【immedio】インバウンド商談獲得自動化SaaS/今後の競争激化へ向けた優位性の維持・強化と未開拓市場への挑戦が成長の鍵
「なめらかな出会い方をデザインし、価値の流通を加速する」というミッションのもと2022年4月1日に設立、2024年7月に3.5億円のシリーズA資金調達を実施した株式会社immedio。B2B企業向けのインバウンドリードから効率的に商談を創出し、受注率の向上を後押しする商談獲得自動化SaaS「immedio」の提供に注力しています。
資料請求やお問い合わせ後のThanksページで即時に日程調整を可能にし、夜間や休日の問い合わせも逃さず商談化する機能が特徴です。
今回は「immedio」について、事業概要やその評価、将来性などについて、著者の観点から分析・考察していきます。
■事業概要、注力事業とその事業評価
1.事業概要
immedioは主にB2B SaaS企業での利用が広がっていますが、不動産や転職などのB2C事業でも活用が進んできています。2024年7月には3.5億円のシリーズA資金調達を実施し、インサイドセールス領域のバーティカルSaaSとしての探索や機能開発に注力しています。
商談獲得自動化サービス「immedio」
ウェブフォーム連動型のシステムで、問い合わせ直後に自動で商談を設定
顧客情報に基づいて適切な営業担当者を自動割り当て
24時間365日、夜間や休日も自動で商談を獲得
展示会向けツール「immedio Forms」
名刺OCRから現地での商談獲得までを一貫して行えるシステム
展示会でのリード獲得とフォローアップを効率化
インバウンド商談のトータルサポート
商談の自動獲得、自動割振り、追客の自動化
カスタマージャーニーの改善
インサイドセールス業務の効率化
リード情報の取込・CRM連携
AIを活用した新機能の開発
より多くの質の高いインバウンド商談創出を目指す
1.1 主力製品:immedio
immedioは、インバウンド商談の獲得から管理までのプロセス全体を自動化・最適化するインバウンド商談SaaSです。主な特徴は以下の通りです。
自動商談調整:特許技術を用いて、顧客の問い合わせや資料請求直後に商談を自動で獲得
サンクスページと日程候補提示の統合:immedioが提供するタグを挿入するだけで、フォーム送信後のサンクスページに候補日程を表示
自動振り分け:フォーム入力情報やSalesforceのデータから、商談の振り分けまで自動化
2. 事業評価
今は「顧客手動で購買が始まる」時代ですが、営業の存在価値がなくなったかといえば、当然「No」です。セキュリティ観点や他システムとの連携など、検討する際の論点はむしろ年々増えており、実際に検討内容を推進するには営業担当の支援を必要とする場合が多いのが現実だと思います。
下記定義のもと、この領域におけるimmedioの事業評価を試行します。
2.1 現在の市場規模
評価:5点
コメント: immedioが対象とするインバウンド商談自動化市場は、CRM市場の一部を占めると考えられます。
日本のCRMソフトウェア市場:約2,500億円(IDC Japan 株式会社, 2022年)
この市場規模は、評価基準の「1000億以上」に該当するため、5点と評価します。市場はまだ成長段階にあり、今後の拡大も期待されます。
2.2 今後3〜5年の市場成長の見立て
評価:3点
コメント: インバウンド商談自動化市場は、以下の要因により今後3〜5年で急速な成長が見込まれます:
デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速
働き方改革の推進
リモートワークの定着
人材不足への対応
これらの要因を考慮すると、市場は3〜5年後には約約5500億円〜9000億円強の規模に達する可能性もあると予測されています。この成長率は評価基準の「CAGR 30%以上」に該当するため、3点と評価します。
2.3 変化する外部環境との親和性(テクノロジー以外)
評価:5点
コメント: immedioは、以下の外部環境の変化と非常に高い親和性を持っています:
ワークライフバランスの重視:immedioは営業担当者の業務効率を向上させ、より良いワークライフバランスの実現に直接貢献する
顧客体験の重視:immedioは顧客の都合に合わせた迅速な対応を可能にし、顧客満足度の向上につながる
データドリブン経営の浸透:immedioは営業プロセスのデータ化を促進し、経営判断の精度向上に寄与する
グローバル競争の激化:日本企業の国際競争力向上のため、営業生産性の改善は急務であり、immedioはこの課題に直接応える
SDGsへの取り組み:不必要な移動や紙の使用を削減し、環境負荷の低減に貢献する
