!?なんだてめえは!」
周りの人は見て見ぬふり。
俺だけが男に責め寄られ、次の駅で無理やり降ろされて…
痴漢「けっ!喧嘩もできねぇ弱ぇ奴のくせに、一丁前に正義(せいぎ)の人、気取ってんじゃねぇよw」
人目のつかない駅の隅に連れて行かれてボコボコにされ、
男はそのまま立ち去った。
佳代子「あ、あの、大丈夫ですか?あの、本当に有難うございます」
正義「い、いえ…ハハw」
でも気持ち良かった。
自分の思った事を思った通りにできた。
それに女性は名前を佳代子さんと言ったが、
佳代子さんは俺に何度もお礼を言ってくれ、
それから通勤路が同じだったのもあり、実はこの日から
俺と佳代子さんの交際が始まっていたのだ。
ト書き〈トラブル〉
佳代子「本当に私、あなたに出会えて嬉しいわ。正義さんって本当に正義感が強い人だし、優しくて、これまでに出会った事ない程の好青年なんですもの」
正義「え?そ、そう?アハハwなんかそこまで持ち上げられると恥ずかしいなw」
やっぱり人助けをすると、そこから出会いが生まれる事もある。
俺はこの事に嬉しさを思い、
又、佳代子さんを心の底から愛していった。
でも、喧嘩が弱いのは変わらなかった。
街中で佳代子とデートしていて絡まれた時でも、
俺はやっぱり勇気を出して立ち向かおうとするが
逆にやられてボコボコに。
これまで、とりあえず俺をやった事で相手も少し気が晴れ、
それ以上、佳代子が迷惑しなかったのは良かったが
これからもそうだとは限らない。
俺をやった後に佳代子をどこかへ連れ去り、
更に悲惨な目に遭うかもしれない。
佳代子はそんな俺でも、
「自分をちゃんと守ってくれる正義(せいぎ)の人」
として俺を見ていてくれたが、出来る事なら喧嘩に強くなり、
ちゃんと佳代子を守ってやりたい。
そう思うようになっていた。
ト書き〈カクテルバー〉
そんなある日。
俺は会社帰りに1人で飲みに行った。
するといつも来ていた筈の飲み屋街に
全く知らないバーがある。
名前は『Dictatorship City』。
外観が綺麗で中もかなり落ち着いていたので
俺はそこが気に入り店に入って飲む事にした。
いつものように愚痴りながら飲んでいた時…
瞳「こんばんは♪お1人ですか?もし良ければご一緒しません?」
と1人の女性が声をかけてきた。
見ると結構な美人。
彼女は名前を草葉 瞳さんと言い、
都内でメンタルヒーラーやライフコーチのような仕事をしていたと言う。
でも、彼女はどこか不思議な人だった。
「昔どこかで会った事のあるような人」
のようなイメージを漂わせ、
一緒に居るだけで心が和み始める。
だからか彼女に対してはなぜか恋愛感情が湧かず、
代わりにもっと自分の事を知って欲しい…
自分のこの悩みを打ち明けて、彼女に解決してほしい…
そんなふうに思わされるのだ。
そして気づくと俺はその通りに行動していた。
正義「ハハw初対面のあなたにこんなこと話しちゃうなんて、僕もどうかしてるんですねぇ。でもホント、悩んでるんです」
瞳「なるほど。これからもちゃんと彼女さんを守れるようにもっと自分が強くなって、誰にも負けない力を身に付けたいと、あなたはそう思ってらっしゃるんですね?」
正義「あ、ハハ…まぁ…」
瞳「分かりました。それではここでこうしてお会いできたのも何かのご縁。私が少しお力にならせて頂きましょう」
さすがはライフコーチなんかをしているだけあるのか。
彼女は聞き上手な上に悩み相談のような事も自然にしてくれて、
俺のこの悩みをホントに解決しようとしてくれたのだ。
瞳「どうぞ、こちらをお試し下さい」
そう言って彼女は持っていたバッグから
瓶入りの錠剤のようなものを取り出し
それを俺に勧めてこう言ってきた。
瞳「それは『Power of Real Justice』と言う特製のお薬でして、飲めばその人の力を何倍にもしてくれ、特にその人の正義(せいぎ)の力を漲り溢れるほど発散させてくれます。その上で物理的にその人は精神力も腕力も増して、おそらく大抵の人に力で負けない強靭な人に成る事が出来るでしょう」
