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【香水連載】香はかく語りき① FIGTEA
香水って素敵です。
着けた人を演出するのはもちろん、日常の一コマを想起させる作品に近いものまで様々あります。
そんな香水からインスピレーションを受けた文章を綴り、思わず嗅いでみたくなるような記事をお届けできたらと思います。
遠藤ジョバンニさんもお誘いし、同じ香水で文章を綴ってくださっています。合わせて読むと面白いと思います。
月一回ペースの予定です。
何卒お付き合いのほどよろしくお願いいたします。
さて、第一回はニコライよりFIG TEA。
誰にも彼女を傷つけさせない。そう決めている人がいる。
近所で有名なお座敷に同じ歳の女の子が住んでいた。木登りを教えても根に腰かけて本を読み、咲く花の種類で四季を感じていたその女の子は、私の日常となり、人生だった。
春にしては日差しが強い日曜の午後、原っぱに何も敷かず寝そべっていると彼女が言う。
「お茶でもいかが?」
花の甘さを閉じ込めたポプリのような茶葉たちはポットの中で泳ぎながら命を吹き返す。ティーカップから伝わる温もりは彼女の母性そのものだ。この温もりに、何度助けられたことか。
そんな彼女ももうすぐ母親になる。
彼女のワンピースのチュールが私のすねをかすめてくすぐったい。それでも彼女の隣に距離をつめる。その様子を見て彼女が笑う。その真綿のような笑い声が新しい命を包み込んで祝福するだろう。
この素晴らしい世界へようこそ。
彼女がいたからそう思えるのだけど。
帰る私を見えなくなるまで見送る白い影。遠くにいるけど、微笑んでいる。見えないけど、わかる。
それが彼女の強さ、私たちの絆。
また春の日差しの中でお茶を飲む日まで、元気で。
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