Day.12 急性膵炎の診療メモ【総合診療トピックゼミ
<Story>
<最初のオコトワリ>
膵炎の対応には、どこまでやるか問題が伴います。明らかに若くて元気な方がそこまで重症でない膵炎になったと推測される場合には、下記のプロセスのかなりの部分が省略される場合があります。但しここでは、なるべく全部やったらどんな感じになるのかという形で記載していきます。
<急性膵炎を疑った場合に追加する検査>
◇アミラーゼとリパーゼを採血に追加する。
☞個人的には、腹痛主訴であればアミラーゼはルーチンに採血に入れ、特に膵炎を疑う場合にはリパーゼも取る形でいいかと考えています。
〇アミラーゼ☞膵炎を疑った場合にまず追加される検査。但し、発症初期には上昇しない、膵炎以外でも上昇する等、使いにくさがある。
〇リパーゼ☞膵炎への特異度が高く、発症後すぐ値が上昇する。
<急性膵炎と診断した場合に追加する検査>
◇動脈血液ガス分析、カルシウム、中性脂肪を採血に追加する。
☞この3つについては、重症度評価等に必要になります。
◇造影CT
☞やはり重症度評価と合併症や原因の検索に必要になります。
◇重症度評価
急性膵炎治療ガイドラインの下表に従って(表は先のガイドラインから頂いています)、重症かどうかを判定します。
この判定で重症に該当するようであれば、ICUかそれに準じた環境での管理を検討します。
*スコアリングを見てもらえばわかる通り、この判定を行うために造影CTやカルシウムや動脈血液ガス分析が必要になるわけです。
中性脂肪だけがこのスコアリングには出てきていませんので追記します。
中性脂肪が1000mg/dL以上の場合は、恐らく全身状態もかなり悪いはずです。緊急血漿交換を考慮する基準となります。
<入院の上で行うこと>
◇絶飲食で開始して、48時間以内に食べ始める。
経口摂取を行うと、食物や水分が刺激となり、膵臓は膵液を出そうとして、結果炎症を促すこととなります。従って、膵臓を休ませる意味で絶飲食管理を行います。但し、遅くとも48時間以内に経口摂取を再開するとよいとされています。
◇尿量の管理
特に重症であれば、尿カテーテルを入れて、きちんと尿量をモニタリングしてください。急性膵炎はお腹の中に炎症を引き起こし、炎症は周囲から水分を奪うため、病態としては極度の脱水となります。初動から輸液をしっかり行うのが大切なのはこのためです。入院後も0.5mL/kg/h以上の尿量を維持できるよう管理します。
◇急性膵炎に至った原因への対応
膵炎の原因は胆石40%、アルコール性30%です(もちろんその他の原因もありますが)。
胆石が造影CT等で見つかるようであれば、急性膵炎の症状が落ち着いたら、ERCP(そもそも、ERCPの合併症に急性膵炎があるので、落ち着くまではやっちゃダメです)や待機的な胆嚢摘出術を考慮します。
アルコール性の場合は、お酒との付き合い方を考えるだけでなく、入院中のアルコール離脱せん妄に備えます。
……あと、必要なことは鎮痛をしっかり行うことでしょうかね。
<Column>
急性膵炎はスピーディーに診療しようとすると、トラップが多い疾患(だと勝手に)思っています。まずは、重症の急性膵炎は今日においても致死的になりうる疾患だという重症度の側面、さらに診断を助けてくれるアミラーゼとリパーゼが多くのセット採血に入っていないシステムの側面、スコアリングに一見して、「え、それ要る?」みたいな項目が結構入っている検査項目の側面……。毎回、鑑別に上がるのが一歩遅くなったり、入院に上げるタイミングになって、あ~、あれやってねぇってなったりします。