正義「…は?」
いきなりそんなこと言われたので、何の事か全く解らなかった。
それから何度か説明を聞く内に、
漸くそれがどんな薬なのか解ってきた。
正義「う、嘘でしょうそんな…そんな事ある筈…」
瞳「いいえ正義さん、何事も信じる事が大事です。あなたは本当にその力を身に付けて、今後、ちゃんとその力をもって彼女さんを守れるようになれます。あなたがそう信じないで一体誰が信じるんですか?」
正義「い、いや、それはそうですけど…」
瞳「それにそのお薬には或る秘密効果もありまして、飲めばその人に特殊な力を授けてくれます。まぁこういうのも超能力と言うのかもしれませんが、あなたはおそらくその力を得るからこそ誰にも喧嘩で負けず、いつでも常に強い人になる事が出来るでしょう。まぁ信じてお飲み下さい」
やっぱり彼女は不思議な人。
全く信じられない事でも
彼女に言われると何となくだが信じてしまう。
そして俺はその場でその薬を手に取り、
早速、1錠飲んでいた。
瞳「ただし正義さん。その薬を飲む上では、その力を出来るだけ節制するようにはして下さいね」
正義「え?」
瞳「今あなたが飲まれたお薬は、本当にさっき言った力をあなたに宿します。その上であなたは本当に強靭な人に成れるのですが、人と言うのは力を持つとついその力を乱用したくなり、必要以上の事まで望んでしまうもの。そうならないように、ぜひ常日頃から自分を節制し、正しい方向にだけその力を使うようにして下さい。つまり冷静な心もちゃんと持つと言う事」
ト書き〈変わる〉
それから数日後。
俺は本当に変わっていた。
正義「オラァ!わかったかこの野郎!てめえみたいなちんけな野郎がこんな所ではしゃいでんじゃねぇよ!わかったらとっとと失せろ!」
暴漢「ひ…ひぇえぇ!すみませんでしたあ!」
ある日、駅で不良に囲まれていた学生を見つけ、
俺はそこへ飛び込み、その不良達を蹴散らした。
あっと言う間だった。
不良達は初めそれまで通り俺に襲いかかってきたのだが、
相手が繰り出すパンチや蹴りの全てがスローに見えて、
その上、相手が何をしてきてもポカポカ叩く位のダメージで、
全く痛くも痒くもなく、その代わりに俺のパンチは
轟音にうなる程の威力を持ち、
一発でその不良ども全員を打ちのめしていた。
俺に助けられた学生は、
「有難うございます!有難うございます!」
と何度もお礼を言い、本当に俺に感謝してそこを立ち去った。
正義「す…すげぇじゃねぇか俺。まさか本当にこんな力が俺の中に宿るなんて…」
それからだった。
俺はもう本当に誰にも負けず、
したい事を思うように出来るようになり、
助けたい人を助け、挫きたい奴らを挫く、
その正義(せいぎ)の人に本当になれていたのだ。
ト書き〈トラブル2〉
佳代子「正義さん、なんだか本当に最近変わったわよね♪いつからそんなに強くなったの?」
正義「えぇ?いつからってそんな、初めからこういう力が俺に宿ってたんだろうなぁwでも、人助けにこんなに力を存分に発揮できるなんて、本当に夢のようだよ。嬉しいね」
佳代子「うふ♪私も嬉しいわ。もう正義さんと一緒にいたら、どんなトラブルに巻き込まれたって安心よね。ちゃんと守ってくれるんだし♪」
正義「ハハハwまぁどんなトラブルもって訳にはいかないかもしんないけど、大抵の事ならちゃんと守ってやるさ♪」
佳代子「ウフ♪嬉しい!やっぱりあなたと一緒になって良かったわ」
佳代子と俺はもう既に結婚の約束をしていた。
そう、俺達は今、幸せの絶頂にあったのだ。
佳代子と一緒になれる事、そしてこんな力が俺に宿ってくれた事…
きっとこの力を俺は持つ事が出来たから、
こんな幸せもやってきてくれたんだ…
俺は心密かにそう思っていた。
でもそれからすぐ後に、
俺と佳代子の身に信じられないトラブルがやってきたのだ。
(街中で佳代子が襲われている?)
