【あなたの知らない】センベロ/とんかつ/ルノアールの真実【大人の自由研究】
蛎田: それでは定刻になりましたのでユニポテンシャル役員会を始めます。
須田: お願いします。
高山:お願いします。
今回はユニポテンシャルも入居しているWeWorkでの開催。クリエイティブなビジネスマンが集うワークスペースなので、こんな格好でうろついても誰も動じない。
蛎田: え、なんで? おくりバント高山さんがいるんですか?
高山: まあ、細かい事はいいじゃないですか。
須田: 役員会ってそんな簡単にメンバー増えて良いんだっけ。
蛎田: 高山さんは言わば、心の取締役ですね。
高山: 役員報酬も安めで大丈夫です。
須田: かっきー、払っちゃダメだからね。
大人の自由研究発表会をしよう
なんとWeWorkのドリンクコーナーにはビールが常設されいる。言わば永遠のハッピーアワースである。
蛎田: というわけで、今回の議題はかねてより準備して頂いていた『夏休みの自由研究』の発表です。
須田: でもまさかこの歳で自由研究をすることになるとはねぇ。
高山: 時代の「今」を感じとる力は現代のビジネスパーソンに欠かせないものですからね。時代の寵児と呼ばれた人物で、夏に自由研究をしていない人なんていませんよ。
蛎田: 孫正義社長も大谷翔平選手もみんな自由研究してますよ。多分。須田さんは自由研究しなくて良いんですか?
須田: わかったわかった! 準備してあるから! ちゃんと発表するから!
蛎田: わかって頂ければ良いんです。
須田: 営業マンふたりいると疲れるな……。
1000円と少しで己の人生の未来予習ができる
満を持して研究成果の発表。ここまで真剣にメモを取られるとやはり気分は良いもの。
須田: 僕の自由研究の成果は「センベロの最終定理 〜これが最高のコスパ飲み〜」です。
高山: 飲みのコスパを巡る議論が、ついに結論に達したということですね?
須田: その通りです。まず、僕のセンベロは1000円を超えます。
蛎田: いきなり看板に偽りありじゃないですか。
須田: 1000円以内でベロベロに酔なきゃセンベロじゃない……? ふたりとも、字面に囚われて全く本質が見えていないな。センベロは、安けりゃ良いってものじゃない。「安くて美味しい最高のコスパ飲み」それがセンベロだ。豊かな時間を過ごせなきゃ意味がないんだよ。その極意を教えてやる!
高山&蛎田:…… お、お願いします!
コスパの鬼によるセンベロ研究成果とあって、思わずさらに身を乗り出すふたり。
其ノ壱、居酒屋とはツマミを食べる場所である
高山: 居酒屋は酒を飲む場所じゃないんですか?
須田: 安い酒が飲みたけりゃ宅飲みすればいいんだよね。それが一番安い。
蛎田: 確かに、僕もワインは家で飲むのが満足感あって好きですね。
須田: でも美味しいツマミは自分じゃ作れない。特に揚げ物と刺身はバリューが高いね。揚げたては家でなかなか食べられないし、刺身はスーパーの品より美味しい。
蛎田: でもいくらなんでも一杯じゃ酔えないですよね。
須田: コンビニを経由するっていう裏技があるんだよ。居酒屋に行く前にコンビニで角ハイ入れて、帰り道にまたコンビニで男梅サワーでシメる。これぞ100%酔えるセンベロの王道。酔えない人は試してみて下さい。
高山: 修羅の道……。
其ノ弐、飲むべき酒はキンミヤである
蛎田: ビールは飲まないんですか?
須田: ビールはどこ行っても高いから諦めてる。飲むのはリーグ優勝したときくらいかなぁ。
高山: 相当ありがたいお酒ですね。
須田: キンミヤ梅割りは安くて濃いから1杯でも酔える。このとき、チェイサーも必ず頼んでARPU(平均単価)を下げるのも必須テクですね。
高山: 僕の行きつけの飲み屋界隈でキンミヤは「焼酎界のテキーラ」と呼ばれていて、アガる酒として有名です。
蛎田: お酒飲んだら、やっぱり気分良くなりたいですもんね。
須田: キンミヤ梅割りが無かった場合はホッピーもありですね。
高山: ホッピー1本でも「中」の追加で3杯は飲めますからね。確かにコスパはいいですね。
其ノ参、1皿の注文で3品のツマミを得る
須田: この写真、全部でなん品あると思いますか?
