人間オタクもりぐち「その人の毒も丸ごと受け入れていきたい」
みなさんこんにちは!KAMIKITA HOUSE住民のきどみ(@kdmin)です。
KAMIKITA HOUSEに暮らす個性豊かなメンバーの魅力を伝える住人インタビュー。第13回は若者支援プロジェクト「UNINEST SUPPORT 2021」のメンバーでもある会社員のもりぐちさん(26)にお話を伺いました。ぜひ最後までお楽しみください!
もりぐち(26)
IT企業でシステムの営業を行う。東京都武蔵村山市出身。旅と廃墟めぐりが趣味。色んな人の話を聞くのが好きで、カミキタハウス内で不定期にバーを開いている。
人間観察が趣味の「人間オタク」
ーーカミキタハウスでの暮らし、どうですか?
住人みんなのことが大好きで、毎日楽しく過ごしています。最近「森の入り口」という名のバーを屋上で不定期に開催していて、そこで色んな人と話せるのもいいです。
ーー最初から馴染めましたか?
いえ。そもそも、他人と暮らすことが得意じゃなく、シェアハウスに住むことが決まったときは親戚中に心配されました(笑)。ここに来て2週間は人見知りが発動して、職場と個室の往復生活。誰かと会うのが怖かったので、キッチンにも寄れなかったほどです。そのため、その時期は昼に1.5人前食べて、夜は何も食べないで乗り切る、なんてこともありましたね(笑)
ーー何がきっかけで人と話すようになりましたか?
キッチンを避けていた生活に限界がきて、ついに出没するようになったんです(笑)。一度行けると二度目のハードルが下がり、自然と行けるようになって、人と話せるようになりました。今は気を遣わず話せるようになったし、自分の素の部分が出せていると思います。あと、今は密かに人間観察も楽しんでいます(笑)
ーー人間観察(笑)。昔から、他人に興味があったんですか?
小さい頃から人をじっと見るクセがあって、親からよく怒られていました(笑)。その人の生き方や考え方、服装や仕草、態度など細かい部分も無意識のうちに見てしまうんですよね。今は気付かれない程度にそっと見るようにしています(笑)。人のことを見て、どんなタイプなのかなって想像するのが楽しいです。最近は宗教や哲学についても勉強するようになりました。一言で表すなら「人間オタク」ですかね。昔は性格が悪かったので、その人の評価も勝手にしていたこともあります。
ーー評価、ですか。
ポジティブな評価もしますが、「あいつはここが悪いクセだな」と、ネガティブな評価もしていました。特に昔は人のことをあまり信頼していなくて、一方的に敵ばかり作っていた気がします。ですが、大人になるつれて、人の性格に良いも悪いもないと考えるようになりました。クセが強い人に出会っても「この人は、こういう人なんだ」と自然と受け入れていますね。
毒も含めて「人生」なんだなって。
ーー何がきっかけで考え方が変わるようになったんでしょうか。
人のことを嫌う体力を使いたくないなって思うようになりました。「嫌い」という感情に注ぐ時間とエネルギーが無駄だなって。歳をとって丸くなったのもあると思います(笑)。昔は極端だったので、ものごとを好き・嫌い、良い・悪いの二元論的に考えていました。でもそれって損しているのは自分だなって思い始めたので、最近のテーマはニュートラルです。
ーーニュートラル?
ものごとに対して良し悪しを判断するのをやめました。多少悪いところがあったとしても、毒も含めて人生だなって。例えば、以前は肉を食べるのは体に良くないと思っていたので、食べないのを徹底していました。しかし最近になって、時と場合によっては肉を食べる時もあります。人の話、本、経験、全て上手く混ざりあって、価値観が変わっているな、と日々実感しています。
ーー最近、仕事も変わりましたよね。
7月末に前職の百貨店を退職して、8月頭に現在の会社に入社しました。今はベンチャーのIT企業でシステムの営業をしています。
ーーそもそも、なぜ辞めようと思ったんですか?
正直、環境はめちゃめちゃよく、人に恵まれてた上に業務内容も経理や事務作業がメインで、ストレスなく働けていたと思います。ただ、毎日同じような仕事をこなしていくうちに物足りなさを感じていくようになりました。そんな時カミキタハウスに来て、自分の好きなことで楽しそうに仕事をしている人々を見ているうちに自分の仕事に誇りを持てなくなり、退職を決心したんです。
ーー今の仕事を選んだきっかけは?
実は、退職した後は失業手当を貰いながらゆっくり職を探していこうかな、とのんびりするつもりでした。しかし、自分の退職を知った友人から「知り合いの会社で人が足りなくて困っている」と連絡が来て、代表の人と会ってみることにしたんです。その人とフィーリングが合いそうだったのと、自分に声をかけてもらったことに何かの縁を感じて入社を決めました。
もともと「営業」は、ノルマがシビアで競争が激しいイメージで自分には向いてないだろうと思って就活の時に避けていた職種。ただ、やってみなきゃわからないと思い、挑戦してみることにしたんです。
ーーこれまでも、何か決断して挑戦してみたことはありますか?
