初スキーの思い出
最近は新しいことを始めてみているんだけど
みなさんご存知の通り、始めたばかりのことはぶち当たる壁の多さが尋常じゃない、そしてとても初歩的なところでつまずくので、始めるきっかけとなった魅力的な部分に全然辿り着けない。
生地の分厚い肉まん、具の少ないおにぎり、分布に偏りのあるクリームパンみたいに、具を食べたいのに外側ばっかり食べて
そして美味しいところが出てくる前に手に持つのさえやめてしまう。
世の中の人は、美味しいところに辿り着けるように食べ続けたり、ある程度までは下調べをしておいたりするらしい。
私はそういった努力を始める前に自分に言い訳をする
「この具、実はそんなに美味しくないんじゃないかな」
頑張らないといけないポイントは何をするにしてもすると思う。それも分かってはいるけど、義務じゃないことからはつい逃げてしまう。
私はこういう壁を今まで超えられたことがないんじゃないか
そう思ってた
この前、親と話してたときにたまたまスキーの話になって初めてスキーをしたときのことを思いだした。
小学生のころ、たぶん4年生くらい。親に連れられて初めてスキー場に行った。初めてリフトに乗って、ちょっと怖いけどウキウキした気がする。コースの一番上まで上がった。リフトを降りた後は止まれなくて柵につっこんだ。これが私の初滑りだ。
山の下の方を見たら急な感じがして怖かったし、板履いて雪の上に立つのが初めてだった私はビビリ散らかしてへっぴり腰で踏ん張って立ってるのがやっとだった。最初は、親の腰に掴まってついていくように滑ったけど全然うまくいかない。一人でやってみたときも「ハの字にするんだよ」って言われて前を開いたハの字を作って股割り状態になったり、ちゃんとハの字にしても止まらなかったりして、すぐ体勢を崩して何回もこけた。全然滑れてないのに、親は一通り教えたら「下で待ってるから」と行ってスイスイ滑って行ってしまった。
取り残された私は、親と練習したように、斜面をできるだけ横向きにゆっくり滑ってみた。けど人工雪だったからかコースの脇が低くなってて、勝手に加速して脇の柵みたいなのにつっこんでしまう。手前で止まれてもターンできない。一つ一つの動作を命懸けレベルの慎重さでやってた。やっと立っても少し移動してまたこけてを繰り返した。冷たいし、体中痛いし、泣きたいくらいつらかったけど寒すぎて涙が出なかった。コースの端でこけたときにスキーが上手そうなおじさんがスーッと滑ってきて手をかしてくれようとしたけど立つのが怖くて大丈夫ですって言った、なんだか恥ずかしくなった。
なんとか下まで降りきって親を探してたら親は私より後ろから滑り降りてきて目の前で両足を揃えてかっこよくジュッと止まった。私が遅すぎてもう一周してたらしい。本当はもっと行ってたのかもしれない。
「もう帰りたい」
親にそう言うと少し早いご飯になった。親はこれまで行ったスキー場の話とかスキー場でみんなでビールを飲んだ思い出とかを話してくれた。ちょっと羨ましかった。スキー場には本当は夕方に迎えの車が来るはずだったけど、14時くらいには来てもらうようにしてくれた。
ご飯を食べ終わると「車の時間までまだあるから滑ったら?」って言ってくれたけど、リフトには怖くて乗れなかった。親は一人でリフトに乗って行った。
それから私はコースの端っこを自力で少し上がって、滑り降りてを繰り返した。スキーはつらくて怖かったけど上手になりたかった。私も両足でジュッて止まりたいと思った。
何回もやってたらだんだんコツが掴めてきて、変なこけ方はしなくなった。滑れると気持ちよくて、もう少し登ってみようとさっきより少し高いところから滑り始めるようになった。こうして滑る距離も徐々に長くなった。
14時ごろ、私はコースの半分くらいまで上がって滑れるようになっていた。滑るのがすごく楽しくて、できなかったことを克服できていることにもぞくぞくしていた気がする。そのうちに親が呼びに来てこれで最後ねって言うから「えー、もう帰るの」と答えた。
この日のことはしっかりと覚えてる。
達成というのはそれほどまでに強烈な体験なのかもしれない。
小学生の私が壁を超えられたなら、今の私もきっと。