【徹底解説】Cursor・Cline・RooCodeのルール設定方法|AIが賢くなる使い方とメリット
AIコードアシスタントとは、プログラミング中にAIが自動でコード提案や補完、問題解決のサポートをしてくれるツールです。例えばCursor(カーソル)やCline(クライン)、RooCode(ルーコード)といったツールは、エディタに組み込まれたAIがあなたのコードを理解し、次に書くべきコードの候補を提示したり、バグ修正の提案をしたりしてくれます (Cursor vs GitHub Copilot: Which AI Coding Assistant is better?)。これらのAIアシスタントを上手に使えば、コードを書くスピードが上がったり、より良い設計のヒントが得られたりします。しかしその一方で、AIに完全に任せきりにするとプロジェクトごとのコーディング規約(スタイルや命名規則など)から外れたコードが生成されてしまうこともあります。そこで重要になるのが「ルール設定」です。各ツールにはルール(ガイドライン)を定義する機能があり、これを使ってAIの振る舞いをカスタマイズできます。ルールを設定することで、AIにプロジェクト固有のコーディング規約やベストプラクティスを守らせたり、望ましい回答スタイルを取らせたりすることが可能です (Prompt Engineering Guide | Cline)。結果として、チーム全体で一貫したコードスタイルを維持でき、AIから得られるコード提案の質も向上します (Prompt Engineering Guide | Cline)。本記事では、初心者の方でも分かるように、Cursor、Cline、RooCodeそれぞれの基本と、ルール設定の方法について解説します。
各ツールの基本情報
Cursorとは?(基本機能とルール機能)
Cursorは、VS Codeをベースに開発されたAI搭載のコードエディタです (Cursor vs GitHub Copilot: Which AI Coding Assistant is better?)。エディタそのものにAIアシスタント機能が組み込まれており、コードの自動補完や編集提案、チャットによる質問応答が可能です。Cursorの特徴は「即応性」にあります。タイピングに合わせてすばやく複数行のコードを提案してくれたり、ファイル内容を理解した上でリファクタリング(コードの改善)提案を行ったりします (Best AI Coding Assistant 2025: Complete Guide to Cline and Cursor - Cline Blog)。例えばリアルタイムのコード補完や迅速なリファクタリングなど、開発者がコーディングの流れを途切れさせずに作業できるようサポートしてくれる点が魅力です (Best AI Coding Assistant 2025: Complete Guide to Cline and Cursor - Cline Blog)。
こうした即時的な支援に加えて、Cursorにはプロジェクト固有のルールを設定する機能があります。その中心となるのがプロジェクトルートに置く**.cursorrulesファイルです。Cursorの設定でこの機能を有効にし、ルートディレクトリに.cursorrulesを作成すると、そこに記載したガイドラインに基づいてAIがコード提案を行うようになります (Cursor: Rules for AI Code Editor | Sebastian Müller, Hamburg - sbstjn.com)。.cursorrulesファイルは単なるテキストファイルで、プロジェクトのコアとなる原則や使用しているフレームワークの特定ルール**などを書き込めます (Cursor: Rules for AI Code Editor | Sebastian Müller, Hamburg - sbstjn.com)。たとえば「コード提案ではプロジェクトのコーディング標準を必ず守ること」「セキュリティやスケーラビリティを常に考慮すること」といった指示をこのファイルに書いておけば、CursorのAIがそれらを遵守しながら回答・提案してくれるのです (Cursor: Rules for AI Code Editor | Sebastian Müller, Hamburg - sbstjn.com)。
Clineとは?(基本機能とルール機能)
Clineは、VS Codeの拡張機能として動作するAIコーディングアシスタントです。まるで経験豊富な開発者がペアプログラミングで隣についているかのように、Clineはユーザーに寄り添った丁寧なサポートをしてくれます (Best AI Coding Assistant 2025: Complete Guide to Cline and Cursor - Cline Blog)。具体的には、問題を解決する際に一歩ずつ手順を説明したり、コードを書くだけでなくなぜその書き方が良いのかを解説したりしてくれる点が特徴です (Best AI Coding Assistant 2025: Complete Guide to Cline and Cursor - Cline Blog)。初心者には分かりやすい説明で学習を促し、上級者にはベストプラクティスを提案してコードの質を高めてくれるなど、状況に応じて思慮深いコラボレーターとして振る舞います (Best AI Coding Assistant 2025: Complete Guide to Cline and Cursor - Cline Blog)。またClineは、必要に応じてテストの実行やGit操作など開発環境との連携も行える高度な機能(MCPと呼ばれる仕組み)も備えています (Best AI Coding Assistant 2025: Complete Guide to Cline and Cursor - Cline Blog)が、初心者のうちはまず基本的なチャットによるコーディング支援に集中するとよいでしょう。