大学生の時、バックパックを持って1人で旅に行きました。当時所属していたゼミではよく海外に行っている人が多く、自分も行けるんじゃねってノリで決めたんですけど(笑)。自分は一人っ子で過保護に育てられてきたので、両親からは超反対されました。でも、決めたことだからって半ば強引に決行したんです。
運命は決まっているので、あとは流れに身を任せるだけ
ーー1人旅はどこへ行ったんですか?
1人旅、と言っても自分はチキンなので、まずはバックパッカー初心者向けの『タビイク(旅人育成企画)』に参加し、1週間参加者みんなでタイで過ごして旅に慣れました。その後自分は1人で旅を続け、3週間マレーシアとシンガポールを周遊しました。
ーー1番印象的だった経験はありますか?
マレーシアのショッピングセンターでスマホがなくなった経験です。恐らく盗まれたんだと思います。泣きながら必死で探して、お店のスタッフに聞いて回りましたが結局見つからず。その時は1人で旅する期間に入っており、周りに頼れる人がいなかったので絶望的でした。でもまだ旅は2週間残っていたので、クヨクヨしている場合じゃないなって思い、ホテルに戻ってからパソコンとコピー機を借りてチケットを印刷したり、手書きの地図を作って次の日訪れる場所の計画を立てなんとか乗り切ったんです(笑)。最初は不安でしたが、慣れると余裕で生活できたので、人間スマホなくても生きていけるんだなって実感しましたね。ただ、綺麗な景色の写真を撮れなかったのは残念でしたが。
ーーそれは災難でしたね。
その後も災難は続きます(笑)。マレーシアからシンガポールへ国境移動する時、乗るはずだったバスに置いていかれたんです。入国審査の際、自分はずっとシンガポール人用の列に並んでいたみたいで、いざ入国審査官の前まで来たとき、「君は外国人だからこの列じゃないよ」ってはじかれてしまいました。その時点で20分くらい経過していた上にまた別の列に並び直さなければならなかったので、審査終了まで相当時間がかかってしまいました。その後急いでバスの乗車位置に向かいましたが、当然乗るはずのバスは見当たらず。結局、その辺を走っていたバスを捕まえて、事情を説明して乗せてもらえることになりました(笑)
ーー初めての1人旅なのに相当な経験をしましたね。
ですが、そのシンガポール行きのバスに乗った時、1人のシンガポール人の方と仲良くなったんです。その人は経営者で100カ国回った経験があり、日本についても詳しかったので、話が弾みました。バスを降りた後、ご飯を奢ってもらった上にホテルまで送ってもらったりと、とても仲良くなって別れました。国境でバスに置いていかれなかったらその人と出会えてないし、スマホが手元にあったら別の方法で国境を越えていたかもしれない。旅行中に起きた全ての災難は、その人に会うための伏線だったんじゃないかって思ったりもします(笑)
ーー今後の夢はありますか?
自分は、生まれた瞬間から死ぬ瞬間まで、運命はあらかじめ決まっていると思っているので、このまま流れに身を任せていこうと思います。今カミキタハウスに住んでいるのも、新しい職を始めたのも、マレーシアとシンガポールの国境で置いていかれたのも、全部必然的な出来事だったんじゃないかと。その中でいつか、どんな形であれ世界一周をしたいな、と思っています。
【取材後記】
読んでいて感じた人もいるかもしれないが、文中に(笑)を多用してしまった(数えたら13個もあった)。実際、本人は取材中に自分の話をしながら「やばいよね、これ記事になるの(笑)」とよく笑っていた印象。国境で置いていかれた話や、スマホを盗まれた話も客観的に聞くと相当災難な出来事だが、もりぐちの中で“必然”だったと受け入れているので、笑い話にできるのだろう。
取材中「生きるのが下手なんだよね」と言っていたのが心に残っている。先生や先輩、嫌いな人を前にした時、全部顔に出てしまい嫌われることが多いらしい。「もっといい顔すれば得するんだろうけど、したくないし、できない。その分、好きな人に時間や労力を費やしたい」と語った。確かに、一緒に過ごすようになって彼女の頑固な部分を目にすることはよくある。でも、そうしたハッキリとした芯があるから、自分は仕事や生き方で悩みがあるともりぐちに意見を聞くことが多い。頑固な面がありつつも、相手をすぐに否定せず、受け入れる寛容さも共存するので、その個性は変えずにいてほしいと思う。
取材:きどみ、コージー
執筆、編集:きどみ
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