【東京トラベルパートナーズ】高齢者の旅の願いを叶える新たなサービスとは
日本は急速な高齢化が進んでいますが、このような超高齢社会において高齢者のQOL(生活の質)向上は重要な課題になっています。その解決策としていま、「旅行」が持つ可能性に注目が集まっています。
話題のスタートアップを取り上げ、スタートアップへの転職活動のお役に立つ情報をお届けしています。
今回は、東京トラベルパートナーズ 。「すべての人が旅行を気軽に楽しめる社会へ」というビジョンを掲げ、従来の旅行会社の枠を超え、高齢者のニーズにきめ細かく対応したサービスを提供しています。
革新的なサービスをどうやって実現しているのか。
採用する人材、そして起業参謀の「5つの眼」のフレームワークを用いて事業を分析し、その成功要因を探ります。
▼東京トラベルパートナーズとは
東京トラベルパートナーズ株式会社は、「いい時間(とき)をつくる」という理念を掲げるシマダグループに属するスタートアップです。短期滞在型宿泊施設から介護施設まで、人生のあらゆる段階に寄り添うサービスを提供してきた事業をもとに、2016年に設立されました。
代表取締役の栗原茂行氏は、車いす利用者やハンディキャップを持つ方々も気軽に旅行を楽しめる社会を目指し、介護施設利用者の「旅行に行きたい」という声をきっかけに「旅介(たびすけ)」という旅行サービスを立ち上げました。同社は、高齢者のニーズを理解し、安全かつ快適な旅行を実現するための革新的なソリューションを提供しています。
▼東京トラベルパートナーズの社風
「協力」と「共感」を重視。社員は高齢者の視点を深く理解するための研修や、チームビルディング活動に積極的に取り組んでいます。社員たちは「高齢者の笑顔を見られること」をやりがいと感じており、旅行を通じて社会貢献を実感できることが魅力とこたえています。
▼東京トラベルパートナーズの主要サービス
代表的なサービス「旅介」は、リアルツアー事業として、介護福祉士資格を持つ添乗員を配置し、身体的なサポートを必要とする旅行者でも安心して参加できるツアーを提供しています。
また、バーチャルツアー事業として、オンラインで旅行体験を楽しめる「旅介ちゃんねる」や「旅介TV™」は、コロナ禍から高齢者層から高い評価を得ていました。
そして、ユニバーサルツアーとして、2025年4月から開催される大阪・関西万博のツアー企画を目玉サービスとして、各方面から熱い注目を集めています。
▼5つの眼で見る東京トラベルパートナーズのビジネスモデル
ここでは、東京トラベルパートナーズの事業を客観的にみていきます。
「鳥の眼」:市場全体を見据えた戦略
-高齢者向け旅行市場の成長性
日本の高齢化を背景に成長する高齢者向け旅行市場に着目し、長期的なビジョンを掲げています。2070年には高齢化率が50%近くに達すると予想される中、この分野でケアが必要な方をターゲットにしたサービスで優位性を確保しようとしています。
「虫の眼」:顧客ニーズに応えるサービス
-高齢者の潜在的な旅行ニーズの発掘
高齢者へ丁寧にヒアリングしサービスを開発。例えば、身体的なサポートや心理的な不安を取り除くために、ホスピタリティを持つ人材を揃えています。添乗員には介護福祉士資格取得を推奨し、専門性の向上に努めています。
アキラ100%氏や眠梨桜さんなど、著名人をゲストに迎える際には、単なる知名度ではなく、高齢者への親しみやすさや温かい人柄を重視している点が特徴です。
「魚の眼」:変化を先読みし、新たなサービスを創造する
ーオンラインサービスの需要増加
オンライン旅行体験やVR技術を活用し、高齢者が旅行を楽しめる革新的なサービスを展開してきました。自宅や施設にいながら観光地を訪れる感覚を提供することで、旅行の形を広げています。
-ユニバーサルツーリズムへの貢献
「Let’s EXPO」などのユニバーサルツーリズムプロジェクトにも積極的に参加しています。この分野をリードしていくために、多様性と包容性を重視し、社会貢献意欲の高い人材を採用しています。
「医者の眼」:既存の枠にとらわれない柔軟な発想
高齢者や障がい者が旅行を楽しむ際の「移動の困難さ」「現地のバリア」などの課題に目を向け、それを解消するための具体的な手段(福祉車両、オンラインツアー、訪問先店舗の環境準備など)を提供しています
▼「人の眼」東京トラベルパートナーズの採用・人材募集の状況
-多様な人材ニーズ
旅行業界の経験者だけでなく、介護福祉士や看護師、ボランティア経験者など、多様なバックグラウンドを持つ人材を採用しています。
例えば、「旅介TV™」で健康体操を指導する「ごぼう先生」は、鍼灸師の資格を持ち、介護施設向けに体操教室を開催するなど、高齢者向けの健康指導に豊富な経験を持つ人物です。
-技術革新への対応
オンラインサービスを開発・運営するために、ITスキルやデジタルマーケティングの知識を持つ人材も積極的に採用しています。
ー共感力とコミュニケーション能力
高齢者は、身体的な衰えや病気、孤独感など、様々な課題を抱えています。そのため、高齢者の気持ちに寄り添い、共感しながらコミュニケーションを取れる人材が重要となります。 採用面接においても、応募者の共感力やコミュニケーション能力を重視。