これらの要因により、immedioは変化する社会ニーズと非常に高い親和性を持つソリューションといえます。外部環境の変化と親和性が「非常に高い」と判断されるため、5点と評価します。
2.4 支配的なプレーヤーの存在感の低さ
評価:4点
コメント: インバウンド商談自動化市場は比較的新しい分野であり、現時点で市場を独占するような支配的プレーヤーは存在していません。主な競合としては以下が挙げられます:
大手CRMベンダー:Salesforce、Microsoft Dynamics等
マーケティングオートメーションツール:Marketo、HubSpot等
国内営業支援ツール:Sansan、SATORI等
これらの企業は、既存の製品ラインの一部としてインバウンド商談機能を提供していますが、immedioのような専門的かつ包括的なソリューションは提供していません。市場には10社以上の競合が存在しているものの、明確な支配的プレーヤーは見られないため、4点と評価します。
2.5 現状の顧客が活用している代替案の未充足度
評価:5点
コメント: 現在、多くの企業が以下のような代替手段を用いていますが、これらには様々な課題があり、顧客ニーズを十分に満たしていません:
手動での電話・メール対応
課題:人的リソースの非効率な使用、応答時間の遅延、見込み客の取りこぼし
汎用的なCRMツール
課題:インバウンド商談に特化した機能の不足、カスタマイズの複雑さ
簡易的な予約システム
課題:営業プロセス全体の最適化ができない、データ連携の不足
マーケティングオートメーションツール
課題:商談獲得後のプロセスに対する機能不足、営業部門との連携の困難さ
これらの代替案は、以下の点で顧客ニーズを十分に満たしていません:
リアルタイム性:即時の対応ができず、ホットリードを逃す可能性が高い
自動化レベル:多くの手動作業が必要で、人的エラーのリスクが高い
データ統合:営業・マーケティング・カスタマーサービス間でのシームレスなデータ連携が困難
カスタマイズ性:日本市場特有のニーズに合わせた調整が難しい
導入の容易さ:大規模なシステム変更や長期の導入期間が必要
immedioは、これらの未充足ニーズに直接応える形で設計されており、代替案の未充足度が「非常に大きい」と判断されるため、5点と評価します。
3. 顧客と競合の明確化
3.1 顧客セグメント
immedioの主要な顧客セグメントは以下の通りです:
B2B SaaS企業
特徴:急速な成長を目指し、効率的な営業プロセスを必要としている
ニーズ:リードの即時対応、商談の自動スケジューリング、データ統合
中堅・大企業のIT部門
特徴:デジタルトランスフォーメーションを推進中
ニーズ:営業プロセスの自動化、データドリブンな意思決定支援
オンライン教育・研修サービス提供企業
特徴:多数の問い合わせを効率的に処理する必要がある
ニーズ:24時間対応可能な商談予約システム、リードの自動振り分け
不動産・金融サービス企業
特徴:高額な商品・サービスを扱い、タイムリーな対応が重要
ニーズ:リアルタイムの顧客対応、商談品質の向上
人材紹介・転職支援企業
特徴:多数の求職者と企業のマッチングを効率的に行う必要がある
ニーズ:自動スケジューリング、データ分析による最適なマッチング
3.2 競合分析
immedioの主な競合と、それぞれの強み・弱みは以下の通りです:
Salesforce (CRMベンダー)
強み:包括的な顧客管理機能、大規模な顧客基盤、豊富な資金力
弱み:インバウンド商談に特化した機能の不足、カスタマイズの複雑さ
差別化ポイント:immedioはインバウンド商談に特化し、導入・運用が容易
HubSpot (マーケティングオートメーション)
強み:マーケティングと営業の統合、使いやすいインターフェース
弱み:日本市場向けのローカライズが不十分、高度な自動化機能の不足
差別化ポイント:immedioは日本市場に特化した機能と、高度な自動化を提供
Sansan (国内営業支援ツール)
強み:名刺管理に強み、日本企業での高い認知度
弱み:インバウンド商談の自動化機能が限定的
差別化ポイント:immedioはインバウンド商談の全プロセスを自動化
SATORI (国内MAツール)
強み:日本市場向けのマーケティングオートメーション機能
弱み:営業プロセスの自動化機能が限定的
差別化ポイント:immedioは営業プロセスに特化し、より高度な自動化を実現
Calendly (予約管理ツール)
強み:シンプルで使いやすい予約システム
弱み:営業プロセス全体の最適化機能が不足、データ統合が限定的
差別化ポイント:immedioは予約管理だけでなく、商談の質向上までサポート
4. 総合評価