Clineにもルール設定の仕組みが用意されています。Clineの場合、まずグローバル(ユーザー全体)なカスタム指示と、プロジェクトごとの**.clinerulesファイルという二種類の方法でAIに指示を与えます (Prompt Engineering Guide | Cline)。グローバルなカスタム指示はCline拡張機能の設定画面から記述でき、全プロジェクトで共通のルール(例えば「常にコードにはコメントを付ける」等)を指定するのに使います (Prompt Engineering Guide | Cline)。一方、プロジェクト単位のルールはプロジェクトのルートディレクトリに.clinerulesというファイル**を置くことで設定します (Cline - Autonomous Coding Agent for VSCode)。.clinerulesにはそのプロジェクト特有のガイドラインを自由に記述できます。例えば「ドキュメントは必ず /docs フォルダ内を更新すること」「コードは社内のコーディング規約に沿うこと」「変更には必ずユニットテストを追加すること」といった内容を書いておけば、Clineはプロジェクト内での全ての会話やコード生成時にそれらの指示を考慮して動作します (Cline - Autonomous Coding Agent for VSCode)。Clineは起動時にこの.clinerulesを読み込み、ユーザーが明示的に指示しなくても自動的にそれらルールを守ってくれるので安心です (Cline - Autonomous Coding Agent for VSCode)。
RooCodeとは?(基本機能とルール機能)
RooCodeは、Clineをベースに発展した最新のAIコーディングアシスタントです。元々「RooCline(ルークライン)」という名称でしたが、機能強化に伴いRooCodeと改名されました (DeepSeek R1 Impact: AI Advancements and RooCode Introduction | GoTranscript)。RooCodeもVS Code拡張機能として動作し、Cline同様にコードの生成・編集やファイル操作、コマンド実行などをAIが自律的にこなせる強力なツールです (DeepSeek R1 Impact: AI Advancements and RooCode Introduction | GoTranscript)。言わばClineの派生版であり、基本的な使い勝手や機能はClineと似ていますが、いくつかの独自の強化ポイントがあります。
最大の特徴は**「カスタムモード」と呼ばれる仕組みです。RooCodeではAIの人格や役割を複数定義して使い分けることができます (DeepSeek R1 Impact: AI Advancements and RooCode Introduction | GoTranscript)。例えば、「コードを書くモード」「設計アドバイスをするモード」「テストを専門にするモード」といった具合に、用途に応じてAIの振る舞いを切り替えられるのです。実際、RooCodeではテンプレートとしてQAエンジニア(テストケースを作成)**、プロダクトマネージャー(ユーザーストーリー作成)、UI/UXデザイナー(デザイン面の提案)、**コードレビュアー(コード品質チェック)**等、様々な役割のエージェントを作成できるようになっています (GitHub - RooVetGit/Roo-Code: Roo Code (prev. Roo Cline) is an AI-powered autonomous coding agent that lives in your editor.)。しかもRooCodeに「新しいモードを作成して」と頼めば対話を通じてカスタムモードを構築する手助けまでしてくれるという柔軟さです (GitHub - RooVetGit/Roo-Code: Roo Code (prev. Roo Cline) is an AI-powered autonomous coding agent that lives in your editor.)。
