混合型肝癌の、肝細胞癌と肝内胆管癌からの術前鑑別における超音波深層学習モデルの有用性

Abdominal Radiology (2024) 49:93–102
https://doi.org/10.1007/s00261-023-04089-4

Abstract
[目的] 本研究では、肝細胞癌(HCC)、肝内胆管癌(ICC)、および混合型肝癌を術前に鑑別するための超音波ベースのディープラーニングモデルを開発した。
[方法] 原発性肝癌患者465人のBモード超音波画像をモデル構築に登録した、
264例のHCC、105例のICC、96例の混合型肝癌から構成され、そのうち50例が無作為に選択され、独立した試験コホートとなった。
残りの研究集団は、4:1の割合で訓練コホートと検証コホートに割り当てられた。
4つの深層学習モデル(Resnet18、MobileNet、DenseNet121、Inception V3)を構築し、ivefold交差検証を採用した。
感度、特異性、精度、陽性的中率(PPV)、陰性的中率(NPV)、(PPV)、陰性的中率(NPV)、F-1スコア、および曲線下面積(AUC)を検討した。
[結果] 5重クロスバリデーションに基づき、Resnet18は精度と頑健性の点で他のモデルを上回った、全体的なトレーニング精度は99.73%(± 0.07%)、検証精度は99.35%(± 0.53%)であった。さらに検証に基づく独立テストコホート
示唆されたそのResNet 18はHCC、ICC、混合型肝癌を同定するのに最も優れた診断性能を示した。
感度84.59%、特異度92.65%、正診率86.00%、PPV 85.82%、NPV 92.99%、F1スコア92.37%、およびAUC 85.07%であった。
[結論] 超音波に基づくディープラーニングアルゴリズムは、HCC、ICC、混合型肝癌を同定するための有望な診断法であり、臨床的意思決定や予後評価に役割を果たす可能性がある。

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 中国は広東、上海の多施設共同研究です。研究デザインは良くできており、深層学習の一般的な方法です。原発性肝癌のうち0.5%しかない混合型肝癌をこれだけ集めたのはさすが中国です。恐らくAIでの解析の都合上、混合型肝癌が多いデータセットになっています。混合型肝癌は肝細胞癌より予後が悪く肝内胆管癌よりは良い、ということがあるので鑑別は重要で、術前診断が難しいことが多く、この課題にはニーズがあります。安易にラジオ波焼灼療法や局所切除にすると再発率が高くなるのが問題です。

 解析対象のBモード画像は様々な装置で撮影されており、条件は決められていないようです。最大割面かつ、内部エコーに特徴のある断面を、2年目、4年目の放射線科医が選び、10年目の放射線科医が監修したということでした。トリミングされておらず、肝臓以外の臓器も含めて撮影された画像もあります。AIによる診断の過程はご多分に漏れずブラックボックスですが、AIがどの部分に注目しているかは一応検証していて、Fig. 6にその画像が提示されています。腫瘍の種類により、そのヒートマップの特徴が違うと記述されていますが、データの提示はありません。チャンピオン画像が出されているだけかもしれません。通常、この手の手法では、横隔膜の輝度がかなり高いので、AIはそちらに注目してしまうことが多いです。

 ResNetは残差ニューラルネットワークで、画像解析に強いので、複数のモデルを比較して最も良かったというのは妥当な結果なのだと思います。混合型肝癌の正診率86%は凄い成績で、独立したtest setでこの結果ということで信じるしかないです。AIが何に注目したのかはとても気になります。

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