それから数日後の会社帰り。
俺はいつものように佳代子と公園横の道で会う約束をしており、
そこへ向かっていた。
すると公園に近づいた時、向こうのほうから
佳代子の悲鳴のようなものが聞こえた。
すぐに駆けつけて見ると…
正義「か、佳代子!」
佳代子は大柄の男1人に腕を捕まれ、
どこかへ連れ去られようとしていた。
俺はそれを見た瞬間、猛烈な怒りが湧いてしまい…
正義「ゆ、許さねぇ。あいつ、どこの何者かは知らねぇが、ぶっ殺してやる!」
そう思ったすぐあと、鞄に入れていた
あの瓶入りの錠剤の蓋をあけ、
残りの何十粒かを一気に飲み干した。
正義「うぉおお!!」
すると俺の体の底から猛烈なパワーが湧き溢れ、
まるで自分が本当にスーパーマンにでも成ったかのような感覚を憶えた。
そして今佳代子の腕を掴んでいるその男に飛び掛かり…
正義「この野郎!腕を離せぇ!ぶっ殺してやる!」
と猛烈な勢いのパンチをその男の顔面に食わせてやった。
佳代子「ま、正義!?ち、違うの!この人は…」
佳代子はそのとき何か言ったか知らないが、
俺はそのまま怒りに身を任せ、
吹っ飛んでいった男に更に馬乗りになり
何度も何度もその男を殴り続けた。
そして気がつくと…
正義「あ…あれ?…オ、オイ、どうしたんだよお前?」
男は倒れたまま身動きひとつせず、
血みどろになって俺の前に横たえている。
佳代子「い…嫌ぁあぁ!!」
後ろで佳代子の悲鳴が聞こえた。
俺はふっと我に返り目の前の男を見ると
その男の顔が無い。
パンチし過ぎて男の顔は地面に埋もれたように無くなっており、
首から下の胴体だけが横たわっている状態。
正義「え…?お、オレ…なんか、とんでもねぇ事を…」
俺はその男を見る影も無く殺していたのだ。
そして佳代子はそんな俺に向かい…
佳代子「この人、私のお兄ちゃんだったのよ…。お兄ちゃんいつも過保護なぐらい私を守ろうとしてくれてて、今日も帰りが遅くて、こんな公園に1人ぽつんと居る私を見つけてお兄ちゃん走ってきて…『こんな所で何やってんだ!さっさと帰るぞ』って言って、私を家に連れ帰ろうとしていただけなのよ…」
正義「え…?…兄ちゃん…?」
佳代子「そんなお兄ちゃんをこんな…ケ、ケダモノォ!アンタどうかしてるわよ!!いきなり殴りかかってこんな事にまで…!どうするのよ…!?どうしてくれるのよぉ!?このバカァ!」
まさかこいつの兄ちゃんだは思わなかった。
確かにそばに駆け寄りまず事情を知る必要があったのか。
でもさっきの俺にはそんなセレクトが無かった。
ただ目の前で佳代子が襲われている…
襲っているそいつが悪に違いない…
だからただ俺はそいつを打ちのめす…
この一連だけを思い、そうする事が俺の正義(せいぎ)だと
心の中で頑なに決めていたのだ。
そしてこのとき同時にもう1つの思いが湧いた。
その思いは怒りに似ており、
今俺の横でピーピー喚いている佳代子の事…
その佳代子に対する思い、憎しみ、怒りのようなものだった。
正義「…う、うるせぇよ。俺がこんだけお前の事を思ってやってやったのに、ケダモノだと?この俺をバカだと…?てめぇも俺がしてやった事に感謝できない馬鹿でどうしようもないクズなのかあ!?」
そう怒鳴りつけるように叫んで
佳代子の頬を思いきり引っ叩いた。
すると佳代子は兄ちゃんと同じように吹っ飛んで行き、
吹っ飛んだ先の石垣に頭をぶつけ、そのまま意識を失い死んでしまった。
あの薬のせいで、力が自分から溢れ出ている事を忘れていた。
ト書き〈逮捕された正義を遠目に見ながら〉
瞳「ふぅ、結局こんな事になっちゃったか。私は正義の理想と欲望から生まれた生霊。その理想のほうだけを叶えるつもりで現れたのに、どうやら彼の欲望のほうが勝っちゃったわね。彼は自分で自分の幸せさえ殺し、もう取り返しがつかないわ」
瞳「正義が心に掲げていたのはただの独裁。確かに人を助けようとする初めの心は違っていたかもしれないけれど、その初心は段々力を持つ上で変わっていって、自分の正義(せいぎ)…その正義(せいぎ)を貫く独裁の力で何でも思い通りにしてやろうと、その心のほうが大きくなった」
瞳「必要以上の力を持てばそれを使いたくなる。その力が強靭なら強靭な程、確かに周りを動かし支配する事も出来、それが容易く出来るなら、日常からその力を手足のように動かし、正義(せいぎ)の心が麻痺してしまう」
瞳「その窮地に追いやられていた事に、正義はどうやら気づかなかったようね。そもそも佳代子を助けたいと言う思いの源は、彼女を自分のものにして、誰にも奪われないようその強靭な力で自分の理想を遂げようとする心にあった。その理想こそが独裁で、彼女を独占したい欲望が正義(せいぎ)と言う名に変えられていた」
瞳「その正義(せいぎ)の力で2人も殺しちゃったんだから、それなりの処罰を受けるのは当然の事よね。…でも世界を見渡せば、同じような正義(せいぎ)の力を振るって野放しになっている、誰にも裁けない無法地帯の権力者達が居る。彼らも正義と同じようにして、自分のしている事を疑わず、今日も悪行の限りを繰り返してるみたい…」
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