RooCodeのルール設定は基本的にClineの方式を引き継いでいます。つまり、プロジェクトルートに置く**.clinerulesファイル**(名前はそのままClineと共通です)に沿ってAIが動作しますし、グローバルなカスタム指示も利用できます。さらにRooCode固有の機能として、モードごとのルール設定も可能です。各モードにはそれぞれデフォルトのプロンプト(人格や役割を定義する文言)がありますが、ユーザーがそれをカスタマイズすることもできます (GitHub - RooVetGit/Roo-Code: Roo Code (prev. Roo Cline) is an AI-powered autonomous coding agent that lives in your editor.)。例えば「Architect(アーキテクト)モードではシステムのスケーラビリティに重点を置いて助言するようにする」「Askモードではより深いリサーチ志向の回答をするようにする」等、モードごとに詳細な振る舞いを調整できます (GitHub - RooVetGit/Roo-Code: Roo Code (prev. Roo Cline) is an AI-powered autonomous coding agent that lives in your editor.)。具体的には、プロジェクトに**.clinerules-モード名**というファイルを置けば、そのモードでのAIの振る舞いに追加の指示を与えられます (GitHub - RooVetGit/Roo-Code: Roo Code (prev. Roo Cline) is an AI-powered autonomous coding agent that lives in your editor.)。このようにRooCodeは非常に強力で柔軟ですが、基本的な使い方やルールの書式はClineと同じですので、まずはClineでルール設定に慣れてから必要に応じてRooCodeの高度な機能を使ってみると良いでしょう。
ルール設定の方法
では、それぞれのツールで具体的にどのようにルールを設定するのか、手順とポイントを見ていきましょう。
Cursorでルールを設定する方法(.cursorrulesの使い方)
Cursorでプロジェクト固有のルールを設定するには、次のような手順をとります。
ルールファイルの作成: プロジェクトのルートディレクトリ(最上位フォルダ)に**.cursorrules**という名前のファイルを新規作成します (Cursor: Rules for AI Code Editor | Sebastian Müller, Hamburg - sbstjn.com)。拡張子はなく、テキストファイルとして用意します。
エディタ設定の確認: Cursorの設定画面を開き、「Rules for AI」や「ルールファイルを使用する」といったオプションがオフになっている場合はオンにします (Cursor: Rules for AI Code Editor | Sebastian Müller, Hamburg - sbstjn.com)。最新版ではプロジェクト内に.cursorrulesがあるだけで自動検出されますが、念のため設定を確認すると良いでしょう。
ルールの記述: .cursorrulesファイル内に、AIに守らせたいルールを書き込みます。書式に厳密な決まりはなく、基本は自由記述です(必要に応じて箇条書きや番号付きリストを使えます)。テキスト形式で、場合によってはJSON風の書き方をする人もいます (Optimizing Cursor AI with .cursorrules | by Andi Ashari - Medium)。内容はプロジェクトの性質に応じて様々ですが、以下のような項目が考えられます。
コーディング標準: 例:「変数名はスネークケースではなくキャメルケースを使うこと」「Reactでは関数コンポーネントを使用すること」
ベストプラクティス: 例:「セキュリティ対策(入力検証やXSS防止)を必ず実装すること」「データベースアクセスは必ずトランザクション管理を行うこと」
プロジェクト固有の約束事: 例:「src/utils/ディレクトリ以外ではユーティリティ関数を定義しない」「外部APIとの通信にはAxiosを用いる」
バージョン管理: .cursorrulesファイル自体もプロジェクトのリポジトリに含めて管理します。これにより、チームの他の開発者も同じルールファイルを共有できます。Cursorはリポジトリレベルでルールを共有できるので、チーム全体でAIの振る舞いを統一するのに役立ちます (Best AI Coding Assistant 2025: Complete Guide to Cline and Cursor - Cline Blog)。
Cursorでルールを設定するポイントは、「必要な指示を簡潔に書く」ことです。あまりに長大なルールを書きすぎると、AIの応答パフォーマンスに影響が出る可能性もあります(大量のルールを処理する必要があるため)ので、プロジェクトに本当に必要な指針に絞って記述すると良いでしょう。
Clineでルールを設定する方法(.clinerulesの使い方)
Clineでルールを設定する方法も概ねCursorと似ていますが、いくつか補足事項があります。
グローバルカスタム指示の設定(オプション): まずCline全体に適用するルールとして、拡張機能の設定から**「Custom Instructions(カスタム指示)」**を記述できます (Prompt Engineering Guide | Cline) (Prompt Engineering Guide | Cline)。VS Codeの設定画面でClineの項目を開き、「Custom Instructions」というフィールドにテキストを書き込みます (Prompt Engineering Guide | Cline)。ここには「常にコードに型注釈を付けること」や「エラーメッセージはユーザーにも分かりやすいよう詳細に書くこと」など、どのプロジェクトでも共通してAIに守らせたいルールを書くと良いでしょう (Prompt Engineering Guide | Cline)。これらはユーザーごとに設定され、常にオンの状態でClineのAIの基本動作に影響を与えます (Prompt Engineering Guide | Cline)。
