「点と点がつながった」。夢を叶えた映画ライター・きどみの次なる夢とは
こんにちは!KAMIKITA HOUSE住人のコージーです。
入居者の魅力に迫る住人インタビューの第27回。今回のゲストは、僕とともに住人インタビュー企画を行ってきたきどみさんです。カミキタハウスでの挑戦や今後の目標について語ってくれました。それでは最後までお楽しみください。
悩みながら働くのは、もったいない
ーー現在は編集者・ライターとして活動されていますが、学生時代から書く仕事に興味があったのでしょうか?
「ライターになりたい」という明確な思いはありませんでしたが、幼い頃から書くことは好きでした。小学2年生くらいから、家で「みなみ新聞」(※きどみさんの名前はみなみ)を作っていたことを覚えています(笑)
みなみ新聞は、家族旅行や家族行事の際に「何が楽しかった?」とアンケートをとって、まとめるようなイメージ。ちょこっと漫画も描いてましたね。完全に自己満の世界で暇な時に書く程度でしたが、小学6年生まで多い時で週に3回、少ない時でも月1回くらいのペースで続けていました。
ーー書くことを仕事にしたいという明確な思いを幼少期から持っていたわけではなかったんですね。大学での就職活動はどのような感じだったんですか?
もともと映画が大好きだったので、映画の配給会社に入りたいと考えていました。でも映画配給会社は採用枠が少ないので、視野を広げようとして目をつけたのが出版社でした。
きっかけは大学3年の1月、マイナビ主催の企業説明会。講談社の方のお話を聞いて「編集者めっちゃいいじゃん」と思ったんです。講談社の方が「どんなアイディアも仕事にできる」とおっしゃっていたのが、胸に響きました。
就職活動は映画配給会社や出版社などエンタメ業界を軸とし、結果的にはアニメーション制作会社に就職しました。
ーーエンタメ系という点では、第一志望群の会社に入れたんですね。アニメーション制作会社に入社してみて、実際どうでしたか?
入ってすぐに後悔しました。
業務内容は、アニメの制作進行。答えが決まっていて、誰でもできることをたどっていくような仕事です。できて当たり前なので感謝されたり褒められたりはしない一方で、少しでもミスしたらめちゃくちゃ怒られるんです。
ファイルを整理したり、動画を見て資料にまとめたりといった仕事からは「考えながら工夫して、成功する」という達成感は得られませんでした。
もちろん大好きなアニメーションに携われているという点での達成感はありました。無事、担当するアニメがテレビで放送され、エンドロールで自分の名前が出た瞬間はとてもうれしかったです。ただ、日々の業務にやりがいを感じることはできませんでした。
ーー仕事の現状を誰かに相談しましたか?
色んな方に相談しました。大学の先輩に「20代という限られた時間を悩みながら働くのはもったいない。やめてもいくらでもやり直せる」と言われたのが心に響き、入社後1年の2020年3月に退職しました。
実際、仕事がただの作業になり、好きだったアニメが好きではなくなっていて。また、ちょっとしたミスに対して上司が心理的に詰めてくるような怒り方をすることも大きなストレスでした。
カミキタハウスが、挑戦を後押ししてくれた
ーー退職直後の2020年5月からカミキタハウスでの生活が始まりました。どうしてカミキタハウスへ入居しようと思ったのですか?
退職を相談した大学の先輩が「こういうのあるみたいよ」とUNINEST SUPPORTのプロジェクトをLINEで教えてくれたんです。それを見て直感的に「面白そう」と思いました。
仕事をやめて、実家にこもっていたら社会とのつながりがなくなるのでは、という不安がありました。カミキタハウスで暮らせば、それを解消できるのでは、と。それまで自分は実家を出たことがなかったので、どんどん視野が狭くなり、外の世界に出られなくなるのが怖かったんです。
当時、やりたいことが定まっていなかった自分にとっては、魅力的なプログラム。「自分のためのプログラム」だと思って応募しました。
ーーそれから1年半近くカミキタハウスで暮らしました。カミキタハウスでの生活はどうでしたか?
カミキタハウスに来て驚いたのは、入居者の多様性です。会社員以外にもフリーランスや起業家など色々な人がいすぎて、多数派が存在しないんです。
自分は入社1年で会社を辞めたので、世間や大学の友人たちの間では少数派でした。「えー、1年でやめたんだ」とネガティブな反応をされることもあります。
でもカミキタハウスで出会ったみんなは、会社をやめたことを軽く捉えていて「そうなんだ。また次の仕事ゆっくり探せば」みたいな感じだったんです。なので全く浮くことがありませんでした。
そういった素敵な仲間たちに囲まれたおかげで、たくさんの挑戦ができました。みんなそれぞれ挑戦をしていたり、やってみようと思ったことに対して背中を押してくれたり、相談に乗ってくれたり。彼らから刺激を受けて、自分もやりたいことに一歩踏み出せたと思います。
ーー具体的には、どんなことに挑戦しましたか?
