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Day.16 肝硬変周辺疾患の診療メモ【総合診療トピックゼミ】


<肝性脳症について>

◇病態◇

 肝硬変患者は、アンモニアを尿素回路で分解することができない。代償として、他の回路(骨格筋でのグルタミン合成)での消費を行っている。
 ここに追加の要因(感染、消化管出血、便秘など)が加わると、代償機構が破綻する。

◇症状◇

 意識障害、羽ばたき振戦が有名だが、初期の意識変容は「疲れやすい」、「反応が鈍い」といった軽微な変化であることも多い。

◇対応◇

0)下記のような誘因となるイベントがないかを検索する
〇感染
〇消化管出血
〇便秘
〇脱水
〇電解質異常
1)下剤を使用して、腸管でアンモニアが作られないようにする。
☞腸内細菌が食物を分解すると、アンモニアが作られるため。
〇ラクツロース 30~60mL/日 1日3回内服
2)ラクツロースで効果不十分の場合、アンモニアを産生する細菌を減らす目的で、リファキシミンを検討する。
〇リファキシミン 1回400mg 1日3回 食後に経口投与
3)筋肉でのアンモニア消費に必要なBCAA(分枝鎖アミノ酸)を投与
〇アミノレバン 1回500mLを3~5時間かけて点滴投与

<肝腎症候群>

◇病態◇

 門脈圧亢進によって生じる一酸化炭素などの血管拡張物質により、末梢動脈が拡張する。これに対する代償として、RAA系や交感神経系が亢進して血圧を維持する。これら血管収縮作用が腎機能に悪影響を与えるとされている。

◇対応◇

〇急性腎障害を起こす他の原因を鑑別する。
〇利尿薬および腎毒性のある薬剤を止める。
〇Vitalが不安定なら、アルブミンとノルアドレナリンを開始する。

<肝肺症候群>

◇病態◇

血管拡張物質(前述)が肺血管に作用することで、低酸素血症を生じると考えられている。

◇対応◇

初期対応は酸素投与

<Column>

 肝硬変が進んだ患者のお腹を見ると、腹水でちゃぽんちゃぽんである。そして、水が溜まってすごくしんどそうである。当然、水が溜まっているのなら抜いて楽にしてあげたくなるのが心情をいうものだが、抜こうとしているその液体には、へばりかけの肝臓がなけなしのパワーを振り絞って作ったアルブミンが含まれている。そして、水を抜いたところで早晩また溜まってしまう未来が目に見えている。だから、実際には腹水を抜くのは、検査目的であったり、本当にしんどいときに少量抜くだけだったりする。CART(腹水濾過濃縮再静注法)が使えるなら話は変わってくるが。

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