
【実録】脱出不能の車内、ぼんじりの脂がすべてを変えた夜
ぼんじりを焼いたあの瞬間、すべてが変わった。
ジュワッ──。
フライパンに落としたぼんじりから、一瞬で脂が溢れ出した。
「ヤバい…!」
じりじりと焼き色がつくと同時に、煙がモクモクと上がる。車内に漂う強烈な香ばしさ。夜の静寂を切り裂くかのように、換気扇のない密室に広がる脂の匂い。慌てて窓を開けるが、時すでに遅し。車内はすでにスモークハウスと化していた。
どうしてこうなったんだ…。
回想──
ビールとおつまみで始まった静かな夜
なぜこんなことになったのか──
話は数時間前にさかのぼる。
エンジンを切ると、シンとした静けさが訪れる。周囲には他の車中泊組の姿もちらほら。
さて、夕飯にしよう
今夜の車中泊は、オリオンビール「いちばん桜」から始まった。

華やかな香りの限定ビール
「カシュッ。」
ほんの一瞬、静寂が切り裂かれる。車内に広がる、かすかな炭酸の弾ける音。
続いて、沖縄の春を感じさせるフルーティーな香りが車内に広がった。
喉が、ビールを待ち構えている。
軽やかな飲み口。寒空の下でも、その味わいはどこか南国の暖かさを思わせた。
ミックスピザを一切れ。とろりと伸びるチーズがビールと相性抜群。そして、もう一品は山芋と大葉の麺つゆ和え。シャキシャキの食感とツルリとした喉越し、大葉の香りが、酒の合間のリフレッシュにぴったりだった。

軽い一品がビールの合間にちょうどいい。
この時はまだ、穏やかな夜の始まりだった。
物足りなさが招いた悲劇
お酒も進み、腹も満たされつつあったが、どこか物足りない。
「もう一品、何か焼こうか。」
そう思ったのが運の尽きだった。手に取ったのはぼんじり。焼けばジューシーな脂が溢れ、カリカリに仕上げれば極上の酒の肴になる。
問題は、その「脂」だった。
密室の燻製事件──
すべてはここに至るための伏線だった
そして、事態は最悪の方向へと進んでいく──。
脂がじゅうっと音を立てる。
白い煙が、ゆらりと立ち上る。
それは最初、ささやかな合図にすぎなかった。
「ここから先は、もう後戻りできない。」
気づいたときには遅かった。
煙が濃くなる。視界が曇る。
換気を──いや、それより先にフライパンをどうにかしないと。
あのときの自分に言いたい。やめておけ、と。
──もし、あの夜に戻れるなら。
いや、戻ったとしても結局ぼんじりは焼いていただろう。
すべては、この瞬間のために積み重なっていたのかもしれない。
こうして私は、密室で燻製されることとなる。
火力を落とし、慌ててもやしを投入。脂を吸わせてダメージを最小限に抑える作戦だ。

結果として、シャキシャキのもやしがぼんじりの旨味をまとい、最高の味になった。
…ただし、車内の空気は最悪だった。
呉の地酒を飲んでクレ!
煙が落ち着いた頃、手元にはまだ酒があった。広島県呉市の地酒「呉氏爆誕カップ」。
しかし、ぼんじりの事件を乗り越えた今、この言葉が「もうやめてクレ」に見えて仕方がない。

しかし煙の中では、助けてクレ…?
カップを手に取ると、少しだけ心が落ち着く。煙が収まるのを待ちながら、次第にその旨味が心に染み渡っていく。
この酒は冷やして飲むのがベストらしい。しかし、夜も更け、気温は下がり続ける。
そこでヤカンに入れてぬる燗にしてみた。

飲んでクレ?…いや、助けてクレ!か?
火にかけると、ふわっと立ち上る吟醸の香り。
口に含むと、冷やよりもまろやかで優しい。
ぼんじりの脂と格闘した後の、心に染みる一杯だった。
車中泊の夜は、ゆっくりと更けていく。
深夜0時を回るころ、ようやく車内の煙は落ち着いた。
ぼんじりの煙に包まれたのは誤算だったが、振り返ってみれば、それすらも楽しい思い出になる。
「次は、脂が少ないものを焼こう。」
そう心に決めつつ、眠りについた。
あっ!ふと思い出した。
換気扇も扇風機も車に積んであったことを。
寒さを恐れて使うのを控えていたが、これで次回は煙の心配も少なくなるだろう。
車中泊で食事を楽しむ5つのポイント!
1. 最初は温める程度の調理から!
車内調理に慣れていないうちは、温めるだけの簡単な料理から始めるのがおすすめ。
2. 事前の下ごしらえでスムーズに!
食材のカットや下味付けを済ませておけば、車内でも手軽に調理できる。
3. 特産品にこだわりすぎず、好きなものを!
ご当地グルメもいいけれど、好きな食材を持ち込めば満足度もアップ!
4. 油の多い食材は要注意!
ぼんじりのように脂が多いものは煙や匂いが充満しやすい。処理も考えて計画的に。※今回ファブリーズ忘れた…
5. 寒さ対策は最優先!
寒いと食事どころじゃない。寝れなくなって最悪の場合、命に関わることも。防寒対策は必須!
車内での食事は、ちょっとした工夫でより快適になる。
そして、予想外のハプニングもまた、旅の醍醐味なのかもしれない。
次の車中泊では、何を焼こうか──。