除夜と猥雑とまわし
「ストゥーパモヘンジョダロニックアターーーック」
寺院戦隊テラコッタビビンバの「轟け読経!白銀のプレイメイトまで」が終わり、ひと通り満足した俺は「冬のリヴィエラ」を口ずさみながら冷蔵庫の扉を開ける。いやなにせ「革のコートボタンひとつ取れかけてサマにならない」っていうくらいだからな、アクロバティックなんだなあ。ということは俺もうかうかしては居られないなってことであります、ハイッ。褞袍で考えながら年明け未満でフライング、酒を開封し茶飲み茶碗で口に含む。
ピンポ~~~ン
玄関のチャイムが鳴る。はて(・・?除夜だというのに。ハイハイと不用心に開けてみると相撲取り。如何にもどすこ~~いなんて間合いを詰めてきそうだなとあっけにとられていると、なにいいっこれを買ってほしいだって、どんなってあっこれかい生憎俺は相撲ファンでも衆道に関心があるでもない、けえれけえれと胸中呟いたがここは年の瀬モチ代でもなければなと「後ずさりにさよならを 渚乃山写真ピンナップ大全」を手受けとるいや渚乃山なんていい四股名だなきっと出世街道だなあばよ とドアを閉める。
居間は散乱している。炬燵のうえはここんとこほったらかし、ガラスの灰皿は縦に吸い殻がギッシリでフリルでもあつらえりゃあ向日葵だ。ぬいぐるみや空き缶がいくつか床に転がり脱ぎ捨てた衣服ビールの空き袋もこれに準じ、ハンモックの上ではなにがなんだか。天地をきっかりとったはずの行き先表示板逸品が傾き分解掃除中のチューバはスペースを削りご当地提灯が床を若干斜めに見下げる。形見分けのサザエさんを畳にうず高く積んでほっといたみたもののその後雪崩れたまんま。波平、波平、そして花沢さん。
飛び石を選ぶ歩を繰り出し奥の読書机へと。今しがた入手した大全の表紙をジッと見入る。渚、ああそんなのあったよな、思い出の渚。漫画でもなんかあったな、人魚になった幼馴染が帰省の浜辺で電飾のソフトクリーム立体看板を持たせてさよならって。貝殻の胸当てをして幼馴染がねえ戻った都会の一室でソフトクリームをコンセントに繋いでってなんかファムファタールだったのかね嫌がおうにもさっ・・さて来週のサザエさんは いささかサンいささかやりすぎっなんて(サザエさんの登場人物)・・・(大全のページをめくる)・・ふむ・・・ふむふむ。
ピンポ~~~ン
なになにまわしがほどけちまったのかいえっここをただ持ってりゃあいいのかい自分がクルクル回転してそちらににじり寄りますからそうかいそうかいそれは大変だったないやあれだがもう少しなんとか厚着できなかったのかい帰省は?そうかいそうかい殊勝なこったねいや初詣に行くのかいその格好でかい好きだねえあんたもうんうんなに来年は年男だってそりゃあよい年越しにしなきゃあなっよっそのまわし、きまってるぜっうんいやいいんだよこんなこれしきのことさっさと行きなっうんあばよっ。
(ドアは開け放たれたままである。奥へと戻る。着替えをはじめたようだ。髭を剃り濡れタオルの風呂を済ませ、大全から一枚を手にすると神棚の傍に飾る。しばらく持て余しぎみにする。久方ぶりにそれまでの夜も着替え除夜のひんやりした静けさのなかへと出てゆく。)