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急性胆嚢炎を予測するための肝動脈ピーク収縮速度と非ドプラ超音波観察:診断性能とリスク分類アプローチへの影響
Hepatic artery peak systolic velocity compared to non-Doppler ultrasound observations for predicting acute cholecystitis: diagnostic performance and impact on a risk categorization approach
Abstract
目的
急性胆嚢炎を診断するための肝動脈ピーク収縮速度(HAv)と非ドプラ超音波観察を、連続した大規模な救急外来症例で比較する。また、急性胆嚢炎の診断において、HAv評価を非ドプラ観察と組み合わせる方法を確立する。
方法
急性胆嚢炎に対して胆嚢(GB)超音波検査(US)を受けた単施設の1年半の連続救急外来症例を対象とした。
GB直径、GB壁厚、GB内容物、胆嚢周囲不整脈集塊、肝動脈ピーク収縮速度(HAv)の評価を行った。非ドプラ観察はスコア化され、合計された。
非ドプラ危険度分類は、合計得点に関連する急性胆嚢炎の発生率に基づいて行われた。
HAv層別化が非ドプラリスクカテゴリーの急性胆嚢炎発生率に及ぼす影響を評価した。
再グループ化はHAv調整リスクモデルを確立した。急性胆嚢炎診断のためのReceiveroperator曲線は、個々のパラメータ、非ドプラリスクカテゴリー、HAv調整リスクモデルについて検討した。
結果 研究コホートの885人の患者のうち、117人(13.2%)が急性胆嚢炎であった。GB拡張(83.8%、p<0.001)、GB壁厚(79.1%、p<0.001)、GB内容物(75.0%、p=0.02)を用いた急性胆嚢炎の診断のAUCは、HAv(66.3%)よりも高かった。
HAv評価は195例のリスクを調整した。非ドプラによるリスク分類と 急性胆嚢炎の診断に対する感度(84.6%)、特異度(85.2%)は同じであったが HAv調整リスクモデルは、急性胆嚢炎を除外する能力が高いため、より高いAUC(91.3%、p=0.03)を示した。
結論
急性胆嚢炎に対するHAvの診断能は、他の評価に比べ低かった。各非ドプラ観察に割り当てられた点数の合計に基づく分類法は、HAv評価により改善された。このリスク分類法は、ED患者の非ドプラ評価とドプラ評価の公式的統合を用いることで、放射線科医は、超音波検査の特徴のみに基づいて、急性胆嚢炎を効果的に除外するものから胆嚢炎に罹患している可能性を大幅に高めるものまで、5段階に分類することができる。
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Abdominal RadiologyのOnline firstからです。急性胆嚢炎の超音波診断について、Bモード所見と肝動脈ピーク速度を加えて診断能が向上するか、というテーマです。Bモードは胆嚢短径、内容物(結石無し/結石あり/頸部の結石or結石+多量の胆泥)、胆嚢壁肥厚、胆嚢周囲の浸出液です。それぞれのAUCは、
胆嚢腫大 83.8%
胆嚢内容物 75.0%
胆嚢壁肥厚 79.1%
胆嚢周囲の浸出液 67.9%
肝動脈ピーク速度 66.3%
と、単独ではドプラが一番悪いですね。感度、特異度共に良い、というのはあまり無くて、胆嚢壁肥厚が一番良いようでした。Table 2参照です。
肝心のドプラの上乗せ効果はAUCで90.5%→91.3%ということで、この後、論文ではいろいろ解析してスコアを作っていて、最終的には白血球数や超音波検査での痛みなどの臨床情報も入れて診断すべき、と結論しています。
結局肝動脈ドプラ所見は急性胆嚢炎の診断にはあまり意味ないよ、ということで良いでしょうか。そもそも、Discussionの最後に触れているような、Sonographic Murphy signを含めれば診断の正確性はかなり高いと思いましたが、なぜこの論文が掲載されたのか。
肝動脈ピーク速度>100cm/sだと胆石やSonographic Murphy signよりも診断精度が高い、という(文献6;Abdominal Radiology)があるけれども症例数は21例と少数なので、より大規模で検証した、ということのようです。ちなみに本論文の引用文献は10本と、かなり少なめです。