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ふむふむとワクワクとポカーンを享受する。(作家さんを口説いた理由vol.2)

2024年4月20日(土)〜5月6日(月)、
リニュアールOPENを記念して企画展を開催いたします。

(今は長すぎるプレOPEN中です)

タイトルとステイトメントは、また追って。

まだイントロダクション的な香りを漂わせていたいので、
なんで3人の作家さんにお声がけしたのか?を、一人一人書いていこうと思います。

ここ数ヶ月、ずーっとタイトルとステイトメントを考えているのですが、煮詰まっていて、口説いた理由を書く事がその打開にならんかなーという至極内向きな理由で、タラタラと書き連ねています。

タラタラと感じるのは、口語で書いているからなんですが、その方が〈ちゃんと書かないといけないステイトメント〉へのステップとして、膿を出す的な意味で有効だなと思ったので、この形式にしました。

また、脳内再生の声について、私の声を覚えている人はその声で、知らない人は空閑美帆という30代の女の声を想像しながら、再生してみてください。

さて、前置きが長くなりましたが、
今回は夏目とも子さんにお声がけした理由です。

2021年の冬頃に「リノベーションするかも…」の話しが出た当初から、リノベをするなら、その意味を痕跡として、どこかに残しておきたいな、何しようと悩んでいました。その場限りの一回性の何かではなく、それがずっと傷跡のように残り続けるような何か。傷跡って言葉自体は良い意味で捉えられないけど、私は割と好きで、傷跡。それは、何かを考えるための起点になるから。そして、その起点が刻印され、記憶の杭となることは、call and responseの構えができる事になるからで。

そのための何か…を考えているなかで、たまたま知り合った夏目さんの鴨江アートセンターのロビーの作品(アートセンター入ってすぐ正面の壁には来場者が色層を削り出し、作家とスタッフさんが埋め戻した跡がほんのり残っています)を思い出し、探していた〈何か〉には当てはまる予感を感じたので、本当にそれが妥当な判断なのか確認するため、昨年6月に開催していた「HERE AND NOW」展で夏目さんのワークショップ「探す、刻む、彫りおこす」に参加しました。

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鴨江アートセンター2階の明るい部屋に、大小様々なサイズのマットな白の質感の板がずらりと並び、どれでも良いかと手を伸ばすけれど、側面にピンクや緑や黄色などの色材が微かに見え、それを頼りに彫り跡に現れる色を想像しながら選ぶのかと、指先で少し悩む。

そうして、選んだ板を彫刻刀で見えない何かをなぞるようにスーっと彫る。質感。幾重にも積層された塗料の感触は、予想に反して小気味よい触感で、板目を彫るよりずっと軽い。刃物をさし入れる角度によって深さが変わり、立ち現れる色が百面相のようにコロコロ変わる。楽しい。右手に伝わる触感も網膜に伝わる色感も全てが想像していなかった感。って書くと、〈想像を超えた、衝撃の…〉的なフレーズがふっと浮かぶけど、そういうんでなく、彫っていると、淡々と静かに内側へ潜っていくような感覚。所在不明なイメージを彫りあげるのではなく、現象を追っていく感じ。追いながらぐんぐん進んで、気づくと結構奥まで来ちゃったなと手を止め、顔を上げると、参加者も皆黙々とそれぞれ没入している。それぞれの彫る音と、時折誰かの咳払い、板と机が触れてカコンと高い音が小さく響く。息遣い。

こうやって静かに内側に潜っていく感覚は、傷を思い出す、撫でることにも似ているのかな、それって何を意味するんだろう…とか考えていたら、あっという間に制作時間が終わり、その頃にはギャラリーの壁に直接これ自体を施すにはどうしたら良いんだろう…と実現に向けて、夏目さんに声をかけねばと考えていました。

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そんなこんなで、企画のはじまりを考えると夏目さんの存在がありありと象徴的に君臨している感じを覚えるのですが、その状態を解きほぐすと、中心にあるというよりは、粒々とした蚊柱みたいなギャラリーの輪郭がまずそこにあって、夏目さんの作品(を粒々の分子と捉えて)が、初夏の訪れと共に交錯していった感じです。どのくらい混ざっているのか、範囲も量も定量測定できず、常に揺れ動いていて、その揺れは、この1年半の期間、月1ペースでお話ししたり、遠足に行ったり、ほる部を立ち上げる中で、都度都度広がったり、一定箇所に溜まったり…。

夏目さんと美術に関してあれこれ話して面白いのは、知識で話す部分の他に質感の部分にフォーカスして話すことも多く、例えるなら自転車のペダルをぐんぐん回した勢いのまま、急にハンドルをふっと離す瞬間があるところ。
夏目さんと、彼女自身の作品について言葉で話していると、蕎麦を塩で食らうストロングスタイルの現代美術(略して蕎麦塩)として、参照できる作家、展覧会、ムーブを引き合いに出して考えてみるけれど、
結局、実際に作品の前に立ってみると、言葉によって規定されていない未規定な部分に誘われている自分がいる。
鴨江アートセンターniche展での作品、あのフワフワの白と青の空洞が特に、その誘い感を強く感じる。

私は作品の前に立つとき〈いつまで佇むことが出来るのか?〉を、良き作品の基準の一つにしているのですが、あのniche展での作品も、今も鴨江アートセンターのロビーに潜んでいる〈ロビーの記憶〉も、シンプルにずっとそこに佇んでいたくなる。
その理由をこれまで摂取してきた言葉や作品などから、連想ゲーム的なあてはめではなく、それらに共通する部分を見出すことで、自分が今何を疑問に思い、どう仮説を立てるのか考えつつ、でもどこかで口をポカンと開けてぼうっと眺めている。
その両輪があって、はじめて私は足を止め、ふむふむとワクワクとポカーンを享受する。