高山: お刺身とハムカツなので、2品ですよね。
須田: それが 5品あるんだよ。
高山: 何を言ってるのかよくわからないです。
須田: 刺身の下をよく見てください。ツマがあるでしょう? これ食べない人もいますけど、要は、サラダですからね。揚げ物を食べた後にサラダで口をさっぱりさせるんです。
高山: 刺身はサラダセットだったんですね……!
蛎田: その理屈でいくと、揚げ物の下に敷いてあるキャベツもサラダに数えるということですね? でもそれだと2品にしかならないですよね。あと1品足りない。
須田: かっきーしっかりしてちょうだいよ。サラダを食べるときは何をつける?
蛎田: ドレッシングとか…あとはマヨネーズ……。
須田: そうマヨネーズ! このお店はキャベツにつけるマヨネーズを頼むと、ボトルごとドンと置いてくれるんだよ。つまりマヨネーズ食べ放題。 マヨネーズを肴にちびちびやれるのよ。もちろん店によってはキャベツの量が少なかったりマヨをちょっとしかくれないところもあるから、センベロに適した店かどうかはそこに左右されるよね。
蛎田: コスパへの執念がすごい。さすがコスパの鬼。
其ノ肆、コの字カウンターに人生がある
高山: 須田さんは誰と飲みに行くんですか?
須田: 僕は一人で行くんです。コの字型のカウンターに腰掛けて、人生の先輩たちの言動をただただ風景みたいに眺めているんです。おじさん達が語り合う昔の武勇伝を聞いていたり、端の席でただただストイックに飲み続けるおじさんの所作を見ていたり。
高山: 人間観察ですね。
須田: 人生の予習です。だって自動運転やAIのある未来より、自分がおじいちゃんになる未来の方が確実に来ますからね。カウンターに座るおじさんに自分の未来を投影して、自分が歳を取ったときにどう振る舞えばいいのかを想像するんです。
高山: IT業界っておじいちゃんが少ないから、若い人たちはもっとコの字の現場でおじいちゃん観察したほうが良いかもしれませんね。
其ノ伍、1000円にこだわるな
蛎田: せんべろなのに……。
須田: コスパを論じるときに、金額に囚われるのはもったいない。幸せかどうか、飲んでて楽しいかどうかを考えて欲しいですね。おれは2000円までをせんべろと呼ぶ事にしている。
高山:なるほど。幸せ重視のコスパ。人間が欲するもの、そのものですね。
とんかつ世界一周の旅に出て既製品から新発見を得る
蛎田: 僕の自由研究は、とんかつ世界一周です。
須田: 写真から真剣さが伝わってくる。
蛎田: 僕はこの研究を通して「当たり前を疑うこと」の大切さを訴えたい。
高山: どういうことですか?
蛎田: 僕はよく朝食を食べに松屋に行くんです。松屋って卓上調味料が充実していて、その日の気分に合わせてごまドレッシングやフレンチドレッシングをかけられる。味噌汁にも黒七味が用意されていて、味を変える楽しみがあるんですよね。そこで気付いたんですよ。とんかつの食べ方って、限られすぎてるんじゃない?って。
高山: とんかつはソース、塩、からし、強いてあげるなら醤油がメジャーな食べ方だよね。それだけあれば充分じゃないの?