プロジェクト固有ルールファイルの作成: 次にプロジェクト専用のルールとして、プロジェクトルートに**.clinerules**ファイルを作成します (Cline - Autonomous Coding Agent for VSCode)(Cursorと違い、設定で有効化する必要はなくファイルが存在すれば自動的に読み込まれます)。
ルールの記述: .clinerulesにはそのプロジェクト内で従うべきガイドラインを書きます (Cline - Autonomous Coding Agent for VSCode)。基本的な内容はCursorの.cursorrulesと同様ですが、Clineの場合公式ドキュメントでいくつか例が示されています。例えば次のような構成で書くと分かりやすいでしょう (Prompt Engineering Guide | Cline) (Prompt Engineering Guide | Cline)。
# プロジェクトガイドライン ## ドキュメントの取り扱い - 機能を変更した際は必ず `/docs` 以下の関連ドキュメントを更新する - 新機能追加時はREADME.mdに必ず追記し、変更履歴をCHANGELOG.mdに残す ## アーキテクチャの決定記録(ADR) - 重要なライブラリの更新やアーキテクチャ変更時は、`/docs/adr/` にADRを追加する - ADRには `/docs/adr/template.md` のテンプレートを使用し、一貫した形式で記録する ## コーディングスタイル & パターン - APIクライアントコードは OpenAPI Generator を使用して自動生成する(テンプレートはTypeScript Axiosを使用) - 自動生成コードは `/src/generated/` ディレクトリに配置する - 継承よりコンポジション(Composition)を優先して設計する - データアクセスにはリポジトリパターンを用いる - エラー処理は `/src/utils/errors.ts` 内の既定パターンに従う ## テスト方針 - ビジネスロジックにはユニットテストを必ず書く - APIエンドポイントには統合テスト(Integration Test)を用意する - 重要なユーザーフローについてはE2Eテストを実施する
上記は一例ですが、ドキュメント更新ルール、アーキテクチャの記録方法、コードスタイルの統一、テスト基準など、プロジェクト開発で守るべき事項をセクション分けして書いておくと、AIもそれらを理解しやすくなります。実際、ClineのドキュメントではこのようにMarkdown形式でセクションを区切って書く構成が推奨されています (Prompt Engineering Guide | Cline) (Prompt Engineering Guide | Cline)。Clineは.clinerulesの内容をシステムプロンプト(AIへの基本指示)に自動で組み込んでくれるため、これらを書いておくだけでプロジェクト内でのAIの応答や提案すべてに効果が及びます (Prompt Engineering Guide | Cline)。
適用と共有: .clinerulesファイルもプロジェクトのリポジトリに含めて管理します。これにより、チームメンバー全員が同じルールに則ったAI支援を受けられるため、挙動のブレがなくなります (Prompt Engineering Guide | Cline)。例えば新しい開発者がプロジェクトに参加しても、.clinerulesをプロジェクトに置いてClineを使えば、ベテランが作成したコーディング規約や設計指針に沿った提案をAI経由で即座に受け取ることができます。
Clineでルール設定をする際のポイントは、「プロジェクトの性質に合わせて具体的に書く」ことです。Cursorよりも詳細に書いてもよいでしょう(Clineは長文のコンテキストや文脈を保持する能力が高いため)。例えばセキュリティ重視のプロジェクトであれば「SQLインジェクションに注意」「パスワードはハッシュ化して保存」などセキュリティ方針を詳しく書けますし、モバイルアプリ開発なら「通信は全てHTTPSを使用」「画像リソースはキャッシュを適切に使うこと」等、ドメインに特化した項目を入れても良いでしょう。Clineはそれらを忠実に守り、違反しそうなコードが出そうになると代替案を提示してくれるなど、頼れる相棒として働いてくれます。
RooCodeでルールを設定する方法(モード設定とルール)
RooCodeでのルール設定は基本的にClineと同じ手順で.clinerulesファイルを用意すればOKです。Clineから派生したツールであるため、上記と同様にプロジェクトルートに置いたルールファイルを自動的に読み込み、指示に従ってくれます。したがって、まずはプロジェクト直下に.clinerulesを作成し、プロジェクト特有のルールを記述しましょう。内容もClineの場合と同様です。例えばチーム固有のコーディング規約や使用ライブラリのバージョン制約などを書いておけば、RooCodeもそれを考慮した提案を行います。
