父からのごれんらく。(父の話。)
数日前に妹から連絡がきまして。
「あたし、今すっごく機嫌が悪くて声ひっくいけど別におねんのことを怒ってるとかそういうわけじゃないから!」
とだいぶのお怒りでした。もう怒ってる。怒ってらっしゃる。
「おとんから電話があってさ。」
なに!?
もしかしたらもうこの世にはいないかも!って毎日思っていたおとんから電話ですって?
あ。こちらの内容詳しくはこちらにかいてありますので、よろしければ。
「なんかさ。もうそんなに離せないみたいでさ。最初はオトンが話をしてたんだけど、途中で話せなくなって、でたんだよ、代わりにあれが。。」
言葉遣いがとても悪いですが。あれとは、オトンの再婚のお相手ですね。
わたしがこどものころからずっとお付き合いをされていたあの方です。
わたしたち姉妹は存在はなんとなくわかっていて。
父の財布にはわたしたちではない違う子供のお写真がずっと入っていたし、
父のお金回りが良い時に、ネックレスやら指輪やらのレシートがたくさんでてきたり、まず家に帰ってこなかったしね、ほとんど。
存在はわかっていたけれど、話すのは初めて。
それもこんな突然に。妹そりゃびっくりするわ。
「あの。初めまして。こんにちは。あの、今あなたたちのお父さんと一緒に暮らしているものです。」
なんかすごい。妹の口から聞かされたお相手の最初の言葉、なんかすごいぞ。
「お父さん、もう、その長くなくて。あと10日くらいって。なので
できたらお姉さんとお話がしたいと言っていて。負の遺産の話もありますので。」
負の遺産。??
それはもう遺産でなく負債ではないか。
しかも10日くらいってもうなんか時間ないな!
この先の話では、妹は姉が連絡をしたいと思ったらするかもしれませんが、
しないかもしれません。約束はできませんとだけ伝えたという内容でした。
仕事中だった妹とはそこで話が終わり、わたしが考える時間になりました。
普通ならば急いで電話をかけるでしょう。
なんならかけつけるかもしれません。
でも、知らないんです。住所。妹は知ってるけど、わたし聞いてないし。
電話ね、、してもいいけどそのお相手の方と話すのはどうなんだ?わたし的になんかいやだな。そもそもなんかいやだ。と思い、1時間ほど放置。
だって、なんか火曜サスペンスみたいでしょ?
父が亡くなります。遺産の話をしましょうって。
初対面ってか会ったこともない人といきなり遺産の話。しかもまだオトン生きてるし。
で。2時間ほど経過して、かけてみました。
もうほとんど好奇心。ついでになんか最後に言いたいこといってやろうかしらくらい。
1回目。でない。
いや、でろよ。電話ほしいって言ってたんだから。
2回目。でた。
「はいー。」
とかっすかすの声の聞き覚えのあるオトンの声。
「あ。でた。おとん。もうダメなんだって?」
「あー、お前は元気かー?なにしてんだ?」
「普通だよ。」
「そっかー」
まで話した時、ゴソゴソと聞こえたなにか。
「あのー、初めまして。あの、わたし今お父さんと一緒に暮らしてる・・」
デジャヴ。
「あー、はい。」
「あの、ごめんなさいね。本当に。お電話ありがとうございます。本当に声が聞きたいって言ってたから。よかったわね。本当によかった。本当にありがとうございます。」
「いいえ。別に。」
「本当に、ありがとうございます。本当に。」
「いや、はい。」
これ永遠に繰り返すんじゃなかってくらいずっと謝ってた。
だからってわけじゃないけど、実際に話してみた感想は、なんとも感じなかった。です。誰だろうって感じ。少し泣いてるけど。そこからまたオトンに代わった。
「みんな元気か?」
きっともう、あなたの前妻は認知症でもうなにも覚えていませんよと言ったところで何かかわるわけではないし、子どもの話をしてもこれまた一緒だと思ったから
「まー、みんな普通だよ。」
が精一杯。
でも、ここで少し情がでてしまったわたし。子どもたちの声くらい聞かせてやるかと次女に代わってみた。
「おー。元気か?何してるんだ?」
「元気です。今寝てます。」
次女成長期だからね。
「あら!次女さん?わたしのこと覚えてるかしら?!」
ん???
なんだなんだ!なんで君がでた?覚えてる?わけないだろ!
てか、オトンと次女の最後の会話になるかもしれないんだから
君じゃまですよ!
「なんか、いろいろ迷惑かけちゃったわねー!ごめんなさいね!」
なんか軽っ!すっごいさっきと違う!かるっ!
「あの、父と話をさせてもらえますか?」
「あら!ごめんなさいね!わたしったら!代わりますね」
当たり前だ。
気を取り直して、次長女。
「じーじ?だいじょうぶ?」
「おー、元気か?まだ結婚しないのか?」
「そうだね、まだだね。」
いいぞ、その調子。こういう会話をしてほしかった。最後になるかもだしね。
「あらー!長女さん?なんかいろいろごめんなさいねー!わたしのこと覚えてるかしら?お元気ー?」
おい。おまえ。言葉遣いとか気にせず言わせてもらいたい。
そこのお前。いい加減にしろ。
「あの、すみませんが、父と話をさせてやってくれませんか?」
「あら、やだ、本当にすみません。なんだかごめんなさいね。本当にあなたにも申し訳ないことをしたって思ってます。お父さんがね。本当。お父さんのせいでたくさん辛い思いもしたでしょう。本当にごめんなさいね。」
オトンのせいかよ。
そんなドタバタした会話をしている私たちをみて次女一言。
「似てるんだよ。結局。」
その通り。そうだわ。似てるんだ。この空気読めない感。
もうこれ以上話をしてても無理だし、なによりオトンがきついだろうと思ったので、最後にまた父に代わってもらった。
「オトン。今まで好きなようにしてきたんだからさ。最後までしっかりもがいてみなよ。10日くらいって言われてても、長生きしてみなよ。意地でも生きてみなよ。じゃね。」
きっとこれが父との最後の会話になったと思う。
もっと言いたいことがあったかもしれないし、なかったかもしれない。
よかったのか悪かったのかもわからないけれど、何をしても何を言っても後悔はするんだろうし。
そこで電話を終えたわたし。
あれ?負の遺産の話どうなった?