不眠症

また眠れぬ夜が訪れる。外では雨が静かに降り、その音が夜の静寂を埋める唯一の伴奏となっている。部屋の隅で、タブレットの光がひっそりと佇む。その淡い光だけが、この薄暗い空間を照らしている。

ベッドに横たわり、タブレットを手に取る。開いた電子書籍のページに目を通そうとするが、内容が頭に入らない。何度も同じ行を読み返し、ため息が漏れる。

気がつくと、SNSのアプリを開いている。タイムラインには、面白いことを呟く人々の投稿が流れてくる。その一言一言に微笑みながらも、心の奥底には冷たい寂しさが残っている。

旅先の美しい風景写真が次々と表示される。見知らぬ人々が日本中の綺麗な場所を訪れ、旅先での出来事を語っている。それを見ていると、まるで自分もその場にいるかのような錯覚に陥るが、今はベッドの中、ひとりぼっちの夜。

さらに画面をスクロールさせてみると、綺麗なイラストを描く人のアカウントにたどり着く。繊細な線、モノクロであったり、鮮やかな色使いであったり。綺麗な絵に心を奪われ、時間が過ぎるのも忘れてしまう。そして、自分とは違う世界にいる人たちなんだと気持ちが沈む。

外の雨音が強まり、窓ガラスを叩く。その音に合わせて、心の中の不安も大きくなる。タブレットの光に照らされるこの孤独な夜が、いつまでも続く。

やがて夜が深まり、雨が弱まると、外の世界はますます静かになる。SNSを閉じ、タブレットをそっと置く。部屋は再び薄暗くなり、雨音だけが響く。

眠れない夜、心の中で静かに詩を紡ぐ。雨音に語りかけるように、孤独な気持ちを一つ一つ言葉にしていく。やがて雨が止むころ、夜の静けさに包まれたまま、ただ時間だけが過ぎていく。

SNSなんか見てないで、早く寝ようね。

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