2020年オリックスのキーマン(野手編)
2019年も早いもので今日が最後の日となり、明日から2020年ですね!そして、プロ野球のキャンプが始まる球春まで1か月となりました。年度末~年度明けはオリックス・バファローズとヤクルトスワローズの、2020年に投打のキーマンとして期待する選手を私見で選んでいきたいと思います。
まず記念すべき(?)第1弾はオリックスの野手です。まずは下の表を見て、誰の成績かわかるでしょうか。
成績だけ純粋にみると、きちんと成長曲線に乗っていますよね。正解は、宗佑磨選手です。現在23歳で、これから高卒6年目のシーズンを迎える宗選手を来年のキーマンに挙げたいと思います。その理由を以下に述べていきます。
■基本データから読み取れること
横浜隼人高校から2014年ドラフトで2巡目に内野手指名された宗選手は、高校1年時から外野手としてベンチ入りを果たし、高3時には松井裕樹投手(現・楽天)から2安打を放つなど遊撃手としてチームを牽引しました。
お父様はギニア人で、高校時代から優れた身体能力を見せてきましたが、まだ身体が細く、当時のオリックスの編成としては同年代が大卒として入ってくる5年目に一軍で主力として活躍してくれれば成功と考えていたと考えられます。スカウトコメントも走攻守に優れた将来性を重視しているという内容でした。ブルーウェーブ時代は田口壮(現・打撃コーチ)がつけていた背番号6を渡された点からも当時の首脳陣の期待の表れでしょう。
1年目は高校時代に痛めた右足など怪我に悩まされ、二軍でわずか16試合しか出場できませんでしたが、2年目に一軍デビューを含む計63試合に出場。その後、3年目は計114試合、4年目は計97試合、5年目は計102試合と着々と身体を作っていき18年・19年は一軍での出場試合数が二軍を上回るようになっています。
2019年は一軍レベルのボールにも慣れてきたのか、出塁率.370は100打席以上打席に立った選手の中で吉田正尚選手(.413)に次ぐ2番目の高さでした。高卒2年目・3年目のシーズンでも二軍ながら出塁率は.330前後で、なんとなくイメージとしてあるガタイのいいフリースインガーではなく意外と選球眼のあるアベレージ型の選手としてみるべきでしょう。
これまでは右足、左肩、腰と身体の成長に追い付かず故障がちでしたが、今年はオフにウィンターリーグに参加するなどいよいよ身体ができあがってきた感があります。
■詳細なデータから見る宗佑磨
どうすれば宗選手が来年さらに飛躍するのか、詳しく現状を分析してみましょう。年によっての変化が少ないBB%(四球率)、K%(三振率)は以下のようになります。
本格的に試合に起用されるようになった18年に比べて、19年は四球を増やし三振を減らすことができています。突出した数字ではないですが、チームの平均よりはプラスの数値になっており今後さらなる改善が求められます。
宗選手の今年一番の変化は、待球型に完全にシフトしボールへのコンタクトが格段に上手くなった点です。18年と19年のストライクゾーンとボールゾーンでのスイング率・コンタクト率が下の表です。
前年に比べ、いずれのゾーンでもスイング率は下がり、コンタクト率は上がっています。ストライクゾーンに来れば大体のボールは当てられるので、次のステップはそれをヒットゾーンに飛ばすことでしょう。
※なお、宗選手のストライクゾーンコンタクト率は100打席以上のオリックスの選手で二位でした。一位は福田選手の95.4%、これは規定到達打者の中で12球団でもトップの数字です。
次に宗選手の打撃方向を見てみましょう。
センター〜逆方向への打球が多く左打者の宗選手にとっての引っ張り方向であるライト側には25.4%、リーグのPull%の平均が30%台前半であることを考えると広角に打つタイプと言えます。19年はフォーシームの指標がプラス(フォーシームに対する得点貢献を示すwFA=2.9)ですので、フォーシームに振り遅れている訳ではなくしっかり打ち分けていると考えられます。
最後に守備、走塁についてです。メインポジションはセンターですが、18年のUZR-4.9、19年はUZR-2.2で肩の指標を表すARMは-1.4と、センターでの守備指標はあまり良くありません。走塁面では、今年7盗塁を決めていますが成功率は70%、盗塁技術をキャンプとその後の実戦で学ぶことができればまだまだ伸びる余地はありそうです。盗塁を除く走塁指標のUBRは1.2とこちらはほぼ平均に近い数値となっています。
■来年飛躍するには
ずばり、最も怖いのは怪我です。入団時に比べて随分ガタイが良くなり身体は出来上がってきた一方で、まだフルシーズン試合に出たことはなく、それに加えて19年の死球の多さが気になります。わずか54試合で11死球、これはパリーグの選手で5番目に多い数字です。当たり前ですが、デッドボールは故障に直結するので今後は死球を避ける技術も身につけなければなりません。
バッティング面ではコンタクト率が高い割に三振は平均並み、その要因となっているのはほぼ全球種でマイナス指標になっている変化球への対応です。特にスライダーに対してwSL-3.1と苦戦し、左投手に対してのK%は22.2%と、改善点が浮き上がってきます。逆にフォーシームに対してはプラス指標なのは大きいですね。真っすぐにタイミングを合わせて、変化球にも対応できるようになれば今年の出塁率を通年でキープできるようになるでしょうし、ぜひOPS.800を目指してほしいところです。
と、これらを書いているときに流れてきたのが、ウィンターリーグでのホームラン動画でした。
いやいや、めっちゃ引っ張ってるやんけ!
