Day.23 咳嗽の診療メモ【総合診療トピックゼミ】
<最初に、ヤバい咳を分ける>
下記の症状が随伴していないかを確認して、それぞれの疾患について評価します。
◇発熱☞肺炎、結核
◇膿性痰☞肺炎
◇血痰☞腫瘍、結核、気管支拡張症
◇呼吸困難☞喘息、心不全、COPD
◇胸痛☞気胸、心筋梗塞、肺血栓
◇浮腫☞心不全
◇体重減少☞腫瘍、結核
などなど
<次に、発症から3週間待つ>
ヤバい咳の確率を下げた後は、とりあえず対処療法で3週間待つ。メジコンやリン酸コデイン、麦門冬湯を用いて症状をしのぎつつ、自然軽快を待つ。急性の咳に分類される3週間未満の咳の大多数は上気道炎後の感染後咳嗽だからである。そもそも、ウイルス性気管支炎による気管の炎症・浮腫は、感染が落ち着いても4週間程度続くことがある。
<3週間経過したら、胸部レントゲンを撮る>
3週間経過したら、日本は結核が決して少なくないことを踏まえて、ここまでにレントゲンを撮影していないのであれば撮影する。
<下記を鑑別する>
レントゲンで結核が否定的であれば、順次下記疾患を鑑別する。もちろん、初動の段階でも疑わしいものがあれば、または受診の段階で3週間以上経過しているのであれば、鑑別をするとよい。但し、鑑別しながらも、自然に収まるのを待つ姿勢は忘れない。
<慢性咳嗽の三大原因>
★後鼻漏
☞鼻汁が軽度でも伴うなら、抗ヒスタミン薬を使用すると良い。
★咳喘息
☞呼吸機能検査を行うか、ステロイド吸入薬を2~4週程度使用して反応を見る。
★逆流性食道炎
☞PPIを投与する。上部消化管内視鏡検査も考慮できるが、内視鏡検査で所見がなくても、逆流性食道炎のことがある。
<その他の慢性咳嗽の原因>
◇ACE阻害薬
☞副作用に空咳がある。ARBへの変更を考慮する。
◇COPD
☞呼吸機能検査で閉塞性換気障害を捕まえる。
◇百日咳
☞連続性咳嗽発作、咳嗽後嘔吐、whoopingのいずれかで疑う。エンピリックに治療を開始してもよい。
<Column>
咳嗽も、その原因の1つでもあるウイルスによる急性上気道炎も、基本的には体が直すのを待つしかないものですよね。そういう意味では、医療の大きな側面として、または看護の中核に、「人が自分で癒える環境を作る」という命題があることを思い出させられます。だって、どれだけいい薬があっても、隙間風の吹く、不潔で寒い部屋で寝てたら、感染も咳も絶対に悪化するじゃないですか。いかによい”空気”を患者に送り込むかが重要である。そんなことが、確かナイチンゲールの看護覚え書に書いてあった気がします。是非ご一読ください。