2025大卒加入選手の紹介 ー鷲見 星河:その潜在能力は、雉を加速させる推進力となるかー
こんにちは。うにがしらです。
大卒新人の3人目は、鷲見選手です。
1月に急遽加入が決まったわけですが、おそらくは、実績よりもポテンシャルを高く評価されていると思われる選手であり、先に紹介した2名とは、少し立ち位置が異なると思われます。後述の記事の中でも触れますが、良い意味でも悪い意味でも「よく獲れた(獲った)」という存在でしょう。
ただ一方で、ここ近年のトレンドやファジアーノの補強戦略の方針に非常にマッチした選手であり、うにがしらとしては、チームにドンピシャでフィットして欲しいという期待を込めているプレイヤーです。
それでは、紹介を始めます。
1.基本情報
早速ですが、基本情報と実績です。
・名前:鷲見 星河(すみ せいが)
・身長:187cm
・体重:80㎏
・利足:右
・ポジション:CB・SB(DF) ※MFの出場経験あり
最初に目を引くのは、やはり身体の大きさ。
身長187cm体重80㎏。選手の大型化が進んでいる日本サッカーの中でも間違いなく「身体が大きい」選手です。
実際にピッチで見ると、その存在感は非常に大きいですし、ファジアーノ岡山のホームページでも、次のように紹介されていて期待が高まります。
特長 :スピードと身体能力の高さを活かしたダイナミックなプレーが持ち味。複数ポジションをこなし、推進力も備える。
ただし出場機会などを見ると、近年の大卒加入選手とは、かなり傾向が異なります。
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まず、目につくのは、リーグ戦での出場機会が少ない(1部のリーグ戦のメンバーに入れているだけでもすごいのですが、あえてこのように表現します。)ことでしょう。強豪の明治大学で、選手層の厚さ、そして後述の(おそらくは)怪我の影響もあって、おそらくJリーグ60クラブの大卒新人を並べて見渡した場合、少ない部類になると思います。
上記の表では表し切れていませんが、鷲見選手は、リーグ戦でも短時間での出場が多いため、出場時間で見れば、さらに少ない部類になると思われます。この点は、ネガティブに見える点です。
しかし、一方で
① 1年生からリーグ戦の出場機会を得ている
② 大学時の全国大会での起用頻度は高い
③ 高校時の年代別代表には、高1で飛び級で選ばれている
という特徴もあります。
ここから、その時々の指揮官が「どうにか起用したい」と考えていた選手であることも推測されるのです。
X(旧Twitter)の育成年代に詳しそうなアカウントの方々を見ていても、鷲見選手は、大学の有力選手として名前を上げており、やはり人を惹きつけるものを持っていると言えるでしょう。
大型のCB(あるいは中盤)として活躍できる選手は、絶対数が少ない。
J1に挑むにあたり、井川空選手に期待されていた役割を埋めつつも、さらにプラスを…ということを期待しての採用だったのではないでしょうか。
中盤から後ろの大型化が進む流れにマッチし、年代別代表の経験もある。前回の家坂選手の記事で記載した、「採用基準」に沿った選手であると言えるでしょう。ちなみに鷲見選手、名古屋ユースで主将を務めていたそうな。おぉ、ファジ基準。
2.ポリバレント性を支える能力とは
基本的なポジションは、高校から務めているCB…なのでしょうが、適正ポジションが読みづらい選手です。
明治大学では、大学2・3年では右SBを、大学4年は、ボランチやトップ下での出場がメインでした。
キャンプに入った現在(2025年1月時点)は、真ん中や右のCBを務めているようですね。
間違いなくポリバレント性を備えているのですが、それを支えているのは、
① 足元の技術の確かさ
② 視野の広さ
という、2つの能力だと思います。
①については、いわゆる「止める・蹴る」が、とても基本に忠実に見えます。驚くようなボールの扱いは無いですが、味方のパスを受けたときに自分の懐に上手く置いており、グラウンダーのインサイドキックの回転が綺麗。そういった所がボールを持った時の落ち着いた振る舞いにつながっていると思われます。
そして②については、中盤に入った際に、味方にパスを出す方向を指示する場面が見られることや、アシストや得点の場面が「身体能力より、位置取りの良さによる」ものであることから、推測されるのです。
身体能力についても、先ほど引用したファジのホームページに引用した通り。ただ、スピードについては、おそらく初速よりは加速後の最高速が速いタイプなのかなと思います。身体の大きさも相まって、個人的にはあまりスピードを感じないのですが、プレーを観ていると「よーい、ドン!」より後追いで追いつく場面の方が多いかなと。その点で相手への寄せには、まだ課題があるように見えます。
ただ、寄せきった後は、身体の大きさ+本職CBの技術でいわゆる勝確。ルカオ選手クラスでなければ、負けることはないでしょう。
もう一つ、鷲見選手を観ていて面白いなと思うのは、ピッチ上でのコミュニケーション能力が高そうな点です。味方への声掛けもそうなのですが、ファウルなどでプレーが止まり、レフリーと相手選手が集まっている場所に、積極的に自分から行っている場面が、結構見られるなと。本人が何をしているのかは、推測するしかありませんが、コミュニケーションと情報収集は欠かさないタイプであるように見えます。
3.適正ポジションはどこか…そして思い浮かぶ「あの選手」
さて、上記のように良いところが多く見られるため「あれもこれも任せてみたい!」と思わせるプレイヤーなのですが、個人的には、慎重にキャリアを積んでいってほしい思いがあります。
