フォンタン関連肝疾患患者における重症肝線維化の非侵襲的評価: VALDIG-EASL FONLIVERコホート
Non-invasive assessment of severe liver fibrosis in patients with Fontan-associated liver disease: The VALDIG-EASL FONLIVER cohort
Highlights
・フォンタン関連肝疾患患者における重度の線維化の有病率は高い。
・重篤な肝線維化は循環状態や臨床状態の悪化と関連している。
・肝硬変と血小板数を組み合わせた革新的なFonLiverリスクスコアは重度線維化を予測するための貴重な非侵襲的ツールである。
・FonLiverリスクスコアはユーザーフレンドリーであるため、Fontan循環患者のルーチン評価に容易に組み込むことができる。
Abstract
背景と目的
フォンタン型手術は単心室生理を有する先天性心疾患の緩和治療として行われているが、長期的には慢性肝疾患の進行につながる可能性がある。本研究では、肝線維化評価における従来の非侵襲的モデルの精度を評価し、非侵襲的ツールを用いた新しいリスクスコアを紹介する。
方法
ヨーロッパの5施設において、Fontan循環、肝生検、非侵襲的検査(エラストグラフィ、APRI、FIB-4、Fibrosis score、Doha、GUCI、AAR)を受けた連続成人患者を対象に、前向き横断観察研究を実施した。主要アウトカムは、生検での重度の肝線維症の同定であった。多変量ロジスティック回帰により重度線維化の非侵襲的予測因子が同定され、FonLiver risk scoreと名付けられた新しいスコアリングモデルの開発と内部検証が行われた。
結果
合計217例(平均年齢27.9[8.9]歳、男性50.7%)が組み入れられた。重度の肝線維症は47.9%(95%信頼区間41.2%-54.5%)に認められ、低い機能分類、蛋白喪失性腸症、心肺および全身の血行動態の悪化と相関していた。最終的なFonLiverリスクスコアは、フィブロスキャンを用いた肝硬度測定と血小板数を組み込んだもので、強力な弁別と較正を示した(AUROCは0.81)。FonLiverリスクスコアは、従来の予測モデル(APRI、FIB-4、Fibrosis score、Doha、GUCI、AAR)を上回ったが、これらのモデルはすべて我々のコホートでは不良であった(すべてにおいてAUROC < 0.70)。
結論
重度の肝線維症はFontan型緩和術後の成人に多く、新規のFonLiverリスクスコアを用いて効果的に推定することができる。このスコアリングシステムは、Fontan循環患者のルーチン評価に容易に組み込むことができる。
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Journal of Hepatology 9月号からで、欧州の国際多施設共同研究です。Fontan術後症例はうっ血が生じるため、肝硬度が上昇することからエラストグラフィで肝線維化を推定することが難しい、という診断上の問題がありました。またうっ血肝では血小板が低下すること、抗凝固薬内服によりPTも参考にならないこと、なども肝線維化診断を困難にさせる要因でした。
本研究では多数例に肝生検を行い、線維化高度の予測式を算出しています。抗凝固薬、抗血小板薬を内服している症例が半数程度で、心不全もあって、リスクが高い状況でも頑張って肝生検をして、心臓カテーテル検査を行った症例ではHVPGも測定して、と恐らく非常な苦労があったかと思われ、大変貴重なデータが集積されました。病理診断についても、うっ血や、線維化も門脈周囲だけでなく肝静脈周囲も評価するなど詳細に検討されています。
結果、Fibroscanによる肝硬度と血小板が予測因子に残ったというのは意外ですが、心不全が急性増悪した場合には肝生検は行われていないと思われ、安定期であれば術後の時間経過で一直線にうっ血、線維化が進行していく、ということかもと思いました。その意味でC型肝炎と似ているかもしれません。
本研究で提案されているFon Liverリスクスコアは、
0.104647 × VCTE-LSM (kPa) − 0.0077689 × Platelet count (103 /mL) − 1.340572.
となっています。スコアが高い方が悪い訳ですが、見たところ肝心のカットオフ値が見当たらないのですが…。Figure 3を見ろ、ということのようです。大雑把には、肝硬度は15kPaで黄信号、35kPaで赤信号、血小板は15万未満で黄信号、11万未満で赤信号というような感じですが、肝硬度<15kPaであれば大体青信号のようです。
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