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2020年スワローズのキーマン(投手編)

野手編に続き、投手編です。

■はじめに

19年のスワローズのチーム防御率は4.78で、12球団ワーストでした。リーグ唯一の4点台で、チームの勝ち頭は今年40歳を迎える石川投手の8勝、規定投球回にただ一人到達した小川投手は5勝12敗と自己ワーストの結果と、かなり苦しいシーズンを送りました。特に防御率5.05の先発投手陣が試合を作れず、早々に失点して取り返せずにゲームを落としてしまう試合が多かったのが2019年でした。

昨年の先発投手の状況を把握するのに、ロバートさん(@robertsan_CD)が作られた先発投手グラフをスワローズバージョンにしたものが以下の散布図です。

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ここからオフシーズンにローテ投手のブキャナン選手の退団が発表され、先発投手の駒不足感は否めません。新加入のイノーア選手・クック選手といったブキャナン選手に代わる外国人選手の活躍も必須ですが、まずは既存投手陣の底上げがマストです。

特に座標上の”ローテの谷間”に位置している原選手・高梨選手・高橋選手・山田大選手の4人のうち何人が、”ローテ投手”~”主力投手”になれるかはスワローズ投手陣再建に向けたキーポイントです。

軽く昨年の状況を振り返ったところで、今回の本題である私が考える投手のキーマン、それは既に名前を挙げたプロ5年目を迎える高橋奎二投手です。

■高橋選手を分析する

高橋選手は平安高校のエースとして2年の春に同校初の選抜優勝投手になるなど活躍、15年ドラフトでスワローズに三位指名されました。ワインドアップから右足を高く上げるフォームから"左のライアン"とも呼ばれ、力強いフォーシームと鋭く落ちるスライダーがマネーピッチです。2018年に一軍初登板と初勝利を果たし、2019年は20試合に登板し、今年は更に期待がかかります。

早速、19年の成績を見てみましょう。

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まず目につくのは奪三振の多さです。95イニングで99奪三振、K/9=9.35と先発投手としてはかなり高い水準となっています。その一方で、BB/9=5.00で四球が多く、制球面で今後改善の必要があるでしょう。

先発時の1イニング当たりの出塁数を表すWHIPは1.60と高く、アウトを取れても三振が多いだけに球数が嵩んで長いイニングを投げ切ることができていない、というのが現状です。1イニング当たりの球数(P/IP)が18球、という数字が高橋選手の課題を物語っています。

被本塁打指標のHR/9は1.32ですが、神宮球場で5本、東京ドームで5本の計10本は12球団でも屈指のヒッターズパークで浴びており、少なくなるに越したことはないが仕方がない面もありそうです。登板の半分の10試合47イニングを投じたホーム神宮球場は、本塁打のパークファクターで見ると1.76。2位が横浜スタジアムの1.25で、0.51の差をつけて神宮球場がトップの数値となっています(出典:神宮球場をデータで分析 本塁打のパークファクターはリーグNO.1も本塁打数は)。

防御率こそ5.76とみると先発投手としてとても不十分だと思われますが、「与四死球、奪三振、被本塁打による投手評価」であるFIPは5.10、さらに本塁打は球場によって出やすさが大きく異なることから「与四死球、奪三振、被外野フライによる投手評価」であるxFIPは4.69となっており、見栄え的にもだいぶマシになっています。

次に各年の成績を見てみましょう。

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高橋選手が入団してから今に至るまでの4年間は、数度の怪我に見舞われながらも着実にステップを踏んできました。1年目・2年目は二軍でわずか30イニングしか投げられなかった高橋選手ですが、3年目に一軍登板も果たして1年通して投げ、そして4年目の昨年は一軍で多くのイニングを任せられるようになりました。どの年を見てもK/9=8.00を超える奪三振率の高さがやはり魅力で、二軍では被本塁打も少なく18年の二軍成績をみれば昨年の開花も納得でしょう。

2019年、90イニング以上を先発として投げたセリーグの投手のK/9ランキングは以下の通りです。

K9ランキング

△をつけたのが左腕で、上位10人中7人が左投手でした。”高橋”姓が3人、しかも全員左腕という偶然も面白いですが、イニング数こそまだ十分ではないながら、高橋奎二選手の奪三振能力はセリーグ全体を見てもトップレベルです。