先に「(おそらく)怪我の影響もあって、リーグの出場機会と出場時間が少ない」と書いたのですが、ここが本人およびファジアーノにとってネックになりそうだからです。
今まで紹介してきた選手で、怪我については、ほぼ必ず触れてきていますが、身体が大きいとその分ダメージが大きくなる印象があるので、この点は心配な点です。
今のところ、キャンプでも練習および練習試合に参加(さらに得点も取っている)できているようなので、このまま順調に開幕に向けて進んで行ってほしいです。
また、もう一つ心配な点は、やはり「どこで使われるか」でしょう。ここまで「本職CB」と書いてきましたが、うにがしらは、鷲見選手のCBでのプレーを観たことがありません。この後、ご紹介するプレー動画も中盤が多いです。そういったところから、藤井選手とは、またちょっと違った角度で「どこで使われるのが最適なんだろう?」という思いがあります。
先日、X(旧Twitter)で育成年代のサッカーに詳しいと思われる方が、鷲見選手について「ポテンシャルはある。ただ掴みどころがない。」という趣旨のポストをされていました。
これを見たときに、うにがしらには、「あ!」っとなって、鷲見選手とある選手の姿が重なりました。
それは、塚川孝輝選手です。
実は塚川選手も、関東大学リーグの出場はそんなに多くない選手でした。しかしその中でデンチャレに2回選抜。ポテンシャルを高く評価されていたことがうかがわれます。
「大型の本職CBでポテンシャルを評価された掴みどころのない選手」という輪郭を持った2人。塚川選手は、CBだけでなく、ボランチ、STでも出場し、2017・2018の岡山の中心となりました。
コンディションが整えば、そのフィジカルは、間違いなく計算でき、柳育崇選手、ルカオ選手、立田選手達と肩を並べられる存在でしょう。
そして、そのポジションの最適解はどこか。
鷲見選手のキャリアは、どのようなものになるでしょうか。
4.鷲見選手のプレーを確認したい!という人に
次の3つをおススメします。
①2023 関東大学サッカーリーグ戦《1部第1節》東海大学vs明治大学
前半のみ4-4-2の右SBで出場。
本文に書いた、「ボールを落ち着いて持てる」部分が確認できます。
②2024 関東大学サッカーリーグ戦 1部 第9節 明治大学 vs 筑波大学
おそらく4-3-3のIHでスタートした試合。
先制点をアシストしたスルーパスは見事。
DFラインまで落ちて、ドリブルでボールを持ち上がるといった器用さが確認できます。
③2024 関東大学サッカーリーグ戦 1部 第13節 筑波大学vs明治大学
おそらく3-4-1-2のトップ下。
開始早々に相手PAに侵入してのPK獲得(PKは止められる)や、アシストが見られます。
5.おわりに ーと言いながら、長めの考察などー
先にも書いた通り、鷲見選手が加入したことは、うにがしらにとって嬉しいサプライズでした。
鷲見選手が高い能力を持っていることは、記事の中で感じ取っていただけると思いますし、そのキャリアは、本来であれば名古屋への帰還が順当であったでしょう。
しかし名古屋は、「高身長のボランチ」として、同じく名古屋ユース出身で大学屈指の人材である筑波大学3年生の加藤 玄選手を2025シーズンのメンバーとして迎え入れました。
期待度の高さがあるとはいえ、鷲見選手は、リーグ戦での出場時間の短さや2026の変則シーズンとの絡みを考えると、他のチームからは声をかけづらい存在であったのかもしれません。
その中でファジは、チームの骨格をほぼ作れた中で、そのポテンシャルに賭けることができる立場であったと思われます。
全てうにがしらの想像ではありますが、鷲見選手は、様々なめぐり合わせによって、ファジアーノに加入したと思える存在なのです。
うにがしらは、鷲見選手の加入が決まるまで、「高身長のボランチを務められる人材を獲得できないだろうか」と、考えていました。
高身長で足元がある選手は、ここ数年はJ1ですら稀であり、そういった選手は、すでに海外に行ったり、さらには日本代表だったりするわけですが、それだけに獲得できると、やはり戦力的に大きいことは間違いありません。
また、少し横道に逸れますが、2024の大学の全国大会を見ていると、トレンドとまでは言えなくとも、「CBは身長を犠牲にしてもビルドアップを、中盤は身長の高さとフィジカルの強さを優先する」という組み合わせで戦っているチームが、複数あることに気づきました。
おそらくは、中盤に身長が高くフィジカルが強い選手を持ってくることで、ボールをひっかかりやすくするして相手のパスワークを限定するとともに、自分たちは、中盤(中央)では奪われにくく、かつ最後尾からの選択肢を増やすという効果が期待できるのでしょう。
学生とプロは異なるとは言え、ここ数年で高身長の中盤の戦術的価値は、どんどん高くなっているように見受けられます。Jリーグでは、2024に鹿島アントラーズが、知念慶選手をボランチにコンバートし話題になりました。そしてこのことは、ファジアーノが2024に藤田息吹選手や竹内涼選手を、2025に藤井海和選手を獲得できたことと間接的に関わっているようにも思うのです。
鷲見選手が、ファジアーノで中盤を務めるかどうかは、まだわかりません。しかし、その選択肢を持っているか持っていないかは、チームとって大きな違いのはず。
多くの人に期待されたポテンシャルを、雉の新たな推進力に。
そして、今年加入した3人がファジアーノの歴史を引き継ぎ、新しいものを加えていく。そんなストーリーを期待したいですね。
いよいよ2025シーズンの開幕が迫ってきました!
さて、次回ですが…一昨年からトライしている他チームの大卒選手の紹介をしたいという思いがありつつ、ちょっと厳しいかもなどと…ごにょごにょ…。
ちょいと、おいおい考えます。
それでは、また!