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伊那谷サマースクールを振り返る Part1 ~メンバー座談会~

2019年8月5日(月) ・ 6日(火)に長野県上伊那郡(通称「伊那谷」地域)箕輪町にて、地域の高校生を対象にした「伊那谷サマースクール in みのわ 2019」をUnicul主催で開催しました。

noteでは2回に分けて伊那谷サマースクールの裏側を公開していきたいと思います。Part1では準備から当日に至るまでの運営メンバーのリアルな想いを、中心運営メンバーの座談会を通じてお伝えしていきます!

実施内容は開催報告という形でこちらにまとめておりますので、合わせてご覧ください!

2019年度伊那谷サマースクール 運営メンバー
プロジェクトリーダー 亀山 奈那子
サブリーダー 堀内 美樹
参加者担当 上山 航矢


ーーまずは伊那谷サマースクール、お疲れさまでした!
3人はそれぞれ、どのような経緯で伊那谷サマースクールの企画運営に参加したのでしょうか?

亀山:私は2018年春からUniculに所属しており、2018年度の伊那谷サマースクールにも当日スタッフとして参加しました。その際に、高校生のワークショップに取り組む姿勢や地域の方々の温かさから、この地域に強い魅力を感じ、今年度もこの地域で活動をしたいと思い運営への参加を希望しました。

堀内:私はTwitterでUniculのアカウントにフォローされて、フォローを返したらお誘いのDMが届いたのがきっかけです(笑)ちょうど教育関係のイベントに参加して感想をツイートしていたところ、Uniculのメンバーの目に止まったそうです。

上山:僕も堀内さんと同じで、Twitterで地元の「伊那谷」というワードが目に入り、企画の存在を知って応募しました。

ーーなるほど。Twitterの影響力強いですね(笑)では、サマースクールの運営にあたっては、どのような動機や想いをもって参加していたのでしょうか?

亀山:私自身、高校時代の進路選択を後悔していて、大学入学後もとても苦しい思いをしました。高校生が同じ苦しい思いをしなくていいように自分自身の経験を伝えることこそが自分の存在意義なのではないかと思い、活動に参加しました。

堀内:私はこれまでも様々なNPOや学生団体で多方面から教育に関わってきて、将来、公教育におけるキャリア教育のあり方を変えたいという想いがありました。そのために、キャリア教育に力を入れている地域の取り組みを学び、自分の経験として落とし込みたいと考え、参加しました。

上山:僕は伊那の出身で、このサマースクールの運営を通して、自分が感じていた地域の教育に関する問題について見直し、考えていきたいと思い、参加しました。

ーーサマースクールの開催を通じて、高校生や社会に対して、どんな風になってほしいと考えていたのでしょうか?

堀内:進路選択にあたって、偏差値や周囲の傾向だけが判断軸になってほしくないという思いがありました。私も高校時代は「大学進学は当たり前」「偏差値の高い大学に行くべき」といった考え方を疑うことなく受け入れていましたが、そうではなく、なぜ自分は大学に行きたいのか、自分がやりたいことはどの学部で学べるのか・そもそもどんなことを学びたいと思っているのか など「自分」に矢印を向けて考えることが重要だと思います。周りに流されずに自分が納得のいく意思決定をしてほしい、「大人って楽しそう」という、将来に対するポジティブなイメージ(希望)を持ってほしいと考えました。
「仕事は大変」というイメージが先行して、働くことが億劫になっている高校生も多いと思います。ゲストや大学生との出会いを通じてそのイメージが少しでも変化したら嬉しいな、と思っていました。

上山:僕自身の経験から、高校までは「問題を解くこと」がメインですが、大学では「問題を発見すること」がメインになると実感しました。高校生が大学に行く意味を考えて、大学はゴールではなく通過点であることを理解してもらえる機会になるとよいと思っていました。そして、僕自身が”夢”や”やりたいこと”を実行できず悔しい思いをした経験から、実行することの大切さを高校生に伝えたいと考えていました。

亀山: やみくもに勉強するのではなく、自分のやりたいこと、大切にしたいことに気づいて、進路選択をできるようになってほしいというのが私の願いでした。特に、進路を決める手段が分からない子にその方法や手段を教えたいと思っていました。また、進学に対して前向きでない子にも、自分の将来について考え直してみて、将来が変わったり豊かになったりする可能性を秘めていることに気づいてほしいと考えました。


ーー様々な想いを胸にメンバーが集まっていたんですね。2月末から準備を始めていたということですが、約半年に渡る準備期間はいかがでしたか?壁にぶつかることもあったでしょうか。

上山:正直大変でした(笑)2日間のプログラムを組むのにこんなにも多くの時間と労力が必要なのかと思い知らされましたね。その中でも特に参加者の募集に頭を悩ませました。高校生と直接話すことでサマースクールの意義を理解してもらおうと、地元の高校で説明会を何度か開催しましたが、参加者は2、3人…サマースクールに参加してもらうための前段階で躓いてしまったんです。

