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~雨音~(『夢時代』より)

~雨音~二〇一二年十一月十二日(日)雨
大学の友人何人かと音楽サークルを作り(男女含む)内には結構仲の良い奴等も居り、ああやっぱり、やっと、このサークルが出来たかー、等と私は嬉しく思って居りY氏がいつもの通りリーダーの様子で場を仕切って居り、私は気心知れた奴が多かったので何とか上手くやってゆける、と思えながら嬉しかった。何か、今は講義で使って居ない空教室で集会をして居り、今後の事や部費の事、各パートの事、各楽器の事、特にドラムスの位置、又誰かやれる人が居るのか、誰がやるのか、について問答して居たのを覚えて居る。私はいつも通りに無責任に親友だったY・Tに口八丁手八丁で押しつけようとして居た。私達は何やかやと色々喋り教室の外へ出て、買い出しの様な唯の散歩の様な、とにかく外出しようと皆それぞれの思惑を胸に(中に用事で帰る者や皆と行動を共にしない者も居たかも知れないが)、始めは燦々照る中、次第に少しずつ曇ってゆく(とは言っても向こうの空はまだ明るい)中をずんずんずんずん歩いて行き、私はどこへ行くのか行き先を知らなかった。教室を出ると、何処にでも在る様な高校、又は大学での休み時間の様な和気藹藹としたムードが漂い、クラス毎に、開けられた教室の内に学生が駄弁って居り、その様子が私達には歩きながら見えるのであり、私はフンフンと何気に見て歩いて居た。その学生の内に一瞬だけ横顔が見え、後は後ろ姿(背中)を見せた、黒い流行りの様な服を着た徳永英明が学生の内に化けて居た。徳永は結構上手く化けられて居り、四~五人の友人のグループで輪を作りずっと(背を向けて)時々笑いながら喋って居る。私はそこでの自分の年齢を想いながら〝確かに自分も高いとは思うが徳永はもう五〇歳やぞ!?〟と半ば呆れ果てる様な物言いはするが、年輩が自分の大学という場所に居て私は嬉しかった筈であるが、なかなか自分と話が出来ない為か、少々徳永英明氏を勝手に恨めしく思えてしまった様子で、仕方がないからそのままそそくさと校舎を後にした。でも徳永なら持ち前の美量で上手く溶け入るだろうな等とやはり感心もして居た。何か駄菓子屋の様な場所に俺とY・TとY、他一~二人か女の子が居て、各自必要な物を買って出た。俺は小さい一口カツの様な駄菓子屋には良く有り勝ちな物を友人Y・Tと結託する様にして買い、Y・Tが背後で〝ソースをかけて食べると美味しかってんなァー〟等と昔の事を言うからつい私も釣られて、そこの主人である小母ちゃんに〝あ、ソースかけて、少しだけでいいよ〟とほくそ笑んで言った。ちゃんと、小声も聞き逃さないよと背後のY・Tに〝伝わったかな?〟と半ばやらしいかな等とも思いながら、嬉しがって居るかも知れないな、とも思えながら私は、唯、背後の気配に耳と気持ちを傾けて居た。結局、Y・Tがどう思って居たかは判らなかったが、私達四~五人(?)は外に出て、何か、何処かアメリカに在り勝ちなパブリック・スクールの様な(始めは判らなかったが)それとも記念公園の様な場所に来て居り、そこにちらほらとさっきのサークルのメンバーも集まって来て居る様だった。サークル紹介用の、サークルメンバー紹介用の、まるでプロがジャケット写真を撮る様なそんなお立ち台の様なセッティングが在り、〝でもあれじゃあ逆光で上手く顔が映らんなー〟とか〝こんなにお立ち台小さいの(狭いの)?これじゃあ、皆乗り切らないな〟とかそわそわペチャクチャ話しながら私達は、何か司会者が居て事を指揮してくれて居そうなその広場で、誰か他の(私達に似た様な)者と喋って居る。