RooCode特有の設定としては、前述のカスタムモードごとのルールがあります。RooCodeではUI上部の「Prompts」タブから各モードのプロンプト(指示文)を編集できます (GitHub - RooVetGit/Roo-Code: Roo Code (prev. Roo Cline) is an AI-powered autonomous coding agent that lives in your editor.)。ここでモードごとに細かなカスタマイズを行うこともできますが、プロジェクト規模が小さいうちはデフォルトのモード設定のままでも問題ありません。必要に応じてモード単位でルールを変えたい場合のみ、**.clinerules-<モード名>**というファイルを追加で作成します (GitHub - RooVetGit/Roo-Code: Roo Code (prev. Roo Cline) is an AI-powered autonomous coding agent that lives in your editor.)。たとえば「テストエンジニアモード」向けに .clinerules-test を作り、そこに「このモードではコードのテストカバレッジ向上に注力する」といった指示を書いておくと、RooCodeでテストエンジニアモードに切り替えた際にそのルールが適用されます。モード名はRooCodeで定義されているチャットモード(Ask、Code、Architect、など)やユーザーが追加したカスタムモード名を使用します。
また、RooCodeはコミュニティで共有されているカスタムモードのテンプレートを活用することもできます。公式Discordやサブレディットではユーザーが作成したモードやルールの例が公開されており、それらを取り込んで自分のプロジェクトに合わせて修正するといった使い方も可能です (GitHub - RooVetGit/Roo-Code: Roo Code (prev. Roo Cline) is an AI-powered autonomous coding agent that lives in your editor.)。初心者のうちはまず一つのモード(例えばデフォルトのCodeモード)で.clinerulesによるルール適用を試し、慣れてきたら複数モードの使い分けに挑戦することをおすすめします。
活用例
ルール設定を上手に活用すると、AIコードアシスタントの振る舞いを細かくコントロールできるようになります。最後に、具体的な活用シーンの例をいくつか紹介します。
プロジェクトのコーディング規約をAIに守らせる: チームやプロジェクトで定めたコーディング規約(スタイルガイドや命名規則、フォルダ構成など)をルールファイルに記述しておけば、AIがコード提案時にその規約を自動チェックしてくれます。例えば「クラス名は必ず大文字始まりのキャメルケース」「データベースのクエリはORM経由で行う」といった規約を列挙しておけば、逸脱するコードが提案された際にAIが修正案を提示したり、規約違反を指摘したりします (Cursor: Rules for AI Code Editor | Sebastian Müller, Hamburg - sbstjn.com)。これにより、人間が後でスタイル修正をする手間が減り、コードレビューの負担軽減にもつながります。
特定のコードスタイルを維持する方法: プロジェクト固有のコードスタイル(例えば関数の書き方やデザインパターンの採用基準)をルール化することで、一貫性のあるコードベースを保てます。例えば「このプロジェクトではFunctional Programmingのスタイルを優先する(副作用のない純粋関数を心がける)」や「例外処理の際はカスタムエラークラスを使う」等を明記しておけば、AIは提案コードの中でそれらの方針に従います (Prompt Engineering Guide | Cline)。実際の.clinerules例でも「継承よりコンポジションを優先する」「エラー処理は特定のユーティリティ関数を使う」といったスタイルガイドが示されています (Prompt Engineering Guide | Cline)。このようにしておくと、複数人で開発していてもコードの書き方がばらばらになりにくく、読みやすさ・保守しやすさが向上します。
AIの応答をカスタマイズする方法(簡潔な回答、詳細な説明など): ルールはコードそのものだけでなく、AIの回答スタイルにも適用できます。例えば「回答はできるだけ簡潔に」「提案時には理由も添えて説明すること」といった指示を与えれば、AIの返答の仕方をコントロールできます。実際にClineのカスタム指示では「作業を明確な番号付きのステップに分解して説明すること」や「ガイドラインに従ってセキュリティとドキュメントのベストプラクティスも順守すること」といった例が紹介されています ([UPDATED 11/13/24] CLINE custom instructions that changed the ...)。ルールファイルに「常にコード例を含めて説明する」「必要なら箇条書きで要点を整理して回答する」などと書けば、AIは回答時に単にコードを吐き出すだけでなく、ポイントをリストアップしたり追加説明を付け加えたりしてくれるでしょう。逆に「説明は不要な限り省略する」とすれば、余計な冗長説明を省いて必要最低限の回答だけを返すモードにもできます。こうした調整によって、自分の学習スタイルや求める出力(シンプルな回答が欲しいのか、詳細な解説付きが良いのか)にAIの応答を合致させることができます。
まとめとおすすめの使い方