堀内: 「どうすれば高校生は参加したいと思うのか」を考え続け、高校でのチラシ配布・説明会の実施、SNSを通じた広報などを行ってきたものの、応募者はなかなか集まらず…私たちが発信してきた内容は参加に至る動機にはならなかったのではないかと考えると、要因は一概には言えませんが、そこから自分たちの企画における課題と同時に現在の社会における課題がよりリアルに見えたように思います。また、当日が近づくにつれて焦りもあり、また考えるほど自分に自信がなくなってしまいました。とにかく当日良いものが届けられるのかと不安でした。

亀山:チームで活動を進めるにあたっても本当にたくさんの壁がありました。全員が違う大学でバイトや他の活動も忙しく、なかなかじっくり集まれる時間がありませんでした。十分に対話できないまま、メンバーが辞めてしまった苦い経験もあります。特に直前の1ヶ月は皆が大学のテスト期間で忙しい中、少ない人数で、連日深夜や明け方までワーク作成や積み重なるタスクを必死にこなし、苦しい日々でした。

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▲前日の最終確認の様子。1日目終了後の反省会は明け方まで及びました

ーーそのような不安や苦しさをどのように乗り越えたのですか?


堀内: 事前に100%準備していくことは不可能なので、いかにできる限りの想定や準備をして当日に臨むかが大事だと考え、その上で柔軟に対応するしかない、と思うことで前向きに捉えられるようになりました。
また、告知を兼ねて高校でワークショップをやらせていただいた際、実際に高校生を目の前にすることでプログラムづくりによりやりがいを感じることができました。それまで高校生の顔が見えない中でプログラムを作っていましたが、実際に会い、コミュニケーションできたことで、私は「この人たちに届けたいプログラムを作ってるんだ」とより頑張りたいという気持ちになりました。

亀山: プログラムの価値を届けたい相手をイメージすることは私も意識していました。積み重なるタスク、リーダーとして指示を出す難しさ、責任などから、サマースクールへの想いを意識することができず、ただただタスクをこなしている時もありました。しかし自分がなぜこの企画をしたいのかという想いを確認し続けることにより、企画を行う上での不安や苦しさが軽くなったように思います。
待ちに待った1人目の応募が来たときの感動と、怒涛のようにslack上で流れる喜びの声は忘れられません(笑)

上山:1人、また1人と応募が来るたびに本当に嬉しくて、お祭り騒ぎでしたね(笑)

堀内:あとは、さっき亀ちゃんが話していたチームに関して。私自身、サマースクールを「メンバーの成長機会にもしたい」という気持ちを当初から強く抱いていました。忙しいなかでどうモチベーションを維持するか...チーム全体がより良い方向に向かうためにはどうしたら良いか... どうしても諦めたくなくて、何度も立ち止まって話し合いました。正直なところ「最高のチーム状態」とまでは言えませんが、当時の最善はやり尽くしたと思います。

亀山:個別で話をしたり、ミーティングで時間をとって話したりと、チームづくりで悩んだ場面を思い出しますね。大変な過程の中でも、得意なこと・苦手なことでタスクを分担したり、お互いに補い合いながら創り上げるやりがいを感じたりしました。こうして試行錯誤の中でもチームワークが発揮できたときは嬉しかったです。

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▲2日間、一緒に運営した大学生メンバー全員での1枚!

ーー大変な準備を乗り越え迎えたサマースクール。高校生はどんな様子でしたか?

亀山:高校生は悩みながらも本当に一生懸命に自分の将来と向き合っていました。この2日間だけですぐに自分自身のやりたいことが見つかるわけではないと思いますが、これほどしっかり考え抜いて自分自身と向き合えたことは本当に素晴らしく、将来について考える良い機会になったのではないかと思います。

堀内:高校生一人一人がその人なりの価値を持ち帰ってくれたと感じました。「これが大事だよ!」という運営メンバーからのメッセージよりも、それぞれの高校生が自分自身でワークに取り組む過程で感じた喜びや葛藤が心に残ったのではないかと、感想を聞いて思いました。
特に印象的だったのは高校生の表情や姿勢の変化です。最初は緊張気味でしたが、1日目の終わりや2日目には笑顔が見られ、自分から大学生に話してくれるようになりました。1日目の振り返りと2日目の準備を朝方までやった甲斐がありました(笑)

上山:高校生が苦戦しながらも自分と向き合って、やりたいことがほんの少しでも見えた時の表情が本当に印象的で、感動しました。今回は初対面の大学生という、近すぎず遠すぎない「ナナメ」の存在だからこそ、高校生が自分自身としっかりと向き合えたのではないかと思います。
僕がいちばん伝えたかったのは、「無人島Quest」ワークショップで考えた夢を達成するまでの過程を頭において生活してほしいということでした。今後夢が変わったとしても、夢を叶えるために今を大事にしてほしい、と思います。


ーー参加当初の想いを振り返って、今回のサマースクールはどのようなものになったと思いますか?