そう、そこには私達と同じ様なバンドを目指して来た様な輩達がわんさか集まって居り、同じく広告の為の写真撮影が目的だった様子である。メンバーが全員集まるかどうか(集まったかどうか)知らぬ内に物凄い轟音を立て空模様が荒れ始めた。ゴーーッと言って風が唸り始め、見る見る内に曇って行く。しかし又、少々向こうの空はぼんやり明るい所が在る。竜巻の様なものが知らぬ間に近付いて来て居り、私が余り好きではなかったメンバーの一人を呑み込みそのまま空高くまで攫って行った。彼はもうかなりの上空から体重と風の抵抗の弱まりから落下して、生きては居ないだろうと恐怖も在ったが思って居た。
次にリーダー格のYではなかった様に記憶するのだが、副リーダー格の様な奴が次々来る竜巻に呑まれた。その男はこの場所に居ては危ないからと、私達二人を誘導して、少し、体を二三歩程(微妙な距離程)上へ移させ、移した直後にそれ迄私達が元居たそこを大小の竜巻が通った。竜巻のクラスは比較的小さな一~二、三、位のものだったが芯が強い様で、呑まれたら終わりだ、と言っても良い位に吠えて居た。その副リーダーが、ヘトヘトに疲れたところを呑まれた。私は内心呑まれて飛ばされる事を期待した。何故なのかは覚えて居ない。案の定、飛ばされた。私とY・Tは何とか竜巻の隙を見て土塀の様なコンクリーで囲まれた場所に身を移し、難が過ぎるのを待った。そこへ着くまでに、シュキーン!シュキーン!と音を放ち光を放つ様にして、かまいたちの様な竜巻が形成されながら一本ずつ殆ど同じ道順を通って、さっきまで私達が居た場所の上を通ってゆくのが見える。している内に土塀から見える向こうの校舎のガラス窓が次第に強まる突風と竜巻の威力でまるで原爆で窓ガラスが割れるみたいにしてパリィン!!!と全壊し、その破片が大きな物に成ると、今丁度こちら(土塀)の方へ吹いて居る風に乗って飛んで来て、少々ダメージを与える様にして私達二人を土塀の中で襲うのだ。ここまでで、私は確実に三度、竜巻が本当に恐ろしい、と確信して居た。もうその竜巻で飛ばされて行った人達が何人か居る様子でその土塀の内から風下の方を見ると、恐らく飛ばされた人達であろう人々が整列してこちらを見て立って居る。少々ガヤガヤとして居る様子で在ったが、何か彼等の前に居る人の指示を聞いて居たみたいだった。その人々の内に確か柴田恭平の様な人も居た様に思う。それを見ながら私は〝自分も、もう飛ばされてあっちの人に成って楽に成ろうかな、それがいいかもね、…いやいやいかんあかん。あれは運が良かった人達なんであって、あそこへ行けるとは限らん。もう少しの辛抱や〟と自分に発破を掛ける様に言い聞かせ、早く竜巻が(この時ばかりは)弱まるのを祈った。
して居る内に救助隊が駆け付けて来てくれた。外を見れば成程、もうさっきまで雨まで降って居た荒れ模様は回復し、竜巻も一本も発生しない具合に収まって居る。〝やっぱりきっちりしてるな、こいつ等は。社会の組織が動く時だからきちんとお天気も把握されてる訳だ〟、私は自分達と社会の組織の一つでもあるレスキュー(救助隊)の在り方に少々の関心を覚え、リアルタイムで恐怖を覚える自分達と、囲いが在ってその中で見定めてから薄れた恐怖を覚えずとも見に行こうとする隊員達との間の格差の様なものを見、〝やっぱりか〟という気に成った。その辺りで目覚めた。外は〝ザァザァゴーー!!〟と酷い土砂降りの雨がずっと降って居る。この雨の所為でこんな夢を見たのかも知れないなんて思わされながらも、私が竜巻を見て居たシーンでの外界はもっと酷い雨(雨音)だったのだろうか、なんて期待もした。


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