MASLD患者におけるVelacurによるFat fractionの測定法と検証
Methods and validation of velacur determined fat fraction in patients with MASLD
Methods and validation of velacur determined fat fraction in patients with MASLD - ScienceDirect
Abstract
はじめに
世界中で脂肪性肝疾患の患者が増加する中、肝脂肪量を正確かつ利用しやすい方法で推定することが必要である。減衰や後方散乱のような定量的な超音波パラメータを用いれば、MRIプロトン密度脂肪率(PDFF)を参照基準として肝脂肪を推定することが可能である。Velacur determined fat fraction (VDFF)はVelacur (Sonic Incytes Medical Corp, Vancouver, BC)の新しい出力測定である。
方法
この研究では、定量的超音波パラメータの組み合わせであるVDFFのパラメータフィッティングおよびバリデーションの結果について述べた。患者は米国とカナダの施設から募集された。全患者は同時にVelacurとMRIによるプロトン密度脂肪分画スキャンを受けた。定量的超音波パラメータフィッティングは、ランダムサブサンプルアプローチの線形回帰を用いて完了し、検証には別のコホートが用いられた。MRI-PDFFに基づく5%肝脂肪検出のAUCとMRI-PDFFとVDFFの相関が両コホートで測定された。
結果
VDFFは、パラメータ適合コホートにおいてMRI-PDFF >5 %の検出に対して0.97のAUROCを示し、検証コホートでは0.99であった。MRI-PDFFとVDFFの相関[95 % CI]は、パラメータフィッティングコホートではr = 0.84[0.78-0.89]、バリデーションコホートではr = 0.90[0.82-0.95]であった。
結論
Velacur Determined Fat Fraction(VDFF)は、MRI-PDFFで測定される脂肪症を推定するための正確で利用しやすい方法である。Velacur VDFFは、肝脂肪症を診断する正確な手段というアンメット・ニーズを満たし、生検やMRI-PDFFの代替となりうる。
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前回に続いてVelacurの話題で、今回は新規に開発してFDA承認されたVDFFの話題です。VDFFは単純な減衰のみのACEに後方散乱を組み合わせたものです。その点、シーメンスのUDFFと同じ方法ですが、100cm3のボリュームデータを解析している点、データ量が段違いです。ちなみに肝脂肪量の計測は減衰+後方散乱のやり方が今後主流になっていくと思われます。Fat fractionという名称は全然実態を表しておらず、単にPDFFの真似っこです。精度としては非常に良くて、これを凌駕する超音波診断装置を作るのはなかなか難しそうです。肝内の脂肪量もある程度のばらつきが考えられ、そうすると解析対象のボリュームが多い方が有利だからです。大手メーカーも3Dの方向に行くのでしょうか。
雑誌は世界超音波医学会(WFUMB)のオープンジャーナルです。前回、前々回と同様にカナダと米国の多施設共同研究になります。
Velacurに関する目ぼしい論文は現在ではこの3本くらいで、ひとまずこのシリーズは終了です。また新しい論文が出たら紹介したいと思います。