税所篤快『前へ! 前へ! 前へ! 足立区の落ちこぼれが、バングラデシュでおこした奇跡。』(木楽舎、2011)

 著者が、バングラデシュに行き、グラミン銀行でのインターンをきっかけに、バングラデシュの教育格差を無くしこうとするお話だ。グラミン銀行からは、離れることになり、ソーシャルビジネスとして行っていくことになったようだ。

 プロジェクトの第一期生たちが、バングラデシュの東大であるダッカ大学をはじめ、生徒の3分の2が、大学進学をしていく。バングラデシュの場合、予備校に通えなければ、大学進学は望めないという状況であり、日本よりも教育格差が大きい。しかも、予備校は都市部にしかなく、一人の生徒を出すのに、村人の年収に匹敵するお金が必要であるそうだ。

 日本に置きかえて考えると、300~400万円といったところだろうか。場合によってはもっとかかるだろう。通常であれば、日本であっても、格差になり得る。

 バングラデシュでは、ダッカ大学のおよそ93%が予備校に通っていた経験が、本書の中で紹介されている。日本の場合は、予備校に行かなかったからといって、大学に合格しないわけではない。もちろん、可能性は通った方が広がるのだろうが、予備校に行くか行かないかで、決まるものではない。

 しかしながら、バングラデシュでは、違うのだ。予備校に通うだけで、村人の年収が吹き飛ぶのだから、格差の次元が違う。ここを筆者たちが、東進ハイスクール型の映像授業という仕組みを通して、挑んで成功している。

 仕組みもさることながら、生徒たちのがんばりもたたえたい。やはり、生徒のやる気が無ければ、話にならないからである。それに加えて、周囲のプロジェクトチームの人の励まし方の熱が違う。絶対に大学に合格して、人生を変える。合格して、自分たちの故郷を変える。合格して、彼女をつくる(笑)

 また、スランプに陥った時のダッカ大学ツアーが良かった。実際に行ってみて、実際の大学生と話して、実際の先生と話して、質問する。これがどれだけ、励みになったか分からない。やはり自分で体験すると、本気度が深さを増していくのだ。

 

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