AIコードアシスタントであるCursor、Cline、RooCodeの基本機能とルール設定について解説しました。それぞれ特徴がありますが、ルール設定を活用することで得られるメリットは共通しています。最後に要点をまとめ、初心者へのアドバイスと今後活用する上でのヒントを述べます。
まず、各ツールの特長と使い分けについて簡単に振り返りましょう。
Cursor: 即時的でスピーディーなコード補完が強みのAIコードエディタです。ちょっとした修正や素早いプロトタイピングには最適でしょう。ルール設定もシンプルで、.cursorrulesに基本的な規約を書くだけで手軽にプロジェクト標準を適用できます (Cursor: Rules for AI Code Editor | Sebastian Müller, Hamburg - sbstjn.com)。まずは素早く動かしてみたいという時にCursorを使い、必要最低限のルールでAIに方向性を与えると良いでしょう。
Cline: 対話型で丁寧に支援してくれる頼れるパートナーです。コードを書くだけでなく背景の説明やベストプラクティスの指導も欲しい場合に向いています (Best AI Coding Assistant 2025: Complete Guide to Cline and Cursor - Cline Blog)。.clinerulesを使えばかなり詳細なプロジェクト規約まで反映できますし、AIがそれを忠実に守ってくれるので大規模プロジェクトや学習目的でも力を発揮します (Cline - Autonomous Coding Agent for VSCode)。じっくりコード品質を高めたいときや、プロジェクトの設計思想を浸透させたいときにはClineを選ぶと良いでしょう。
RooCode: Clineをベースに強化された先進的なツールで、モード切替による柔軟なAI活用が可能です (DeepSeek R1 Impact: AI Advancements and RooCode Introduction | GoTranscript)。複数の役割をAIに担わせたい場合(例:ある時はテスト自動生成AI、またある時はドキュメント執筆AIとして振る舞わせる)に適しています。初心者にとってRooCodeの豊富な機能は少し複雑に感じるかもしれませんが、基本はClineと同じなので徐々に試してみてください。プロジェクトが成長し、多面的なサポートをAIに求めるようになったらRooCodeへの移行を検討してもよいでしょう。
次に、初心者におすすめのルール設定についてです。最初からあれもこれもと盛り込みすぎると混乱してしまうため、まずはシンプルなルールから始めることを推奨します。具体的には以下のような内容が取り組みやすいでしょう。
コードスタイルに関する基本ルール: インデントのスペース/タブの使い方、波括弧の位置、命名規則(キャメルケースかスネークケースか)など、統一したいスタイルを1つか2つ決めてルール化します。
エラー処理やログ出力の方針: 例として「全ての関数でエラーを適切にキャッチし、ログに出力する」といったプロジェクトのエラー処理方針を入れておくと、AIがエラーハンドリングの抜け漏れを防いでくれます。
コメントやドキュメント: 「公開する関数にはDocstring(またはJSDocなど)形式のコメントを書く」「重要なクラスには冒頭に説明コメントを付ける」等、コードに対するドキュメンテーションのルールも初心者にとって良い練習になります。
まずはこれら基本的なルールを数項目、.cursorrulesや.clinerulesに書いて動かしてみましょう。実際にAIがどのように応答や提案を変えてくるか体験し、物足りない部分があればルールを追加・修正していけばOKです。一度に完璧なルールを作る必要はありません。明確で簡潔なルールから始め、徐々に改善することがコツです (Prompt Engineering Guide | Cline)。ルールを書いた後は、その効果を確かめながら必要に応じて微調整してみてください (Prompt Engineering Guide | Cline)。
最後に、これからのAIコードアシスタント活用のヒントです。AIアシスタントは日進月歩で進化しており、新しい機能やベストプラクティスが次々と登場しています。公式ドキュメントやコミュニティフォーラム(例えばCursorやClineのフォーラム、GitHubリポジトリのDiscussions、Discordコミュニティなど)では、他の開発者が工夫したルール設定やモードの共有が行われています (GitHub - RooVetGit/Roo-Code: Roo Code (prev. Roo Cline) is an AI-powered autonomous coding agent that lives in your editor.)。そうした情報源も積極的に活用すると良いでしょう。また、自分のプロジェクトで得られた知見(「こういうルールを書いたらAIの提案が劇的に良くなった!」等)があれば是非チーム内やコミュニティで共有してみてください。AIと人間の協調作業は、ツールを正しく使いこなすことでより良い成果を生み出します。ルール設定という手綱を上手に握り、CursorやCline、RooCodeをあなたの理想のコーディングパートナーへと育てていってください。きっとコーディングが今まで以上に楽しく効率的になるはずです。 (Prompt Engineering Guide | Cline) (Prompt Engineering Guide | Cline)