Porto-sinusoidal vascular disorder (PSVD)患者における高リスクの静脈瘤を除外するための脾硬度測定の性能
Performance of spleen stiffness measurement to rule out high-risk varices in patients with porto-sinusoidal vascular disorder
Abstract
背景と目的
Baveno VIIのコンセンサスでは、代償性肝硬変患者では、フィブロスキャン(VCTE)による脾硬度測定(SSM)が40kPa以下であれば、高リスク静脈瘤(HRV)の可能性が低いため、スクリーニング内視鏡検査は免除できるとされている。逆に、すべての門脈洞脈管障害(PSVD)患者にはスクリーニング内視鏡検査が必要である。本研究の目的は、PSVDおよび門脈圧亢進症の徴候を有する患者において、HRVを除外するためのSSM-VCTEの性能を評価することである。
アプローチと結果
VALDIGの21施設で、上部内視鏡検査の前後2年以内にSSM-VCTEを受けた、PSVDを有し、門脈圧亢進症の徴候が1つ以上あり、静脈瘤出血の既往がない患者を、派生コホートと検証コホートに分けてレトロスペクティブに対象とした。派生コホートには1504例が含まれ、43%にHRVが認められた。多変量ロジスティック回帰分析では、SSM-VCTE >40 kPaおよび血清ビリルビン≧1 mg/dLがHRVと関連していた。SSM-VCTE≦40kPaとビリルビン<1mg/dLの組み合わせは、HRVを除外する感度が96%であり、スクリーニング内視鏡検査の38%を回避することができ、HRVの4%が見逃され、陰性的中率は95%であった。155人の患者を含む検証コホートでは、SSMとビリルビンを併用することで、スクリーニング内視鏡検査の21%を回避することができ、HRVの見逃しは4%、陰性的中率は94%であった。
結論
PSVD患者309例を対象とした本研究により、SSM-VCTE≦40kPaとビリルビン<1mg/dLの組み合わせにより、PSVDおよび門脈圧亢進症でHRVの確率が5%未満の患者が同定され、スクリーニング内視鏡検査が免除されることが示された。
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脾臓続きになります。Hepatology 2024年7月号からです。欧州中心のグローバルな他施設共同研究になります。
まずPorto-sinusoidal vascular disorder (PSVD)とは、Introductionで、臨床病理学的に広範な疾患である、 いくつかの重複する組織学的パターン(結節性再生性過形成(NRH)、 閉塞性門脈圧亢進症、肝門脈硬化症、不完全中隔肝硬変)および病態(臨床的実体(非硬変性門脈線維症、特発性門脈圧亢進症、非硬変性肝内 門脈圧亢進症)、と説明されています。
結論はシンプルで、脾硬度<40kPaとT-Bil < 1.0mgであれば治療適応の食道静脈瘤が存在するリスクは低い、というものです。309例を2群に分けて、それぞれで同様であり、というSolidな結果を導いています。