非侵襲的指標に基づくウィルソン病代償性肝硬変予測ノモグラムの構築
Construction of a nomogram for predicting compensated cirrhosis with Wilson's disease based on non-invasive indicators
Abstract
背景
ウィルソン病(WD)はしばしば肝線維化、肝硬変を引き起こし、WD肝硬変の早期診断が不可欠である。現在、WD肝硬変の非侵襲的予測モデルはほとんど存在しない。本研究の目的は、超音波画像の特徴と臨床的特徴に基づいて、代償性WD肝硬変の発生リスクを非侵襲的に予測することである。
方法
2018年11月から2020年11月までのWD患者102例の臨床的特徴と超音波検査データのレトロスペクティブ解析を行った。WD肝浸潤の病期分類に従って、患者を肝硬変群(n=43)と非肝硬変群(n=59)に分けた。多変量ロジスティック回帰分析を用いて、WD肝硬変の独立した影響因子を同定した。R解析ソフトを用いてWD肝硬変を予測するノモグラムを作成し、モデルの識別性、較正性、臨床適用性の検証を行った。WDの発症率が低く、サンプル数が少ないため、モデルのオーバーフィッティングを防ぐために、検証には500回の反復によるブートストラップ内部サンプリングが採用された。
結果
Acoustic Radiation Force Impulse(ARFI)、門脈径(PVD)、血清アルブミン(ALB)はWD肝硬変に影響を与える独立した因子である。これらの因子に基づいてWD肝硬変のノモグラムを作成した。モデルの予測能力のROC曲線下面積(AUC)は0.927(95%CI:0.88-0.978)であった。500回のブートストラップ内部サンプリング検証によって示されたように、このモデルは高い識別性と較正性を有する。臨床的決定曲線分析により、このモデルは臨床的実用価値が高いことが示された。モデルの合理性を示すROC曲線解析によると、モデルのAUCはALB、ARFI、PVDを単独で使用した場合のAUCよりも大きい。
結論
ARFI、PVD、ALBに基づいて構築されたノモグラムモデルは、WD肝硬変の発症リスクを効果的に予測する非侵襲的なツールとして役立つ。
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BMC Medical Imaging 2024年4月号から、中国発の論文です。肝硬変の診断は、多くの原因においてエラストグラフィによる肝硬度測定が有用であることがコンセンサスになっているかと思いますが、Wilson病においては既報でエラストグラフィが肝硬変診断に有用でなかった、というものがあって、それでARFI(=VTQ)以外の因子も加えて精度を向上させた、ということのようです。2施設の共同研究のようですが、Wilson病で102例は凄いですね。日本ではまず見ない症例数です。
とはいえ多変量解析でARFIは独立因子と示されていて、単独でどの程度の正診率なのか知りたかったところです。ところで多変量解析でARFIのオッズ比が444となっていて異様に大きいです。これは、色々な数値を比較するにあたって、桁数を揃える標準化を行っていないためではないでしょうか。例えばTable 1で言うとARFIでは非肝硬変vs肝硬変が1.67 vs 2.09なのに24時間蓄尿亜鉛量は3,175 vs 2,996と3桁も違うということです。そのあたりしっかりやればもっとわかりやすくなったかと思いました。