堀内:私が参加した当初の思いは、コンセプトやプログラムにたっぷりと盛り込むことができました。高校生のうちにはなかなか親や親戚、学校の先生以外の大人に出逢う機会がありません。今回のサマースクールでは様々な大学・学部に通う大学生や社会人と出逢い、新しい人生観や価値観に触れることができたのではないかと思います。実際にゲストの方々は、私自身も「こんな生き方かっこいい!」と思うような素敵な大人の方々でした。WS後には「自分には無い新しい考え」などの感想を持つ高校生もいて、このような場を設けられて良かったと思いました。

上山:地域の方々の支えがあって成り立ったサマースクールであったと感じています。開催に向けて協力してくださったみなさんに感謝の気持ちでいっぱいです。また、熱い想いを持った高校生や大人の方々が地元にいることがサマースクールを通して初めて分かり、地域への想いが一層強まりました。

亀山:自分の将来について一緒に考えてくれる大学生の存在はきっと高校生にとって大きなものだったと思います。一緒に考えてくれる人がいることで、確実に高校生が将来について考えることのハードルが下がったと思います。これはキャリア教育の理想的な在り方なのかもしれないと思いました。

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▲最終日、集合写真を撮った後も、別れが名残惜しくて、ずっとみんなで他愛ない話をしていました


ーー今回のサマースクールを通して感じた課題はありますでしょうか?


堀内:この二日間に間違いなく価値はあったとは思いますが、それが本当に持続可能な価値なのか、という点は問い続けなければいけないと思っています。私たち大学生は、ずっと高校生のそばにいることもできないし、高校生は忙しい学校生活の中で、ここで得た気づきや想いが薄れていってしまうかもしれません。サマースクールのような単発の機会はどこか非日常で、キラキラした感想を持ちがちなんですが、それでは意味がないと思います。サマースクールでの学びをきちんと今後の人生に活かせるような仕組みをつくれたらと思います。
そして、やっぱりもっと多くの人に届けたい!参加してくれた高校生はまだまだ少ないのが実情です。興味がない人はなぜ興味がないのか、キャリア教育に価値を感じていないのか、企画自体に魅力が足りないのか。しっかりと考えて次年度以降のプログラムづくりに引き継ぎたいと思います。

亀山:参加者募集に苦労して、高校生がこのようなキャリア教育の企画に自発的に参加するのは難しいと改めて感じました。保護者の方や先生の後押しが必要で、もっと保護者の方や先生にも価値を感じていただく必要があると感じました。「キャリア教育」という単語から高校生が抱くイメージや、役に立ちそうな実感を感じさせるような内容にできなかったかもしれない、というのは反省点です。


ーー今回のサマースクールを終えて、良かった点と今後に向けての課題があったと思いますが、最後に6カ月に渡る準備、そしてサマースクールを終えたみなさんの感想を教えてください。


上山:達成感はありましたが、一方で、準備期間にもっと色々なことができていれば本当の達成感を味わえたのではないか、とも思います。2日間にかけた期間は本当に大変だったけれど、それでも2日間では足りないなとも感じました。準備期間は、半年間とは思えないほど長く、成長できた時間でした。また地元でこのような企画ができる機会があれば、今回のサマースクールに負けないくらいのものをつくりたいと思います。


堀内:高校生が出逢う大人から気づきを得るように、私自身も出逢う高校生から得られる気づきや学びがありました。特に「かかわり方」「あり方」の気づきが多かったです。高校生の中から出てくる言葉を待ったり、引き出そうとするものの、どうしても自分が思う正解に先回りして導こうとしてしまい、自分の発言を悔やむこともありました。しかし、そうした一つひとつの出逢いや、やりとりの場面を重ねて「本当にありたい自分」を考えることを通じて、自分が洗練されていく感覚があり、非常にやりがいを感じました。
また、自分が価値を「与えている」という考えではなく、お互いにとって学びになっている状態が、対等で居心地がよいと感じました。今後も「教育」に関わる上で、今回のサマースクールでの出逢いも大きな糧になりました。


亀山:高校生と将来について一緒に考えることは、高校生にとって、そして私にとっても貴重な機会であると実感しました。
やりたいことが分からないという高校生は多いです。好きなこととやってみたいことは違うと感じる子もいれば、やりたいことを口に出すことに恐怖心を覚える子もいます。どうやったらその恐怖心を解くことができるのか。私自身も高校時代は見つからず、大学受験の苦しい経験から問題意識が見え、やりたいことが少しずつ分かるようになりました。
高校生の時にやりたいと思ったことを必ずしもやらなくてもよくて、でも何となく進路を決めてしまうと後悔する、と思っています。何か根拠を持って、そしてそれをちゃんと自分が理解して、進路を決める必要があるということを伝えられていれば、今回開催した意義があったかなと思います。
より多くの高校生に、より有意義な時間を提供するために、キャリア教育はどうあるべきなのかをこれからも考えていきたいと思います。

ーーありがとうございました!!

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★Part2では「サマースクールの意義と課題」というテーマで記事をお届け予定です!どうぞお楽しみに!


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