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【Preferred Networks】190億円資金調達!深層学習で目指せ世界のトップ企業!
「深層学習(ディープラーニング)」という言葉はよく聞きますが、実際のところ、どういうところで利用されているかうまく説明できる人は少ないのではないでしょうか。
例えば、新人のアルバイトさんがバックルームで在庫の場所が分からず右往左往したり、ベテランの指示がないとどこに何を置けば良いのか判断できなかったり。また、24時間稼働の工場では、深夜の交代勤務で眠気と戦いながら、機械のわずかな異常も見逃せない緊張感の中、熟練の技術者しか対応できない複雑な操作に常にプレッシャーを感じている。そして、これらの課題は、小売業界全体の人手不足や人材育成の難しさという深刻な背景があります。そんな課題を解決しつつ、創薬で新薬の候補を高速探索したり、小学生に楽しくプログラミングを教えたり、3Dスキャンで新しい映像体験を作ったり、AIで使う電力を減らしたりする。
そんな企業があったら、あなたの生活はどう変わるでしょうか?未来の産業はどのように進化するでしょうか?実は、そんな企業があるんです!しかも日本企業で!世界を舞台に活躍する、日本の技術力の一つの象徴とも言える企業です。
話題のスタートアップを取り上げ、
スタートアップに馴染みのない方へも
お役に立つ情報をお届けしています。
今回は、深層学習技術の社会実装に挑戦し続ける
株式会社Preferred Networks(以下、PFN)をご紹介します。
起業参謀の「5つの眼」のフレームワークを用いながら事業を分析し、その現在と未来を探ります。
▼Preferred Networksとは
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PFNは、2024年12月23日に190億円の調達を実施したことが大きな話題となりましたが、これは、同社の事業の将来性と技術力に対する市場からの高い評価を受けている証です。経済産業省のJ-Startupプログラムに選出され、日本を代表するディープテック企業として、さらなる成長が期待されている企業です。
共同創業者の西川徹氏(代表取締役社長 最高経営責任者)と岡野原大輔氏(代表取締役副社長 最高技術責任者)は、東京大学大学院情報理工学系研究科の同級生でそれぞれが高度な専門知識を持つ研究者。深層学習の急速な発展とIoTの普及のトレンドの中、これらの技術を組み合わせることでイノベーションを起こせると確信し、2014年に設立。
現在の従業員数は約350名(2024年9月現在)。AIチップ、計算基盤、生成AI基盤モデルなどの開発、ソリューション・プロダクトの提供へと事業を拡大してきました。子会社として材料探索を専門とするPreferred Computational Chemistry、自律移動ロボットの開発・販売を行うPreferred Robotics、マルチモーダル基盤モデルの開発を行うPreferred Elementsがあります。
今回の資金調達はSBIグループなどをリードインベスターとする第三者割当増資と商工組合中央金庫、三井住友銀行、三菱UFJ銀行、りそな銀行といった金融機関からの融資により資金調達を実施しました。今回の資金調達はファーストクローズであり、2025年春頃まで継続される予定。
ある報道機関のレポートでは、PFNの推定評価額は3,000億円を超え、日本におけるユニコーン企業の中で最も高い評価額となったとしています。
トヨタ自動車、ENEOS、NTT、ファナック、日立製作所、中外製薬など、日本を代表する製造業からも出資を受けています。これは、PFNが単なるAI技術開発企業ではなく、社会課題の解決を目指し、産業界との連携を重視していることの表れです。
▼Preferred Networksの社風
この企業の文化は、下記のポリシー行動規範-PFN Valuesーからも推し量れます。行動規範は以下の4つ。
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メンバーが熱意を持って仕事に取り組むことを重視し
常に学び続け、自己成長を追求することを奨励。
自分たちの成果に誇りを持ちつつ、常に謙虚な姿勢で
既存の枠にとらわれず、新しいことに積極的に挑戦する。
かなり考え抜かれた、ボードメンバーの熱い想いが伝わってくる
よいポリシーです。
▼Preferred Networksの主要サービス・製品
PFNは、深層学習技術をコアに、様々な分野で革新的なサービスを提供しています。
まずは、PFNを知るために著名なAi企業と比較してみましょう。
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ディープラーニングの可能性を各産業分野としっかりタッグを組んで進んでいるのが特徴です。
