見出し画像

転機

キャリアコンサルタント(キャリコン)の資格を取得して1年半になるものの、残念ながら今の仕事に資格を十分活かすことはできていない。しかし、キャリアコンサルティングの勉強は、これまでの人生では学ぶことのなかった新しい気づきを与えてくれるものであり、自分の考え方や生き方に少なからず影響している。そのうちの一つが、転機に対する考え方である。

キャリアコンサルティングの勉強をするまでは、キャリアというのは自分なりにゴールを設定して、そこに向かってキャリアを積み重ねていく、個人中心に構築する概念と考えていた。

若い頃の上司との面接で、10年後君はどんなキャリアをイメージしているのかと問われて、具体的に答えられず困ったことがある。目の前にある仕事に対応しているだけで精一杯だった時で将来のイメージをあまり想像することができず、そんな自分に罪悪感や劣等感を感じたりもする一方で、先の見えない将来を見通すことなどできるのだろうかと違和感を覚えたのも正直なところだ。

しかしキャリアコンサルティングの世界では、そもそも、キャリアは偶然の出来事の積み重ねによって決定されるのであって、個人でコントロールするのには限界があるというのだ(クランボルツ:計画的偶発性理論※)。よって、自ら決めた道を進むことだけではなく、転機に対してどう対処するかが大事だという(シュロスバーグ:4S理論※)。キャリアは自ら切り開くものというよりは、自らを取り巻く状況にどう前向きに対応していくかだという考え方は目から鱗だった。
※各理論については文末のリンクを参照ください

確かに、これまでのサラリーマン人生を考えると、前半は希望するキャリアを貫こうと自ら道を切り開こうともがいていたが、後半はいきなり海外子会社の国内事業展開を担当させられたり、事業部人事を担当させられたり、想定しない状況になんとか対応してきたサラリーマン人生だった。自ら選んだ道ではなかったが、与えられた状況にいかに対応するか、そこから何を生み出せるかを追求することにも、十分なやり甲斐と醍醐味をそれなりに感じながら取り組むことができ、充分充実したキャリアだったと言えると思う。

とはいえ、サラリーマン人生も終盤。あとは、これまでの経験を活かし、社内の支援など落ち着いた過ごし方を考えていかなければと考えていた矢先に、最後のラスボス級の転機が訪れてしまった。なんと、初の海外赴任を命ぜられ、今後の海外の事業成長を支えるビジネス基盤を構築するミッションを与えられたのである。正直全く想定していない転機であった。

キャリコンの中で転機といえば、シュロスバーグ先生である。というわけで、せっかく学んだキャリコンの知識をこの転機に当てはめて、自分の状況を少し整理してみたいと思う。

https://careerconsultant-study.com/shlossberg/

シュロスバーグによると転機においては、四つの要素、すなわち、状況(Situation)、自己(Self)、支援(Support)、戦略(Strategies)の4つを考えることが大事であるという。それぞれの視点で今の自分に当てはめてみる。

⭕️状況
まず、転機にあたっては今の状況を自分なりに理解することが必要らしい。

私にとって今回の件は全く予測不可能な状況であった。同じような経験はしたこともない。但し、エンジニア、コンサルタント、事業企画、事業管理、人事などさまざまな経験はしてきたので、それらを基盤に何かできる可能性はあるかもしれない。自信と不安は半々だ。新しいビジネスを作り出す仕事なので、既存ビジネスを守るプレッシャーもないので、さほどストレスを感じていないかもしれない。

⭕️自分
次にこの転機の持つ意味を自分なりに考える必要があるらしい。

自分にとって、今回の転機は、家族と離れてしまう、日本と離れてしまう、日本で得ていたものを失う大きい出来事である。これまで、そんな状況が訪れるとは全く想定していなかった。これまでの関係が、一時的にせよ断絶するのはとても辛いことだ。

一方で、今回の仕事は会社にとって非常に重要であり、自分にとっても人生で最大かつ最重要な仕事であるといえる。チャレンジすべきテーマでもある。

その仕事とプライベートの狭間に、正直悩んでいる。但し、赴任を受け入れてしまった以上、ポジティブな部分に目を向けて、ネガティブな部分には解決方法を考えて対処していくしか無い。と、考えている。

⭕️支援
転機にあたってどのような支援がえられるか?

今回の赴任にあたっては数名引き連れていくメンバーを人選させていただいた。いずれも、信頼のおけるメンバーであり、彼らがいてくれることは大きな支えになるだろう。もちろん、現地にいてくれるメンバー、日本の関係者も支援してくれると思う。大事なのは、自分自身の状況を共有し、課題を伝えることだろう。そうすれば、周囲から有用なアドバイスや支援が得られるとおもう。社内に話せない悩みができた時は、このユニカリアの仲間を頼らせていただきたい。

⭕️戦略
戦略とはこの転機を乗り越えるための有効な手段の検討だそうだ。

ある意味明確である。自分の経験や能力を最大限に活かしつつ、自ら今回の転機を前向きに捉えて、自分に足りないところは周囲の支援を得ながらできる限りのことをやるということだろう。

なるほど、4Sで整理をすることで、自分の状況が少し客観的に見えてきた。その上で、感じたのは、特に支援の大切さだろうか?決して経験値の高く無い環境の中で成果を求められている時に、自分で全て何かを成し遂げようとすると、能力不足で袋小路に陥るだろう。同僚や部下、日本の関係者、キャリコン仲間を大切にして、可能な限り頑張ってみたいと、決意を新たにした次第である。

※最後に、10年以上前のある転機に先輩に渡された本をご紹介します。人生の転機こそが人生の勝負であるという本です。日本版計画的偶発性理論、おすすめします。

左遷の哲学

https://amzn.asia/d/1qnk83


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?