例えば、介護施設でのボランティア経験や、高齢の家族との関わり方などを具体的に質問し、高齢者への理解度を測っています。
▼東京トラベルパートナーズのMOAT
レガシーな業界である旅行業界にあって、
この企業の強みはどこにあるのでしょうか。
Technology/Product
オンラインツアーや動画配信サービスは既存の映像配信技術やオンライン会議システム等を活用したサービス形態ですが、VR活用やオンライン配信による高齢者向け体験提供など、ユーザビリティ・企画面での工夫が見られます。模倣困難性に関しては技術的よりもサービス設計・運営ノウハウ面が特徴と考えられます。
Data/Market Insight
高齢者を対象とした旅行ニーズの掘り起こしや顧客ヒアリング等を通じ、同社は高齢者層の潜在ニーズや好みに関する知見をデータとして蓄積していると考えられます。
Network Effect / Business Relationship
介護施設、自治体、観光事業者、著名人との協業実績を持ち、多様なステークホルダーとの関係性を構築しています。これにより、高齢者向け旅行・オンライン体験領域で一定のビジネスネットワークを有しているといえます。ただし、このネットワークが強固なネットワーク効果(他者が容易に代替困難な状況)を生むかは、今後もトラクションを積み上げていく必要があります。
Strategy
「すべての人が旅行を気軽に楽しめる社会へ」という明確なビジョンを掲げており、高齢化というマクロトレンドと高齢者個々のニーズ(インサイト)に合わせたサービスを展開しています。オンライン化やユニバーサルツーリズムの推進など、時流に沿った戦略をとっています。
Brand/Awareness/Marketing Asset
「旅介」というブランド名での高齢者向け旅行・オンラインツアーサービスは、既に介護施設や福祉関係者の間で一定の認知度があると推測されますが、マーケティングチャネルはイベント出展、オンライン配信、自治体協力等でさらなるPR強化が必要です。
Culture/Team
社内文化として「協力」と「共感」を重視し、高齢者理解やホスピタリティを大切にする風土があり、介護福祉士資格取得推奨など、高齢者向けサービスの専門性確保に努めています。
Operational Excellence
オンラインツアーや介護施設向け旅行企画など、顧客との接点となるフロント領域では、過去の実績(介護施設や観光庁事業への参加、著名人起用)から、一定のノウハウやベストプラクティスが蓄積され、サービスの効率化や品質、顧客満足度に繋げていると推察されます。
▼東京トラベルパートナーズの事業評価
最後に東京トラベルパートナーズをとりまくマーケットの現在と未来について見ていきたいと思います。
現在の市場規模: 5点
(1000億円以上)
今後3~5年の市場成長の見立て: 1点
(2倍以上CAGR15%以下)
市場自体は大きく、高齢者人口は増加しているものの、高齢者(シニア)の旅行需要の見込みには幅があり、購買力の変化、インバウンド回復がシニア市場にどれほど影響を与えるか不確実。3~4%の成長率予測でも楽観的かもしれません。
変化する外部環境との親和性: 5点
(外部環境変化と親和性高い)
高齢者増加は確実で、議論の余地はありません。
支配的なプレーヤーの存在感の低さ: 4点
(10社程度でシェアを争っている)
JTB等の大手旅行会社が依然強固な地位を持ち、知名度やネットワークは強みだが、近年は特定ニーズに応える専門業者やオンラインサービスが市場の多様化を進め、シニア特化サービスでは中小専門業者も増加傾向。現状の顧客が活用している代替案の未充足度: 5点
(代替案の未充足度が非常に大きい)
顧客の多くは一般旅行代理店、オンライン予約サイト、自治体情報を併用し、ケアが必要な方へのサプライヤー側の提供内容や地域、品質、安全性は価格帯で大きく変動し顧客の不満はまだまだ大きいといえる。
総合評価: 20点(25点中)
▼まとめ
【独断!】ズバリ、この会社はおすすめできるか
高齢者の購買力を考えると富裕層を中心にどこまでリテール層まで取り込めるかが課題ではあるものの間違いなく成長市場である高齢者向けの旅行業界において、ケアを必要としている方の目線でサービスを展開していることは特筆すべき事業内容。是非、おすすめしたい。また、シマダグループという母体がしっかりしていることもあるが、社会貢献度の高さも理由としたい。
【独断!】こういう人にチャレンジしてほしい
顧客である高齢者やハンディキャップのある方によいサービスをしたい、寄り添うことに喜びを感じる方に是非、検討いただきたいと思います。
旅行業界が未経験であっても介護や福祉の経験を活かせる環境なので、新たなキャリアを作りたい方にもおすすめしたい。
【編集後記】
人生100年時代。
医療技術の発展も伴って、いづれ多くの人が自身の体の動きなどが鈍くなっても、人生を楽しみたいというニーズは今後、ますます増えていくことになると思われます。支える人も支えられる人も、その時、“旅行”という選択ができることは幸せで豊かであると感じます。是非、サービスの拡充を進めていってほしい。
ライター 山本 智史
※引用参照サイト
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