では、どのような取り組みを行っているか。
主要サービスをユースケースと結びつけながら考察していきます。
▼PFNの幅広い事業領域と社会実装
PFNは、AI技術を様々な産業に応用し、社会実装を進めています。
工場・プラント自動化:ファナックとの協業で、産業用ロボットや工作機械にAI技術を導入し、物体認識、制御、異常検知、最適化などを実現しています。また、ENEOSとの協業で、石油化学プラントシステムの自動運転も実現しています。
エンターテインメント:キャラクター生成プラットフォーム「Crypko™」や背景美術制作支援ツール「Scenify™」などを提供し、クリエイターの創作活動を支援しています。また、スマートフォン向けエンターテインメントアプリ「MEMES/ミームズ」も提供しています。
ロボット: 家庭向けロボット「カチャカ」や業務用搬送ロボット「カチャカプロ」などを開発しており、人々の生活を豊かにしています。また、リテール向けロボット「MiseMiseロボット」も開発しています。
小売ソリューション: チェーンストア向け業務改善ソリューション「MiseMise™」を提供し、店舗業務の効率化、売上向上、食品ロス削減などを支援しています。
ヘルスケア: 花王との共同研究で、健康診断項目やライフスタイルなどを網羅的に推定できる統計モデル「仮想人体生成モデル」を開発しています。また、AI創薬技術を用いて、医薬品のリード化合物の探索を高速化しています。
教育: 小学生向けプログラミング教材「Playgram™」を開発し、全国のプログラミング教室で展開しています。Playgram™は、子どもたちが楽しみながらプログラミングを学べるように、ゲームのような世界観で設計されています。また、タイピング練習アプリ「Playgram™ Typing」も提供しており、全国の学校で導入が進んでいます。
▼PFNの技術革新
■AIチップ、計算基盤、生成AIモデル、原子レベルシミュレーター
PFNは、上記のようなサービスを支える基盤技術に対して、常にアップデートを図っています。AI学習を高速化する独自の「MN-Core™」シリーズAIチップを開発し、驚異的な計算効率を実現します。例えば、MN-Coreは「スマホ100台分の処理を電気代わずか1円で」行うことが可能。次世代のMN-Core L1000は、生成AI推論を既存プロセッサーの10倍高速化することを目指しているようです。そして、自社開発のスパコン「MN-3」は、電力効率ランキング「Green500」で世界1位を3度も獲得し、高度な計算基盤を提供します。クラウドサービス「PFCP™」を通じて外部にも利用可能です。
「PLaMo™」は、高品質な学習データを用いた純国産の生成AI基盤モデルであり、主要な日本語ベンチマークで最高レベルの精度を誇り、商用版のPLaMo Primeやエッジ向けのPLaMo Liteを展開。
ENEOSと共同開発した「Matlantis™」は、新素材開発を1万倍以上高速化し、10年かかっていた実験を1日でシミュレーション可能にし、電池材料、半導体、触媒などの分野で、持続可能な社会に貢献しています。
このようにPFNの特徴は、AI技術の理論研究から実用化まで、ソフトウェアとハードウェアの両面で一貫した開発力を持ち、幅広い産業分野でAI技術の社会実装を進めている点です。
▼5つの眼で見るPreferred Networksのビジネスモデル
ここでは、PFNの事業を5つ角度で分析します。
「鳥の眼」:
-多用な分野への挑戦
AI技術、とくに深層学習を強みに持ち、社会課題の解決を目指す企業です。技術開発だけでなく、具体的な製品やソリューションとして事業展開することに注力しています。AI計算基盤の強化に向け、自社開発のプロセッサーやスーパーコンピュータの開発を推進。さらに、国産AIインフラの構築にも取り組み、経済安全保障や持続可能な社会に貢献しています。教育やエンタメ分野にも進出し、AIの普及と人材育成を支援。グローバルな視点で技術開発を進め、国際競争力を高めています。
「虫の眼」:
-顧客ニーズを捉えた取り組み
顧客の現場における課題を深く理解し、具体的な解決策を提供することに注力。特に製造業の具体的な課題に対して、カスタマイズされたソリューションを提供。研究開発から実装まで一気通貫でサポート。顧客との長期的なパートナーシップを重視しています。
「魚の眼」:
ー時代の先読み
市場の変化を敏感に捉え、技術革新を続けています。AIブームの到来を捉え、深層学習技術に特化して成長。国産LLM「PLaMo™」の開発、人手不足対策としてロボット技術や自動化ソリューションは時代の先読みと言える。
「医者の眼」:
ー課題のその奥へ