先ほど触れたNPBでの打撃方向では引っ張り方向への打球は少なかったのですが、この動画を見て思わず彼のタイプを考え直したくなってきました。
これまで触れてきたように、彼のバッティングスタイルは待球型のアベレージバッターを目指すもので、優れたコンタクト能力を背景に出塁率を上げていくイメージでした。しかし、これだけしっかりとスイングができてライトにHRを打てるのであれば、多少コンタクト率を減らしてでも長打をもう少し積極的に狙っていくべきではないでしょうか。現在センターでポジションを争う小田選手、後藤選手、西浦選手らも同じく左打のコンタクトヒッタータイプなので、宗選手に長打力が加われば他の選手と差別化でき競争優位に立てます。
いわゆるバッティングカウントでの19年打撃成績は以下のようになり、本塁打こそないものの長打率が大幅に上がっています。
自由にスイングのできるカウントでは、きちんと結果を出している分、初球打率.167をはじめとして追い込まれるまでのバッティングは当たらなくてもいいと割り切って振り切ることを狙うべきではないでしょうか。
参考までではありますが、オリックスの打撃の要である吉田正尚選手のストライクゾーンコンタクト率は90%ある一方、同じく左打でリーグを代表する西武の秋山選手は86.9%、森選手も86.0%と、打撃成績を上げるために必ずしもすべての球にコンタクトする必要はありません。狙い球を絞ったり、配球を読んだり、と一軍で揉まれる中でしか磨かれることのない要素も入ってきますので、宗選手には怪我無くとにかく一軍の打席に立たせ結果を出してほしいと思います。
最後に、守備位置については、ウィンターリーグでは主にサードとして起用されています。レギュラーシーズン中でも2度三塁を途中から守る機会がありました。センターでのUZR指標が今の時点でマイナスであることはやはり気がかりで、入団時は遊撃手として入った実績もあることから、サードのポジションをオプションとして持つことは十分想定に入れるべきでしょう。
特に、サードはオリックスが今年固定できなかったポジションの一つで、三塁スタメン出場した選手だけで8人いました。宗選手の打撃が今年よりさらにレベルアップすることで、まだレギュラーの決まっていないサードまたはセンターのポジションに食い込み多くの出場機会を得られるようになるでしょう。
■さいごに
以前投稿したアダム・ジョーンズ選手の記事(興味ある方は下記よりどうぞ)で記載した、私の考える2020年打順を再掲します。
1番(中)宗
2番(左)吉田正
3番(指)ロドリゲス
4番(右)ジョーンズ
5番(一)中川
6番(遊)安達
7番(三)大城
8番(二)福田
9番(捕)若月
もちろん、これが上手く機能するかは実際にやってみないとわかりませんが、セイバーメトリクス的なアプローチから私なりに昨年の成績をもとに分析して並べてみたものです。
なんといっても先制点を初回に取りたいと考えるうえで、一番のキーとなるのは1番打者、まさに宗選手です。高い出塁率に加え、終盤で記載したように長打も狙えるようになれば本日MLB行きの決まった秋山選手(おめでとうございます!)のような球界を代表するコアプレイヤーになることも夢ではありません。
シーズン後の体力的にも精神的にもハードなウィンターリーグで得たものをぜひシーズンに活かして、来期の飛躍を期待しています!
※各データは
・ESSENCE of BASEBALL(https://1point02.jp/op/index.aspx)
・nf3(http://nf3.sakura.ne.jp/index.html)
・アメリカ大手データサイトのfangraphs(https://www.fangraphs.com)
を参照しています。