夏目さんは、その場所に積層された時間や人びとの生活史を取り出す(水面に手を浸し、何かをすくいあげるイメージ)ように、制作をしていて、その制作に関わる視座、振る舞い、それによって生まれる作品自体に、私がここ最近考えている多自然主義…人や動物や机や木や川、壁が自分達を〈見ている〉という感受性についての思考を深めてくれる。
ギャラリーもまた私たちを見ている。鑑賞の場として開かれているこの場所もまた鑑賞者である私たちを見ている。しかも内側から。お天道様が見ている(なんてもう言わないと思いますけど、狐に化かされなくなって早60年。もうその感受性さえ残されていない)的な上からの視点ではなく、私やあなたの隣に立っている存在としての壁によって見られていること。

ギャラリーを引き継ぐと決めてから、これからギャラリーをどうしていくのか問われる場面に何度も出くわす度に、なるべく真摯に答えてきたつもりですが、正直、私程度の人間がハンドリングできる場所としてギャラリー蔵があって欲しくないとも思っています。とはいえ、再スタートを切る企画展が今後の指針になればなと思っている節もあり、その節をなるべく太く設定したいなと思っています。

鑑賞やコミュニティの場(社会という閉じられた空間)だけではなく、(自分自身の感度が低いがゆえに)感知し得ない存在にも見られている実感を得ることで、その先の転び方(できれば良い方に)を、この場所に関心を持ってくれている人たちと、一緒に考えるための杭として、夏目さんのあの表現手法をギャラリーの壁にインストールしたい。忘れっぽい私たちに、「忘れないでー!見てますよー!」の存在としての壁であることが、ハンドリングできない未規定な地平への足がかりになればなーと思っています。縛られず。澱まず。

そう。なので、ギャラリーの壁を来場者の皆で彫る・削る(というか傷つけよう、愛のある方法で)参加型の作品を展示する予定です。お楽しみに。

おしまい。

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夏目とも子 Tomoko Natsume
@tomoko_natsume

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現代美術家
1971兵庫県西宮市出身、静岡県浜松市在住
その場所にかつてあった役割や人の暮らし、日差しや風雨、積み重ねた時間の記憶へ想像を馳せ、色材を幾層にも重ねる行為を通して、目の前に迫る「今」を考える作品を制作。既存建築物の壁を使った現地制作や、主にインスタレーションの手法を使い表現活動を続ける。

【個展】 
2018  「鴨江の壁 2017 ロビー / 行きかう場所」展 浜松市鴨江アートセンター、静岡県 (2016 年度レジデンス賞による作品展示)
2016  「鴨江の壁 204号室」展  浜松市鴨江アートセンター、静岡県 (レジデンス制作)

【グループ展】
2023 第23回「遠州横須賀街道ちっちゃな文化展」 掛川市横須賀地区、静岡県
2022 「HERE AND NOW 浜松市鴨江アートセンター アーティスト・イン・レジデンス展2014 - 2021」浜松市鴨江アートセンター、静岡県
2021 「すくう、こぼれる」展  みかわや|コトバコ 複合施設、静岡県浜松市 
(ジュエリーデザイナー白尾由美・染織家 中村美喜子とのアートコレクティブ kihakkaとして展示)
2020「HAMAMATSU NORTH VILLAGE」 天竜木材を用いた次世代へのプロダクトモデル製作・発表、静岡県
2017「Tenryu Art Camp」 浜松市天竜区熊平水辺の里オートキャンプ場、野外展示、静岡県

【ワークショップなど】
2023 フリースクール「び~だ」滞在制作(壁作品)・子ども達との協同作業 浜松市、静岡県
2022 「探す、刻む、彫りおこす」 浜松市鴨江アートセンター、静岡県
2017 「鴨江アートセンター moving branch」建築家 / 彌田徹 計画・設計による移動式アートセンター。 壁の材料提供と移動先でのワークショップ担当
2016 「隠れた色を見つける」 浜松市鴨江アートセンター、静岡県
 
賞歴
2016 2016年度 浜松市鴨江アートセンター アーティスト・イン・レジデンス賞

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ツインギャラリー蔵 / リニューアルOPEN展示
植田 佳奈 夏目 とも子 嘉 春佳

-日程-
2024年4月20日(土)〜5月6日(月)

-時間-
11:00~17:00

-closed-
火・水 / 4/23、24、30、5/1

-会場-
ツインギャラリー蔵 
静岡県浜松市西区入野町1104

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植田佳奈
@uedakana_

夏目とも子
@tomoko_natsume

嘉春佳
@radiotaiso_1

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●関連イベント●
壁プロジェクト - 夏目とも子 
4/20(土)〜5/6(月)
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表面の白い層を削ると、幾重にも塗られた色層が現れる。
彫る手の力加減によって深さが変わり、思いもしない色が生まれ、来場者一人一人の線が静かに繋がり、それは半永久的に目に見えない形でギャラリーを内側から包み続ける。

 レセプションパーティー 
4/20(土) 15:00〜予定

作家さんとお茶飲み会 
在廊日(決まり次第)

さしすせそ文庫 
参加作家さんによる選書
(本・絵本・漫画・雑誌・映画・音楽)
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作品について深く知ってもらうため=知識の補強ではなく、目の前にある作品が、どこからどうやって来たのか考えるための取り組み。

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