immedioの事業評価を5つの観点から行った結果、以下のスコアとなりました:
現在の市場規模: 5点
今後3〜5年の市場成長の見立て: 3点
変化する外部環境との親和性(テクノロジー以外): 5点
支配的なプレーヤーの存在感の低さ: 4点
現状の顧客が活用している代替案の未充足度: 5点
合計点: 22点 (25点満点)
100点満点換算: 88点
総合評価: 88点
4.1 評価コメント
immedioは、インバウンド商談自動化という成長市場において、非常に高いポテンシャルを持つ事業であると評価できます。以下に、その理由と今後の展望をまとめます:
市場の成長性 immedioが対象とする市場は、今後3〜5年で急激に成長すると予測されています。これは、DXの加速、働き方改革の推進、リモートワークの定着、人材不足への対応といった社会的トレンドと強く結びついています。immedioは、この急成長する市場でのリーダーシップを確立する絶好の機会を持っています。
外部環境との高い親和性 ワークライフバランスの重視、顧客体験の向上、データドリブン経営の浸透、グローバル競争の激化、SDGsへの取り組みといった現代の社会的ニーズとimmediaの提供価値が非常に高い親和性を持っています。これにより、長期的な需要の持続が期待できます。
競争環境の優位性 インバウンド商談自動化市場には、まだ支配的なプレーヤーが存在していません。大手CRMベンダーやマーケティングオートメーションツールなどが競合となりますが、immedioのような専門的かつ包括的なソリューションは提供されていません。この状況は、immedioが市場でユニークなポジショニングを確立し、急速にシェアを獲得する機会を提供しています。
高い顧客ニーズの充足度 現状の代替案(手動での対応、汎用的なCRMツール、簡易的な予約システムなど)は、顧客のニーズを十分に満たしていません。immedioは、リアルタイム性、高度な自動化、データ統合、カスタマイズ性、導入の容易さといった点で、既存の解決策の未充足ニーズに直接応える形で設計されています。これにより、顧客に高い価値を提供し、急速な市場浸透が期待できます。
4.2 今後の課題と展望
immedioの事業は高い評価を得ていますが、さらなる成長と市場でのリーダーシップ確立のために、以下の課題に取り組む必要があります。今後の展望については、後段の「【分析・考察】immedioの市場MECE分析と戦略考察」のパートでも少し掘り下げます。
製品開発の継続
AIや機械学習技術の積極的な導入により、商談の質向上や最適なリード配分などの機能を強化
ユーザーインターフェースの継続的な改善による、さらなる使いやすさの向上
他のビジネスツール(ビデオ会議システム、ビジネスチャットツールなど)との連携強化
市場教育と認知度向上
インバウンド商談自動化の重要性と効果に関する啓蒙活動
成功事例の積極的な発信によるソリューションの信頼性向上
業界イベントやウェビナーなどを通じた、直接的な顧客とのエンゲージメント強化
顧客セグメントの拡大
現在のB2B SaaS企業中心から、より幅広い業種への展開
中小企業向けの簡易版製品の開発など、顧客層の拡大
グローバル展開を視野に入れた、多言語対応や海外市場特有のニーズへの対応
パートナーシップの構築
大手CRMベンダーやMAツールプロバイダーとの戦略的提携
システムインテグレーターとの協業による、大企業向け導入支援の強化
スタートアップエコシステムとの連携強化(アクセラレータープログラムへの参加など)
データ活用の高度化
蓄積される商談データを活用した、AIによる商談成功率予測機能の開発
業界別ベンチマークの提供による、顧客の営業プロセス改善支援
プライバシーとセキュリティに配慮しつつ、匿名化されたデータの分析サービスの展開
5. 結論
immedioは、インバウンド商談自動化という成長市場において、非常に高いポテンシャルを持つ事業であると評価できます。現在の市場規模、今後の成長性、外部環境との親和性、競争環境、顧客ニーズの充足度のいずれの観点からも、優れた評価を得ています。
特に、デジタルトランスフォーメーションの加速、働き方改革の推進、リモートワークの定着といった社会的トレンドとの強い結びつきは、immedioの長期的な成長を支える重要な要因となるでしょう。また、現状の代替案が十分に満たしていない顧客ニーズに直接応える形で設計されているため、市場での急速な浸透が期待できます。
一方で、急成長する市場であるがゆえに、今後競争が激化することが予想されます。大手CRMベンダーやマーケティングオートメーションツールプロバイダーが、同様のソリューションを提供し始める可能性も高いため、技術革新、市場教育、顧客セグメントの拡大、パートナーシップの構築、データ活用の高度化などの課題に継続的に取り組み、競争優位性を維持・強化していく必要があります。