PFNは、表層的な対応ではなく、各業界の課題を特定し、その根本原因を追求しています。小売業では人手不足や欠品、製造業では不良品のデータ不足、ヘルスケアでは高価な検査機器の問題を指摘、解決策を提示しています。
「人の眼」:
-あくなき技術力向上をもとめて
社員が新技術や事業に挑戦できる環境を提供しています。多様な人材を受け入れ、「死ぬ気で学べ」という文化を醸成し、成長を支援。社会貢献への意識も高めています。経営層も最先端技術を学び続け、社員の成長を促進。社員の声からも、多様な専門性や挑戦する姿勢、高い技術力と社会貢献意識が、モチベーション向上につながっていることがわかります。
このようにPFNは、「5つの眼」の視点から見ても、非常にバランスの取れた企業であると言えます。長期的な視点と短期的な視点を両立させ、市場の変化に柔軟に対応し、現場の課題を深く理解し、社員の成長を重視しています。また、社員の声からも、PFNの企業文化や組織体制が、社員のモチベーション向上や成長に繋がっていることが十分に伺えます。
▼Preferred NetworksのMOAT
同社のMOATを7つの視点で整理します。
Technology/Product
AIチップ開発から生成AIモデル、産業向けソリューションまで、AI技術のバリューチェーン全体を自社で構築。独自開発の省電力AIプロセッサー、スパコン、基盤モデルを軸に、幅広い分野でAIソリューションを展開しています。Data/Market Insight
深層学習技術を核に、各産業分野の専門知識を組み合わせることで独自の競争優位性を確立。顧客の具体的な課題をデータドリブンで解決し、業界特有のニーズに応えています。Network Effect / Business Relationship
トヨタ、ENEOS、ファナックなど、各業界を代表する企業との戦略的パートナーシップを構築。技術開発の加速、資金調達、販路拡大において大きな相乗効果を生み出しています。大手企業のみならず神戸大学、京都薬科大学など、大学との連携を通じて最先端技術の研究開発を推進。Strategy
「AI技術の社会実装を加速させる」ために、AI技術の垂直統合と水平展開を基本戦略に据え、技術革新と事業多角化を推進。社会課題解決とサステナビリティを重視しながら、グローバル市場での成長を目指します。Brand/Awareness/Marketing Asset
スパコン電力効率ランキングでの世界1位獲得など技術力の高さが認知され、AI分野におけるリーディングカンパニーとしての認知度も高いです。 世界的な技術コンペでの受賞や積極的な情報発信と採用活動で、先進的な企業イメージを確立しています。未来のエンジニアを育てるため子供向けのプログラミング教育事業にも注力しています。Culture/Team
「死ぬ気で学べ」を企業理念に掲げ、多様な専門家が切磋琢磨する環境を構築。週次の全社会議やテックトークを通じて、オープンなコミュニケーション文化を醸成しています。挑戦を奨励する独自の企業文化が革新的な技術を生み出す原動力となっており、また世界トップクラスの研究者、エンジニア、各分野の専門家が集まっています。多様なバックグラウンドを持つグローバルなメンバーが活躍。Operational Excellence
自社開発のスパコンと効率的な開発プロセスにより、AI技術の実用化を加速。クラウド活用やデータ管理の最適化で、迅速かつ柔軟な開発体制を実現しています。またスタートアップとしての機動力を活かしスピーディーな意思決定を行っています。
▼Preferred Networksの事業評価
最後にPFNをとりまくマーケットの現在と未来について見ていきたいと思います。
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![](https://assets.st-note.com/img/1738133069-WK23DeCulsmbJL4AMdoXrFhy.png?width=1200)
現在の市場規模: 5点
PFN社が参加している事業は多岐に渡り、参加しているマーケットは非常に幅がありますが40兆円~150兆円とかなり大きな規模となります。今後3~5年の市場成長の見立て: 5点
AIチップ市場、計算基盤市場、生成AI基盤モデル市場、AIソリューション市場ともに高い成長率が見込まれます。変化する外部環境との親和性: 5点
(外部環境変化と親和性高い)
深層学習、生成AIなど、急速に進化しており、新たなビジネスチャンスが次々と生まれています。PFNは、これらの最先端技術の研究開発に注力しており、技術革新を事業成長につなげていまDXの推進、人手不足の深刻化による自動化ソリューションやロボット技術、MN-Core™シリーズは、省電力なAIプロセッサーとして、環境意識や地球温暖化などの環境問題への意識が高まりに対応し、国産技術への期待などすべてが追い風です。
支配的なプレーヤーの存在感の低さ: 4点
(10社程度でシェアを争っている)