蛎田: それがもう思考停止なんです。もちろん塩もソースもからしも美味しいですよ。でもとんかつのようなポテンシャルのある食べ物をそれだけで終わらせるのはもったいない。そこで、自宅にてとんかつの味変(アジヘン)を研究しました。もちろん調味料はスーパーで買えるもので揃えています。
高山: 国旗ごとに調味料が違うのか……タルタルソースってフランスなのね。
蛎田: エビフライの定番、タルタルソースは安定のおいしさでした。でもあくまで想定内の味。他の調味料も「まあ、そうなるよね」という味ばかりでした。
須田: やっぱりソース、塩、マスタードが完成形だったってことじゃん。
蛎田: ですがとんかつ世界一周を敢行した結果、ひとつだけ想像を超えてくる組み合わせがあったんですよ。
それは、めんつゆです。
意外な名前の登場に驚きを隠せない高山と疑念の目を向ける須田。
高山: 日本代表選手だ。
蛎田: とんかつとめんつゆを組み合わせるとシナジーが起きて、全く新しい食べ物に姿を変えるんです。めんつゆの程よい塩気と甘みが衣にしみて、クセになる味わいに変化するんです。
高山: それは気になるなぁ。帰りにとんかつ買って試したい。
蛎田: よく考えたらカツ丼もめんつゆでとじるので当然ではあるんですが、ソースや塩みたいに、とんかつ屋さんのテーブルに公式の調味料として置くべき、新しい食べ方だと思います。
須田: 本当にそんな美味いんだとしたら、価値ある自由研究になるね。とんかつにはソースという固定概念を捨て去ることで幸せの青い鳥を見つける。刺身のツマが実はサラダセットだということと一緒で、視点を少し変えるだけで新しい発見が得られるっていうのは最もコスパの良いイノベーションなのかもしれないね。
ルノアールを深掘りして、令和を生き抜く
高山: おふたりに比べるとスケールは小さいんですが、僕の自由研究はこちらです。
高山: この自由研究を始めるまで知らなかったんですが、喫茶店のルノアールって、実は4種類の店舗形態があるんです。その4つから自分に合う店を探せるチャートを作ってみました。
蛎田: へぇ〜、4つもあるんだ。
須田: え、高山さん、ルノアール理論とか提唱してたのに知らなかったんですか?
高山: そうなんです。そこはもうお恥ずかしい限りなんですが、たまに記憶の中のメニューと違う店があるな〜とは思ってました。
蛎田: メニューに違いがあるんですか?
高山: 正確にはお店のコンセプトが違うんです。喫茶室ルノアール、Cafeルノアール、Cafe Renoirこの3種類の看板があって、更に喫茶室ルノアールの中にも大正ロマンコンセプト店と昭和モダンコンセプト店がある。従って計4種類ということになります。
こちらが喫茶室ルノアールのホームページ
こっちはCafeルノアール
須田: 言われてみると店構えが全然違うね!!
高山: メニューも、喫茶室は喫茶店メニューなのでカフェ・ラテがなくてカフェ・オーレが置いてある。Caféには逆にカフェ・ラテがあるとか、メニューの違いを見ているだけでも面白いんです。
Cafe Renoirのホームページには「New Style !!」の文字が。
須田: 最新の店舗形態、英語のCafe Renoirはけっこうカジュアルなかんじだね。見た目も華やかだし。
高山: 恐らくですがCafeルノアールは平成、Cafe Renoirは令和をイメージして作られているんじゃないかと思っています。いつかルノアールの小宮山社長に詳しく聞いてみたいですね。
発表者に対し敬意を込めた拍手をおくるのも自由研究発表の鉄則。ルノアールについて話しているだけで、べつに怪しい集会とかではない。
蛎田: ルノアール理論提唱者の高山さんはどの店が好きなんですか?
高山: 喫茶室ルノアールの大正ロマンコンセプト店ですね。店舗数がいちばん多いルノアールのスタンダードスタイルがやはり馴染み深く、親しみも感じられます。今回の自由研究で作ったチャートで、ルノアールをもっと深く好きになってもらうきっかけになればと思っています。
蛎田: なるほど。さまざまな娯楽や学問が細分化している令和時代だからこそ、自分自身が本当は何を求めているのか、自覚的に生きていかなければいけないということですね。
高山: どうあっても学びに繋げようとする意志が強い。
大人の自由研究は人生を豊かにする
自由研究の発表を通して互いへのリスペクトを深めた3人に強い絆が芽生えた。べつに怪しい集会とかではない。
蛎田: 自由研究の発表も済んだことですし、これで安心して夏を終えることができますね。
須田: それぞれ内容は好き放題だったけどね。でも久しぶりに自由研究をして新鮮だったかも。大人になると自分のビジネスに関わること以外で勉強はおろか研究なんて、なかなかしないもんね。
高山: 日常の中にも大切な学びがあるってことに気付けましたね。
蛎田: 仕事や生産性にしばられず、物事を見つめる時間があるのは幸せなことです。本来、大人って子どもよりも自由なはずですから、夏に限らず春夏秋冬自由研究をしていきたい。もしかすると、自由研究を積み重ねることで人間は本当の自由を手に入れることができるのかもしれないですね。そう、人生は自由研究なんです。
須田:そんな壮大な話だったんだね。