1つ目は、カミキタハウスでの住人インタビューです。それまでライター経験は全くなかったのですが、インタビューをやってみたいという気持ちがあったんです。ライターが自分に向いているかどうかも分からなかったので、まずは挑戦してみよう、と思いました。
住人インタビューは自分のライター人生にとって、0から1になった瞬間でした。一緒にやってくれて、色々なことを教えてくれたコージーには本当に感謝しています。
取材の仕方、文章の構成など何も知らなかったので、すべてが新鮮でした。「聞いたことをそのまま書かない」「取材対象者の広報にならない」「取材対象者のイメージを崩さないように文章を書く」などたくさんのことを学びました。
ーー他にも挑戦したことはありましたか?
もう1つの挑戦は、住人インタビューの経験を経て、実際にライターの仕事を始めたこと。ライフスタイル系メディアの編集部に業務委託として加わり、週4回、SEO記事を執筆しました。
ただ、実際にやってみたらあまり楽しくありませんでした。SEO記事は型が決まっていて、答えがあるんです。個性が必要ない文章なので、個性をつぶなさないといけないのが、面白くなかったですね。私のなりたかったライター像とは違うと感じ、半年でやめました。
ーー業務委託をやめてからは?
2021年11月から、映画やカルチャー系のメディアで映画・アニメのコラムを書かせてもらえるようようになり、そこに注力しました。それ以外にも、様々なメディアで執筆する仕事はもらえたのですが、安定した収入はありませんでした。
というのも、報酬は1記事書くごとに何円というもので、毎月どれくらいの仕事がもらえるか予想がつかなかったからです。業務委託で日給が支払われていた時と比べると、収入は半分以下に激減しました。
仕事量、収入が不安定なのがだんだんメンタルに響いてきて、2022年3月には「なんでこんな不安定な生き方をしないといけないんだろう」と思うようになったんです。「このままではまずい」と、仕事探しを始めました。
ーー安定した収入を求めて、再び会社員になる決意をしたのですね。
安定収入に加えて、仲間と一緒に働きたいという気持ちもありました。1年間、一人で仕事をしてみて、大きなプロジェクトの一員として働きたいと思うようになりました。
そうした思いで就職活動を行い、2022年5月からは再び会社員に。ライフスタイル系Webメディアの編集者となりました。現在は、整理収納に関する記事を担当しています。
記事はライターさんに書いてもらうのですが、企画、タイトル選定、サムネイル作成など正解がない業務に関われるのが楽しいですね。
20代で、映画パンフレットに関わりたい
ーー会社員として編集者をしながらも、個人でライターの仕事も続けているんですか?
はい。映画やアニメのコラムを3つのメディアで、1ヶ月計4記事くらいのペースで書いています。コラムは自分の色を出せるので、とても楽しいです。
ーー好きな映画ライターはいますか?
ヒナタカさんは、ハンパない知識量をもとにした分析力がすごいんです。論理的な書き方で、迫ってくるものがあるんですよ。文章を最後まで読んだら、絶対にその映画を見ざるを得なくなるという(笑)
一方、SYOさんは論理的でありながらも感性に訴えかける文章が特徴的。言葉選びがきれいで、人に伝えたくなるような言葉が並んでいます。
SYOさんには、私の執筆した記事を編集していただいたこともありました。めちゃめちゃ赤が入ったのですが、なぜ編集されたのか理由が明確に分かり、本当にその通りだなと勉強になりました。「素晴らしい」とか「他に類を見ない」といった大きな言葉を安易に使いすぎてはいけない、と学びました。
ーーカミキタハウスに入居した頃は、ライター経験ゼロ。それからわずか1年で、さまざまな媒体でライター・編集者として活躍するようになりました。改めてこの1年を振り返って、どうですか?
これまでの経験が全て今につながっていると感じます。新卒でアニメーション制作会社に入社していなかったら、今映画やアニメのコラムは書けていませんでした。カミキタハウスでの住人インタビューも貴重な経験でした。まさに点と点がつながったという感覚です。
今はやりたいことはできていますが、実力は全然伴っていない状態。作品の力や著名な方の拡散によって、たくさんの方に読んでいただけたことはあったのですが「記事が面白いから伸びた」という経験はまだできていません。
いつ到達できるか分かりませんが「私の文章がいいから、たくさんの方に読んでいただけた」というところを目指していきたいです。
ーー最後に、今後の目標を聞かせてください。
映画パンフレットに何かしらの形で携わりたいです。写真の下のキャプションなど、どんな小さな形でもいいので、20代のうちに関わることが目標です。
映画パンフレットは映画に最も近い出版物であり、誰よりも映画について分かっていないと書けません。今、私は映画コラムを書くことによって、映画に外側から関わらせてもらっているのですが、映画パンフレットを通して内側から関われるようになりたいです。
取材、執筆、編集:コージー
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