次に高橋選手の持ち球を見てみましょう。

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フォーシームの投球割合が57%と半分以上で、平均146.5kmとまさに高橋選手の生命線となっています。が、失点増減では大幅なマイナスを背負っており、自信のある分フォーシームを狙い打たれています。

なお、18年はフォーシームの割合が48%で、19年は+10%投球が増えています。代わりにカットボールの割合を減らしています。

全14本浴びた本塁打の内、なんと10本がフォーシーム。被打率.303、空振率6.49%と、球速は速いものの十分活かしきれていないのが現状です。その一方、スライダー・チェンジアップはともに被打率2割前半、空振率も共に14%で、フォーシームの球速があるからこそこれらの変化球にも手を出してくれているとも言えます。

セリーグの90イニング以上先発登板選手のフォーシーム平均球速ランキングTOP5は以下です。

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高橋選手はロメロ選手・菅野選手に次ぐ3位につけており、リーグを代表する左腕の今永選手と球速では同じ水準を出せています。これだけの球速を投げられる左腕は現状のスワローズにはいませんし、リーグを見ても希少なため、フォーシームの質をさらに磨くことで数字は自ずと付いてくるのではないでしょうか。

■2020年に飛躍するには

これまでの分析を踏まえたうえで、今年どうすれば高橋選手がさらに飛躍できるか考えてみましょう。

指標上、奪三振と与四球は年を跨いでも大きな変動の少ない指標です。例えば、四球が多いからと言って置きに行くようなピッチングをすればおそらく高橋選手の奪三振は減少し、場合によってはさらに被本塁打や被打率が悪化する可能性があります。

四球に関してはこの際出てしまうものだと割り切り、ランナーを出しても要所で三振を奪い切り抜ける力投型のピッチングを目指していくべきだと私は考えます。そのために今必要なことは、①フォーシームの質の向上②球数を投げてもへばらないスタミナ、の2つではないでしょうか。今でこそフォーシームは打たれていますが、再三申し上げた通り左で平均147kmを出せるフォーシームは強力な武器なのです。

変化球についていえば、スライダーとチェンジアップの2つで36%、フォーシームを含めた3球種で90%以上を占めています。筒香選手を三振に取ったスライダーのように、左打者に対しては逃げるボールがある一方、右打者に対して絶対的なボールが不足しています。14の被本塁打中、10本は右打者によるものであることはそれを裏付けています。勿論、バッテリーとしても右打者に対しての対応は苦慮しているようで、内角を厳しく攻めた結果、右打者に8死球を当てています。インコースをついている割に、本塁打が多い昨年の状況は、オフ~オープン戦に向けて投手・捕手間でよく話し合う必要があるでしょう。

さらに、初球の被本塁打が5本、被打率.433と非常に悪く、投げっぷりの良さはわかりますしファーストストライクを取るべきなのは間違っていないのですが、さすがに不用意な印象です。

その割に、立ち上がりは毎回そこまで悪くなく、イニング別の失点割合では3回が一番悪いというのも興味深い点です。

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実際、3回を終了した時点で交代させられてしまったケースは昨年3度あり、高橋選手にとっての鬼門は3回にあると言えます。

初球の入り方や、二巡目の対応など、注意すれば改善できる点に課題を抱えている分、昨年1年間の経験をもとに今年飛躍してほしいところです。

■さいごに

クローザーとして日・米・台湾三カ国で活躍した高津さんが一軍監督に就任し、一軍投手コーチに斉藤隆コーチが加わりました。特に高津監督は二軍監督として高橋選手を間近で見てきた経緯もあり、今年も頭から先発のローテーションに入ってくるでしょう。

木曜日に戸田に行った際にもブルペン入りしている姿を見ましたが、今年は一段と気合が入っているなぁと感じました。

折しも、前スワローズ監督の真中さんがキーマンとして高橋選手を昨日挙げている記事が出ています。

https://baseballking.jp/ns/215224

真中さんが言うように、二桁勝利も夢じゃないポテンシャルがある選手だと強く思いますので、今年期待しましょう!!

■出典元

データは以下のサイトから引っ張っています。

1.02 - Essence of Baseball

nf3

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