■【分析・考察】immedioの市場MECE分析と戦略考察
ここまでは公開されている情報をベースに事業の概要と事業評価、および一次的な考察を試行してきました。このパートでは、immedioの事業評価を深めるため、市場のMECE分析を行い、現在の戦略と未開拓市場を考察します。この分析により、同社の成長機会と潜在的な課題を明確にし、今後の戦略方向性について洞察を得ることを目指します。
1. 市場のMECE分析
immedioの潜在的な市場について、以下のように分類を試みます。
1.1 企業規模別
大企業、中堅・中小企業、スタートアップ
1.2 業種別
IT/SaaS、製造業、金融・保険、不動産、小売・流通、医療・ヘルスケア、教育、公共・非営利団体
1.3 営業形態別
BtoB、BtoC、BtoBtoC
1.4 地域別
日本国内、海外(アジア、北米、欧州、その他)
1.5 商談の複雑性別
単純な商談(短期決定、少数決定者)、複雑な商談(長期検討、多数決定者)
2. 現在のimmedioの注力領域
今回得られた情報から、immedio社は現在以下の市場セグメントに注力していると推測されます。
企業規模:中堅企業〜大企業
業種:IT/SaaS、一部の金融・不動産
営業形態:主にB2B
地域:日本国内
商談の複雑性:比較的単純な商談
3. 潜在的な未開拓市場と参入しない理由の考察
3.1 中小企業・スタートアップ市場
理由:導入コストや運用の複雑さが障壁となる可能性。また、大規模な商談数を扱わない可能性が高い。
考察:将来的に簡易版や低コストモデルの開発で参入の余地あり。
3.2 製造業、医療・ヘルスケア、教育分野
理由:業界特有の規制や複雑なプロセスへの対応が必要。初期段階では対応コストが高い。
考察:業界知識の蓄積と専門機能の開発により、長期的に参入可能。
3.3 B2C市場
理由:B2CとB2Bでは商談プロセスが大きく異なり、製品の大幅な改修が必要。
考察:B2C向け別製品の開発や、B2C企業向けのB2B営業支援として間接的にアプローチ可能。
3.4 海外市場
理由:言語や商習慣の違い、法規制対応などの障壁が高い。まずは国内市場の開拓が優先。
考察:日本市場での成功モデル確立後、段階的に海外展開を検討。
3.5 複雑な商談プロセス
理由:多数の決定者や長期の検討プロセスを自動化するには、より高度なAIや柔軟なワークフロー設計が必要。
考察:AIの進化と顧客ニーズに応じて、段階的に複雑な商談への対応を強化。
4. 戦略的考察
段階的拡大戦略:現在のフォーカス市場で強固な基盤を築いた後、隣接市場へ段階的に拡大。例えば、中小企業向け簡易版の開発や、特定の業界(製造業など)向けの専門機能の追加。
垂直統合戦略:特定の業界(例:IT/SaaS)に特化したエコシステムの構築。業界特有のニーズに深く対応し、参入障壁を高める。
プラットフォーム戦略:APIやパートナープログラムを通じて、未対応の市場セグメントを他社と協力して開拓。例えば、特定業界向けのプラグインを開発パートナーに任せる。
ハイブリッドアプローチ:複雑な商談プロセスに対して、自動化と人的サポートを組み合わせたソリューションを提供。これにより、より広範な市場ニーズに対応。
グローバル展開準備:将来の海外展開を見据え、多言語対応や国際的な商習慣への適応を段階的に進める。まずはアジア市場からの展開を検討。
未開拓の市場セグメントは、リソースの制約や製品の現状を考慮すると、段階的なアプローチが賢明と考察できます。しかし、これらの潜在市場は将来の成長機会として重要であり、長期的な戦略の中で考慮されるべきとも考えられます。
いかがでしたでしょうか?
immedioは、インバウンド商談自動化という成長市場で高いポテンシャルを持つ企業として注目されています。デジタルトランスフォーメーションや働き方改革といった社会トレンドとの親和性の高さは、同社の長期的な成長を支える重要な要因となるでしょう。
しかし、急成長市場ゆえの競争激化も予想されます。immedioが持続的な成長を実現するためには、技術革新やデータ活用の高度化、顧客セグメントの拡大など、様々な課題に取り組む必要があります。
営業生産性向上に貢献しつつ、グローバルなSaaS企業へと成長する可能性を秘めたimmedio。今後の展開に、引き続き注目していきたいと思います。
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ライター 白井達也
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