■AIチップ市場: NVIDIA、Intel、AMDなどの大手半導体メーカー
計算基盤市場: Amazon Web Services (AWS), Microsoft Azure, Google Cloud Platform (GCP) などの大手クラウドプロバイダー
■生成AI基盤モデル市場: OpenAI、Google、Microsoftなどの大手IT企業
■AIソリューション市場: 幅広い産業分野にわたるため、多くのプレーヤーが存在します。各業界で専門的なノウハウを持つ企業やAI技術に強いスタートアップが競合。
このような状況の中で、PFNは独自開発で存在感を高めています。現状の顧客が活用している代替案の未充足度: 5点
(代替案の未充足度が非常に大きい)
■AIチップ市場:既存の汎用チップ: CPUやGPUは、AI処理に特化していないため、電力効率や処理速度が低い
■海外製AIチップ: 一部の海外製AIチップは高性能ですが、価格が高く、供給も不安定です。
■計算基盤市場:大手クラウドプロバイダーの汎用サービスは、AIワークロードに最適化されていないため、性能やコスト効率が低いという課題
■生成AI基盤モデル市場:海外製LLM: 海外製LLMは、日本語の処理能力が不十分な場合があり、また、日本固有の文化やビジネス慣習に対応できない場合があります。
これらの分析結果から、PFNは、AI技術の進化、脱炭素化、地政学的なリスクの高まりなど、変化する外部環境に対応しながら、独自の強みを活かして成長を続けるポテンシャルを秘めていると言えるでしょう。
総合評価: 24点(25点中)
【編集後記】
今回、誰もが知るPFN社の情報を調べていくほど、改めて多用な事業に取り組んでいることが分かり、皆様にどれだけ圧縮してお伝えできるかという挑戦でした。それほどにもPFNの取り組みが一時期の勢いを完全に失った日本企業の面目躍如につながるものであると確信。産業としっかり結びつき、地に足の着いた重厚な手堅さに否が応でも期待してしまう。今後の活躍に期待したい。
ライター 山本 智史
※引用参照サイト
PFN(Preferred Networks)の企業情報・事業内容に関するURL
PFN公式サイト(会社概要、企業理念など):
https://www.preferred.jp/ja/
https://www.preferred.jp/ja/company/values/
https://www.preferred.jp/ja/contact/
https://www.preferred.jp/ja/news/
https://www.preferred.jp/ja/company/values/
PFNの採用情報:
https://www.preferred.jp/ja/careers/
PFNの技術ブログ:
https://tech.preferred.jp/ja/blog/pfep-launch/
PFNの創薬プロジェクト: * https://projects.preferred.jp/drug-discovery/
PFNの製品・ソリューションに関するURL
MiseMise(リテールソリューション):
misemise.ai/stocking
Playgram(小学生向けプログラミング教材):
https://typing.playgram.jp
https://www.hallo.jp
https://bit.ly/3O5iNIM
https://bit.ly/3JRSkw3
https://bit.ly/3UL9pxH
https://bit.ly/3WSfDfl
https://www.youtube.com/playlist?list=PLZ_hmSrAbvfrLlwmD-YbT_aJxvQlR9bNW
https://bit.ly/44IJUAP
Preferred Networks Visual Inspection(外観検査ソフトウェア)
https://www.preferred.jp/ja/news/
Crypko(キャラクター生成プラットフォーム):
https://crypko.ai/
https://memes.crypko.ai/
さくらインターネットの企業情報:
https://www.sakura.ad.jp/corporate/
Preferred Roboticsの公式サイト:
https://www.pfrobotics.jp/
https://kachaka.life
https://store.kachaka.life
やる気スイッチグループの公式サイト
https://www.yarukiswitch.jp/
https://www.yarukiswitch.jp/fc/
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